時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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第5章 真実と虚偽
第43話 時雨が見たもの


 人間関係とは分からないもの。強い絆があれば、どんな困難な事でも打ち勝つ事が出来る一方、相手が油断した隙を狙って裏切る事もある。家族ですら、何かしらトラブルはある。相手とのコミュニケーションを取るにも、それが真の友好関係なのか、上下関係なのか、それとも利用され騙す人なのか。未来の提督は、人との付き合い方をよく教えていたらしい。尤も、それはゲリラと避難民との区別をつけるためである。しかし、コミュニケーションというのは、マニュアルのように決まり事は余りない。艦娘である僕にはあまりよく分からない。ただ、これには経験と言葉で見分けなくてはならない

 

 犠牲や責任という重い覚悟の上で世界を救おうとした提督。仲間が捕まったり、撃沈され非難を浴びても最後までタイムスリップを実行した提督。時雨や艦娘にとって唯一の味方と思っていた人間の司令官。最新鋭兵器のせいとは言え、敗北し続けた提督に不満を持つ艦娘は少なからずいた。時雨も心の何処かでもっとマシな提督がいれば戦局を変わったかも知れないと思っていた。浦田重工業の社長みたいに最新鋭の軍事技術を提供し、深海棲艦を殲滅するために国の機関や軍の上層部に顔が利くのような人が良かったと思いもした。しかし、それは理想であり、上辺だけだった

 

 

 

 浦田重工業は人類の救世主を気取っていたが、実際は世界を支配するための手段に過ぎなかった。僕達艦娘には理解出来ない考え。そして、僕達艦娘を利用した企業だった。

 

 

「さあ、起きろ!」

 

 男の怒鳴り声で目を覚ます時雨。時雨はまぶたを開きながら、何があったのか分からなかった。深く眠っていたらしい。僕は……一体……。だが、先ほどの出来事を思い出して、ようやく事態を把握した。僕は……捕まっているんだ!

 

「早く出ろ!ようこそ、浦田会社へ!」

 

「離して!」

 

 時雨は抵抗しようと武装した警備員の手から逃げようとしたが、自分の両手は手錠をかけられている。艤装もないため、今の彼女は女の子と変わりない。呆気なく捕まった。警備員は時雨をまるで、ゴミを放り出すからように車から引きづり下ろされ、時雨は地面に倒れた。

 

(ここは……一体……)

 

 立ち上がりながら、時雨は辺りを見渡す。ここは何処だろう。目の前のコンクリートの建物と塀以外は、平野と海岸が広がっているだけで何もない。街どころか人もいない。あるのは軍用車両と警備員だけだ

 

「何を見ている!?とっとと歩け!」

 

 怒鳴り声と共に後ろから押される。時雨は転びそうになりながらも歩いた。今の自分は、倒すどころかここから脱出することも出来ない。警備員の指示に従うしかなかった

 

「提督はどうしたの!?」

 

「しゃべるな!」

 

 質問しても録な答えはしてくれない。時雨をまるで、犯罪者かのような扱いをしている。時雨は未だに事態を理解出来なかった。何を考えているのか?時雨は、建物を観察した。まるで監獄か何かに見えたが、何の施設なのか検討もつかない。門の前に掲げている看板には浦田重工業の名前と「関係者以外は立ち入り禁止」しかなかった。建物のてっぺんに浦田重工業のシンボルマークがかかれた旗がはためいていた。そして、玄関先にある人物二人が待っていた。それは……

 

「あああー!」

 

 怒りの叫びを上げながら突進する時雨。警備員に取り押さえられ地面に伏せられても、時雨はその人物を睨む。その人物は、女の子が酷い目に合っても気にしていない。むしろ、楽しんでいるようにも見えた

 

「おお、怖い怖い。兵器の擬人化というのかな?こんな小娘が深海棲艦を撃破出来るなんて信じられんな」

 

「提督は……提督はどうしたの!」

 

浦田社長は時雨を見下し、時雨は歯を食い縛った

 

「提督……?あの狂人の息子か?監禁している。お前の返答次第で彼の命は消えることになる」

 

 時雨は銃を突きつけられ、警備員に押さえつけられても、身をよじりながら何とかして抵抗する時雨

 

「お前が……僕達を……」

 

時雨は、その後に続く言葉は口から出なかった。全ての元凶が、目の前にいることを

 

「社長、こんな標的艦に見せるのですか?秘密事項ですが?」

 

「その通りだ」

 

浦田社長の隣にいる秘書は問いただしたが、浦田社長は肯定した。

 

(標的艦?)

