時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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良いお知らせと悪いお知らせがあります

良いお知らせは、評価の色が付いた事です。悪い知られは、もしかすると次話が年明けになる可能性になるのかな?って所ですね
文法が怪しいのが悩みどころ。何とか改善せねば


第29話 浦田重工業とイージス艦

 提督のアパートに帰った2人は(帰り道のバイクで再び悲鳴を上げていた)、早速準備を始めた。と言っても、時雨は何もせず、提督が支度するのを待つだけだ。待っている間が、とても暇だった。そのため、提督が着替えている部屋を除き、掃除など基地にいた頃のように仕事をして時間を潰していた。しかし、部屋が部屋なだけにあっという間に終わってしまった。アパートの扉も嫌がらせの紙は再び貼ってあったが、それも綺麗に片付けた

 

「やらなくてもいいのに?」

 

扉に貼られた嫌がらせの紙を剥がしている最中に、提督が不意に声を掛けた

 

「そんなことないよ。提督の部屋だし、これから暫くいる事になるから――」

 

 時雨が提督を見ると驚いた顔をした。ビシッと着こなし、ネクタイを締めビジネススーツを着ている。髭も剃り、髪も整えている。あの学生身分の大学生が、身嗜みを整えただけでここまで違うのかと。やはり提督は、私服よりも身なりがしっかりした服装の方が似合うかもしれない

 

「……どこかおかしな所があるか?」

 

「ううん。似合っているよ」

 

以前までは普段着であったため仕方ないと言える。尤も、未来では海軍軍服を着ていたとは言え、状況が状況であるためあちこち汚れていた。そして、身なりもそこまでしっかりしていなかった

 

「そうか。お前はどうする?」

 

「ええっと……」

 

 時雨は考えた。確かに浦田重工業には興味がある。後に深海棲艦が奪ったとされる最新鋭兵器が開発や試作兵器が製造されている会社。そして深海棲艦を非人道的な研究していると噂されている。また、『艦娘計画』を退ける程の技術力を持つ企業である。就職活動する学生さんが真っ先に名前が挙がる会社だ。給料も待遇も良いらしい

 

「折角だし、お前も行くか。社会見学もあるし」

 

「うん。そうするよ」

 

時雨も見たかった。どんな企業なのかを

 

 

 

 浦田重工業の支店にたどり着いたのは、約90分後。電車やバスの乗り継ぎを何回かしてようやく近場の駅に着いた。着いた都市は栄えており、人と車の往来が激しかった

 

「凄い!外の世界は、こんなになっているなんて!」

 

「驚く事か?」

 

「うん。僕が建造された時は全部、瓦礫になっていたから」

 

「そうか」

 

 提督は頷いた。これから先、深海棲艦による攻撃でここが焼け野原になるという現実が嫌というほど降りかかってくる。時間は限られている。提督は行くか、といい目的地に向かう

 

 

 

 支店の前では大勢の人が集まっていた。大半の人が就職活動の人達なのだろう。深海棲艦の脅威は、本土にまで及んでいないため不自由はあるものの比較的平和だ。とは言え、就活する学生達にとっては、職選びは大いに限られていた。そのため、就活する学生は自然に裕福な職へと選ぶ。優秀な人は良い職場で就き、平凡な人は普通の職場か、碌な扱いをしてくれないブラック企業か。つまり、競争なのだという

 

「時雨、お前は待ってろ。俺はー」

 

「これはこれは、また現れました。『狂人』の息子さんが来たぞ!」

 

騒がしかった騒音が一斉に静かになり、視線がこちらに集中した。時雨は不安げになったが、ほとんどの視線は提督だ

 

「勘弁してくれよ」

 

 

 

 手続きをして時雨に待つよう言う所でまた邪魔が入った。毎度、誹謗中傷してくる輩だ。名前は知らない。知ったとしても小者だから。就活の時にはほとんどそいつが出て来る。厄介だが、お蔭で未だ内定すら取れていない。そのため、海軍に入隊する事をしたが、それは俺が知る正史だ。今までは無視したが、今回は違う。やるべきことがある

 

「やあ、元気か。お前は会社員には向かん」

 

「それは個人の自由だ。親父に見返してやるつもりだったが、諦めた。ガキみたいな事をする暇があるなら、真面目に就活しろ」

 

その輩は眉を潜めた。いつも言い返しが、違った事に違和感を感じたのだろう

 

「お前、調子に乗るなよ。成績が良くても悪事を働いたら、意味ねーんだ。例え、親だろうがな」

 

「その態度で入社するのか?面接でその態度取って見たらどうだ?俺の予想では、深海棲艦が、お前の家に爆撃して家族諸共死ぬかもな」

 

