「軍曹殿、奴等逃げていきますぜ」
最期まで戦うと誓いヘリと交戦していた502部隊は訝し気に物陰から顔をだした
将校達とはぐれてから、攻撃ヘリと撃ち合いになったが、全く歯が立たなかった。固定翼機とは違う攻撃に苦戦したが、遠くで2機目の回転翼機が撃墜されてから上空に飛んでいたヘリは、撃墜した方角へ飛んでいく
「……まさか、艦娘とやらが撃墜した影響ですかね?」
「そうだとすると好機だ。中佐に連絡してみる」
軍曹は無線で連絡し指示を仰いだ。彼は罰を受ける覚悟をしていた。命令に背いて攻撃したのだから。しかし、帰って来た無線連絡はそんなものではなかった
「おい、撃墜した地点までいくぞ!奴ら、深海棲艦の姫を回収しているらしい!」
「いいではないですか?」
どうでもいいという風に呟く部下に軍曹は一喝した
「馬鹿者!奴らは深海棲艦を操るために回収しているんだ!それがどういう意味を表すか。最悪の出来事だろうが!」
勿論、これは助け出した『艦娘計画』を立案した海軍大佐からの説明だ。軍曹は未だに信じられなかった。艦娘計画を立案した大佐は、西村軍曹が残した記録を見たと言う。深海棲艦を操って全世界を攻撃して自分達のものにするなど……誰が考えようか?
初めは信じられなかったが、牢屋に閉じ込められた深海棲艦の姫2人、そして執拗に攻撃してくる浦田の民間警備会社。この事実は変わらない。認めたくないが、変わらない事実だ
「いいか、もうひと踏ん張りだ!」
負傷者は戦闘が終わるまで隠れるよう命じたると、現場に急行する。しかし、空を飛んでいるヘリとは違って到着まで時間がかかるだろう。全く、自分は漫画の世界に迷い込んだのか?本が一冊描けそうだ
時雨は提督と共に港湾棲姫が倒れているの所に向かったが、厄介な敵が現れた。バカデカイ音を立てながら攻撃ヘリが自分達の行く道の上をホバリングしながら阻む。時雨は武器を構えるが、突然、ローター音にも負けない拡声器がわれ鐘のような音を立てた。その音が人の声である事は理解出来た
『中々やるじゃないか!?まさか、AH-1SコブラとUH-60ブラックホークを落とすとは。だが、調子に乗るなよ。直ぐにあの世へ送ってやる!』
時雨と提督がAH-64Dのヘリが機関砲を撃ち始める前に、ヘリから離れるよう走り出した。廃工場の建物の影に身を潜んだが、ヘリは時雨と提督が隠れている場所にロケット弾を撃ち込んだ。そのため、2人はロケット弾が廃工場に命中して建物が崩れ出す路地から逃げ出さなければならなかった
広い広場に出たが、二人は立ち止まった。道がなかった。その先は海だ。岸壁の方へ走っていたらしい
アパッチが上空を旋回して海上にホバリングすると、機首をこちらに向ける
「クソ、しつこい野郎だ!」
提督は悪態をつきながら、自動小銃をへりに向ける。時雨も10cm高角砲をアパッチに向けたが、アパッチからは嘲笑った声が辺りを響かせた
『冗談だろ!アメリカが生んだ最高の
相手がいい終える前に、時雨は高角砲を、提督は銃の引き金を引いた。しかし、アパッチは攻撃を察知されて高角砲を回避した。自動小銃が放った弾丸は命中したが、ケロリとしている。この機体も防弾仕様だ
「くそ、逃げるぞ!」
提督の命令を聞くまでもない。時雨と提督は再び建物の路地に逃げたが、アパッチから強力なロケット弾による攻撃で辺りは崩れ落ちた。時雨も提督も落ちてくるガラスとコンクリートの破片に気を付けながら逃げ回る
「あの機体、さっきの奴と違って強い!どうしよう!?」
時雨は絶叫した。反撃しようにも、敵はその隙すら与えてくれない。躍り出て対空機銃で攻撃しようとしたが、それよりも早く機銃掃射を食らった。しかも、弾の威力は凄く、数発で中破まで持っていかれた。機銃掃射だけで大破されてしまうだろう
「何でコイツら、いい武器を沢山持ってるんだ!」
提督は絶叫した。流石に生身なので、無茶はできない。アパッチの攻撃力を見て、攻撃する事をためらってしまう。敏捷で禿鷹のようにホバリングしているへりに対して攻撃出来ない。ロケット砲であるRPG-7も狙えない。撃ったとしても、当たる訳がない。さっきのように油断してホバリングしていれば勝機はある。しかし、相手はバカではない
『出てこい!スクラップにしてやる!』
警備隊長は、ヘリの拡声器を使って嘲笑う声と共に提督と時雨が隠れているであろう場所に強力なロケット弾を食らわす。建物が崩れる中、警備隊長は見た。こちらに何かが高速で向かって来る。それは命中しなかったが、警備隊長は即座にそれが何なのかは分かった。RPG-7だ!
