浦田社長は時計を見ていた。何を待っているか。それは彼等の返事である。浦田社長は、確かに艦娘を見下していた。軍のある技官が『艦娘計画』を大本営で発表した時には耳を疑った。深海棲艦を撃破出来るというのか?しかし、論文を読み終えた彼は、嘲笑うと同時に恐れた。自分達は偶然とは言え折角、深海棲艦を操る手段を手に入れたと思っていたが、計画が台無しになると思った。艦娘計画のスペックを見たが、彼を驚かせるものばかりだ。無機物に命を吹き込む技術ばかりか、宗教や科学の常識を覆すものだった
浦田社長は、確かに国の命令で深海棲艦を調査する依頼を受けた。そして、深海棲艦の研究が進んでいる者と接触した。当時の彼の階級は『中将』。技官であり、有能だった
「深海棲艦をここまで調べ上げるのは、骨が折れる作業ではなかったか?」
「幸運だっただけだ。海軍が駆逐イ級を捕らえてくれなければ、お手上げだった」
ある日、酒場で『中将』と飲んだが、どうも不自然だ。深海棲艦の論文自体は、こちらにとって有益だった。そして、戦艦ル改flagshipがこちらの思惑のために働いてくれるのだから、尚更だ。まあ、戦艦ル改flagshipはちょっと特別だ。私の重要な戦力だ
浦田社長は、この者を徹底的に調査した。そして、彼の……先祖の事も調べ上げることに成功した。彼は天才だが、秘密があった
『中将』は『艦娘計画』とやらを発表した際には、嫌悪感を抱いた。なぜ、異世界の……それもよりによって太平洋戦争の帝国海軍を使うのか?全く、理解出来なかった
そのため、マスコミや政治家に彼を陥れるよう依頼した。初めは、抵抗した彼等も金を渡せば喜んで従った。お蔭で『中将』は『狂人』のレッテルを貼り、社会的抹殺に成功した
しかし、『狂人』の艦娘計画を利用出来ないかと考え、チャンスをやった。近代兵器を装備させた深海棲艦の訓練相手に利用できると考えた
深海棲艦の好敵手はいない。抵抗もしない都市を攻撃しても実力はつかない。いかなる軍隊であれ実戦を経験する事によって強くなる。戦った事のない軍隊は、いかに強力であっても張子の虎だ
そのための計画だった。世界を変えるためには犠牲になって貰う。現代兵器を使えば難なく勝てるはずだ。しかし、念には念をだ。ある者に現代兵器と第二次世界大戦時の兵器が衝突する時のシミュレーションをしてくれと依頼した。その者は難色を示したが、何とか引き受けてくれた。その者が作った戦術シミュレーションは、詳細かつ信頼性の高いデータであった。それを参考に深海棲艦のある一個艦隊に近代兵器を積む。その者はとある機関の戦史研究室の人間だったが、データは信ぴょう性は高い
そのデータによると近代兵器を扱っている者が怠けていない限り、現代兵器を持つ艦隊の方が間違いなく勝つと書かれてある。ジェット戦闘機とレシプロ機は全く勝負にならず、イージス艦がいれば防空能力は完璧だ。対艦ミサイルを撃つだけで勝負は決まったようなものだと記述されている。現代兵器には、ミサイルに対して防御システムがあるという。しかし、第二次世界大戦の兵器にはそんなものはない。唯一あるのは装甲だけ。しかし、それもミサイルの威力を高め、集中攻撃すればいいだけなので問題ない
それどころか、米海軍が保有している原子力空母1隻だけで大日本帝国の連合艦隊だろうが、米海軍の太平洋艦隊だろうが数十分で壊滅させられるとまで書かれていた。艦載機にしてもそうだ。速度、攻撃能力、電子戦……WWⅡ時の兵器と現代兵器の戦力は、そこまで隔絶されている。勿論、シミュレーションと実戦は違う。予想外の事態で損害は出る可能性はあると書かれていたが、長い目で見ればこちらの被害は最小限に抑える事が可能だ。予想外の事態も経験を積めば対策は出来る
「まるでワンサイドゲームじゃないか。補給や整備を怠らなければ、いいだけだ」
だが、浦田社長は知らない。まさか、現代兵器を知っている艦娘であるアイオワが提督に近代兵器の正体と対策案教えていたとは考えもしなかった。アイオワのお蔭でタイムマシンを開発出来、そして時間を稼いでくれた。つまり、浦田社長は戦う相手を侮っていたのだ
「タイムスリップだと……?SF染みた真似をして私の計画を妨害するとは……!」
しかし、浦田社長が描く未来は、思い通りに行かない。『艦娘計画』は早くも息を吹き返すわ、一部の人とは言え計画がばれるわ、時雨という艦娘が未来から来るわ!……私の人生は、いつも誰かが邪魔をしている!
