家に帰り、今まで起こった事を父親に経緯を説明したが、父親の言った言葉は風呂に入れだけだった。俺は驚いた。なぜ、風呂なのか?怪我を調べるか手当てかと思いきや、まさか風呂に入れだった。そして、時雨も異論を唱えることなく、当たり前のように「はい」と答えただけで父親に言われた通りに部屋の奥に入る
「入渠は、今で言うドックだ。彼女達のドックは風呂だ。艦娘用の風呂を造ったのにも気付かなかったのか?」
「……風呂に入って治る方が凄いと思う」
実は艦娘の運用については、未来の俺のノートに書かれていたが、どれも信じられないものばかりだ。先の補給もまさか燃料と弾薬を食べるとは思わなかった
「兵器は手入れしないと機能出来ん。有機物……生命体になった以上、別のやり方でバックアップしないと」
「見慣れるのに時間かかるな」
予備知識があったとはいえ、やはり驚いてしまう。しかしトラックにひかれて、かつ爆発に巻き込まれても服が破れて艤装が壊れるだけというのは納得しなかった
「だけど、未だに信じられないのは何でトラックにひかれてもピンピンしているんだ?人外過ぎるのも程があるだろう?」
「何言っとる?駆逐艦がトラックくらいでやられるか?当たり前だろ?」
父親から見れば、この現象は当たり前だと呆れて言われるだけだった。しかし、見た目は少女。確かに深海棲艦をやっつけてくれる頼もしい存在だが、トラックにひかれても五体満足で生きているのはなぜか納得出来ない
「その内、慣れる」
「……そうなんだ」
約4時間後、今と変わらない姿をした時雨が再び現れた。俺は再び無事を確認して安堵したのは別の話
季節が冬に入ろうとしている最中、驚くべきニュースが入って来た。何と浦田重工業がイージス艦を完成させ、しかも日本だけでなく全世界に売ろうとしているというニュースだ
『……遂に人類の希望と言われるイージス艦が完成しました。日本の技術力が、世界を救うのです。浦田社長は、帝国海軍に売却すると同時に各国の海軍に引き渡されると言う事です』
どのチャンネルもイージス艦と浦田重工業を讃えるニュースばかりだ。大本営も「これは素晴らしい軍艦だ」とばかり言っている。国民が熱狂する中、ある集団だけは違っていた。時雨と提督だった
「どうなっているの?未来に書かれている事よりも2ヶ月より早く完成している」
時雨の疑問はご尤もだ。幾ら何でも早すぎる
「時雨が着いてから未来が変わったにしてはおかしい」
歴史改変は簡単か難しいか分からない。バタフライ効果みたいに僅かな変化で未来が大きく変わるか、小川に石を投げたからと言って川の流れが変わらない。まだ行動もしていないのに、ここまで変わるのだろうか?
「分からん。考えられる事は2つだ」
父親は言葉を選ぶかのように慎重に言った
「1つは、時雨の未来と我々がいる過去の時系列が違うと言う事だ。似ているが、違う過去の世界と言う事だ」
「つまり、僕は過去に似た世界に着いたって事?」
時雨は愕然とした。これでは、仲間達を救う事にはならない。歴史改変ですらない
「もう一つは?」
時雨が反論する前に、提督が父親に聞いた
「もう一つは……時雨が現れた事で既に歴史が大幅に変わった可能性が」
父親は苦虫を噛みしめたような顔をし、時雨も提督も唖然とした。前者はともかく、後者になると厄介だ
「変わって……どう見ても最悪な方向に進んでいるだろ!どうしてこうなった?」
「分からん。なぜ、こうなったのかは?兎に角、何か手を討たなければ」
父親は部屋を歩き回って必死に考えていた。こうしている間も、テレビは浦田社長のインタビューが写し出されていた
『……おめでとうございます。どの国家も企業も完成出来なかった対深海棲艦の兵器の開発に成功しましたね。既に実験も成功したと聞いています』
リポーターは社長を持ち上げるばかりだ。しかし、浦田社長は喜びもせず真顔で対応していた。対応も会社の信頼を得るためだろう
『どうも。でも、真の成功者は浦田重工業の従業員です。誇らしいものですよ』
バックには何隻ものイージス艦が並んでいるのを見ると、インタビューの場所は港だろうか?