発射地点に向けてチェーンガンで叩き込んだが、今度は辺りに花火のようなものが上がった
『そんな攻撃で、このアパッチが落ちると思ってるのか!』
艦娘は馬鹿なのか?それとも、艦娘は地対空ミサイルは持っていないのか?ああ、そうだった。WWⅡ時の兵装だった。それなら仕方ない。残念ながら、高射砲で墜とせる兵器ではない。しかも、このアパッチは装甲を施している。高射砲の破片や自動小銃くらいで本気で落とせると思っているのか?いや、知らないようだ。コブラを落としたのは、パイロットが油断したせいだろう。全く……慢心するからダメなのだ!
ナイトビジョンで逃げ惑う艦娘を確認すると、30mmチェーンガンで狙い撃ちにした
高角砲と対空機銃を撃ちながら時雨は攻撃ヘリから逃げた。しかし敵機は中々、墜ちてくれない。もう、囮作戦なんて通用しないだろう。何とか打開策を考えながら逃げている内に、敵の攻撃ヘリからの機銃掃射を受けた。30mm機関砲の威力は強力だ。ロケット弾まで食らい、時雨はたちまち大破まで持っていかれた。陸の場合で大破の状態のままで攻撃を受けたら、戦死する可能性もある
「いい加減にして!」
弾丸が艤装や体に撃たれながらも、時雨は何とか別の建物の遮蔽物に隠れた。航空攻撃がここまで厄介なのは驚きだ
息を切らして地面に座り込む。弾薬も少なく、対空電探も無線もさっきの攻撃で壊れてしまった
上空では攻撃ヘリが旋回している。こっちを探しているのだろう
未だに銃声と爆音、そしてロケットの飛翔音が辺り一面に響き渡っている。502部隊や博士がどうなっているのか知る術が無かった
地面に座り込みながらも辺りを警戒する時雨。すると、暗闇から一人の人影が近づいてくる
その人影は提督だった。バケツと弾薬が入った箱を抱えながら
「補給と高速修復剤だ!急げ!」
こちらが攻撃を受けている間に、物質を取りに行ったらしい。破壊されたトラックから引っ張り出したとの事だ。と言うより、工廠の妖精達が、攻撃から免れた資源を安全な所まで運んだとの事だ。時雨はすぐに補給作業に入った。三分もしない間に、修復と補給を終えた
『出てこい!それとも、遺書でも書いているのか!?』
拡声器を通じてアパッチのパイロットの声が響き渡る。恐らく、この部隊を率いる部隊長だろう
「時雨、頑張れるか?」
「勿論だよ!このまま負けていられない!」
時雨は立ち上がると行動を起こした。物陰から躍り出た時雨は、アパッチに向けて高角砲と対空機銃をありったけ放った。高角砲がアパッチの回りに炸裂するが、アパッチは旋回して悠々とかわすとこちらに向けてロケット弾と機銃掃射を行った
『逃げろ、逃げろ!いつまで逃げられるかな?』
機銃掃射音と共に嘲笑った声が再び喚く。時雨は逃げながら、対空砲火を放った。物凄い戦いとなったが、それも一瞬だ。時雨を追撃していたアパッチが、攻撃を止め急旋回した。攻撃ヘリ付近に流れ星のようなものが横切ったのが見えた
『邪魔をするな!』
恐らく、提督が放ったロケット砲だろう。提督に向けて攻撃してくる。自分はともかく、提督は生身だ。ひき肉になってしまう。
アパッチが機首を変え、攻撃体制しているのを時雨は見逃さなかった
「僕を忘れていないよね!」
時雨は再び対空砲火を放った。偶然だろうか?アパッチ付近に高角砲の砲弾が炸裂した
『うおぉぉ!やったな!』
時雨は唖然とした。さっきのは確かに有効な攻撃だ。しかし、上空を飛んでいる攻撃ヘリは落ちない。煙すら吹いていないのだ