 

 この秘書、僕を標的艦と。未来の深海棲艦が艦娘達の事を『標的艦』と蔑称していた。なぜなら、ミサイルと呼ばれる兵器で簡単に倒されていたからだ。それに加えて、捕まえた艦娘を面白半分撃沈させられた。しかし、目の前にいる秘書は、深海棲艦ではない。そして未来の状況を知らないはずだ。時雨は信じられない顔で秘書を見たが、その秘書は頑として時雨を見ようとしない

 

「お前は運がいい。返答次第では、雇ってやってもいいぞ。……開けろ」

 

社長の合図で建物の玄関が開き始めた。自動式らしい

 

「僕に何を……」

 

「一緒に来い。私の計画を教えてやろう」

 

社長は建物の奥に入り、秘書はその後に続いた。この建物は何なのか?

 

「さあ、立て」

 

 取り押さえていた警備員は、時雨を強制的に立たせる。時雨も後に続いた。よろよろとよろめきながら必死に考えていた

 

 

 

浦田重工業が……日本を……世界を……僕たち艦娘を……

 

 

 

「さて、君はこう思っているだろう。大企業がなぜこうするかを。目の前にいる社長は正気ではないと。いいや、私は正気だ。これは必然なのだ」

 

「どういう意味……?僕達は……侵略してくる深海棲艦をやっつけるために……」

 

「あー、その綺麗ごとは要らない」

 

社長は立ち止って振り向き、冷たく言った。まるで僕を嫌悪するかのように

 

「だから大日本帝国海軍の兵器は、嫌いなんだ。綺麗事なんぞ、バカでも言える。その世界のスローガンを都合よく捻じ曲げ言っているのか。お前を造った男は、そんな理想を掲げていたのか。お前は騙されているんだよ」

 

「違う!」

 

 時雨は即座に否定した。短い期間だが、博士は……提督の父親がやっていたことは決してそんな人物ではない!日本のために艦娘計画は造られた!

 

「何を言っても無駄か。これだから軍隊というものは。特に軍人は頭が固い。と言う事は、艦娘も同じか。固定概念にこりかたまっている。経験も学ぼうとしない」

 

 浦田社長は蔑んだ目で時雨は見た。一方、時雨も分かっていた。この人に何を言っても無駄だろう。浦田社長は、時雨をこちら側……つまり、浦田重工業に仕えて欲しいという思惑があるのだろう。しかし、浦田社長の誤算は、時雨は右も左も分からない若造と捉えている。まさか、歴戦の艦娘だと思っていないだろう。だが、自分は浦田社長の計画によって破滅した未来から来ました、という訳には行かなかった

 

(何とかして浦田社長を説得しないと)

 

 浦田社長はどういう考えで恐ろしい計画をしているか知らないが、この人の考えを改めれば世界は救われるかも知れない。やってみる価値はある。場合によっては、自分が経験した事をねつ造して伝えればいい。浦田社長の企みは、本当に深海棲艦の反逆によって滅んでしまったと。戦わずにして歴史改変出来るかも知れない

 

 

 しかし、時雨は甘かった。浦田社長は、時雨が考えている以上に綿密で冷酷な計画である事に

 

 

 

 建物に入り、長い廊下を歩いていく一行。時雨は警備員に従って歩いている。あちこち体が痛むが、拘束され艤装が没収されている以上、どうする事も出来ない。エレベーターに乗らされ、地下へ行かされる。時間は長いため、深いかも知れない

 

「何処へ連れて行くの?」

 

「君を雇いたい」

 

 時雨は耳を疑った。この男は何を言っているんだろう?時雨はキッとして睨んだが、浦田社長は時雨の怒りを平然と受け流していた

 

「やれやれ、君は深海棲艦のように素直に従う事が出来ないのか?」

 

「何言われても、僕は君の命令に従わない!」

 

 時雨は再び襲いかかろうとしたが、当然警備員に取り押さえられる。そんな時雨を浦田社長は鼻で笑った。丁度その時、チンという鐘の音が聞こえたと同時に、エレベーターの扉が開く。歩哨していた警備員が、浦田社長の姿を認めると敬礼した

 

「さあ、ここが私の秘密基地だ」

 

 浦田社長は廊下を歩き始め、その後に秘書、時雨と続く。勿論、警備員が時雨をしっかりと監視している。廊下には、窓がいくつもあり、窓の奥には想像を絶するほど広かった。そこには……時雨は信じられないものを見た。