 相手はキレたのか、こちらを睨んで来る。時雨は卓球の試合を見てるかのように2人を交互に目をやり、周りはヒソヒソ声になった

 

「どういう意味だ。舐めているのか?」

 

「やれやれ、これが平和ボケって奴か。こんなんだったら、国を守る組織は失望するだろうな。危機管理能力がないからこうなるのか?」

 

「いい加減にしろ!」

 

相手は殴りにかかったが、俺の顔面に拳が当たる直前に止まった。見ると、誰かが彼の拳を抑えている。腕を抑えているのは、20後半の女性だろうか。黒髪の女性が細い腕とは思えない程の力で抑えている

 

「テメーは誰――」

 

 女性は相手が喋る隙もなく、鳩尾に強烈なパンチを食らわした。相手は予想だにしていなかったのか、それとも強烈だったのか、俺に突っかかって来た男は膝を着き、地面に倒れた。時雨も俺もポカンとした。何しろ、その女性は無表情で難なく男性を倒したのだ。お礼か何か言おうと口を開こうとした時、複数の人がこちらに向けて駆け寄って来た。その集団の中に、誰もが知っている人物がいた。浦田重工業の社長だ。髪は薄いが、中年にしては足腰がしっかりしている。社長は近づくなり、その女性に対して非難した

 

「全く、何でいつもこうなのか?こんな調子だと、わが社は、常に暴力行為が横行しているというイメージが湧くぞ?秘書の座を変えて貰わなければならん」

 

「では、柔道で取り押さえろと?」

 

「もういい。全く……。ところで、君はここに来なくていい。偏見で人を陥れるのは野蛮人だけでいい。警備主任、こいつを遠くに捨てて来い」

 

 俺に突っかかって来た相手は、驚愕した。まさか、このような事態になるとはおもわなかったらしい

 

「ちょっと待って下さい!誤解です!狂人がこー」

 

「さあ、さっさと来い!」

 

 俺も時雨も周りにいた人達も呆気に囚われるのを他所に、突っかかって来た相手は数人の警備員に引きずられていく。相手は抵抗したが、警備員はスタンガンか何か当てたのか、相手は気絶したらしい。警備員は、捕らえた男を車に乗せると、車は何処かへ行ってしまった

 

「皆様のお気持ちを害してしまったことにつきまして、心よりお侘び申し上げます。それでは就職活動の学生さんは頑張ってくれたまえ!見学者は所定の場所へ!」

 

 過激なシーンを見た人達は社長の謝罪によって再び騒がしくなった。今の場面は、確かに過激だが、学生達はそんなものはどうでも良かった。ライバルが減った事もあるし、何よりも事件ですらならないもめ事に首を突っ込みたくなかった。浦田社長は、騒ぎが収まるのを確認した後、時雨と俺の所にやってきた

 

「外してくれないか。ようこそ、我が浦田重工業へ。と言っても、ここは支店だから自慢できるものは無いが」

 

人々が己のことであくせくしている間、社長は俺に突っかかって来た相手を一方的に殴った秘書と警備員を下がらせると、俺に握手を求めた

 

「ありがとうございます」

 

「気にしなくていい。君がこのような仕打ちになったのは私の責任でもある。会社方針のためとは言え、このような結果になってしまった。ところで、そちらのお嬢さんは?」

 

俺が社長に握手をし終えた時に、社長の目線は時雨に向いていた

 

「僕はしー」

 

「私の遠い従兄弟です。浦田重工業がどれほどなのか見せたくて」

 

 流石に時雨を自己紹介のまま名乗らせるのはまずいので、何とか誤魔化した。時雨も目で「ごめん」と言う風に合図した

 

「君の父親の事は残念だ。私も知っている。深海棲艦とどう戦っていくのか。国からの命令で対抗手段を考えたが、道が違った。私が設計した兵器は受け入れ、君の父親が提唱した『艦娘計画』は凍結され左遷された。ただ、敗者にはチャンスを与えるべきだと私は思う」

 

「しかし、私は四面楚歌です。深海棲艦と戦う事なんて」

 

「そんな事は承知の上だ。何も銃を持って戦う事が軍人の仕事ではない。浦田重工業では、軍や他の民間企業より20年先の進んだ技術を持っている。君の事は父親から聞いている。君は能力に見合った組織に所属すべきだ」

 

浦田社長はポケットから名刺を取り出し、俺に渡した

 

「頼む……気が向いたら連絡してくれ」

 

「分かりました。ところで見ておきたいのがありまして。確かここでは、イージス艦の試作艦が公開されるというのを聞いたのですが。従兄弟の時雨も見たくて」

 

「え?僕はそんなの…」

 

話が時雨に振られたお蔭で時雨は慌てたが、浦田社長は気にすることもなく、満足げに頷いた

 

「いいでしょう。わが社の最新鋭の技術が生み出した兵器をご覧に頂きましょう」

 

 浦田社長は秘書に鑑賞するよう手続きをするよう伝えた後、2人を招き入れて会社の敷地内に入っていった

 

 

 

観艦式というのをご存知だろうか?