こちらを攻撃するかと思い身構えたが、アパッチは何と沖合いに向けて遠ざかっていった。
故障したのか?そう思ったが、それは早とちりだった。アパッチが海上の上空に向けて飛んだ理由が分かった。ミサイル攻撃するためだ!距離をとるためにわざと離れたんだ!だって機首をこちらに向けているのだから!
『食らえ!』
残忍むき出しの声と共にアパッチからミサイルが放たれた。あのミサイルは強力に違いない!未来で散々、ハープーンと呼ばれるミサイルを僕達の仲間が食らったのだから!
時雨は別の建物に隠れ、攻撃を防ごうとしたが、ミサイル方が早い。建物に入ると同時に、強力な爆音と爆風が襲った。廃工場である建物はミサイル攻撃で崩壊した
「こんな任務は引き受けなければ良かった!」
艤装は降りかかる瓦礫によってダメージを食らっていく。折角、高速修復剤で全快したのに!あの攻撃ヘリ、相当厄介だ!
攻撃ヘリであるアパッチは、機銃掃射しながら突っ込んでいく。時雨も負けじと高角砲と対空射撃で応戦した。しかし、タマの威力はあちらの方が強力だ。こっちの対空機銃は25mm。それに対して、アパッチに搭載されている機銃は、M230 30mmチェーンガン。しかも、正確な射撃も可能だ。余りの強さゆえに『空飛ぶ戦車』と呼ばれるいるのを時雨は知らない
逃走のあまり時雨は、足に何か躓いて転んでしまった。アパッチはそのまま飛び越してしまったが、旋回してまた向かって来る
「不味い!」
立ち上がろうとしたが、その前に何者かによって持ち上げられ運ばれた。自分は簡単に持ち上げられたが、何者かは知っている
「提督!降ろして、走れるから!」
「転んで倒れていたのに強がるな!」
提督が、駆けつけ助けてくれた。流石に武器は置いてきたらしく、別の建物に隠しておいたらしい。しかし、この攻撃ヘリに対して有効な武器ではないため、荷物になっているようなものだ。だが、時雨はホッとした。なぜなら、数秒後に時雨がこけた場所に攻撃ヘリは執拗にロケット攻撃をしたからだ
『隠れてないで出て来い!そうやっていつまで逃げ回る気か?』
攻撃ヘリが旋回している。あの鉄の怪鳥から逃げれそうにない
「ダメだ。ビクともしない」
弱音を吐く時雨。あんなものが空を飛び回り、強力な攻撃を仕掛けて来る兵器は初めてだ。『艦だった頃の世界』で戦った米軍の艦載機、艦攻であるTBF『アヴェンジャー』や艦爆であるSBD『ドーントレス』とは比べものにならない。一航戦や五航戦などが保有する九九式艦爆や彗星、九七式艦攻や天山も太刀打ちできないだろう。艦戦があれば、撃ち落す事が出来るかも知れないが、今はそれがない
しかし実際のところ、AH-64アパッチは時雨が思っている以上に厄介な攻撃ヘリである事を知らない
AH-64の攻撃力は、スピードを除けばP-51であるマスタングやP-47のサンダーボルトと言った当時の連合軍の最強戦闘機に匹敵する
23mm弾が直撃しても耐えるボディを持ち、メインローターが一部損傷しても最低30分は飛行可能。コクピットは、前席と後席の間に破片や爆風を遮る透明なブラスト・シールドが設置され、被弾した際に二名の乗員が同時に負傷する事を防止しており、座席にもセラミック製装甲を取り付けると共に、着陸脚や機関砲・胴体下部は、機体を水平にさえ保てば墜落のショックにも耐えられる耐震設計だ。しかも、暗視装置も備えており夜間戦闘も可能。ミリ波レーダーで敵戦車も破壊可能であり、対空ミサイルも2発装備出来るため対空戦闘も可能だ