 

 居たのは、何と深海棲艦と人間である。深海棲艦は人を襲うが、そこにいる深海棲艦は人を一切襲っていない。それどころか、人の命令に従っている。しかも、この動きは……

 

「ぐ、軍事訓練?」

 

「そうだ」

 

 時雨は信じられなかった。深海棲艦は浦田社員の指示に従って軍事訓練を行っていた。戦艦レ級や重巡リ級などは射撃訓練や格闘訓練をしており、空母ヲ級や軽空母ヌ級は艦載機を使って飛行訓練をしている。中には、作戦会議まで開いて深海棲艦に教えている者までいる

 

「何で襲われないの?」

 

 時雨は混乱した。一体、何がどうなっているか分からなかった。深海棲艦は人を襲うはずだ。にも拘わらず、ここにいる深海棲艦は、人を襲うどころか人から学習している

 

「君が慕っている博士のお蔭だ」

 

「どういう意味?」

 

博士……提督の父親のお蔭?しかし、社長は笑みを浮かべるだけで再び歩きだした

 

 次の窓の向こうは、別の部屋だった。こちらは人間の軍事訓練だった。巨大な兵器まである。しかし、時雨は立ち止まり、信じられない目で見た

 

「何を見ている?早く歩け!」

 

 警備員の怒鳴り声で再び歩く時雨。しかし、時雨は警備員の怒りよりも軍事訓練を受けていた人達が持っている武器と兵器が気になった

 

(何で『あれ』があるの?)

 

 そう、あの武器は……あの兵器は……未来のゲリラ達が使っていた武器と似ていた。いや、兵器そのものだった。あの兵器は……反艦娘団体が艦娘達を攻撃するために使った地対艦ミサイルと呼ばれるだった

 

 長い廊下を黙々と歩く一行。窓の向こうにある部屋にはいろいろなものがあったが、どれも軍事訓練ばかりだった。ここは、軍事施設なのか?看板には、そのような事は一切なかったが。そして、大きな扉にたどり着いた

 

「手錠を外せ」

 

 扉を開け、入ろうとする直前に社長は言った。時雨の両腕は、解放された。そこは、応接間だろう。ただ、デスクだけでなくモニターや飾り物がたくさんあった。飾り物はたくさんの航空機のプラモデルだが、時雨は息を呑んだ。最新鋭兵器を装備した深海棲艦が持っていた艦載機と同じだった。違う点は、機体のカラーだけだった。しかも、プラモデルの台座には名前がそれぞれ刻まれていた

 

「F/A-18E……スーパーホーネット……」

 

よく見るとたくさんあるプラモデルの内、3つは知っている。

 

「私のコレクションが気に入ったかね?それは、未来の兵器だ。音速を突破し、離れた所からミサイルという兵器を発射させる。まあ、君のような艦娘は、もうじき拝む事になるがな」

 

 時雨は信じられない目でこちらを見た。もう、これらの恐ろしさは身に染みていた。あの一航戦の赤城加賀のプライドをズタズタに引き裂いた兵器だ。なぜ、この男は知っているのか?

 

「その顔だと信じられないという風な顔だな」

 

「どうやって深海棲艦を従えているの?なぜ、世界を攻撃するの?どうして!?」

 

 警備員に止められも、時雨は浦田社長に突っかかっていく。しかし、浦田社長は秘書を下がらせると椅子に座った

 

「質問が多い。だが、答えられる。観艦式で話したかと思うが、私は貧しかった。私の父は、日露戦争で戦死。母親は、一日中働いていていた。幼かった私は、親戚に預けられたが、厄介払いだった。親戚は、私に対して禄な扱いをしてくれなかった。私には妹がいたが、若い頃に自殺した。トラック島で水商売していたからな。学校ではいじめられ、卒業しても水商売しか職を手にできなかった。自分の人生に耐えられなかったのだと思う。しかし、私はチャンスを掴んだ」

 

 社長はそこまで話すと警備員がついでくれたお茶を呑んだ。時雨はただ黙って聞くしかなかった

 

「学校に通えなかった私は、稲作をする事にした。だが、ある日のことある天災で田んぼは全滅。私が絶望したが、それと同時にチャンスを掴んだ。知識と真実を手に入れた」

 

 時雨は何を言っているか分からなかった。だが、浦田社長は天災というものが、彼自身を変えたと思った

 

