時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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第6章 逃走と追撃
第51話 時雨救出作戦


 浦田警備会社が経営している民間刑務所の特別区画は、静まり返っていた。いや、数時間前までは喚いていた少女の声が響いていた。しかし、その区画は誰もいない。監視カメラやセンサーがあるため、見回りなんて1時間に1回くらいだ

 

 その少女は、時雨である。戦艦ル改flagshipにありったけの暴言を吐きながら暴れていた。お蔭で港湾棲姫は負傷しているにも拘わらず、時雨を抑えていた。時雨と言う艦娘を助ける義務はない。しかし、幼い少女が暴れている姿を放っておく訳には行かない。激しい取っ組み合いになって騒がしくなった。何とか収まったが、別の問題が発生した。遂に時雨は完全に壊れてしまった

 

「ブツブツ」

 

 時雨は何か念仏のように唱えている。何を言っているのか、港湾棲姫も北方棲姫も分からない。ただ、どうしていいのか分からなかった。自分達が出来る範囲は限られていた

 

 暴れてしまった為に時雨の生傷は以前より増し、遂に右腕も左足も完全に動かなくなってしまった。整備もしていないため、破壊された艤装は赤く錆びている。目は完全に死んでおり、涙の跡がくっきりと残っている

 

「モウ……私ハ……イツカハ……私達モ……帰ル」

 

「ウン……イツカ……楽シイ海デ……」

 

 港湾棲姫と北方棲姫はどうする事も出来ない事に諦めた言葉を呟いたその時、牢屋の中を照らしていた電球の灯りが急に消えた

 

「ン?」

 

 もう電気も付けないほど不要な存在になったか?……いや、嫌がらせにしては可笑しい。鉄の扉についてある小さな鉄格子から漏れていた廊下の電気まで消えている。停電か?それにしては、怒号と急ぐ足音が断続的に続く

 

「何ガ起キテイル?」

 

 港湾棲姫は初めて異変に気付いた。トラック島で浦田重工業に捕まって以来、こんな事は初めてだ。しかも……微かであるが銃声と爆発音が聞こえて来る。この近くで戦闘が起こっているのか?

 

「ドウシタノ?」

 

「分カラナイ」

 

 北方棲姫が不安そうに聞いてきたが、港湾棲姫は首を振った。まさか……そんな都合の良い事はない。そう言い聞かせた

 

馬鹿げている。自分達の牢屋に一緒にいる少女を助けるために戦うだなんて……

 

 

 

「はあ……ワシは出来ん」

 

「何でだ?親父は軍人だろ?」

 

「いいか!ワシは中年だし、負傷している!少しは気遣ってくれ!……ところで何を読んでいるんだ?機械の説明書か?」

 

 俺は負傷している親父と一緒に車の陰に隠れていた。陸軍中佐から待つよう言われたからだ。その間、俺は警備員から奪った機械とアイオワの手紙を見比べていた

 

(暗視ゴーグル……こんなものまであるのか?)

 

 未来では艦娘の基地に夜襲を仕掛けるゲリラがいた。目が良いらしく艦娘も未来の俺も手こずっていた記録が幾つかある。しかし、夜戦バカである川内を始め鳥海や綾波など夜戦に特化した艦娘の戦力を見くびっていたらしく、ある日では川内1人だけでゲリラを撃退したという記録まであるのだから驚きだ。ゲリラはなぜ、夜でも的確に攻撃出来るのか?その正体や謎は、既にアイオワが見抜いていた。手に持っている機械も未来の記録と同じだ。暗視装置というものらしい。電源を入れて覗くと、暗闇にも拘わらず、よく見える

 

 提督は知らないが、提督が手に入れた暗視ゴーグルは、『光増幅式暗視装置』といい、別名『スターライトスコープ』とも呼ぶ。これは、ほんの僅かな光でもあればそれを増幅して映像を映しだすものである。欠点としては光を増幅するので本当に全く光の指してない環境だと流石に映らず、強い光に弱い

 

俺が暗視ゴーグルを色々と弄っている時に、隊長である軍曹が駆け寄り無線機を親父に渡した

 

「元帥からです」

 

「分かった。――お久しぶりです」

 

 親父は無線機を受け取ると早速、話し始めた。実は陸軍特殊部隊である第502部隊を直接指揮していたのは、統合参謀長の元帥である。『艦娘計画』が成功した事を伝えるために喫茶店であった人物である。尤も、非公式であるため502部隊が捕虜になろうが、助けはほぼゼロである。精鋭でかつ命令に忠実。元帥の指示のもと、極秘裏に動いていたという事だ

