夏休みは終わり、秋が深まる中、とある別荘では未だに作業をしていた。提督の父親による新兵訓練は無事に終わったのはいいものの、肝心の艦娘計画はまだまだだった
「実験レポート2045号、未来からノートにより無機物から有機物に変換するユニットは、まだ不完全だ。擬装だけが完成したが、肝心の艦娘は未だに出来ず」
「親父、カセットテープに録音するのはいいけど、完成はまだ先なのか?」
「科学の実験はトライアル&エラーだ。そう簡単に出来るならとっくに完成している」
建造ユニットで資源と資材を投入したが、出てきたのは12cm単装砲だけ出て来たのだ。装備開発は成功した。しかし、それを扱う人である艦娘がいない
「本当に間に合うのかな?」
時雨も段々と焦りを感じた。浦田重工業がイージス艦を売り始めるのは約3か月後。それまでに艦娘の建造を完成しなければ、無意味と化する。艦娘の有効性を世界に知らしめないと意味がない
「陸軍との連絡は?資金や物資の援助は有り難いけど、向こうは正体すら明かさない。使いがやって来て艦娘計画に気に入ったとしか言わない」
提督は父親に聞いたが、彼はかぶりを振っただけだ。実は父親は1ヶ月前に陸軍に思いつく限り、連絡をとり艦娘計画を持ちだしたが、どの部隊も機関も全て断られた。陸軍に連絡をやめようとしたその時、一本の電話が鳴った。その者は特殊部隊の部下であり、艦娘計画に気に入った、だから肩入れしたいと言って来たのだ。初めは半信半疑だったが、資金援助どころか家の前に物資まで送られてきた。しかもトラック満載で。ある兵士が自分達の上官の命令によって送ったとの事。何かあったら今伝える電話番号に掛ける事。そう言った後、まるでアラビアンナイトに出て来る魔人のように物資と資金を家の前に置くとこちらの質問は無視して行ってしまった。流石の時雨もこれにはポカンとしていた。しかし、未来で見た陸軍将校と名乗る人物は、現れなかった
「残念ながら。しかし、気になる事がある。時雨。未来のせがれは、陸軍将校と仲が良かったと言うんだな?」
時雨は頷いた。確か提督は陸軍将校と仲が良かった。提督は、それしか教えてくれなかった
「うん。でも、今の提督の知り合いに陸軍将校は居なかったんだよね?」
「ああ、少し気になった。知り合いなら陸軍将校にも接触するように書き記すんだが。意図的に書かなかった可能性があるな。特殊部隊か諜報機関か何かか。しかし、よく分からんな」
提督も疑問に思っていた。そもそも、未来で陸軍将校とどんな関係だったのか?本当に『艦娘計画』に興味があったのだろうか?
「今、それを考えても無駄だ。分かっている事は、ワシの計画に賛同している者がいる事だ。利害の一致なのか、艦娘を何か利用しているのかのどちらかじゃろう。ヤバかったら未来のせがれのように小笠原諸島に逃げて研究しよう」
父親は相変わらずだ。とりあえず、正体不明の支援者が、「艦娘計画」に肩入れしている。本来なら不可能と言われた事を可能レベルまで引き上げられたのだから
「よし、資源と試作資材をユニットに。2046号だ。始めろ」
2人の妖精は敬礼をしユニットの中に入ると、作業を始めた。しかし、音は鳴れど肝心の艦娘建造の音がしない
「建造されていない」
「そうか。明石が欲しい所だが、それを手に入れるには建造ユニットを完成しないといけないとは。皮肉だな」
父親が苦笑いしながら呟いたその時、全く音が鳴らなかったユニットから音が聞こえて来た
「おい、いつもの音と違くないか?」
提督は声を上げた
「建造する音だ。やった。成功したよ!」