「それを使って国を変えようとした。私のような貧乏人や格差を無くすため、国を豊かにし、世界に誇れる日本を目指すため。インフラ整備や工業力の底上げ、大震災や世界大恐慌など迅速に対応をした。しかし、所詮は国は国だ。政治家共は自己保身と国益しか見ていない。国に反発する共産党などといった輩にも接触したが、彼等の頭は能天気だ。話にならない。2、3分の話を聞いただけで帰った。しかも、世界は戦争を起こそうとしている。私は失望した。何処の世界でも政治家という人間は無能だと」

 

 浦田社長からは、苛立出し気に話している。彼自身、世界を変えようと動いていた。だが、失望していた

 

「だから、私は政界進出はしない。会社経営し、世界を見て分かった。はっきりさせよう。私は世界の問題を必ず解決させる。まず、手を付けなければならない問題は、この世界を変える事だ」

 

「それが、深海棲艦を使って攻撃させるのとどう関係してるんだ!?」

 

 時雨は吠えた。浦田社長の言っている事は、間違っていない。しかし、やり方が酷過ぎる。世界大戦を回避する方法が、世界を攻撃するなんてもってのほかだ。浦田社長はため息をつくと再び話し始めた

 

「この世界は、似て似つかない。深海棲艦が現れた時、私はこれをチャンスと見た。通常兵器が一切効かない化け物こそ理想的な兵器だと」

 

時雨は困惑した。あれが理想的な兵器?どういう意味だ?

 

「分からんのか?あいつらは、通常兵器なんて一切効かない。つまり、一方的に攻撃する事が可能だ。考えても見たまえ。あいつらを操ると言う事は、世界を握ると同じ事だ。地球の海の割合は、約7割らしい。これがどういう意味なのか。いくらバカな人でも分かるだろ?」

 

 時雨はゾッとした。深海棲艦の戦力は、確かに計り知れない。しかし、同時に時雨は疑問に思った。なぜ、深海棲艦は陸を攻撃して人間を滅ぼさないのか?だが、その答えは浦田社長が次のように言った

 

「しかし、残念ながら深海棲艦は人間社会なぞ興味はない。当然だ。知能の問題ではない。思考能力や概念が、人とはまるっきり違う。イルカは知能が高いが、人間みたいに物を発明したり、陸に上がって列車の切符を買って旅行したりするか?いや、しない。それと同じだ」

 

 確かにそうかもしれない。もし、深海棲艦が人間のような思考能力があったら、たちまち世界を支配していたかも知れない。陸に上がり、世界を征服すれば人類を奴隷のように扱うことだってできたはずだ

 

「どうやって深海棲艦を調べたの?」

 

「お前を作り出した『狂人』のお蔭だ。彼が造ったレポートを読んだまでの事よ」

 

 時雨は愕然とした。博士が?確か提督の父親は、浦田社長の支援の下で深海棲艦を倒す方法を探していたはずでは?

 

「博士から聞いたよ。深海棲艦を倒すために支援したと」

 

「ああ。支援したよ。周りは嘲笑ったが、それは上層部などの人間は知識が乏しいからだ。私は評価したぞ。特に記述内容が、素晴らしかった。僅かなサンプルであそこまで深海棲艦を調べ上げるとは」

 

浦田社長はニヤリと笑った。その笑みはまるで、悪魔が笑うかのように見えた

 

「艦娘計画を除けば、深海棲艦の行動や知能は、大まかに把握した。同時に操る方法もな」

 

「どういう意味?」

 

 時雨は混乱した。あれを操る?薬か何かで使ったのか?『艦だった世界』では、兵士達がよく薬を使っていたと聞いた事がある。

 

 時雨は知らないが、実は軍隊では兵士の士気を揚げるため、恐怖心をやわらげるために麻薬が使用されたケースは古今東西、何処の軍隊でもある。旧日本軍ではヒロポンとして有名だが、米軍では兵士たちの注意力を高めるため覚醒剤(別称、スピード)を配布していた

 

 時代をさかのぼれば、古代ギリシャでは戦争の恐怖を忘れるため、兵士達にアヘン入りのワインを配布し飲ませたという記述がある。また、近年ではベトナム戦争において米軍は、アンフェタミンと呼ばれる覚せい剤が飴のように配布されたとの事だ

 

 しかし、時雨は即座に否定した。薬を使うにしては変だ。第一、どうやって投与したんだ?