「この世に神がいるなら呪ってやる!」
「社長、そのお言葉は慎んだ方がよろしいかと」
「構わん!私は無神論者だ!」
秘書の指摘に浦田社長は吠えた。世界が何だ?正義が何だ?深海棲艦が何だ!そんなものはどうでもいい!貧困や差別、そして紛争は誰か解決してくれたか!?ほったらかしだ!
圧倒的な火力を持つ近代兵器と通常兵器が効かない深海棲艦を使って傲慢な国々を滅ぼし、支配する!世界を管理すれば、世界の問題は一挙に解決する!
攻撃で破壊したツメ跡は、復興させる。労働者も集えるし、財産も管理する。歯向かうものは、深海棲艦と育て上げた私兵達が対応する。そして、わが社が人類史上初めて世界平和を実現出来る!それも、国ではなく民間会社だ!
艦娘である時雨と艦娘計画を実行した『大佐』には私の気持ちなぞ分かるまい!所詮は、深海棲艦を倒す事しか能のない者達の集まりだ!そんな奴らが、私の計画を邪魔されてたまるか!
「考えがあります」
「……言って見ろ」
秘書は優しく、そして恐ろしい事を口にする
「3人の内、1人を殺害します」
「艦娘か?あの『狂人』か?」
己の計画を考えて2人を処分する方が手っ取り早い。もう時間は無い。時雨か『狂人』である『大佐』を殺すか。しかし、秘書の出した答えは流石の浦田社長も予想しなかった
「『狂人』の息子を殺害します」
「何?あれは脅威の内に入らんぞ!」
「いいえ。そこが甘いのです」
秘書はニヤリと笑うと次のように指摘した
「そもそも、時雨を送ったのは誰です?タイムスリップという作戦を考えた者は、『狂人』の息子である可能性が高いです」
「バカな!あいつはそんな能力はないはずだ!」
浦田社長は怒鳴った。流石に違う。あれは親に反抗するガキに過ぎない。艦娘の運用能力なんて禄に出来ない。だが、秘書は冷静だった
「それだから社長は、甘いのです。未来において艦娘達がタイムマシンを造ったとしましょう。未来の私達は、バカだったのですか?」
「何が言いたい?」
浦田社長は、訝し気に聞いた。言っている事が分からなかった
「少しは落ち着いたらどうです?恐らく未来の私達は、タイムマシンの存在を知らなかったと言いたいのです。もし、本当にタイムマシンを造ったなら未来の私達は、全力で阻止しているはずです。例え、阻止できなかったとしても、タイムマシンを複製し援軍を寄越すはずです」
秘書の指摘に浦田社長は狼狽した。まさか、自分達が考えていた計画は、完璧ではなかった?