時雨は喜んだ。ようやく……ようやく艦娘の建造に成功した。歴史が変えるという重大な任務よりも仲間に会えるという嬉しさで一杯だった
「3分で建造出来ないのか?」
「カップ麺ではあるまいし、これでも凄い技術だぞ。少しは――」
父親と提督が言い争いを始めたので、呆れていた。声を掛けようとしたその時、冷たい視線を感じた。今は艤装を装着しているため、即座に砲撃体制を取った。冷たい視線は、あの建造ユニットからだ
「どうした?」
「提督!博士!建造ユニットの中はどうなっているの?」
提督と父親は困惑した。時雨はまるで建造ユニットが、熊か何か獣害な生き物かのように警戒している
「親父……何か様子が変だぞ?開発資材を間違えて入れたか?」
「そんなはずは……。だが、建造されているのは確かだ」
2人も感じたのだろう。秋とは言え、残暑でまだ暑い。にも拘らず、真冬のような冷気が建造ユニットから出て来るのは何だろう?しかも、建造ユニットから殺気が出ている
「建造はこんな風だったか?」
「絶対違う」
時雨は即座に否定した。幾ら何でも、こんな事はあり得ない
「戦闘態勢を取れ!何が出るか分からん!」
何処から持ってきたのか、父親は猟銃である散弾銃と軍用の拳銃を持ちだすと、弾を込めて構えた。提督は父親から渡された拳銃を構えた。先の新兵教育で父親は、息子に拳銃の撃ち方を教えていたので扱いは分かる
「親父。未来の俺のノートには、こんな現象は無かった」
「もしくはワザと書いていなかったかも知れん」
陸軍将校の件からだと、都合が悪いのを書いていないのか、それともただ失敗をしていただけなのか?
時雨は分からないが、確かな事は、目の前の建造ユニットからはかつての深海棲艦のリーダーである戦艦ル級改flagshipと同等かそれ以上の殺気が溢れだしている。不意に目に激痛が走った。慌てて目をこすったが、その原因は己の汗だと分かった。今頃気付いたのだが、時雨は額だけでなく、背中まで冷や汗でびっしょりだった
不意に建造ユニットの扉が開いた。出て来たのは先ほどの建造していた妖精だ。しかし、表情は尋常ではなく、指を指して口が震えており声が出ない
「来るぞ!」
父親の叫び声で緊張が一気に広がる。しかし、建造ユニットの中は暗い。いや、床に何かが倒れ込んでいた。人型の女性らしき人が倒れていたが、様子がおかしい
「艦娘……じゃない!」
提督は悲鳴じみた声を上げた。時雨も息を呑んだ。これは何だ……?
3人が恐怖で固まっている中、建造ユニットの床でうずくまっている女性が動いた。白い右手が動き、もう片方の手を見た時、時雨は悲鳴を上げた。左腕は人間の手ではなく、魚のヒレの様な赤黒い水かきだった。全員が息を呑み武器を構えている中、建造された艦娘ではない人が這うようにこちらに進んでいる。見た目は白いドレスを着た少女。しかし、皮膚は雪のように白く、頭にひび割れのような模様をした角がある
「おい、親父!深海棲艦を建造してしまったぞ!こいつ撃っていいか!?」
「撃っても無駄だ!通常兵器は効果ない!」
「僕が撃つよ!」
時雨は素早く構え発射態勢に入った。12.7cm連装砲とは言え、この距離なら確実に当たる。発射する直前、時雨はハッとした。その少女が発した声に
「帰リタイ……帰シテ……」
怨嗟の声だが、聞いた事がある声。恐怖の他に懐かしいさを感じる
「吹雪……?」
時雨はその少女の顔を見た。顔だけでなく姿が似ている……
「時雨!何をしている!?早く攻撃しろ!」
提督の怒鳴り声が聞こえたが、時雨は構わず武器を降ろして恐る恐る近寄った。相手も時雨の姿を認めたのか、弱弱しく立ち上がり、提督や父親を見向きもせず、時雨と対面した