時雨は、そんな化け物といえる兵器と戦っている。増援が必要だが、相手は攻撃ヘリだ。例え航空機が来ようが、返り討ちにされる可能性がある。流石に一航戦や五航戦などといった空母組が艦戦を沢山繰り出し、数で攻められたら分が悪いが、AH-64D1機だけで数十機の零戦52型や烈風などの艦戦に挑むバカはいないだろう。流石の未来の提督もアイオワも攻撃ヘリと遭遇して戦う事を予想できなかった。アイオワもAH-64アパッチどころか、攻撃ヘリや無人航空機と遭遇した場合の対処方法を記しておらず、動植物図鑑程度の内容にしか書いていなかった
それもそのはずで、AH-64Dアパッチは米陸軍所属だ。アメリカ海軍向けのAH-64の案は見送られている。米海兵隊はAH-64のデメリットである整備の複雑さを嫌ってAH-1の発展型であるAH-1W スーパーコブラ及びAH-1Z ヴァイパーを使い続けている。無人航空機であるMQ-9リーパーに至っては米空軍だ。アイオワは海軍所属であったため仕方のない事だった
「自動小銃相手では豆鉄砲だ。高角砲かロケット弾で直撃させるか、対空機銃でエンジンを当て続けるか。それしかない」
流石にロケット弾といった高威力の攻撃は撃墜出来るだろう。エンジンを攻撃すれば不調になって墜落するかも知れない
「弾切れまで待つって事は?」
「港湾棲姫が連れ去られる。502部隊が奪還しようとしてるが、もう一機の攻撃ヘリに邪魔されている」
状況を聞く限り、敵は何としても深海棲艦の姫を連れ去るらしい。保護した北方棲姫は意識不明の重傷を負っているため戦えない。502部隊も攻撃ヘリの前では無力だった
「まずは、あのアパッチをやるぞ!」
陸軍将校は、はぐれてしまった502部隊と合流したが、そこは激戦だった。相手はたった3機の回転翼機だ。にも拘わらず、翻弄されている。あの息子が、コブラと言っていた1機の攻撃ヘリと汎用ヘリであるブラックホークに部隊に大ダメージを与えている。死傷者は遠くに運ばせているらしい
「浦田重工業にこんな兵器があるとは!」
直接指揮を取っていた軍曹は、愕然とした。ここまでやられるとは思わなかった。まただ。自分の部隊は進歩した。しかし、敵わない。相手は本気になって相手をしなかったということになる
そうこうしている内に、浦田の警備員達は未だに気を失っている港湾棲姫の拘束を完了した。何重にも鎖を巻いている。浦田の警備員はさっそく、空輸の準備に取り掛かった。但し、港湾棲姫は普通の人と違って大きいため、ブラックホークには乗せられそうにもない。そこでヘリに吊るして運ぶ事にした。ブラックホークが港湾棲姫の上空にホバリングすると、警備員は早速、作業を開始した。その一部始終を見ていた陸軍将校は、軍曹に警告した
「港湾棲姫が連れ去られるぞ!」
「くそ!何でもいい!手段は問わない!作業の邪魔をしろ!」
部下達は苛烈に攻撃したが、攻撃ヘリが邪魔して中々近づけない。隊員の中には、RPG-7でブラックホークを撃ち落とそうと試みた者もいたが、攻撃ヘリが見抜いて阻止されてしまった
「全く!あんな化け物をどうやって倒せばいいんだ!」
建物に隠れながら、ロケット弾や機銃弾が雨のように降るのを見て、中佐は絶叫した。自爆攻撃も考えたが、それすら無理だろう。出る前に蜂の巣にされてしまう。被害も甚大。弾薬も僅かしかない
中佐は無線にスイッチを入れると、命令を下した
「聞け!てっ――」
撤退命令を出そうとした時、別の方向から爆発音が聞こえた。何だ?