『しかし、帝国海軍に最新鋭兵器を売るだけでなく、各国にも売却するという方針ですか?』
『その通りです。今は国家が対立する時ではないのです。ただ、イージス艦を操艦出来ると思われる国のみ売るつもりです。既に候補は上がっていますし、相手国も連絡済みです』
余りの手際良さだ。テレビを見ていた時雨や提督だけでなく、社長の隣にいるリポーターも驚くばかりだ
『それでは、噂は本当だったのでしょうか?政界進出もお考えで?』
リポーターの質問に浦田社長は、初めてにこりと笑った
『議論よりも行動です。なので、私は国会議事堂には行きません』
浦田社長はカメラの方へ向けると喋り始めた。まるで、宣言するかのように言い放った
『皆様はご存知でしょう。政府や大本営は、常に議論ばかりしているだけで行動が遅い。官僚の悪い所だ。その他にも得体の知れない市民団体は、愛国心だの平和だの言っていだけで騒ぐだけの政党か某国の操り人形だ。決してバカにしているのではないぞ。操り人形にしては、よく働いている。それに対してわが社は机上でやり合うのではなく、行動を起こしたまでの事。どちらが優れているか、既にお判りでしょう。多国籍軍の敗北、そして深海棲艦と戦って命を落とした人達に顔向け出来ない。私なら出来る。この最新鋭兵器、イージス艦で。これが日本の、そして世界の未来なのです』
この後、浦田重工業の本社では、一部の政治家からは勿論、極右や極左の団体から抗議の電話が鳴り響いたというのは別の話
(イージス艦……どうやって手に入れたか知らないが……まるで自分の手で作ったような言い方じゃないか)
提督は不機嫌だった。アイオワによって書かれたノートには、別世界とは言えアメリカが開発した兵器だ。なのに、まるで自分達が造ったような言い方をしている事に、不満だった
一方、父親は時雨にある提案を持ちだしたが、時雨は余り乗る気にはならなかった
「いいか、こちらも艦娘計画が成功したと大本営に伝える。これなら、出来るじゃろう」
「でも、建造ユニットは完成していない。嘘がばれたら終わりだよ」
父親曰く、デモンストレーションで艦娘が深海棲艦を倒す光景を見せるという訳だ。では、肝心の艦娘はと言うと時雨である
「建造ユニットはもう少しだ。このままだと、深海棲艦はイージス艦の技術を自身に取り込むじゃろう。ライバルとはいえ、科学技術が盗まれるのには耐えられん」
「分かるけど、上手く行くの?」
このままだと深海棲艦は浦田重工業を襲い、軍事技術が盗まれるだろう。相手が相手だ。諜報という生温い手段ではなく、力ずくで奪われるのだ
「ワシが大本営のお偉いさんと話す」
「海軍大将と話しても無意味だ。ノート見ただろ?」
話を聞いていた提督は呆れるように言った。未来のノートに書かれている海軍大将は、艦娘が最新鋭兵器を持つ深海棲艦に敗北すると本性を露わにした。元々、浦田重工業を絶賛していた人だ。自慢の軍艦が訳のわからない勢力に一方的にやられば、新たな軍艦が欲しいと思ったに違いない
だが、提督の予想とは全く違っていた
「海軍大将ではない。統合参謀長の元帥だ。士官学校では先輩だった人だ」
「統合参謀長って……最近、出来たばかりのポストじゃないか。凄い」
時雨はともかく、提督は驚くのも無理もない。アメリカでは、陸海軍そして最近になって創設された空軍を統括する統合参謀本部議長に値する。一方、日本では陸海軍はとても仲が悪かった。いや、ただ仲が悪かったというものではない。何しろ、国防予算の分捕り合戦から新兵器開発の角逐が凄まじく、深海棲艦との戦いも、海軍は国内でもう一つの相手と戦っていると言われたほどだ。一部の人では、アメリカのような指揮統括するという話は上がっていたが、思うように実現出来ない。最近になって目が覚めたのかようやくポストが出来たが、果たして効力はあるのかどうか
「今は元帥になっておる。あいつは艦娘計画を容認していたが、海軍大将を始めとする多くの将官は大反対してな。そこなら、話は……」
「でも、多数決で反対されたら意味ないだろ?」
「いや、未来のお前でも会っている。深海棲艦が米英を攻撃している時期だ。お前の要求が、通った時にいた」