 

それはともかく、無線機から応答してきた

 

『大佐か。報告は聞いた。よく無事だった。ただ、もう1人の救助は待ってくれ』

 

「無理です。とてもじゃないが、見捨てる事は出来ません」

 

 意外なことに親父は、元帥の命令を拒否した。だが、俺も親父のような立場でも同じように言っていただろう。時雨を一刻も助けなくては……

 

『いいか。お前が造り上げた艦娘の安否を気にしているのは分かる。だが、お前達が入ろうとしている場所は、民間刑務所とは言え、浦田重工業が経営している。中には、100人程の完全武装した警備員がいる。応援が来るまで待ってくれ』

 

「そうだったんですか。では、変電所を爆破したのは正解でしたな」

 

『何?ちょっと待て!どういう――』

 

元帥が喚いていたが、親父は無線を切り軍曹に返した。軍曹も全く不満はなかった

 

 

 

数分前……

 

「情報はこれだけだ。民間刑務所の工作員は1人いるが、派手な事は出来ない。時雨という艦娘は、特別区画にいるらしい」

 

「らしいって?」

 

 民間刑務所から数キロ離れた所で502部隊とともに俺は作戦内容を聞いていた。刑務所にしては、警備が厳重。見取り図は何とか入手出来たものの、完全ではない

 

「そこは重要人物を閉じ込めるための特別区画だ。以前は、死刑囚だったようだが。工作員からだとそこへ連れていかれる所を目撃したらしい」

 

しかし、残念ながら特別区画は一般の警備員には入れないという。位が高い人物か所長でないと入れないらしい。機械で管理されているらしく、警備は厳重だ

 

「くそ!どうやって入るんだ?」

 

「慌てるな。工作員とともにあることをしている」

 

 中佐はニヤリとして腕時計を見ていた。何かタイミングを待っているのだろうか?俺はどんな作戦だろうか、と考えていると、無線機から軍曹の声が聞こえた

 

『中佐、準備出来ました。従業員は睡眠薬で眠らせ運び終えました』

 

「そうか、時間通りだな。では、合図したら起爆しろ。カウントを始める。5……4……3」

 

中佐は腕時計を見ながら合図を送った。何をしているのか?

 

「2……1……よし、爆破しろ!」

 

合図とともに遠くで盛大な爆発音が響き渡り、それと同時に刑務所に近い村の明かりが一斉に消えた

 

「な、何をしたんですか?」

 

 兵士達は歓声を上げる中、俺は戸惑った。何をしたのか?俺の戸惑いに中佐は笑いながら種明かしをしたが、何ととんでもない事をしたのだ

 

「ここ一帯の街に供給している変電所を爆破させた。後は潜入している工作員は刑務所にある予備電源の破壊に成功するのを祈るだけだ。しかし、時間が無い。潜入者の爆破が成否問わず突入する」

 

「変電所を爆破!?」

 

「警備システムと通信システムが厄介だからだ。なら、電気の供給を絶てばいいだけの事」

 

「そ、それはそうですが!」

 

 俺は愕然としたが、中佐は当たり前のように話す。仕方ないとは言え、ここに住む住民達にとって、迷惑極まりない。親父も思いきった行動をする中佐のやり方にため息をついた

 

「これは元帥の依頼なのか?」

 

「残念だが、我が部隊は人員も装備も有限だ」

 

「はぁ……。502部隊は、ならず者の集まりと聞いた事はあるが、まさかここまでとは」

 

 親父は502部隊を知ってるらしい。初めは、元帥から極秘裏で浦田重工業の秘密を暴くために戦っていると聞かれた時には喜んだが、いざ戦い方を目の当たりにすると何とも言えない雰囲気になった。浦田民間警備会社の警備員に比べればマシだが、正規軍が不正規戦するとは聞いたことがないらしい。なりふり構っていられないのは、自分達も同じだが

 

「で、誰が責任をとる?」

 

「元帥には後で説明する。そこは心配しなくていい」

 

「いや、これはワシのせいでもある。ワシが責任とる。何、世間では狂人と呼ばれておるし、所属は違えど階級は大佐だ。君達はワシに脅されたと言えばいい。これで文句なかろう」

 

 艦娘計画の事で負い目を感じているのだろう。陸軍将校は眉を吊り上げたが、結局は賛成した。何しろ、父親は自分達の直属の上司である元帥を知っているというのだから

 

 

 

そして現在

 

無線機を受け取った軍曹は、今度は俺に聞いてきた

 

