あの戦艦です
時雨が建造された同日、異なる別の場所である艦娘が建造された。それは、米国軍人が来日し大阪で建造していたものだった。本来はアメリカで建造されるはずだったのだが……
その艦娘の名はアイオワ級戦艦、アイオワ。彼女が意識を持ったのは暗闇の中。人間の五感を持っているのを感じた。いや、感じたのは遠くで爆発音が聞こえたからだ
「What's happened?」
彼女自身もよく分からない。ここが何処なのか。しかし、自分が何者かは分かる。ミーは戦艦アイオワ。それが私。しばらくして暗闇から光が見えた。外の世界はどうなっているのか、見て見たい。手を伸ばすが、何か固い物にに当たる。鋼鉄の壁か何か分からない。でも私はここから出たい。右手に力を込めて壁を殴る。鋼鉄の壁が脆いのか、己自身が強いのか、鋼鉄の壁は轟音を立てて落ちる。眩い光がミーの目に入った。でも、そんな事は気にせずに声を上げた
「Hi!MeがIowa級戦艦、Iowaよ。Yo……What?これはどういう事!?」
自己紹介するアイオワだが、視界に映ったのは半壊している部屋だった。床には軍人らしき者が倒れており、至るところに火が上がっていた。小さな小人のような者がこちらの存在に気づき、歓声を上げた
「Hey!何があったのですか?」
「深海棲艦からの攻撃を受けています!」
妖精の言葉にアイオワは反応した。よく分からないけど、敵が近くに来ている。攻撃を受けているのなら、その不届き者を倒さないといけない。妖精の警告を無視して廊下を走り、扉を出た瞬間、アイオワは驚愕した。多数の爆撃機が、高高度から爆弾を落として無差別攻撃しているのを。黒い航空機が飛び交っているのを。遠くの海から街に向けて砲撃してくる黒い影……
「ここはAmericaではない?」
焼け落ちた看板や標識にジャパニーズキャラクターが書かれたのを見てここは、アメリカではない事を理解する。しかもあの爆撃機は…。だが、姿が似ているだけ。街を無差別爆撃するとは一体どういう事か?
素早く辺りを見渡したが、ふと海岸に目を向けると沖合に人が倒れていた。いや、人ではない。よく知っている艦娘。あの煙突、飛行甲板。忘れる訳がない
「まさかSaratoga!?Are you alright?」
アイオワは海に入ると全速力で近づき声を掛けるが、気絶しているのだろう。白い服も艤装もボロボロだった。海を歩き力任せでサラトガを担ぎ、海岸へ向かう
「Iowa……?アイオワなの?」
「that's right。安心して。陸に上げるから」
気がついたのだろう。サラトガは呻いていた。その時だった。後方からレーダーに反応があった。後ろを見ると4つの影が近づいて来る。小さいためそんなに脅威はないだろう。アイオワは近づいて来る敵に向かい合うと、自身の艤装の砲を動かす。仰角を取り、射撃体勢に入った
「……!Iowa、逃げて!!」
サラトガが悲痛の叫びを上げたが、アイオワは首をかしげた。サラトガはあの小さな敵にやられたのだろうか?見た目は弱いし、武装も貧弱な5インチ砲だ。こちらは主砲も装甲も自信があるため、簡単にやられるような自分ではない。16inch三連装砲Mk.7に砲弾を込み発射する直前、アイオワは驚愕した
「あの発射装置……まさかmissile!?しかも、ハープーン!?」
冗談ではない!あの小さな敵、対艦ミサイルを持っている!気付いた時には敵はミサイルを発射しており、物凄いスピードでこちらに向けて近づいて来る。対抗手段がない今、アイオワに4発のミサイルが直撃した
如何に装甲があっても、ミサイルには敵わない。一瞬で中破に陥った
「Ouch! やってくれたわね!」
やられながらもアイオワは主砲をぶっ放した。レーダー射撃とは言え、命中率はミサイルの比ではない。運よく1つの敵に命中し、一瞬で撃沈した。しかし、残り三つの敵がこちらを狙っている
「Iowa、私を置いて逃げて!」
「No,生きて戻るわよ!」
サラトガを再び担ぐと最大船速で陸地に向かう。敵は再びミサイルを発射し、容赦なくアイオワに降りかかる。高速戦艦と言えど、ミサイルから逃れるための手段は皆無だ。奇跡的に沈みはしなかったが、既に大破状態だ
何とか陸地に着き、建物に入るとサラトガに聞いた。ここはアメリカではなく日本という事。敵は深海棲艦という事。人類は私達、深海棲艦を倒すために艦娘を造ったとの事。亡くなった米国軍人の話によると、この世界は1950年代らしいが、第二次世界大戦愚か太平洋戦争すら起こっていない。艦娘は、艦だった頃の世界の記憶を持っているという事。ここまではアイオワは理解出来る。しかし、なぜその深海棲艦は現代兵器であるミサイルを持っているのかが理解出来なかった
「Enemyからの攻撃を受けて……US soldierが死んでサラはどうしたら……」
「OK。理解出来たわ。サラ、ここの工廠では改修出来るわよね?」
艦娘の発案者は日本の技術士官らしい。改修も資源と練度があれば可能だ。妖精の話では、資源はまだ沢山あるらしい。アイオワは工廠妖精に資源保管庫にある全ての資源を大改修に回すよう指示した
「Iowa……?一体、何を?」
「Missileを持っている敵にこの装備はダメ。Meの本当の姿を見せてあげる」
再び工廠に入り公衆電話ボックスのような鉄のカゴに入る。中から音が聞こえ、妖精が慌ただしく働いていた。大改修されているのは分かるが、あの敵に倒す手段をアイオワは持っているのか?