「帰リタイ……帰リタイ…… 帰シテ……帰シテ……」
「吹雪なの?僕だよ。僕が分からない?」
時雨は恐る恐る聞いた。記憶が間違っていなければ、吹雪のはずだ
「シ……グレ……?」
「そうだよ!僕の妹の夕立や睦月ちゃん、そして如月ちゃんの事を気にかけてくれたよね?覚えていない?」
勿論、期待はしていない。馬鹿馬鹿しい推測だが、やってみる価値はある。何か語り掛ければ、艦娘の姿になるかもしれない。勿論、根拠はない。推測で行動するのは無謀だが、無謀はとっくに慣れていた。時雨の言葉に、少女は頭を抑える。まるで子供のように悩んでいるかと思った
「ふぶ――」
「消エテシマエ」
まるでそこが見えない暗闇のような、虚無のような声。それと同時に殺気が増した。白い少女はいきなり立ち上がると、時雨を押し飛ばした。いや、ただ押し飛ばしたのではない。トラックでも体当たりしたかのように飛ばされたのだ。時雨は壁にぶつかりそのまま倒れる。壁には跡が残ったが、頑丈な壁に凹みとヒビが入っている
「あ、あれが深海棲艦――」
「撃て!早く!」
親父の声と共に拳銃と散弾銃の銃声が鳴り響いた。銃弾が白い少女に降り注ぐが、白い少女である深海棲艦は何もしない。にも拘わらず、銃弾は皮膚に貫通しない。全て跳弾している。血が流れないどころか、傷1つもついていない。白い少女は五月蠅いハエのように2人を見ていたものの、少女の歩く先はうずくまっている時雨に向かっている
「何で平然としてんだよ!化け物か!?」
「ファーストコンタクトに比べればマシじゃ!あの時は、戦車砲を片手で受け止めたのじゃから!」
「いいから何とかしてくれ!弾切れだ!」
無理もない。駆逐イ級とは格が違う。平然と歩を進めていく白い少女が、提督の目には明らかに不気味に映った。まるで不死身のゾンビを相手にしているような、そんな恐怖を提督に感じさせられた
そんな2人を他所に白い少女は近づきながら凍り付くような声で時雨に一歩、また一歩と近づく
「消エテシマエ!オ前モ!私ノ居場所ヘ!何度デモ沈メ!光ナド無イ!望ミナドナイ! 深イ海ヘ沈メ!ソウシテ、ダレカラモワスレサラレテ、キエテイケ………!!」
時雨は起き上がったが、全身から鳥肌が立った。12.7cm連装砲を構えるが、引き金に思うように力が入らない。恐怖だからではない。ある考えが邪魔していたからだ
あれは間違いなく吹雪……。見間違えるはずがない。未来で一緒に戦い、話し合った日々を。建造して初めて攻撃する事を躊躇ったのだ
しかし、何かが違う。外見だけじゃない?これは何なんだ??しかも、彼女の体型が異常だ。そして、あの白い少女は、こちらに一歩踏み出すごとに成長している!
建造ユニットから出て来た当初は、幼い少女、暁と同じ身長だった。しかし、今では艦娘の吹雪よりも成長している。おまけにたこ焼きに似た艦載機まで出現させたのだ。こちらに向けて威嚇しているものの、深海棲艦化した吹雪は攻撃して来ない
時雨は再び12.7cm連装砲を構え直したが、やはり手が震え引き金が引けなかった。今度は恐怖が襲った。相手が今まで見たこともない深海棲艦……。戦艦ル級改flagshipよりも恐ろしい存在であるのははっきりと解る。時雨の恐怖を感じ取ったのか、白い少女は威嚇を止め、今度は優しい声で語り掛ける
「頑張ラナクテイイ…前ニナンカ進マナクテイイ…」
白い少女は手を差し出す。まるで母親のように語りかけるように
「何とかしろ!早く!」
「今やってる!有機物を無機物に再び戻す方法だ。シンプルだが、これも実験でやった事が無い……」