「俺はお前の護衛ではない。自分の身は自分で守れ。本当に行くのか?」

 

「はい。これは私の責任もあるんです。父の責任もありますが、過去を全く向き合わなかった俺にも責任はあります」

 

 正確かどうかはともかく俺達の過去は、時雨に伝えたのだろう。俺のご先祖がやった事は、真実か嘘かはどうでもいい。ただ、時雨は俺に対して不信感を抱かせてしまうのは不味い。残念ながら、未来の俺も知らなかったようだ。はっきり言って、過去の関係はどうでもいい。ただ、知らなかったは通用しない

 

「よし、派手に暴れてやろう。人を撃つのに戸惑うな」

 

「大丈夫です。今の自分は不機嫌です。体力もあるし、射撃訓練は親父から教わりました」

 

 夏ごろに時雨と一緒に新兵教育の成果を試す時だ。軍事訓練ではないが、何もやらないよりかはいい。後は実戦経験だけだ

 

「やられるなよ」

 

「分かりました」

 

 俺は軍曹から貰った一〇〇式短機関銃改(一〇〇式短機関銃を改良したものらしい)を構えると物陰から出て次の物陰に隠れるために急いでいく

 

「急げ急げ!狙い撃ちにされるぞ!」

 

 既に戦闘は始まっていた。銃声と爆発音が響き、火が辺りを照らした。既に浦田の警備員と502部隊との間で凄まじい激戦が発生した。刑務所からロケットや銃撃が雨のように降ってくるが、陸軍も負けじと応戦している

 

『各員、よく聞け!AB班は正門に撃ちまくれ!C班は側面から攻撃しろ!戦車や装甲車は確認されていないが、注意しろ!』

 

 中佐は無線で指示を出し、兵士は腹ばいになって軽機を構えて火点を形成する。重機関銃やロケット砲が刑務所の正面に集中的に浴び、刑務所の正門は木端微塵となって壊れた。しかし、浦田警備員も負けてはいない。軍用車両はないものの、小型車両は複数ある。ジープと呼ばれる車両らしい。ジープが陸軍部隊の前に躍り出ると、搭載されている重機関銃を撃ち出した。重機関銃は威力が高い。陸軍兵士は、この重機関銃にバタバタと打ち倒された。ヘルメットなぞ軽く貫通する。物陰に隠れていた軍曹は、部下にロケット砲を撃つよう命じた。兵士がロケット砲を構えると引き金を引く。それと同時に耳がつんざくような噴射音を上げながら弾頭を発射した。ジープに向けてロケットが突進し、見事に命中。車両は爆発し、炎を上げながら中の人もろとも焼き尽くしていた。装甲車も前進し、刑務所にいる警備員に向けて重機関銃を撃つ。余りの火力に警備員達は後退せざるを得なかった。中にはバズーカ砲を携えた者がいたが、軍曹がいち早く気づき集中砲火を浴びせるよう指示した

 

 俺は軍曹に離れずについていった。威勢を張ったのはいいものの、戦場がこんなに五月蝿いとは思わなかった。銃弾がかすめる音がする度に、銃弾が俺の身体に当たっていないか、と不安になる。初めは引き金を引くのをためらったが、相手が容赦なく撃ってくるため、こちらも引き金を引きざるを得ない。やらなければやられる。頭ではわかっていたつもりだった。幸い、俺は暗視ゴーグルを付けているため敵の姿が良く見える。短機関銃を何発か撃ったが、中々当たらない。敵兵が動いているのか、俺の射撃が下手くそなのか。恐らく後者だろう。意外にも陸軍部隊が善戦している。陸軍部隊が持っている自動小銃は、強力だ。502部隊の攻撃に対して浦田警備兵は、刑務所の中まで後退した。陸軍中佐が言っていた通り、刑務所には強力な兵器は無い。刑務所の門前や塀の周りには警備員の死体で一杯だった

 

「噴進弾、撃て!」

 

 軍曹の合図に兵士は、ロケット弾を再装填すると再び発射した。ロケット弾は警備員が固まっている付近の地面に着弾すると炸裂し、警備員達を吹き飛ばした

 

 両軍が交戦している最中、刑務所の裏口に近づく軍曹と俺。隠れていたのだろう、不意に物陰から敵兵が現れる。俺は反射的に引き金を引いた。勢い余って躍り出た浦田警備員は、弾を食らって倒れる

 

「いい腕だ。ただ、相手を確認してから撃て。味方を撃ったら、俺が殺す」

 

「……分かりました」

 

軍曹は怒鳴ったが、俺は息が上がっ警備員を見下ろしていた

 

 ……初めて人を撃った。俺は手が震えた。戦争だからってこうも簡単に人の命を奪っていいのだろうか?艦娘は、相手が深海棲艦とは言え、いつもこんな事をしていたのか?