「確かにミサイルやジェット戦闘機といった近代兵器は素晴らしいです。艦娘を圧倒します。あっという間に海の藻屑となっているでしょう。しかし、彼は艦娘を見捨てず逃げ出さず、指揮を取り続けたと思われます」
「そんなバカな!?標的艦や世間のはけ口として艦娘共々生かしている奴が、まさかそんな事を!」
「兵器や戦術が進歩しても、戦争の本質は変わりません。未来において『狂人』の息子は、優秀な指揮官であったかも知れません。また、観艦式で盗聴した言葉を推測すると、未来の彼は近代兵器の正体どころか弱点まで掴んでいた可能性があります。そして、何よりも過去へ送り出すための綿密な作戦を立てたかも知りません。彼は手を招いているほど何もしていない訳ではないと言いたいのです」
浦田社長は背筋が寒くなった。こんな事あり得るのか?
「バカな!」
「いいえ。世界最強の国だって、とある戦争においてゲリラと反戦報道で負けた。貴方が大事にしていた金庫の中にあった機械の記録にあったのではないですか?」
金庫の中にあった機械とは、陸軍の502部隊の工作員が盗み出されてしまったものである。まだ見つからないが、浦田社長にとってそれは重要なものではない。資料は全て印刷し、別の金庫に保管している
「だが……」
「貴方は艦娘を敵視するばかりに指揮官を侮った。彼は素質があった。艦娘のような力はない。しかし、指揮する能力はあった。『大佐』は腐っても軍人です。組織の上に立つという能力は、受け継がれたかも知れません」
浦田社長は考え込んだ。計画の中で市民や世間の不満を身代わりにする組織が必要だった。ただ、艦娘だけの集団では直ぐにくたばってしまう。そのため、指揮する者……息子を生かしておこうと考えていたが……こちらのミスか?
「『息子』がいなくてもいいではないですか。私達は建造ユニットを手に入れた。艦娘は生まれた瞬間、私達のもの。計画に賛成するものは雇い入れ、反対する者はその場で沈める。若しくは、洗脳させて標的艦としてなってもらうというのはどうでしょう?」
秘書の冷酷な提案に浦田社長は暫く考えていたが、やがて頷いた
「分かった。息子を殺そう」
息子とは将来、時雨の上官になる人物。つまり、提督だった
時雨は牢屋の片隅で呟いていた。独り言だった。もう何を信じていいか分からなかった。ただ、時雨はやりたいことがあった。真実が知りたかった。提督は……未来の提督は知っていたのか?僕は……艦娘は提督を信じていいのだろうか?
「落チ着イテ。モウ奴ラハ来ナイ」
「だって……僕は……僕は艦娘だ。提督の先祖が……世界を支配するために……僕達を創り出したなんて……」
港湾棲姫は何も言わない。敵と見ていいのか、それとも同情していいのか
ワームホールが開かれ、この世界に降り立った時、深海棲艦は直ぐに行動した。この世界は、私達の世界と違って住み心地がいい。太陽の光は気持ち良く、水も綺麗だ。港湾棲姫と北方棲姫は切り込み隊長として部下を大勢引き連れて侵攻を開始した。この世界の住民である人間は反撃して来たが、痛くも痒くもなかった。港湾棲姫は有頂天だった。ここを第二の故郷にしよう。そう思った。トラック島と呼ばれる島で逃げ遅れた人間達を捕まえた。どう扱っていいか分からず、とりあえず殺そうとした時、ある少女が話を持ちかけて来た。その少女の提案は、魅力的だった。
「私はどうなってもいい。その代わり、他の人間を逃してください」
港湾棲姫はその提案を飲むと他の人間を船に載せて逃がした
それが間違いだった。気がついた時には……全てを奪われた。軍団もワームホールも。北方棲姫も港湾棲姫も反撃したが、結局、捕まってしまった
「私達ガコノ世界ニ来タセイデ……」
「来たせい!?それで僕が許すと思う!?」
港湾棲姫がさりげなく呟いたが、時雨は反応し吠えた。もうたくさんだった。そうだ。元々は、こんな怪物がこの世界に来たせいで、僕達は……