妖精にハンマーを渡したが、彼女達である妖精は、震え命令を拒否している。博士曰く、『解体』らしい
「人間と同じく心臓の位置に中核となるコアがある。それを特殊な工具で当てると維持できなくなり、無機物になるが……。しかし、効果がない可能性もある」
「いいから早くやれ!時雨を死なす気か!」
銃で効かない、時雨が戦闘不能状態では、父親が言う『解体』しか方法はない。2人の妖精は意を決するとハンマーを持ち白い少女に突撃した
「一緒ニ帰ロウ…」
「僕はまだ任務が…」
未来の提督から託された任務。仲間の無念を、そして世界を救う事が僕の任務。しかし目の前にいる少女は、攻撃する気配などない。たこ焼きに似た艦載機も宙を浮かぶだけで、攻撃して来ない。しかし、白い少女が囁く声は、まるで甘い誘いかのように言って来る
「何度デモ、繰リ返サレル戦カイ…。時ヲ超エ…海ヲ超エ…想イヲ超エ…。何度モ繰リ返サレル。無駄ナ足掻キハヤメロ。オ前ノ居場所ハ私達ノ住ム所ダ」
「何処なの?」
時雨は聞いたが、白い少女は指を時雨の額に近づけさせた。時雨は逃げようとしたが、後方は壁で逃げられない。白い少女の指が額に触るのを感じると同時に、目の前が真っ暗になった
短い時間だったのか、視界は直ぐに回復した。しかし座っている場所は、部屋ではなく、何と赤い海の上だった
「変色海域…」
時雨は思い出した。未来で深海棲艦が海を赤く染め上げている事を。それは艦娘の艤装を腐食させるだけでなく、海洋生物も生きていけない死の海となる事を。だが、身に着けている艤装は腐敗なぞしていない。これは幻影なのか?
そんな彼女の疑問を他所に、数メートル先に人影の集団があった。そして、見た。見たこともない姿をした深海棲艦を
白い肌を持ち赤い目をした女性が沢山居る。しかも、威圧感が半端ない。博士が絵を見せてくれた2人の深海棲艦もいる
まさか……まさかこの人達が鬼・姫クラス??
だが、時雨はその人達の中からよく知っている2人の女性を見つけた
集団の中に、2人一体となっている深海棲艦を見つけた。恐ろしい存在だが、角や爪を除けば……あの姉妹に似ている
「扶桑……?山城…?」
何で……何でこんな所に…?よく見ると、艦娘の姿に似た深海棲艦が何人かいる
「神通さん……瑞穂さん……照月……那珂……阿賀野さん…?」
まさか……深海棲艦の正体は……?近づこうとしたが、前に進めない。艤装が働いてくれない。その時、何処から来たのか白い少女は、時雨の前に現れた
「ドウ……貴方ノオ仲間モイル……。一緒ニ行こう。時雨ちゃん」
怨嗟の声が段々と自分の知っている声に近づいていった。昔……正確には未来だが……もう聞くことは無いと思っていた声。間違いなく吹雪の声だった。顔もホラー映画に出て来るお化けのように脅かす顔ではなく友人として見る目、温かい目だった
「ふぶ――」
声を掛けようとしたその時、白い少女は悲鳴を上げた。まるで氷が解けたかのように白い少女は消えていく。悲鳴と共にカーン!カーン!と鉄が撃ち込む音が聞こえた。時雨は眩暈と頭痛に耐え切れず、意識を失った
目が覚めたとき、自分は白いシーツの敷かれたベッドの上で目覚めた事に気がついた。何が起こったのかを瞬時に思い出すと、素早く上半身の体を起こした。素早く辺りを見渡すと、提督と父親である博士が心配そうに時雨を見ていた
「大丈夫か?」
「吹雪は?」
提督の掛け声を無視して状況を確認しようとした。自分の事はいい。あの深海棲艦……いや、あの少女はどうなったのか?提督は黙っていたが、ゆっくりと話し始めた
「吹雪?君が話してくれた艦娘の1人か?でも、あれは艦娘ではなかっただろ?見間違えじゃなかったか?」