 

「どうやら、お前でも分からないらしいな。深海棲艦には姫や鬼と言った上級個体が確認されている。つまり、軍隊で例えれば司令官という訳だ。しかも、想像を絶する程、強い。駆逐艦や重巡などは、姫や鬼の命令には絶対だ。いわば、アリやハチの女王みたいなものだ」

 

 ここまで聞いて時雨は、嫌な予感がした。未来の深海棲艦が姫や鬼級が居ない理由が分かったような気がした

 

「アリやハチでは、性別や役割に応じているらしい。深海棲艦の場合だと、強さや役割、そして知能が高いと言う事。駆逐イ級は、低能で弱い。役割もしれている。では、鬼や姫級はどうか?」

 

「つまり……君は……深海棲艦の鬼や姫級を……倒したって事?」

 

 時雨は声が掠れていた。深海棲艦のボスと呼べる鬼や姫級を倒したらしい。信じられないが、浦田社長は無言で頷いている

 

「私はワームホール付近の海域に特殊な機械を設置した。深海棲艦が嫌がるような装置だ。それらも『狂人』のレポートを参考に作った。まあ、その論文も国は鼻で笑って相手にしなかった。奴らは、ワームホールをくぐりこの世界に来ることはないだろう。この世界に残った深海棲艦は、その装置に近寄る事も出来ん。攻撃も射程範囲外だ。造るのに、金は掛かったが。もう、これ以上の鬼や姫級はこの世界には来ない。こちらに世界に着き海に彷徨う野良の深海棲艦は、私の元に集める予定だ。別の場所でだ」

 

「トラック島に……逃げるつもり?」

 

「ハワイもだ。既に基地は完成している」

 

 時雨は全てが分かった。どうやったか知らないが、姫や鬼を倒す兵器を開発したらしい。でなければ、深海棲艦を従えたりしない

 

「だが、全てが手に入るという所に、『あいつ』は対抗策を見つけてしまった」

 

浦田社長は吐き捨てるように言うと、時雨を睨みつけた

 

「お前だよ。お前は、深海棲艦の駆逐艦相手に難なく倒した。しかも、30体以上も。陸軍の特殊部隊を助けた時も、あれほどの航空攻撃を躱せるとは。私は正しかった。将来、艦娘は私にとって大きな脅威となるとな」

 

「ふざけないで!浦田社長がやっているのは、大量虐殺だ!」

 

 時雨は怒りが込み上がって来た。自分達のやって来たことは、国や人を守るためだ。それを真っ向から否定されたような気がした。しかも、時雨は破滅した未来を知っている。沢山の人々や仲間が殺された事を。その原因が、こんな下らない1人の男のせいで……

 

「私は邪魔する人や組織が嫌いだ。例え、外見が素晴らしい女性だろうがな」

 

「何のために?日本を発展させた企業が、世界を攻撃する過激な企業になるなんて。君は深海棲艦と同じで悪だよ!人類の敵だ!」

 

時雨の怒り声に浦田社長は鼻で笑った

 

「悪……敵ね。見た目と違って思考能力が高いかと思ったら……幼い少女そのものだ」

 

時雨が怪訝そうな顔をした。何が可笑しいのか?

 

「私も初めは信じていた。正義というものを。しかし正義を振りかざした所で、世の中が綺麗になる訳でもない」

 

 浦田社長は、リモコンを手に取るとモニターを付けた。警備員にビデオテープを持って来させると、ビデオデッキに入れて再生した。そこに映り出されていたのは……

 

「これ……は……?」

 

 映像を見た時雨は、唖然とした。港に停泊している軍艦に対して航空機は、その軍艦に目がけて爆撃している。戦争映画かと思ったが、そんなものではない。知っている。この映像を

 

「知っているだろう。その世界は、日本がアメリカに宣戦布告した時に行われた攻撃だ。そう、真珠湾攻撃だ」

 

 それは、太平洋戦争が勃発したきっかけとなった攻撃。『艦だった頃の世界』で起こった戦争記録だった

 

 




おまけ
時雨「浦田社長……話を聞いて1つだけ分かった事があったよ」
浦田社長「何をかね?」
時雨「ここの企業は、ブラック企業ということに」
浦田社長「いや……全然違うから……。何でもブラックと当てはめるな」


ここからは第5章でいこうと思います。章は後につくります

 余談ですが、冬イベで着々と攻略しています。
今のところE4まで進みました。甲乙甲乙です。今回の新しい艦娘はネタのある名前でしたね
ジャーヴィスと聞いてアイアンマンに出て来るAIかと思いましたし、『日振』を『にっしん』て思っててボイス聞いて一瞬混乱しました。某社のカップヌードルかと思った人は私だけではないはず
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