数分前
時雨と提督は分かれて行動した。固まってもどうしようもない。提督が見えなくなると、時雨は広場に出ると旋回しているアパッチに向けて対空射撃を行った
『やっと出てきたか!準備運動は万全か?』
敵も馬鹿ではない。対空砲火を避けると、こちらに向けてロケット弾攻撃を始めた。物凄い衝撃が時雨を襲い、時雨は宙を舞った。しかし、地面に激突してもすぐに立ち上がり対空射撃を開始する。人ではこんな芸当は出来ない。艦娘だからこそ、出来る技である
『効かんな!』
嘲笑った声と共に機銃掃射される。蜂の巣にされたが、まだ耐えられる。幸い、武器システムに異常はない。双方で物凄い撃ち合いになったが、近代兵器の前では時雨は、劣勢に立たされた。アパッチは突然、回避行動を取った。提督がロケット弾を撃ち上げたのだろう。察知して回避行動を取ったのだ
『食らえ!』
体制を立て直すと、アパッチは時雨に向けてミサイル攻撃を行った。ヘルファイアミサイルだ。これを食らったら、タダでは済まない。時雨は即座に遮蔽物に隠れたが、ミサイルは遮蔽物ごと吹っ飛ばした。時雨は再び宙を舞った。
時雨はそのまま地面に倒れたが、即座に起き上がった。今の時雨は、本能で動いている。
今まで色んな者達を見送ってきた
『艦だった頃の世界』で体験した出来事。この世界の未来で自分のために命をかけた仲間達……
ここで……ここで提督が死んだら自分はどうするんだ!僕だけ生き延びても自分には何もない!今度こそ全てを失う!提督も戦ってくれるのは嬉しいが、提督は僕達を適切に指揮するだけでいい!
僕達が必要なのは司令官だ!艦隊を率いる旗艦のような隊長ではない!そんな者は艦娘にだって出来る!艦隊を編成し指揮する者が必要だ!未来でも提督がいなかったら、全員やられていただろう!そんな人間をこんな所で死なす訳にはいかない!
ヘリが時雨とは別方向に機首を向けているのを見て、直感的に感じた。アパッチは提督を狙っている!
「君の相手は僕だ!提督は僕が守る!」
絶叫しながら対空機銃を叩き込んだ。25mm三連装機銃はアパッチに向けて射撃を開始する。アパッチのパイロットも驚愕しただろう。くたばったと思いきや、まだ生きていたのだから
直ぐに回避行動に入ったが、ヘリのローターに機銃弾が数発命中。動力系統がやられたのだろうか?煙を上げながら、高度を下げている
「やった!やった!」
時雨は喜んだ。2機目もダメージを与える事に成功した。だが、時雨はすぐに顔を曇らせた。煙は出ているものの、中々落ちない。それどころか、体制を立て直したのだ
『嘗めるな!ガラクタごときにやられるヘリではない!』
物凄い衝撃が時雨が襲った。30mmチェーンガンを諸に食らったためだ。時雨は再び大破まで持っていかれた。しかし、時雨は何とこの攻撃を耐えている。普通の人間ならとっくにひき肉にされている
「この程度……この程度はあのクソ戦艦に比べて痛くもない!」
クソ戦艦とは、時雨を拷問した戦艦ル級改flagshipである。数日も暴力を振るわれたため、幸か不幸か耐性が出来てしまったのだ。銃撃される中、今度は主砲を狙おうと構えた時、アパッチは攻撃を止めた。それどころか、上昇している
「弾切れ?」
膝をつき傷口を押さえながら呟いた。敵は諦めたのか?それとも、本当に弾切れなのか?