「どうなったの!?」
聞かずにはいられなかった。姿違えど、あれは間違いなく彼女。特型駆逐艦、吹雪型一番艦、『吹雪』だ
「解体した。有機物を無機物に――」
「どうして!?」
博士が説明するのを遮るように大声で問い詰めた。起き上がろうとしたが、提督に抑えられた
「どうして!吹雪を殺し――」
「いや、死んでいない。再び建造さえ出来れば、彼女は現れるのは可能だ。『解体』は殺害目的のものではない。艤装を無機物にするだけだ。ただ、あれは一体化していたから、全て無機物になってしまった。勿論、建造ユニットが完成すれば、君の友達である吹雪は建造可能だ。先程の出来事を覚えているかどうか分からんが」
博士がなぜこんなにも落ち着いて話せるか理解出来なかった。博士は理論が分かってからこその考えだろう。だが、時雨は理解出来なかった。だって彼女は……。殺していないのは分かったが、こんな調子だと建造出来るかどうか不安だ。時雨の不満に気付いたのだろう、博士は、謝罪のような口調で言って来た
「だが、違う姿にしてしまったのは私のせいだ。未来の息子の方が利口だ。私も若ければ……いや、もしもの話はやめよう。柔軟な発想がなかった」
「どういう事?」
時雨は博士の説明に戸惑いを感じた
「未来の息子――いや、君の知っている提督は優秀だ。ワシである父親のせいで、彼は孤独だっただろう。だが、現実から逃げただけじゃない。それなりの工夫をしていた。自分の経験を活かし、失敗してもくじけず前に進み、そしてワシを超えたんだ」
時雨の傍に座るとノートを見せた。理論や化学式が書かれたノートだが、何と注意書きがあった
「ワシは見逃していた。慎重だったのだろう。そして、理解をしている。学問や政治だけではなく、軍隊や戦争までも。だから、建造出来た」
博士はノートを閉じ、ため息をついた
「だからなのだろう。お前達、艦娘を敵である深海棲艦だけでなく、大本営や政治家から守ったのは。しかし、そんな優秀な指揮官は最新鋭兵器の前に敗れた。ワシは焦るあまりに視野が狭かった」
厳しい環境で生き、かつ柔軟な行動が出来たこそなのだろう。確かに未来の提督は、アイオワと共にミサイルやジェット戦闘機などの最新鋭兵器の対抗策を行った。並大抵の覚悟が無いと指揮なんてやっていないだろう。崩壊した世界で、自殺未遂はあれど艦娘を最後まで見捨てなかった
「博士、僕は大丈夫。でも、約束して」
時雨は姿勢を正すと頭を下げた
「間違いは誰にでもあるよ。今回出て来たのは深海棲艦だけど、僕は確かに感じた。あれは特型駆逐艦一番艦『吹雪』だった。艦娘を建造出来るのは、そう遠くないと思う。後、もう一息だから」
時雨の予想外の言葉に、博士は驚いた。彼は、非難されるのかと思ったのだろうか?
「あ、ああ。分かった。……そうじゃな、ワシも言い訳ばかりして逃げる訳にはいかんな。分析して作り直さないと」
博士は立ち上がると部屋を出た。もう大丈夫だろう。提督もやれやれ、と言って肩をすくめた。親子関係も以前よりも改善された。歴史は変わったかどうかわからないが、時雨が知っている歴史とは違う道を進んでいるに違いない。提督は扉のほうを見ていたが、時雨に体を向けると聞いてきた
「ところで時雨、未来でさっきの深海棲艦を見た事あるか?」
「ううん。どうして?」
提督は手を顎にあてしばらく黙って考えていたが、やがて口を切った
「親父の話では、あれは名前は無いが、姫クラスだろうと。つまり深海棲艦のボスだ」
時雨は再び息を呑んだ。あれがボス?吹雪が深海棲艦になったというのか?