 

 観艦式とは軍事パレードのひとつで、軍艦を並べて壮行する式のことである。本来なら海軍がやる行事だが、その海軍の艦艇のほとんどは深海棲艦に沈められてしまった。一般公開する軍艦が無いため、仕方なしに浦田重工業が開発した最新鋭兵器であるイージス艦を公開する事になったらしい。今回はその試作艦である、一号艦である。艦名はまだない。しかし、就職活動に来ていた学生は勿論、観客も海軍のお偉いさんも来ており、皆はその姿に興奮していた

 

「これがイージス艦…」

 

「ああ、新聞で大騒ぎになった艦。そして深海棲艦を撃破出来る兵器か」

 

時雨と提督はイージス艦がよく見える席に座っていた。浦田社長のお蔭で、特等席に座らせてもらった。提督は感謝したが、社長は気にしていないという

 

「あの浦田社長、凄い太っ腹だね」

 

「親父を知っているらしい。内心どう思っているか知らないが、紳士的だった」

 

 時雨は興味があった。未来で浦田重工業の軍事技術が深海棲艦によって奪われ、しかもその兵器によって艦娘の仲間が撃沈されたという苦い経験よりも最新鋭兵器の仕組みに興味が勝った。なぜなら、このような艦艇は艦だった頃の世界には無かった。砲が一門、甲板に埋め込まれているロケット発射機のようなもので海戦するという兵器を直に見るのは初めてだ

 

「でも、力強さに欠ける船だね」

 

「そうだな。戦艦のように大砲をずらりと並べていないから、深海棲艦を撃破出来るなんて想像出来ないな」

 

 しかし、人類が開発した最先端の軍事技術は、皮肉にも深海棲艦ではなく艦娘に向けられる事になる

 

「その兵器が将来、僕達に向けられる」

 

「それを防がないとな。兵器の矛先を向けるのは味方じゃない」

 

 因みに兵器の能力を知っているのは時雨と提督のみ。未来では、深海棲艦の軽巡ツ級がイージスシステムの能力を身に着け、艦娘達を苦しめていた。時雨も幾度と戦った事があるため、その恐ろしさを身に染みていた。提督は違うが、自分自身の未来のノートで大まかな事は把握している。その他の観客はこの軍艦の性能を知らない。外見だけ見せて、中身は機密扱い。つまり、誰も知らないのだ

 

 

 

画期的な兵器と感心する者、早く実戦で活躍するのを期待する者、あり得ないと小バカにする者

 

 

 

 反応は様々だ。そんな中、停泊しているイージス艦の前に用意されたステージに浦田重工業の社長が現れた。現れた事により、観客からは拍手が沸き上がった

 

「皆さん、こんにちは。私は浦田重工業の社長だ。そして、ようこそ浦田重工業へ」

 

 観客は熱狂的な歓声で包まれた。学生、民衆、そして最新鋭兵器であるイージス艦を一目見ようとした軍人達。拍手喝采の中、社長は静まるのを待っていた、やがて、拍手が止むと社長は喋り始めた

 

「会社説明会かつ観艦式のような式典にお越しいただいてありがとうございます。しかし、私は自ら産んだ兵器を自慢するためにこのような式典を開いた訳ではありません」

 

浦田社長は手で合図するとステージの横に設置してある巨大モニターが写し出された。その映像はとても衝撃的なものだった

 

 

 

 黒煙を噴きながら燃え盛る何隻もの艦艇。海面には水兵がオイルに塗れて助けを求める者。沈みかけている多数の軍艦、そしてその周囲を我が物顔のよう航行している深海棲艦

 

「提督、これは?」

 

「世界が、力を合わせ深海棲艦に挑んだ多国籍軍の末路だ」

 

 軍艦のマストに翻る日章旗や星条旗など各国の国旗が半ば焼けちぎれた映像を見ながら提督は答えた。時雨にとって衝撃的だった。初めて見た悲劇。先輩達から人類の兵器が通用しないと聞かされていたが、映像とは言え、実際に人類が深海棲艦に挑み敗北を見たのは始めてだ

 

「あの時は凄いニュースになった。生存者は僅かだ。奴は捕虜をとらない」

 