「そう言えば、IowaはあのRocketを
サラは作業が終わり次第、アイオワに質問しようと待っていたが、大改修が終わり再びサラの目の前に現れたアイオワの姿を見てサラトガは驚愕した
「Iowa?それは?」
長門は大苦戦していた。兵器の性能差が余りにも違いすぎる。敵の軽巡や駆逐からはロケットのようなものを発射し、こちらの砲が射程に入る前に叩かれた。どんな戦略を練っても通用しない。しかも戦艦ル級改flagshipが嘲笑うかのようにとどめを射している。大破し漂流していた金剛も榛名も沈められた
「ドウシタ?ビックセブンノ力ハ、コンナモノカ」
「くそ……」
長門は歯ぎしりしたが、自分はロケットを食らって既に満身創痍だ。艤装は徹底的に破壊され砲は射てず、長門は力尽きて倒れていた。何も守れなかった。自分が率いていた由良や響などの随伴艦も奴らに沈められた
「死ネ」
長門は目を閉じた
「戦いの中で沈むのだ…あの光ではなく…本望だ…」
既に死は覚悟していた。提督、後は頼んだ。そして待った。敵がとどめを刺す砲声を。しかし、予想外の事が起こった。耳に聞こえたのは、複数の爆発。目を開けると戦艦ル級改flagshipの随伴艦が撃沈していた。戦艦ル級改flagshipも動揺している。目線も長門ではなく、別の方に向けている。長門も向けると驚いた。あの艦娘は……アイオワか?でも艤装が違う。まるでスマートな艤装だ
「長門!Are you all right!?」
「あ、ああ……。お前はアイオワ?」
あの艦娘は長門……。艦娘として会ったこと無いが、第二次世界大戦時の日本の艦艇は知っている。ビックセブンで有名な戦艦の1つだ。その戦艦が瀕死状態だ。まずはボスらしき深海棲艦の注意をそらすため、随伴艦の駆逐艦や軽巡にはハープーンを、重巡一隻にはトマホークを食らわした。アイオワが積んでいるトマホークは本来、対地用だが、アイオワは無理やりロックオンして発射させた。敵は予想もしなかったのだろう。ミサイルの対抗手段を発動する前に撃沈した。重巡は持ちこたえていたが、大破状態だ
戦艦ル級改flagshipは素早くアイオワと長門から離れ距離を取ると軽巡ツ級を呼び出した
「ヤレ!」
「クソ!逃げろ!私に構うな!ロケットにやられる!」
長門の警告にアイオワは無視した。建造されたばかりで状況もあまり把握していない。しかし今のアイオワには怒りで一杯だ。敵の軽巡の兵装を見て、瞬時に理解した。あの深海棲艦!近代兵器をこの私に向けたわね!
「
「ECM起動!CIWS発射!」
CICにいる妖精から悲鳴が上がったが、アイオワは淡々と対空戦闘を発動した。電子戦装置であるAN/SLQ-32とファランクスのCIWSを起動させ、迎撃体勢に入った。妨害電波で目潰しをかけられた4発のミサイルは、アイオワや長門を捕らえる事無く通り過ぎた。確実にこちらを狙って来る2発のミサイルはCIWSが対応した。CIWSが唸り声を上げ、迫ってくる対艦ミサイルを全て撃破した
「ホウ…」
「イージス艦ほどではないが、ミサイルを撃墜出来る!」
軽巡ツ級は驚愕した。今まで対艦ミサイルを躱した艦娘はいなかった。目の前にいる艦娘は、何だ!?