しかし、次の瞬間、なぜ攻撃を止めたのかが分かった。ブラックホーク2機が現場から飛び去っていくが、その内1機は、港湾棲姫を吊るしていた
「待って!」
叫んで武器を構えたが、既に射程圏外だ。UH-60ブラックホーク2機はAH-1Sコブラに護られながら撤退している
追いかけようとしたが、現れた提督に止められた
「提督、放して! 」
「無理だ、諦めろ!あのアパッチは、時間稼ぎだったんだ」
提督は説得しようとして暴れる時雨を押さえたが、時雨は聞く耳を持たなかった。このままだと浦田重工業は深海棲艦の力をてに入れることになる
『ははは!命拾いしたな!今度、会ったときは命は無いものと思え!』
笑い声とローター音を響かせながらアパッチも撤退していく
時雨と提督は502部隊の連中と博士と合流したが、被害は甚大だった。特に兵士達の死傷者の数は多すぎた
「すみません。港湾棲姫は連れ去られました」
「仕方ない。我々は手も足も出せなかった」
軍曹は謝罪したが、将校は気にはしていなかった。いや、怒りや無念さはあるだろう。だが、ここで自暴自棄しても何も解決してくれない。それに、北方棲姫は無事だ。もっとも、当の彼女も負傷しているため何とも言えないが
「追っ手が来る前に逃げるぞ」
しかし、魔の手は再び彼等に忍び寄って来ているのを知らない。しかも、海の方から……
深海棲艦の息を吹き返すために港に着いた事が、事態を悪化させてしまった事に気づく者はいなかった
おまけ
時雨「何であのアパッチは、拡声器を使って喋りながら戦闘しているの!?」
提督「多分、参考にしたんじゃない?ある人物から?」
時雨「嫌な予感がするけど……誰?」
Mi-24(ハインドD)『スネーク!まだだ、まだ終わっていない!』
ソリッドスネーク「リキッドー!」
時雨「……うん、分かったよ。何を参考にしたか」
提督「ハインドDと違って撃墜出来なかったな」
AH-64は、ソ連戦車隊への対抗として生み出された攻撃ヘリ
湾岸戦争においては、イラク軍の戦車・装甲車を800台以上撃破したという。他にもレーダー施設や防御陣地の攻撃に投入され、大きな戦果を記録した事から強力な兵器です
……と言いたい所ですが、その反面、速度や整備性、燃費は悪いといった欠点を抱えています。余りの高額に防衛省は62機導入するはずが、13機で打ち切ったと(その内、1機は墜落しましたし)……
まあ、そんな高価な兵器を米陸軍は、約700機を保有していますから。国力の差ですね
AH-64アパッチは、スティンガー対空ミサイルを搭載することが可能ですが、だからといって戦闘機と空中戦をするという構想はありません
一方的に戦闘機にやられないための自衛用です
艦これSSの中で見つけたのですが、空母艦娘が放った零戦大群相手にオリ艦娘(輸送艦だったような?)はアパッチ数機で無双する描写……といったものですが、私はちょっと苦笑しました
基本的に、攻撃ヘリは固定翼機に比較して鈍足であるため、1vs1はともかく零戦の大群相手に対して攻撃ヘリと言えど負けてしまうでしょう
空母組がいれば攻撃ヘリを撃墜出来たかも知れませんが、残念ながらおらず……
MGS1でリキッド・スネークはロシアの戦闘ヘリMi24ハインドDでジェット戦闘機であるF16を2機落としましたが、ハインドDの搭載ミサイルは対戦車ミサイルだけです。この場合ハインドDではなく、リキッド・スネークの方が凄い(そしてハインドDは、ソリッド・スネークにあっけなく撃ち落されたのはナイショ)
それはそうと、前話の誤字脱字の報告ありがとうございます