時雨は息を呑んだ。散々、歴史の授業で習っていた事だ。だが、この映像は深海棲艦が海を支配する軍団である事を改めて認識した

 

 海に出ると死が待っている……。更に艦娘はまだこの世界に現れていない。時雨が苦悩するのを他所に社長は再び演説を始めた

 

「世界が絶望した日、脳裏に焼き付いた決して消える事のない記憶。あなた方は何をしていましたか?深海棲艦は我々の世界に侵略し、日常を脅かしている。彼女達は世界を闇に包み、そして絆を引き裂いた。絶望のふちに沈んだ世界は、再び立ち上がろうとしている」

 

 映像が切り替わり、次に映し出されたのは経済が発展する姿だった。高速道路や鉄道を建設する映像や工場が次々と立ち並び日本を豊かにするもの。そして環境問題を取り組む姿

 

「幸か不幸か、私は天才だった。にも拘らず、私は農家で産まれ貧しかった。勉強する意欲があるのに、金が無ければ何も出来ない。進学なんて夢のまた夢だ。しかし、ある閃きのお蔭で私の人生は変わった。そうだ、何もないなら自分で築くしかないと。私は中学卒業した後に、会社を起業した。それはバクチだった。一家心中する程の借金をしてまで会社を立てた。結果は、映像で見た通りだ。わが社は大繁盛し、日本を立ち上がらせた。様々な事業のお蔭で、日本はもう後進国ではなくなり、アメリカを追い越す程の工業力を持った。それも短期間で」

 

次に写し出されたのは深海棲艦とイージス艦が交差する映像である

 

「国際情勢の関係で日本はアメリカと軍事衝突される直前に、太平洋上にて正体不明の軍団が現れた。その軍団こそが人類の敵である深海棲艦。神は我々に試練を与えたのでしょう。いや、悪魔の悪戯かも知れない。人類以外の敵とどう向き合うのか?いつまでもいがみ合って、深海棲艦を野放しにするのか?いいえ。これからは団結して立ち向かわなければなりません。そのためには人種、宗教、思想などと言った壁を乗り越える必要があります。私は人類団結の象徴として、そして人類共通の敵を打ち破る兵器を開発しました。それが、このイージス艦です」

 

 浦田社長の演説が終わると同時に、再び拍手が湧き起こった。時雨もいつの間にか拍手をしていた。まるで勇気を与えてくれるかのような演説だった。提督は鼻で笑っただけで、拍手はしなかったが

 

「浦田重工業は未来を築く会社。その一歩を踏み出そうではありませんか!」

 

観客は既に熱狂だった。それはそうだろう。今までの日本を支えたのは浦田重工業のお蔭とも言っていい

 

「凄いね、あの人。だって、僕が艦だった頃の日本と全然違うのは彼等のお蔭だよ!ここの日本は凄い」

 

「そうか?俺のバイクも浦田重工業のお蔭だ」

 

提督は苦笑いしていたが、時雨はそんな事はどうでも良かった。しかし、時雨は未来の提督の警告を忘れていた

 

 

 

『過去の俺と『創造主』以外は誰一人信用するな。何が起こるか分からん。確実に信用出来ると分かるまでは気を許すな。警戒しろ』

 

 

 

 もし冷静な判断があれば、これはただのパフォーマンスであると気付くかも知れない。しかし対人関係は愚か、人間関係の経験が浅すぎる彼女にとっては、酷であった

 

 興奮する時雨を他所に提督は、ある紙を取り出した。これから先の演説は、兵器の自慢話みたいなものだろう。そもそも彼の目的は、浦田重工業の社長に会いに来たわけではない

 

 

 

狙いはイージス艦。あの艦についてだ。時雨すら知らない未来からのメッセージだった

 

 

 

宛名は……あのアイオワからだった




おまけ
浦田社長「ようこそ、浦田重工業へ」
 提督 「貴方が……」
浦田社長「そうだ。想像と違っていたか?」
 提督 「はい。違っていました。私は、このような人だと思いました」

   ~回想~
???「出でよ…我が最強にして美しきしもべ!青眼の白龍!」
???「I AM IRON MAN(私がアイアンマンだ)!」
   ~回想終了~

 提督 「これくらいカッコイイ人かと…」
浦田社長「会社の社長全員が『カードの貴公子』か『スーパーヒーロー』の存在と思い込まないでくれ」
 時雨 (何気によく知っているね)


今回はイージス艦を開発した企業である、浦田重工業の話です
と言っても、社会見学のようなものです。しかし、提督は……
そして、浦田重工業の社長が登場。勿論、海馬瀬人(遊戯王)でもトニー・スターク(アイアンマン)でもありません
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