そう言えば、ノートに米国軍人と共に訪れたと記述があったような。艦娘計画のノウハウを輸出しようと持ちだしたと書かれていた
「元帥は柔軟な人だ。ワシが艦娘計画が成功したと伝える」
父親の発言に、時雨も提督も顔を見合わせた。まだ、建造ユニットは完成していない。父親が何を考えているのか検討がついた
「おい、まさか時雨を建造艦として紹介させるのか?」
「僕は別にいいけど、完成していない事がバレてもいいの?」
未来から来た時雨を『建造した艦娘』として紹介するというプランだ。これなら、時間は稼げるかも知れない。だが、最善とは言い難い。もし、元帥が「建造する様子を見せてくれ」と言われたら終わりだ
「だが、他に方法が思い浮かばない。信じてくれ」
父親の提案に時雨も提督も渋々と容認した
とある喫茶店では、賑わっていた。決して有名店ではない。しかし、デートで来る男女や帰宅途中に寄り道して入る学生達などが多くおり、客足はあった。雑談で騒がしい店内に、ある席だけは静かだった。その者は軍服を着ており、階級は元帥だ。だが、護衛も部下もいない。元帥はため息をつくばかりで、注文した和菓子とコーヒーが着ても、手をつけようとしない
最近は頭の痛いばかりの事が起こっている。彼の仕事は、軍を統括する指揮官である。馴染みやすく言えば、組織を束ねる重要なポジションと言えばいいのだろう。元帥という軍のトップに就いたものの、仕事にやりがいがない。それどころか陸海軍との間でいがみ合う事態までなって来ている。これは流石に不味い。命令系統が機能していない組織ほど弱く脆い。相手が敵国だったら、この期を逃さず攻撃されていただろうが、幸か不幸か相手は正体不明の軍団である。流石に、正体不明の軍団である深海棲艦に対して今のままのやり方は不味いため、統合参謀長というポストを作ったが、組織と言うのはそう簡単に変わる訳ではない
幼い頃、昇進して組織を率いて国を守る立派な組織の長になりたい、という入隊していた頃の気持ちは何処へ行ったのだろう?もう定年までこの管理職でやっていこうという諦めがあり、今では軍を辞めて政界進出に就きたいという意欲すら失われた。政治家になっても得は何一つない。あるとすれば、威張れるくらいだ
頭痛の種は、軍内部だけでない。外部からだ。特にあの浦田重工業という民間企業。あの企業はどうやってやったか知らないが、浦田重工業に味方をする者が沢山いる。軍内部ならともかく、政治家や他社の軍需産業どころか海外まで手を伸ばしている。工業力や技術力が飛躍的に向上したのはいいが、幾ら何でも上手く行き過ぎている
そして、浦田重工業は考えられない事を提案したのだ。それは、最新鋭兵器であるイージス艦を他国に売却するというものだ。普通、苦労して開発した最新のハイテク兵器を気軽に売る国はいない。だが、浦田重工業は違った。ハイテク兵器であるイージス艦を軽々と欧米に売ろうとしていた
元帥は海外に兵器売却を止めさせようとしたが、浦田重工業の社長は聞く耳を持たなかった
「幾ら何でもやり過ぎだ。深海棲艦を倒すためとは言え、他国に武器を売ろうとするなんて。もし、米国が裏切って日本に攻撃する可能性が――」
「可能性?それはありませんよ。米国も太平洋や中国大陸を手にするどころか、自国の分裂に危機感を持っている。噂では、南北戦争がまた起こるとの事です」
大本営の作戦会議室で浦田重工業の社長を呼び出したが、議論は平行線だった
「しかし、国会の承認なしで最新のハイテク兵器を売るのは不味い。深海棲艦を倒したとしても、次の時代は最新鋭兵器を使った人類同士の戦争だ。貴社の兵器は、確かに素晴らしい。だが、やっている事は敵に塩を送るようなものだ」
元帥の考えはある意味、正しい。深海棲艦を撃破出来ても、待っているのは人類同士の戦争だろう。世界大恐慌が襲い、更には欧州では不可解な事件がいくつも起こったため、欧州は情勢が不安定だ
「その心配はありません。対策済みです。それに何より、多国籍軍の仇を討つ絶好のチャンスだ。決行する」
