時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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第48話 艦娘と深海棲艦の因縁 前段

 戦艦ル改flagshipが時雨を拷問部屋に連れて行き、ある事を教えていた時、浦田社長は監禁している親子へ再び足を運んだ

 

 

 

 監禁されてから丸1日がたった。俺は親父と一緒に監禁されている中、必死に考えていた。監禁され、尋問は拒否する度に殴られはしたが、大したものではない。どうやって、脱出するか考えている最中、部屋に浦田社長が再びやって来た。俺は思い付くままありったけの悪口雑言を吐いたが、浦田社長は反応すらしない

 

それどころか、うっすらと笑みを浮かべているのだ

 

「そう怒るな。今日は話をしに来た。真実を。時雨という艦娘は好きか?」

 

 何をいっているのか分からなかった。しかし、次の言葉で俺は、思考停止状態に陥った。浦田社長から口にした言葉。浦田社長は戦艦ル改flagshipが時雨に話した内容と同様、『超人計画』について話し始めた

 

「超人計画?何だ、それ?」

 

 俺は、間抜けた事を言ったが、親父は違った。浦田社長が『超人計画』を口にしたことにより、親父は血相を変えて拘束衣を着ているにも拘わらず、浦田社長に向かって叫んだ

 

「止めろ!貴様、なぜ知ってる!?」

 

「私は深海棲艦を調べていく内に奇妙な歴史事実を発見した。お前の先祖が何をしたのか?平安時代に凄腕の陰陽師がいると」

 

二人の言い争いに俺は、ポカンとした。凄腕の陰陽師?何をいっているのか?

 

「さて、『超人計画』とは何か。それはお前のご先祖様が――」

 

「黙れ!お前は何も分かっていない!まさかと思うが、悪用したのか!?全世界が危険なのだ!」

 

 親父は大声を上げ、浦田社長の説明を遮った。俺は、親父の反応に驚いた。ここまで、血相を変えて叫ぶのは初めてだ。俺ですら見た事が無い。親父と喧嘩した時でさえ……。一体、何なんだ?

 

「親父!黙ってくれ!……それは時雨と関係あるのか!?」

 

「駄目だ!聞くな!お前はまだ若い。だから――」

 

「いい加減にしてくれ!――どういう事だ?」

 

 俺は椅子に縛られたまま聞いてきた。尋問中だったこともあり、体の自由はきかない。だが、聞かざるを得ない。そんな俺を、浦田社長はニヤリと笑った。まるで、悪ふざけをしてるガキのような笑いだった

 

「そうだ。『艦娘計画』と大いに関係ある。お前には知らない真実。いや、記録だ」

 

浦田社長は俺に資料を見せびらかすよう掲げた。それをみた俺は、絶句した

 

「なっ……何だ、これ?」

 

 それは、絵巻物であった。それがどのような価値なのかは知らない。しかし、そこにかかれている絵を見て目が点になった

 

「どうだ?少しは興味を持ったか?」

 

 そこに描かれているのは、異形の形をした怪物が、木造船を襲う場面だった。しかも、よくよく見ると、それは紛れもない深海棲艦だった。駆逐イ級よりももっと小さなの艦種だろうか?そこに描かれているのは、黒い『異形』をした『怪物』が笑いながら、戦船を襲っている。乗っている兵士達はパニック状態だ。しかも、これは……

 

「これは……元寇なのか?」

 

「ほう……描かれている戦船と兵士の姿を見て気付いたか?それなら話は早い。そうだ。鎌倉時代の末期に二度も日本に攻めてきた元寇は、一夜にして多くの戦船が沈められた。その夜に暴風雨を受けて元寇の戦船が沈められたという。しかし、実際は違う。深海棲艦がやったのだ。しかも……お前のご先祖様がやったことだ。操ってな」

 

 俺は親父を振り返ったが、親父は真っ青になったまましゃべらない。それどころか、口が震え額には脂汗がにじみ出ている。俺は親父の反応を見て確信した!

 

 親父は何か隠している!時雨どころか俺すら知らない事を!恐らく、未来の俺も知らないだろう!