扉が開くと同時に、思考は中断された。戦艦ル改flagshipが再び牢屋に入って来た。時雨は短い悲鳴を上げ後ずさりした。北方棲姫と港湾棲姫は時雨の前に立ち両手を広げた。時雨を庇う気でいるらしい。戦艦ル改flagshipは鼻で笑うと港湾棲姫を押しのけ、時雨に近寄った。時雨は覚悟を決めたが、暴力は振るわれなかった。代わりに戦艦ル改flagshipから恐ろしい事を時雨に告げた
……とうとう恐れていたことが起きた
「提督を……殺す……?」
「そうだ。彼はもう必要ない。浦田社長の決定事項だ」
時雨は戦艦ル改flagshipに飛びかかったが、戦艦ル改flagshipは時雨を捕らえると足で床に押さえつけた。しかし、時雨は必死だった。提督だけは……提督がいなくなると……。僕は……
「やめて!僕を解体してもいい!僕を研究の材料にしてもいい!だから、提督だけは!」
「そうか。随分と慕っているんだな。今でも未来でも」
痛めつけたにも拘わらず、時雨の抵抗は衰えることはなかった。押さえつけられた足を何度も殴った。戦艦ル改flagshipは鬱陶しいと思ったのか、蹴りを食らわす
「やっぱり、推測は当たっていた。お前は未来から来た。任務のために。そして、彼のために。だから、口を割らなかった。だけど、お前は未熟だ」
「止めて!提督だけは!お願い!それだけは!」
「……ほう、まだそんな目が出来たか。てっきりもう廃人同然だと思っていたがな。だけど、その必死な懇願こそが証拠だ。やはり、息子が浦田重工業の最大の脅威か。艦娘如きがミサイルやジェット戦闘機を出し抜ける訳がない。優秀な指揮官でなければ出来ない。お前があの息子を『提督』と呼ぶ理由が分かった」
もう完全にバレた!未来から来たという正体も。提督がいないと……彼がいないと艦娘はどうなるんだ!?博士は信用出来ないが、提督は違う!提督を疑っていたが、それは彼の先祖の話だ。上手く生き残って提督と再開し話し合えば、解決出来る!この時代の提督も未来の提督の仕草は垣間見えていた!僕達を見守っていた!
提督がいなくなったら……僕達はどうすればいいんだ!完全に孤独だ!信用できる者が1人もいない!心の支えとなってくれる者がいない!
「では、『主』に報告させよう。これで我が社の計画は、誰にも邪魔されない」
戦艦ル改flagshipが牢屋を出た直後、時雨は立ち上がり扉に向かって走った。足が折れているにも拘わらず、無理やり立ったのだ。港湾棲姫は時雨の容態が危ないと察知すると、時雨を押さえつけた。これ以上、危険すぎる。だが、時雨の口からは、時雨とは思えない怒りの声が牢屋に響き渡った
「あのクソ戦艦!地獄に落ちろ!一生、僕が恨んでやる!!」
「落チ着イテ!」
「放せえぇぇ!あいつを殺してやる!」
暴れる時雨を港湾棲姫が抑えたが、とても抑えられない。二人の間で取っ組み合いが始まり、北方棲姫はオロオロするだけだ
刑務所の所長室にて、戦艦ル改flagshipは浦田社長に報告を行った
「……間違いありません」
『そうか。どうやら、私のミスだ。お前は帰れ』
「分かりました」
戦艦ル改flagshipは通信を切ると、自身の身体を変化させた。戦艦ル改flagshipは数分で人間になった。周りには刑務所に勤めている所長や刑務官がいたが、見慣れているのか特に驚きはしなかった
「ここは任せる」
「分かりました」
まるで帰宅する会社員のような挨拶をすると『彼女』は民間刑務所を後にした
別荘では、警備員を率いる長が本部から新たな命令を無線から聞いていた。非情な命令だが、警備員は簡単に返事をすると部下を引き連れて親子を監禁している部屋へ入っていった
「社長からの命令だ。お前を射殺する」
指を指された者は驚愕したのは言うまでもなかった
「なっ!」
俺は驚いた。ろくに食事も与えられず、睡眠もとっていない。散々、痛い目にあったのに。まさか、俺が殺されるのか?何かの間違いか?