 

「2時クリア!進め!」

 

 軍曹の合図で俺は正気に戻る。この陸軍の部隊は戦い慣れている。何処で戦ったのだろうか?しかし、そんな疑問は後だ。目的を忘れたわけではない。兵士達は銃を構えて侵入を開始した

 

「よし、数人は俺に付いてこい。残りは掃除だ!」

 

 激しい抵抗があったものの、何とか侵入に成功した。刑務所にいる警備員を掃除するため502部隊は進軍する。俺は軍曹とともに所長室へ向かった。建物内にも敵兵は居るため、片付ける必要がある

 

俺は短機関銃を敵兵を向けて引き金を引いた。もう迷う必要はない

 

 

 

 刑務所の所長は焦った。まさか、陸軍の特殊部隊がここに攻めて来るとは思いもしなかった。この停電はあいつらの仕業か?警備システムは作動せず、応援を呼ぼうにも電話すら通じない。奴らは電話線まで切断したのか?それどころか、予備電源までやられたとの事だ。あいつら、この刑務所に工作員を送り込んだな!

 

「連絡出来たか!?」

 

「ダメです!通信手段を徹底的に封じられました!」

 

「早く追い返せ!そのための最新鋭の兵器があるのだろ!援軍が来るまで持ちこたえるんだ!」

 

 所長は叫んだが、その時の彼は502部隊を侮っていた。クーデターを引き起こし浦田重工業を攻め込んだ陸軍の一個師団が負けた理由は、戦力の差が隔絶していたためだ。戦車はオモチャ、三八式歩兵銃を携え銃剣突撃しかしない陸軍に対して、暗視装置や自動火器、果てには重火器を持つ浦田の警備兵には敵わなかった。奇襲も簡単に撃破した。しかし、今攻めて来る部隊は少し違っていた

 

 短機関銃や突撃銃を手に持ち、何とロケット砲や装甲車まで持っている。戦術も画期的だ。万歳突撃なぞしない。いや、銃剣している者もいるが、転がってる警備員が死んでいるかどうかを確認するため、銃剣で突き刺している。今までこんな事はあったか?

 

 実は502部隊の陸軍中佐は、浦田重工業が造った兵器を密かに買ったり、戦術を学んだりして自分達の部隊に取り込んでいた。相手は見下しながら教えてくれたが、そこはどうでもいい。強力な敵に勝つためには、相手を知る必要がある。それに、幸いにも相手は米国でもソ連でもない。日本人だ

 武器の調達にも手を加えた。短機関銃は改造して何とか使い物になったが、自動小銃とロケット砲は独自開発は出来なかったため、銃の設計図を盗む事にした。残念ながら、それぞれ一枚ずつしか手に入らなかったが、それでも大きな成果だった。製造方法は派遣社員として工場に勤めた兵士から教わり、工業機械も小さなものであったが手に入れた。浦田重工業には、陸軍も近代化兵装をするため、と申請し購入した。浦田重工業にたて付くために動いている事がバレて爆撃されてしまったが、密かに地下に造った兵器工場は動いている。工作機械も無事だ

 

 入手した新兵器の設計図の表紙にはこう書かれていた。『64式小銃』と『RPG-7』と。『AK-47』という自動小銃の設計図も手に入れたかったが、残念ながら入手出来なかった。取りあえず、この二つは何とか製造出来た

 

 何処の造った国の兵器か知らないが(因みに64式小銃の設計図には『自衛隊』という単語が沢山出て来たが、中佐も軍曹も困惑した。そんな組織は聞いた事がない)、陸軍中佐はそれらを研究しコピーして自分の部隊に配布した。幸い、64式小銃には銃剣が取り付ける事が出来たため、三八式歩兵銃に慣れ親しんだ古参の者達もこれには満足した。また、アメリカから密かにブローニングM2重機関銃を買い、車両に取り付けて使用している。車両は浦田重工業製のトラックを魔改造して使った。装甲車や戦車は流石に製造出来ないため浦田警備会社から数台盗む事に成功した。泥棒だが、そんな事は気にしない。金で雇っていたとは言え、女性といちゃついた警備員が悪いからだ

 

 よって警備員達はこの敵に対して、困惑していた。明らかに、自分達が知っている帝国陸軍ではない!向こうも強力な火力で撃ち返している!しかも、自動小銃の弾も7.62mm弾だ。こっちはM16とは言え、弾は5.56mm弾だ。そもそも威力も射程距離も違う!狙いも正確だ!