「いつから米国やソ連などの列強国が、紳士的で真に平和を愛する友好国だと思っている?奴らの国々は、猫を被った狼だ。隙さえあれば、こちらの有利に立とうとする国ばかりだ。深海棲艦のお蔭で、圧倒的な工業力を持つ米国との軍事衝突は免れたが、将来起こらないという保証はない」
元帥は考えられる最悪の事態を述べたが、浦田社長は呆れ顔で聞いている始末だ。普通はそんな態度をすれば罵倒されるか殴られるかのどちらかだが、残念ながらその場にいる海軍大将や陸軍大将などの将官は元帥の味方ではない。浦田重工業の味方をしている
「浦田重工業は民間企業だ。『ハイテク兵器を外国に輸出してはいけない』という法律はあるですか?この議論もバカバカしくて話になりません。そもそも、あなた方は日本のために何か貢献したのですか?世界大恐慌の危機から救ったのは誰です?軍の暴走を止めたのも?疫病による差別を無くしたのは誰です?貴方ではない。わが社だ。日本を心配するのは結構ですが、国の方針が酷いとしか言い表せない」
浦田社長は、ポケットから紙を取り出すと読みだした
「また軍が所有する軍事技術が劣悪だった事に、私はあきれ果てました。他にも精神論で何とかなる、熟練の技術者を一般兵士にさせる、私刑が多数ある、予算の奪い合いなど。私は言いましたよね。そんな夢物語やプライドみたいな非現実的な思考よりも科学力を向上させた方が日本を豊かにできると。威張った所で、相手が負けを認めますか?わが社が経営している民間軍事会社の力は、御宅らの軍隊よりも強い。演習で身に染みたでしょう。米国と戦争しなくて良かったです」
社長の嫌味の発言に、元帥は顔をしかめた。浦田重工業は何もモノ作りの会社ではない。警備会社を経営している。民間警備会社は聞こえがいいが、実体は民間軍事会社であり常設軍である。しかし彼等が持つ兵器は、どれも目を見張るものだった。演習に参加した陸軍の師団や海軍の陸戦隊が、蒲田警備会社の一部隊にコテンパンにやられたのだ。更に、治安維持など成果を上げているため、若い人達は軍ではなく、浦田重工業が経営する民間警備会社に入る者が多かった
帝国軍のプライドを踏みにじった浦田重工業のやり方に軍は怒り狂っていたが、今ではほとんどの者は浦田重工業にべったりである
どうやって頭の固い軍の上層部を味方にしたか?その答えはシンプル。金である。「金の切れ目は縁の切れ目」と言われる事もあるが、その逆もある。賄賂、新兵器、科学技術などを帝国軍の将官や兵士達に流していたのだ。初めは浦田重工業の兵器を持つ者の処分、つまり魔女狩りのようなものが行われたが、最先端の科学技術と金の力の前には敵わなかった。国体の否認を目的とし、共産主義活動などを抑圧した治安維持法も、浦田重工業のやり方にはほとんど通用しなかった。浦田重工業に同調する者は警察や特高だけでなく、軍内部どころか政治家まで浸透したのだ。これでは、機能しないのも当然である
元帥は歯を食いしばると、強気の姿勢で言い放った
「いいか。これ以上、国の命令を無視するなどと――」
「元帥殿。浦田重工業は、何も反体制勢力でも非国民の集まりでもありません。日本を発展させた企業が、米ソのスパイである訳がありません」
今度は海軍大将が、なだめるように言って来た。元帥は、言葉を切り辺りを見渡した。海軍大将の意見に頷く者が多かった。同期や後輩である将官までもだ
「よろしい。では、12隻のイージス艦隊を二分割させます。第一艦隊は早速、深海棲艦の巣であるトラック島とハワイに向かわせます。ワームホールの地点を制圧したのが確認された後に、第二艦隊は米国に向かわせます」
浦田社長は、立ち上がると扉の方へ歩いていく。まだ会議中であるが、浦田社長はお構いなしだ。にも拘わらず、周りは誰も止めようとしない
「それは国会が――」
「私が承認する!私は帝国軍人ではない!」
元帥が立ち上がったが、浦田社長は話は無用とばかりに話を終わらせる。浦田社長が去ると、周りの将官までも立ち上がり帰ろうとする
「お前達!いくら日本に貢献したからと言って、こんなやり方を見過ごすのか!」