「バカな!殺されるのはワシのはずだ!」
「黙れ!」
親父は喚いたが、他の警備員に殴られた
「どういう事だ?」
「社長はお前が脅威であると判断した」
俺は困惑した。何故だ。まさか、時雨の正体がばれたのか?それとも、未来のノートを見つけたのか?しかし、あり得ない。ノートは親父が隠しているし、見つかっていない。時雨が喋れば別だが、あいつは裏切らないはずだ。例え喋っても自分の首を締めるのと同じだ
……いや、そんな……、まさか……!
「俺にはよく分からんが、社長の言い分だと、未来の『狂人』の息子は優秀だ。素質と言うべきか?それが浦田重工業の計画とって大きな障害となり得る。そのためには、リーダーを排除するのが先決だ、と」
俺は驚愕した。まさか、既にバレたのか!あり得ない!
「しかし、世の中には不思議なものがあるものだ。深海棲艦が現れた時は、某国の新兵器だと思っていたが」
「俺は浦田重工業がどれだけクソかという事が未だに信じられないけどな」
警備員は俺の言葉を無視して、腰に付けている拳銃を取り出すと俺の額に銃口をくっつけた
(クソ……!)
こちらはどうする事も出来ない。もう分かっていた。俺達は負ける運命なのだと。どう足掻いても死ぬ運命なのだと。敵が強すぎた。自分の死ぬ時期が早まっただけだ
「何か言い残す事は?」
「……浦田社長へ伝えてくれ。アンタはクソ野郎だって事を」
「心配するな。今の言葉は伝えないさ」
警備員は嘲笑うが、俺はどうでもいい。ただ、自分の無力さを思い知らされた。未来の俺が……いや、今の俺がしっかりしていれば……
(済まない、時雨。もう、俺はダメそうだ……)
俺は目を瞑った。親父が何やら喚いていたが、今は遠くの声が聞こえるような気がする。もう、お終いだ
俺は待った。あの世へ行く合図である銃声を……
銃声が聞こえ、そして……顔に何やら生温かい液体のようなものが掛かった。……血の匂いがした
(何だ?何が起こった?)
目を開けると、警備員の胴体から血が噴き出しながら倒れている。その警備員は撃たれたらしいが、一体誰が?扉を見ると、見たこともないクリオツナギ状の衣服に身を包んだ三人の兵士がいた。しかも、見たこともない短機関銃を持っている。胸元に下げた手榴弾も見た事が無い。他の警備員が慌てて銃を取り応戦しようとしたが、3人の兵士の方が素早かった。正確な射撃で警備員を倒した
「夢か?」
俺は呟いた。何者かが俺達を助けている。そんな都合のいい事は起こらない。第一、こいつらは何者だ?