 

「どういう事だ?深海棲艦は、隕石によって出来たワームホールによって現れたと」

 

「では聞こう。その空想科学世界に出てきそうな深海棲艦を、君の父親はどうやって短時間で解析し、対抗策を作れたのか?人類の科学技術では、人工的に人間を造り出せていないのに、どうやって艦娘を造り上げたか?しかも、材料は無機物だ。それを考えた事は無かったか?」

 

 俺は、初めて親父を本格的に疑った。艦娘計画は、親父の馬鹿げたアイデアだとはじめは思っていたが

 

まさか……そんな……

 

「そうだ。私が君の父に支援をした理由はそれだ。まあ、当の本人は既に己の秘密はバレていないと思っていたらしいが。甘い!」

 

最後の浦田社長の言葉で、親父は顔面蒼白になった

 

 

 

同時刻、拷問部屋

 

「おとぎ話の中には、実際に起こった事を元にして作られたものがいくつかある」

 

 拷問部屋にて縛られていた時雨は、戦艦ル改flagshipの説明に頭が真っ白になった。それは、提督と同じ反応だった。まさか、提督の父親は重大な秘密があるとは思いもしなかった

 

「深海棲艦は……昔から居た?」

 

「ええ。絵巻物以外に文献まである。その文献によると、面白い物語が書かれている。『昔々、その場所は漁が盛んな村だった。そんなある日、空から巨大な火の玉が落ちてきました。そこから現れたのは、この世とは思えないおぞましい姿をした化け物が現れ、人々を襲いました。人々は神のお怒りだと恐れ、隣の村に住む名高い陰陽師に頼みました。その陰陽師は術を使い、化け物を一瞬の内に倒しました。陰陽師に敗れた化け物は人々に襲わないと約束し、海に帰って行きましたとさ。めでたし、めでたし』」

 

 戦艦ル改flagshipの説明は、まるで子供に聞かせるおとぎ話のように話した。しかし、時雨はそれどころではなかった。絵巻物に描かれているのは、確かに深海棲艦だ。過去に隕石の衝撃でワームホールが開いたのか?

 

「その様子だと、あの『狂人』に隠された秘密を知らなさそうね」

 

「どういう……意味……?人類は過去、深海棲艦に――」

 

「遭遇している。しかも、その者は倒したのではない。操ったのだ」

 

戦艦ル改flagshipは、呆然としている時雨を他所に説明しだした

 

「この文献は戦国時代に描かれたもの。しかし、狂人の血筋を遡ると面白い。深海棲艦は平安時代から人類のある一族と遭遇している。当時は、別名で呼ばれていたようだ。隕石は小さいためか、ワームホールは安定せず消滅したのだろう」

 

 時雨は黙って恐ろしい事実を聞いていた。信じられなかった。まさか……そんなことが……提督の先祖は、深海棲艦と遭遇していた?

 

「深海棲艦を操るといっても、現代のような高度なものではない。恐らく、何かしら取引したのだろう。深海棲艦を従えた者は、強者となってその一帯を納めた。味方からは、戦の神として。敵からは鬼として。深海棲艦の秘密は、ある一族しか知らない。歴史の表舞台に出てこないよう……必死になって、隠し通してきた。だが、隠しきれず、逸話や伝説となって伝わって来た。お前も聞いた事はあるだろう?人魚や河童伝説、海坊主、シーサーペント、クラーケン……」

 

 時雨を全身から鳥肌がたった。まさか伝説は本当だったというのか?あれは、人々が勝手に作り上げた想像上の怪物ではないのか?

 

「お前も見ただろう?牢屋の中を。深海棲艦のボス……港湾棲姫を。奴は、鬼の姿をしている。鬼は伝記上の妖怪のひとつ。だけど、お前は見た。海の底から、そして別次元から来た人類と似た生命体。中には、産まれた方法も何年生きたかさえも分からない深海棲艦だっている」

 

「そんなのはおとぎ話だ!」

 

 時雨は大声を上げた。信じたくはなかった。これが嘘だと思いたい!未来の提督でも教えていなかったし、未来の記録でも書かれていなかった!未来の提督は知らないはずだ!一言も言わなかった!