「元帥殿、時代は変わったのです。これからは、議論よりも行動ですよ」
海軍大将はあっさりと言ったが、浦田社長のフレーズをそのまま言っただけである。元帥の威厳は、既にないのも同然だった
「くそ!」
元帥は数時間前の会議を思い出し、イラつき机を叩いた。コーヒーと和菓子はこぼれなかったが、皿やカップは大きな音を立てた。元帥のイラつきに何人か振り向いたが、直ぐに目を離す。彼等からしてみれば、ただの中年の軍人が仕事で何か嫌な事があっただろうという事だけしか見えない。軍人というのは、特殊な仕事という訳で市民がそこまで畏まる事はない。そんな元帥の所にある人が近づいてきた
「お久しぶりです、元帥殿」
「中将……いや、大佐。君とはもう合わないと思っていた」
提督の父親である博士は、この時は軍服を着ていた。ただ、本来あるべき中将の階級章はなく、今は大佐をつけている。博士は座ると元帥は真っ先に言った
「1分やる。連絡をしたからには何か重大な事だろうな?」
「では、単刀直入に言います。『艦娘計画』の再考をお願いします。計画さえ成功すれば、深海棲艦を倒す事が出来ます。ですから――」
「もういい。その計画は凍結された」
元技官の説明に元帥は口を挟んだ。いや、元帥は予測していた。大佐の話は、大抵これだけだ
「いいか、先輩として言わせてもらう。もう無理だ。大本営は、そんな魔法やおとぎ話よりも科学や物理学である最先端の兵器を選んだ。もう諦めるんだな」
元帥は軽い吐息とつくとコーヒー飲んだ。そう、『艦娘計画』が凍結されたのは既に決定された事だ。以前もそうだった。艦娘計画を提唱した中将は、『狂人』という烙印を押されてもしばらくは粘ったが、妻と息子が去ると抵抗はせず素直に処分に従った。風の噂では密かに研究をしていると言われているが、支援もなしで研究なんかできる訳がない。話を切り上げようとしたが、相手は思いがけない事を言った
「艦娘計画は成功しました」
元帥は、口からコーヒーを危うく噴き出すところだった。何とか呑みほすと男性の前に目を移した
「な、何?」
「本当です。実験は成功です」
元帥は信じられない顔をした。提督の父親である大佐は、余りの呆気ない顔に笑い出しそうだったが、彼は上司だ。顔を出さずすかさず進言した
「建造出来たのは、白露型の駆逐艦娘、時雨です。残念ながら、試作段階である建造ユニットは、システムダウンしてしまいましたが、修復は可能です」
「そうか、それはおめでとう」
大佐は、眉をひそめた。褒めるには、余りにも素っ気ない言葉だった
「元帥、どうかご再考を」
「大佐、すまない。先程言った通り、大本営は浦田重工業の兵器を選んだ。既に深海棲艦の巣であるトラック島やハワイに向けて、出港準備中だ」
元帥は首を振ると、ウェイトレスに追加注文を頼んだ。大佐は焦った。このままでは、破滅の未来の二の舞いになってしまう。深海棲艦は最新鋭の技術を手に入れ、艦娘は海に沈められる。息子は責任に押し潰されて自殺してしまうだろう。これでは、未来からの警鐘が無意味となってしまう
「元帥、ワシ……いえ、私は深海棲艦を倒すために研究しました!それを――」
「大佐の気持ちは分かる。だが、これは決定事項だ!」
元帥は力強く言った。大佐は注文したコーヒーが来ても、飲まずに粘り強く言った
「元帥!あんな企業を国防まで任せる気ですか!確かに私の研究は欠点ばかりだ!しかし、あの兵器は浦田重工業以外に造れるのですか!嫌な予感がします!」
父親はノートを読んだが、深海棲艦がイージス艦を含む浦田重工業が持つ軍事技術を奪われた事しか知らない。しかし、残念ながら、それはまだ起こっていない
「大佐、誹謗中傷は控えろ!諦めるんだ!」
提督の父親は、俯き目を泳がせた。だが、元帥は慰めもせず、和菓子とコーヒーを平らげるとある言葉を言った
「大佐……これは先輩である個人の話だ。……今更……いや、大分前からあの企業のやり方に不信感はあった。現在、ある極秘部隊に調査を依頼している。だが、期待はしないでくれ。何か言いたい事は?」
「極秘部隊?」
大佐はポカンとした。元帥は……いや、先輩は何をしているのだろう?