「夢?違う。お前達を助けに来た」
3人の内、1人が近づき縛られて手足のロープをナイフで切断した。いや、他の人も部屋に入り、親父の拘束衣を脱がせようとしている
「浦田重工業の動きは?」
「反応ありません」
俺の縄を解いた人が部下らしき人と話している間、俺は死んでいる警備員から拳銃を素早く奪うと、銃を向けた
「おい、お前達は誰だ!?」
「よせ!銃を捨てろ!恩を仇で返すのか!?」
「浦田重工業と敵対しているらしいが、こちらの味方とは限らん!なぜ、俺達を助けた!?」
「隊長!どうします!?」
兵士達は隊長と呼ばれた人から指示を仰ぎながら俺に銃を向けた。お互いにらみ合いが生じたが、そんな中……日本刀を腰につけた別の一人の男が入り、俺に向けて鋭い声で言った
「銃を降ろすんだ!人間不信になるのは仕方ないが、私はお前達の味方だ!『艦娘計画』を支援した陸軍の部隊と言えばわかるだろう?」
「で、ではお前がワシらに支援物資を送り届けてくれた部隊なのか?」
親父は驚愕しだが、物資も資金もなく陸軍に援助を頼んだところ、ある部隊が応えてくれた。その部隊なのか?俺はポカンとした。確か時雨が着いて、親父と一緒に『艦娘計画』を再開させようとした。資金満載のトラックを見た時は驚いたが……
「浦田重工業のスパイを送ったのも?」
「西村軍曹達は気の毒だった。だが、彼等の死は無駄にはしない」
その人は俺と親父に近づき安否を確認すると、再び話し始めた
「自己紹介が遅れた。陸軍の特殊部隊の1つ『機動第2連隊』。通称『502部隊』。私はその部隊を率いる将校だ。階級は中佐。こいつが部隊長である軍曹。残念だが、極秘部隊のため名前は公表出来ない」
「どうして助けが遅かったんだ?時雨は誘拐されたんだ!」
「浦田民間警備会社の目から逃れるためだ。あいつらの持つ戦争道具は、ハイテクだ。だから欺く必要があった。済まない、遅れて」
俺は状況を整理した。どうやら、この特殊部隊は浦田重工業を探っていると同時に敵対しているらしい。しかも、艦娘計画を支援している。何を考えているか、分からない。ただ、味方であるという根拠が分からない
「あんたが俺達の味方なら、時雨を救助を手伝ってくれないか?」
「貴様、誰に言っている!?『中佐』と呼べ!」
「いいんだ。彼は軍人ではない」
軍曹が食い掛かって来たが、中佐は下がらせた。他の者も目線が集まっている。親父はオロオロとしておりどうすればいいか迷っていたが、今はそれどころではない
「時雨は艦娘だ。どういう理由で『艦娘計画』を支援したのか知らないが、時雨を救出してくれ」
中佐は右手を顎に当てて考えたが、やがて口を開いた
「いいだろう。時雨が艦娘であるなら、救助する必要がある。潜入工作員の情報だと、時雨は浦田重工業の子会社。民間警備会社が経営する民間刑務所に監禁されている」
「民間刑務所?あの、評判がいい所か?……実際はどうなんだ?」
嫌な予感がした。あそこの民間刑務所は、報道がやたらと持ち上げている。……デメリットは全く聞かない
「浦田警備会社は、囚人の中から使えそうな人材を選び、軍事訓練をさせ、兵士に育てている。報酬が意外と良いのと訓練のメニューが徹底されているから、警備員は常に精鋭揃いだ」
「もうそれは軍隊だろ!」
流石の俺もそこは知らなかった。確かに警備員は、陸軍並の装備をしていたが……。もはや、民間軍事会社ではないか?確か、陸軍の過激な一個師団が浦田重工業を襲ったが、返り討ちにされたという噂があったが……あれは本当だったのか?
「それと浦田重工業に不満があるもの……特に過激な組織は秘密裏に捕らえ、味方に付かない限り徹底的に痛めつける。あそこに侵入しようとした某国のスパイは、侵入してから3日で死体となって発見した。ある国では、その国のスパイの生首を荷物で送りつけたという逸話まである」
そこまで聞いて、俺は青ざめた。時雨は重大な戦力だ。貴重な存在であるため、流石に無茶はしないと思っていた。だが、今の話を聞く限り時雨が今、どんな状況に置かれているか理解した
「くそ、早く行かないと」
俺が出口に向かおうとするが、陸軍中佐が行く手を阻んだ
「行ってどうする気だ?あそこは強力な兵器は無いものの、警備員全員は完全武装だ。学生風情のお前が行っても射殺されるのがオチだ」
「どいてくれ!俺は……俺は時雨が心配なんだ!あいつは、まだ幼い。捕まった時から、酷い目に遭っているに違いない!あいつは建造されてから、ずっと地獄を見て来た。心まで壊れたら、あいつは立ち直れない!」
「分かった。手を貸す。だが、お前も戦ってもらう」
中佐の合図で軍曹は、短機関銃を渡してくれた。普段の俺だったら、拒否しているだろう。しかし、今の俺は怒りで倫理に反する行為に出た。もう、なりふり構っていられない。俺は頷くと受け取り、全員外に出た。外は既に暗く、辺りは警備員の死体で一杯だった。警備員の死体の大半は切り傷があった
「ここにいる警備員をどうやって倒したんです?」
隊長である軍曹から短機関銃の操作を教えてもらった俺は、聞いた。警備員に殺される直前まで銃声が聞こえなかったため、刃物で倒したのだろうか?