 

しかし、戦艦ル改flagshipは容赦なく、時雨が知らない『事実』を話し続ける

 

「そうね……確かにおとぎ話ね。でも、深海棲艦は作り話ではない。幻覚とでもいうのか?幻覚なら、こんな絵巻物も文献も残さない。確かに数年劣化した事実は『伝説』となる。私のような深海棲艦は、人類から見ればまさに伝説の存在。でも、深海棲艦は実在する。ここは神話の世界ではない。この世界の海に生息している。世界が絶望するなか、彼は……『狂人』は深海棲艦の存在を既に知っていた」

 

 時雨は口をパクパク開けたまま、声が出なかった。博士は深海棲艦の謎を解き明かそうとし、誰よりも先進的であった。天才だと言えば、それまでだ。しかし……まさか、深海棲艦を昔から知っていたのか?確かに深海棲艦を調べ上げ、艦娘を作ろうとした人物が他にもいそうな気はするが……しかし、そんな情報は聞いた事がない。博士以外に深海棲艦の対処法と艦娘を造り上げた人物は知らない。タイムスリップする直前に、ブリーフィングしてくれた提督でさえ、そんな話は無い。艦娘の『創造主』は……1人だけ。海外で艦娘が造り出したという話は聞いた事がない。艦娘計画は輸出されたのが証拠だ。未来の記録にちゃんと残っている

 

時雨が必死に状況を呑みこもうとする中、戦艦ル改flagshipは話を続ける

 

「だけどね、彼等の計画は明らかに常軌を逸していた。深海棲艦の力を人間にも仕えないかと試行錯誤に研究していた。その力を使って戦に、つまり戦争に使おうとしていた。それが『超人計画』」

 

「そんなことしてどうするの?」

 

時雨は信じられなかった。深海棲艦の力を取り入れる?狂気の沙汰しか見えなかった

 

「人はね、力を得ると何かしら野望を抱くの。そして深海棲艦をコントロールし、統べるために作られた存在にもなる。しかも、外見だけでは人間と見分けがつかない事も出来る」

 

ここまで聞いて時雨は息を呑んだ。まさか……そんな!

 

「もう、ここまで聞いたら分かるでしょう。この計画は、艦娘の元祖のようなもの。尤も、当時は艦娘や深海棲艦という単語は無かった。深海棲艦の力を自身の肉体に取り込み、その力を使って支配しようと企んでいたらしいわ。元寇の殲滅は、あくまでも試験段階。戦う代わりに記録を残さないよう当時の鎌倉幕府と取引が行われた。幕府は褒美を全てあの一族にやってしまってため、必死に戦った武士達に与える褒美は無くなったらしいけれど」

 

「らしい?」

 

 時雨は訝し気に聞いた。圧倒的な力を持っているのに、実行しなかったのか?力を行使したのは、元寇の時だけ?

 

「当時は高度な技術は無かった時代。まして、ワームホールは閉じてため、この世界に取り残された深海棲艦は元に戻る事すら出来なかった。技術がそのままの形に残らない。その深海棲艦の姫は、普通の人と違って長く生きたらしいけど、歳を取りに死んでしまった。あの一族が深海棲艦の力を使えたのは、室町時代まで。残されたのは、数世代先を進んだ科学技術の知識のみ」

 

戦艦ル改flagshipは文献をしまうと別の書物を取り出した

 

「と言っても、歴史の裏に暗躍していたのは事実。その一族は、陰陽師として活躍していた。力や知恵を隠し、ある地域のみ支配をしていた。しかし、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に、参戦を拒否したため、その一族は潰された。何故かと言うと、もう既に深海棲艦は居なかった。授かった力はとうの昔に失われた。深海棲艦も無限ではない。隕石なんて都合よく降るものでもない」

 

「嘘をついたツケが来た……」

 

 時雨はポツリと呟いた。どうやって深海棲艦を出会い、艦娘となって過ごしたかは知らない。しかし、この世に無限なんて都合のいい力なんてない。恐らく、嘘をついて周りを何とか誤魔化したのだろう。昔は高度な科学技術なんて無かった。後先の事を考えていなかったのだろう。豊臣秀吉までは誤魔化せなかった

 

「そうでしょうね。深海棲艦から授かった知識なんて他の人から見れば、呪いか何か見えたのだろう。一家皆殺しだったらしいわ。しかし、生き残りはいた。名を変え、住む土地を変え、深海棲艦の秘密を家宝として扱い、密かに研究していた一族。その一族の末裔は、今も生きている。そして、お前がよく知っている人物」

 

 時雨は聞いていなかった。あまりにもショックが大きすぎた。時雨も知らない事実。未来の提督は、そのような事を一言も言っていない

 

「どうして……?」

 

 子供のようにボロボロと泣く時雨。自分達は何者だろう?戦艦ル改flagshipは口角をつりあげると再び話し始めた。まるで楽しんでいるかのように

 

「大佐はね……」

 

 

 

「お前の父親は、ワームホールから出て来た化け物を見て、自分の先祖と遭遇した化け物の同類であると考えに至った」

 

 同時刻、別荘において浦田社長は、淡々と説明していた。俺は、開いた口が塞がらないまま浦田社長の話を聞いていた。こんなバカげた話は聞いた事がない。深海棲艦は昔、この世界に来ていた?そして、俺の先祖が、深海棲艦と接触していたのか?