「大佐、敵は外だけではないという事だ」
元帥の威圧に大佐は委縮した。彼等は幼い頃、士官学校で学んだ。そのため、上下関係は今もしっかりとしている
「ワシの推測では……浦田重工業は何か企んでおる……だが……」
「元帥に向かってタメ語を使うとは、随分と舐められたものだな」
大佐は慌てたが、元帥は気にせずにメモ帳に何を書き記した
「結構。コーヒー代はこちらが払う。それでは、失礼する」
元帥は立ち上がり、店から出る。残った提督の父親は、落胆はしていなかった。昔からとは言え、長年の付き合いの人間である
(やはり、あいつも……)
極秘部隊が何なのか検討もつかなかった。しかし、元帥は何かしら調査している事だけは確かだった
その極秘部隊こそが、『艦娘計画』を支援していると聞かされたら驚いていただろう。だが、元帥はその事を大佐に言わなかった。賄賂に似た行いを口にする訳にはいかないのだから
おまけ
提督「やっぱりおかしい。手足を吹き飛ばされるなどの大怪我をしても風呂に入れば完治するのはどうも……」
サイタマ「そうか?筋力トレーニングしていれば、どんな敵でもワンパンで片づける程の力を手に入る事が出来るから」
コブラ「毎朝コーンフレークを山盛り2杯食べていれば握力500kgだせたり、片手で2トンの金塊を持ち上げられるから」
(モンハン)ハンター「人が死ぬような攻撃を食らってもベットで寝れば治るだろ?傷だって回復薬を飲めばすぐに回復する。不思議がる事は無い」
ルーデル「朝起きて牛乳飲んで、朝メシ食って牛乳飲んで体操して出撃して、昼メシ食って牛乳飲んで出撃して、晩メシ食って牛乳飲んで出撃して、シャワー浴びて寝るという毎日を送れば、戦車を約数百両以上も撃破出来るって」
提督「よくよく考えて見ればおかしくないな。うん。戦争や争いが起きれば、人外が現れるのも無理ないか」
時雨「別にいいけど、僕達艦娘よりも人外の人達と比べないでくれない?後、最後の人はちょっと違う」
何やら不穏な動きが……
陸海(空)軍の仲の悪さは、世界の軍隊を見渡せばよくある現象です。しかし、旧日本軍の陸海軍の仲の悪さは凄まじいものです。予算分捕りから新兵器開発まで火花を散らし、連合軍と戦うほかに国内でもう1つの相手と戦っていると言われたほどです
流石に今の自衛隊ではそんな事はしていませんが、四軍を指揮統括するアメリカの統合参謀本部議長にあたるポストはありません。……まあ、アメリカはああいう国ですから。と言うのも、陸海空軍それぞれ高度に特化された戦力を持っているため、陸軍(陸自)の指揮官が海軍(海自)や空軍(空自)の指揮を取る訳には行きません。軍事作戦する際に陸海空軍の総合戦力を編成する必要があるため、指揮系統の設定も格段に難しくなります
本作品では元帥は陸海軍を指揮統括しています。と言っても、一枚岩ではなさそうです。おまけに浦田重工業のお蔭で混乱しています
艦これSSでなぜか良くあげられる艦娘人外説。でも戦争や争い事が起これば、人外は誕生すると思います。サイタマ(ワンパンマン)もコブラ(COBRA)もハンター(モンハン)も過酷な環境に生きていけば人外になれます。現実だっていますから(ハンス・ウルリッヒ・ルーデルなど)