「艦娘が深海棲艦に似た存在かどうかはともかく、親父はあれと似た者と出会った。1つは『港湾棲姫』と呼ばれ、もう一つは『北方棲姫』と呼ばれた姫クラスだ。深海棲艦は船をモデルとなっているらしいが、片方は基地らしい」
「基地がモデルなら厄介だね。僕達艦娘でも立ち向かえるかどうか……」
時雨は平然と答えたつもりだが、内心では怖れていた。吹雪は駆逐艦だ。姫であの威圧なら、戦艦級や空母級はどれほどの力なのか?しかも、基地がモデルとなった深海棲艦をどう対処していいのか検討もつかない
「そうらしい。名前はこっちが勝手に呼んでいるから、本来の名前は知らんがな。だが、姫クラスが目撃されたのはファーストコンタクトだけ。それ以降、2人の姫クラスを見た者はいない」
提督の説明に時雨は眉をひそめた。未来で率いた深海棲艦の司令官は戦艦ル級改flagshipだ。未来の提督では鬼・姫クラスを口にした事は一度もなかった。なのに……
「確かに可笑しい。今まではどうでもいいと思っていたけど」
「これは無視出来ない。もし、見つける事が出来れば好都合だ。もしかしたら、コミュニケーションがとれるかもしれない。場合によっては、交渉も停戦も夢物語ではなくなるだろう」
時雨は微かに笑いながら首を振った。提督はからかうな、と言っていたが、幾ら何でも冗談が酷い。深海棲艦と対話出来て停戦出来てるならとっくにやっていると
もし……もし、本当に提督が言っていた停戦が可能であるならどこまでだろうか?艦娘だけでなく、深海棲艦との共存は可能なのか?そして、艦娘は戦いだけでなく、別の道も開けるのだろうか?そうなると、艦娘が深海棲艦になってしまう危惧もなくなる。深海棲艦になった吹雪が見せた幻は、嘘ではないように思えた。証拠がないのだから
しばらくの間、時雨は悩んだが、考えるのを止めた。これ以上、考えても仕方ない。これは提督の仕事だ。僕達、艦娘の仕事ではない。ただ、ほんの少しだけ希望を持てたような気がした
おまけ
吹雪「何でよ……何で……何でこうなったの?」
時雨(落ち込むのは当たり前だね。ストーリーのためとは言え、艦娘が深海棲艦化しちゃったから)
吹雪「何で……何で深海棲艦化した吹雪(私)は、胸部装甲がデカいの!」
時雨「え!そっちを嘆いていたの!?」
吹雪「当たり前だよ、時雨ちゃん!艦これ劇場版のあれを見た!?私、改二になってもスタイル変わらないんだよ!パンチラなんてネタ扱いだよ!深海吹雪の方がスタイルいいって、私……面子丸潰れだよ!どうすればいいの、これ!」
時雨「えっと(どうしよう……僕、改二なんだけど……)」
龍譲「ほんまや!うちなんか改二になっても未だにまな板やで!漫画などで散々ネタになってストレス溜るわ!」
時雨「ちょ……2人共怖いよ」
吹雪「時雨ちゃん、いいよね(ジト目)」
龍譲「もうヤケや!うちも深海棲艦になったるわ!(ヤケクソ)」
時雨「落ち着いて……流石にこれは、フォロー出来ないから」
吹雪・龍譲「「いいよね、改二になってスタイル良くなった艦む――」」
離島棲鬼「ウルサーイ!」
吹雪・龍譲「「!?」」
離島棲鬼「深海棲艦デモ胸ノ格差ハアルワ!元カラ貧乳デアル私ハドウナルノ!?港湾棲姫ノセイデ影ガ薄カッタワヨ!出番モ暫ク無クテ、周リハ『引キコモリ』ト言ワレタワヨ!アニメヤ映画二出テ、シカモネタ扱デ有名ニナッタダケデモ御ノ字ダロウガ!」
吹雪・龍譲「「贅沢言ってすみませんでした!!」」
建造ユニット完成したと思ったら……出て来たのは深海棲艦化した吹雪
原因は、まだ建造ユニットが未熟だったとの事。お蔭で初期艦の1人である吹雪が、大変な姿に……
アニメや漫画の世界において悪落ちした女性キャラが、普段よりもナイスバディになって、魅力的な(露出度が高い)コスチュームを着るのはよくある事(多分)
艦これの場合、艦娘と深海棲艦の関係を匂わせる設定はありますが、両者比べると、深海棲艦の方がナイスバディのような気がする
深海棲艦になれば、パワーアップする上に胸も豊かになる!しかも、艦載機までつく!
改二になっても成長しなかった艦娘達、レッツ深海化だ!
離島棲鬼……?影薄かったけど、強いから問題ないでしょう(適当)
最後に深海吹雪によって幻影で時雨が見た深海棲艦の姫は、海峡夜棲姫、軽巡棲姫、水母棲姫、防空棲姫、軽巡棲鬼です