「な、何だ?今のは?ロケットを撃墜した?」
長門が驚いているのを他所にアイオワは主砲を敵艦に向けていた
「Fire!Fire!」
アイオワの掛け声で主砲は発射され、戦艦ル級改flagshipを護衛しているイージス艦もどきの深海棲艦を叩き込んだ。油断していたのだろう。砲弾は的確に命中し、軽巡ツ級は一瞬で撃沈した。周りの深海棲艦は、主砲から逃れるためアイオワから逃げたが、一隻だけは違った。戦艦ル級改flagshipだ
「オ前、『アイオワ』ダロ?シカモ、
「Nameshipは伊達じゃないのよ!Fire!」
双方の砲が火を吹いた。二つの戦艦同士の砲撃戦が繰り広げられたが、アイオワは気付いた
「What?弾を弾いた?」
「私ガ近代兵器ニ頼ル者トデモ思ッタカ?」
戦艦ル級改flagshipはゾッとするほどに歪んだ笑みを浮かべていた。アイオワが撃っている弾は16インチ、つまり40.6cm砲だ。その砲弾が命中しても効果がなかった。しかも2,3発は装甲で弾かれている。ここまで装甲が固いのは見たことがない。大和型戦艦でもこんな事はならないだろう。しかも撃っている砲弾も強大だ。一発食らっただけで中破まで持っていかれた
「Oh shit!(何、この砲弾!?)」
飛んでくる砲弾はどう見ても16インチ砲の威力を超えている。今まで気付かなかったが、よく見ると戦艦ル級改flagshipが持っている砲はデカイ。下手すると大和型戦艦よりも大きいかも知れない
「海ノ底ニ沈メ!」
掛け声と同時に上空から5機のジェット機がこちらに向かっている
「What?そんな……」
迫りくるジェット機を見たが、どれも見たことがある機体だった。しかし、その機体は黒く塗りあげられており、星のマーク、つまりアメリカ海軍のマーキングがなかった。対空戦闘しようとした時、ジェット機は突如、反転し空へ消えてしまった
「チッ、『主』ハ腰抜ケカ?勝負ハオ預ケダ」
通信が入ったのだろうか。戦艦ル級改flagshipもアイオワや長門に目をくれずに撤退した。何があったのか?一刻も知る必要があった
「悪い……。仲間は海に沈められた。もうダメかと」
「Nagato。喋らないで」
両者ともボロボロだった。無線での集合地点に向かうよう提督の指示があったので、それに向かって航行していた。集合地点に向かう先には既に他の艦娘も到着していたが、全員大破だった。どの艦娘も悲しみと怒りで顔を歪ませていた。サラトガも既におり、提督と一緒に撤退準備の手伝いをしていた。あの近代兵器によって敗北したのだと思うと、アイオワのはらわたは煮えくり返った。近代兵器と第二次世界大戦時の兵装の差は雲泥の差だ。状況を知らなくても、見ればわかる。これは一方的な虐殺に等しかった。今の艦娘は近代兵器に対抗手段なんて無いのだから
別の基地に異動するためトラックの中に乗った。街が燃えるのを見てアイオワは悲しくなった。道路には避難民の長蛇の列が出来ていた。艦娘を指揮する提督も自ら動いており、工作艦と一緒に手当していた
「ああ――!」
「取れました!不発したロケットが」
緑色の髪の毛をした艦娘、夕張が血の付いた対艦ミサイルを掲げていた。不発したのだろう。しかし、負傷した駆逐艦である時雨は、ぐったりとしていた
「処分しろ。どうせ、俺達の手に余るものだ」
ロケット……。アイオワは気付いた。この世界は『ミサイル』という兵器を知らない。そして見た。ロケットの姿を
「ハープーン?」
つい口走ってしまった言葉。慌てて口に手を抑えたが、反応した人が一人いた
「知っているのか?」
提督がゆらりと立ち上がり、こちらに迫ってくる。拳銃を抜き怒りで迫ってきた
「答えろ!知っているのか?こいつを!?」
「提督、落ち着いて下さい!」
明石が提督を抑え、ひと悶着している間、アイオワは必死になって提督に説得した。敵の情報を入手したから知っているだけだと
しかし……この嘘がいつまで通用するのか分からない。他の艦娘はともかく、提督には事実を伝えなければ。敵が持っている兵器の正体を
この作品におけるアイオワの兵装
・16inch三連装砲 Mk.7
・Mk.12 5インチ砲(Mk.68 GFCS) 連装6基
・RGM-84 ハープーン対艦ミサイル 4連装ランチャー4基
・BGM-109 対地攻撃用トマホーク 4連装装甲ボックスランチャー8基
・ファランクス CIWS 4基
・AN/SPG-51 (射撃管制用レーダー)
・AN/SLQ-32 (電子戦装置)
・Mk.36 SRBOC (対艦ミサイル用デコイ展開システム)
・RQ-2 パイオニア (無人偵察機)
など
オリジナル……ではなく、アイオワ戦艦が第二次世界大戦後に改修された実際の兵装
詳細は次話で説明しますが、艦これのキャラの中で実際に現代化改装した艦
多分、アイオワが改二になれた時はミサイルを持ってきてくれるでしょう(嘘)
余談ですが、アイオワ改の改修ボイスが
「Harpoon? Hmm… 悪くないけど…… まだ、早くない? アリ……かな」
との事。残念