 

「疑問すら思わなかったか?お前の父親が、深海棲艦を調べ上げ、艦娘を誕生させようとする事には?国家すら正体を突き止めなかった存在なのに、軍の研究員がこんなバカげたものを作れる訳がない」

 

 俺は親父を見たが、彼の顔は真っ青だった。実の所、浦田社長が持ちだした歴史考察が当たっていようが外れていようが、俺にとってはどうでもいい事だった

 

 重要なのはたった2つ、『深海棲艦と人類は過去に接触していた』と『自分は深海棲艦と艦娘の因縁から逃れられない』いう部分のみ。後の補足や考察など大した価値も意味もないのだ。そしてその肝心な部分に間違いが無い事は、自分の父親の顔を見れば明らかだ

 

「さて、私の歴史講義はここまでだ。私は、深海棲艦を調べている内に偶然にもこんな文献を見つけた。調べれば調べる程、面白いものだった」

 

浦田社長は立ち上がると立ち去る前に一言言って来た

 

「私の計画は、そこの親父さんの真似をしただけだ。だから君の親父を支援した。だが、正義感でやったか知らないが、艦娘というのを創り出そうとした」

 

 浦田社長は、自分の非があるというなら、お前はどうなのだ?と言う風に言い放つ。俺は反論も出来なかった。知らなかった、と言えばどんなに楽か!だが、それは言わなかった

 

 なぜか?それは経験上だ。親父のせいで『狂人』のレッテルを貼られてから……。自分は関係ないと言われても通用しない事に。それでは、醜い言い訳に等しい

 

「私の計画は、間違った事かね?偽善者と罵ればいい。だが、それはお前達が言える立場か?」

 

「俺は知らない」

 

「当然だ。自分の因縁は関係ないのだからな。だから、私は計画を立てた。世界のために。亡霊を作り出すお前の親父とは違う。時間をやろう。もし、私に協力するのであればいつでも外にいる警備員に連絡してくれ」

 

浦田社長は今度こそ出て行った。浦田社長が去る直後、俺は親父を問い詰めた

 

「おい、今の話は本当か!?」

 

「……っ」

 

だが、返事は無い。何が何でも話して貰う!これは、見過ごせない!真実は何なんだ!?

 

 

 

 浦田社長の思惑は見事成功したと言えよう。時雨は提督を。提督は自分の父親を疑い始めた。信頼していた相手を疑うと言う事で結束は崩れた

 

 しかし、浦田社長は楽観視していた。相手を屈服させるあまり、大事な事を見落としていた

 

 親子が監禁されている別荘から離れた所にある者が双眼鏡を覗かせながら、監視をしていた。仕切りに無線である者と定時連絡をしている。だが、まだ時間がかかりそうだ。それまで、ここにいなければならないのか、と心の中で愚痴を呟きながら再び双眼鏡を覗きながら、自分に言い聞かせていた

 

『これも仕事だ』

 




おまけ
戦艦ル改flagship「お前も見ただろう?牢屋の中を。深海棲艦のボス……港湾棲姫を。奴は、鬼の姿をしている。鬼は伝記上の妖怪のひとつ――」
時雨「つまり、戦艦ル級は、『砂かけ婆』『お岩さん』『絡新婦(じょろうぐも)』として語り継がれたんだね」
戦艦ル改flagship「アンタ、本当に死にたいの……」


艦娘の誕生をちょっと考察した結果、このような形に
まあ、ちょっとした疑問が『人類はどうやって艦娘を創ったのだろう?』という疑問です
サイボーグ009やフランケンシュタインの怪物みたいに研究所から生まれたと考えたんですが、艦これSSではよくある設定なので、ちょっと頭を捻って創り出したのが今話です
公式設定でも艦娘や深海棲艦は不明です。折角ですから、『起源』というより『創世記』のようなものを書こうと思ったまでの事です。深海棲艦は沈んだ船の怨念の形をしていると同時に、おとぎ話や神話に出て来る伝説の生き物の姿をしていますから
案外、ネッシーも深海棲艦だったりして……
とはいうもののちょっと長くなりそうだったので前段、後段と分けました。父親は何を語るのか?
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