 

「たかが銃剣突撃か自爆攻撃しか能がない軍隊なぞ追い払え!」

 

「おい、俺達はそんな風に見られていたのか。軍を舐めるなよ!」

 

 部下がおちょくっているのか、所長は振り返ったが、声の主は警備員ではなかった。更にいうと声も違うし、姿形も違う。しかも、警備員は床に倒れており、別の人間の人影だった。気づいた時には、押し倒され冷たいものが首筋に当てられていた。よく見ると日本刀だ!

 

「聞きたい事がある。艦娘は何処だ?」

 

「貴様!ここが何処のものだと思うのか?」

 

 くそ!まさか警備員がやられたのか!ここの警備をもっと厳重にすべきだった!何とか考えようとしたが、別の鋭い声が聞こえた

 

「さっさと答えろ!時雨は何処だ!」

 

 銃を当てられてながら、所長は声の主を見た。暗くてはっきりとしないが、間違いない。『大佐』の息子だ。こいつ……暗視ゴーグルを奪ったのか?全く不愉快な奴らだ

 

「良いだろう。鍵をやる。非常用だから空くはずだ」

 

 

 

 俺は銃を向けて軍曹が抑えている所長を脅したが、あっさりと渡してくれた。もう負けた事を悟ったらしい。軍曹は、鍵を奪うと明かりをつけて鍵を照らした。本物だ

 

「お前達……こんな事をしていいのか?」

 

不意に所長は嘲り笑いながら言った。日本刀に付きつけられているにも拘わらずだ

 

「どういう意味だ?」

 

「お前……いや、お前達は日本を敵に回した。浦田重工業はそこまで力がある」

 

「人々を犠牲にした奴が良く言う」

 

俺は冷たく言い放ったが、所長は無視して言い続ける

 

「犠牲だと?科学の発展には犠牲は付き物だ。浦田重工業は正しい。世の中を変える力を手に入れた。お前達は負け組だ。負けると分かっているのに戦うのか?」

 

「そうか!だったら、ここで撃たれても文句は言わないんだな!」

 

 今の言葉で俺は激昂し指に引き金を当てたが、それよりも早く軍曹が日本刀で喉ををかっ斬った。血は勢いよく飛び出し、俺は残酷な場面に吐くまいと顔を背け、必死に口を押えた

 

「さっきの威勢はどうした?」

 

「殺す事はないじゃないですか!」

 

「ちょっと頭に来ただけだ。馬鹿にされたのでな。……そうだ。クーデターとは言え、陸軍が負けた事はいい教訓となった。あのクーデターの中に俺の親友がいたんだ」

 

 軍曹の呟きに俺は、確信した。この人達は、何もしなかったのではない。敵を知り、新しい物を入手し我が物とする。そうでなければ、こんな芸当は出来ない

 

 その後、俺は軍曹と共に扉に待たせている工作員と合流した。警備員は排除したものの、一般の牢屋には囚人が沢山居る。流石に助ける訳にはいかないため放置する事にした。浦田民間警備会社が何とかするに違いない。何もせず放棄する事は無いだろう

 

牢屋越しに喚く囚人達を無視して、一行は特別区画の刑務所に向かう

 

待っていてくれ、時雨!今、助けに行く!

 




救出作戦開始!
武器を鹵獲し研究を行って改良。そして相手を攻撃。戦い方はゲリラ戦に似た戦い方。まあ、よくある手です。装備が劣ったままで、正々堂々と戦うとこちらが全滅してしまいます

 本作品でも10話で未来の提督は反艦娘団体から奪った地対艦ミサイルを使って深海棲艦の空母ヲ級改を撃破しましたから

 提督も銃を取って戦いますが、何しろ一般人です。今話ではあまり活躍しません。まあ、仕方ないです。超人ではないですから(ここ重要)

 本作品の502部隊は、浦田重工業から自衛隊が未だに使っているという64式小銃とメタルギアソリッド3でお世話になるRPG-7を奪い生産して部隊内に配布しています(浦田重工業は何処で手に入れたのか?とか聞かない)
また、陸軍がアメリカからM2重機関銃を買って使ったとありますが、これは史実を参考にしました。尤も、史実では航空機用(ホ103)にですが
一式戦闘機「隼」や三式戦「飛燕」など陸軍航空機に使われていたそうです

ミリタリー要素満載の話になってしまいましたが、次話でようやく提督と時雨の再会です
後に今話から第六章にする予定です
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