「日本刀と消音付きの狙撃銃で倒した。奴らは夜目でも効くのか、夜襲なんて効果ない。だから、戦い方を変えただけだ」
隊長である軍曹はニヤリとして腰にぶら下げている刀を見せたが、俺にはそうは見えなかった。夜目が良いのはいくら何でもあり得ないのではないか?夜襲でも効果ないと言ってるが、それは別の手段でやってるのではないか?
親父からは、見張り員はとても視力が良かったからだとか……。あの浦田重工業の事だ。アイオワの手紙や未来の俺のメッセージから見て、何らかの方法で夜でも見える機械でも造ってるかも知れない
そう考えていると、警備員に死体の中に何やら天狗の鼻のようなものを付けた奇妙な警備員を見つけた。近寄ると、それは小型の機械のようなものだ
「何してる?早く行くぞ!」
「分かりました」
俺は、警備員の目辺りに装着していた機械を素早く取り、ポケットにしまった
どこから来たのか、兵員輸送車、装甲車、そして小型車両などの軍用車両が現れた。マークと武装を見て502部隊の車両だろう
「親父、例のノートは持ってきた?」
「あ、ああ。ここに……」
どうやら、ノートは無事のようだ。西村軍曹達が、浦田社長の金庫から奪った奇妙な機械とともに持ってきたとのことだ。浦田重工業の警備員達が襲う数日前に妖精に頼んで巧妙に隠したらしい。妖精曰く、別荘の外れの森で潜んでいたとの事。荷物は無事だったが、親子共々捕まってしまったため、どうすればいいか迷っていたとの事だ。妖精自身の力は知れている。お陰で警備員に気付かれずに済んだが
俺は未来の俺が書いたノートのうち、アイオワの手紙を引っ張り出した。気になる事がいくつかある。先程の警備員がつけていた機械について……
まだ、出発には時間がある。俺のバイクは捨てられていなかった。バイクにまたがり、車両が出発するまで、手紙に目を通した
目指すは民間刑務所だ!俺はまだあちこち身体が痛く空腹だが、そうも言ってられない!
空腹や睡眠なんて全て終われば出来る!
提督というより、軍を動かす指揮官は非常に重要な立場です
何しろ、決断する場面が沢山あります。また勝ち負けともかく、戦場において状況が流動的ですから情報を整理し動かすにはそれなりの能力がいります
そして、敵に狙われる確率が高くなります。司令官暗殺なんて事例は沢山あります
有名な事件だと米軍陸軍航空隊が暗号解読によって待ち伏せ攻撃し、山本五十六大将の搭乗機を撃墜して暗殺した事ですかね(海軍甲事件)
軍隊もそうですが、組織というものはリーダー失ったら大抵、混乱します。指揮系統が混乱してしまいますから
よくよく考えると未来の提督、何気によく頑張っています。逃げないどころか、近代兵器の威力を見せつけられても最後まで白旗上げませんでしたし。ずっとストレスマッハだと思いますが
メタルギアでも指揮する者(キャンベル大佐やミラーなど)と戦う者(主にスネーク)がいますから。やり取りを見ていると、双方の苦労がよく分かります