最初に眼にしたのは真っ白い天井だった。意識が少しづつハッキリしていく、どうやら随分と眠っていたらしい…。
「知らない天井だ…」
時雨は呟いた。僕は……あの時……
勢いよく起き上がると驚いた。提督が椅子に座っていた。しかも、寝ていた。何時間寝たか分からない。ただ、喉が渇いた。そのため、提督を起こさないようベッドから出たが、床に足が付く直後、提督が起きた
「あっ」
「起きたか。すまん、うたた寝をしてしまった」
提督は謝った。時雨は、そのまま通り過ぎようとしたが、提督に止められた
「時雨……ごめん。俺は……」
「いいよ。提督は悪くない」
時雨の答えに提督は驚いた。違った答えを期待していたのかな?
「僕は悪かったんだ。僕がしっかりしていれば……」
「お前は覚えていないのか?」
「覚えているよ。変な気分だった。深海棲艦になったような感じがしたけど、気のせいだ」
提督は何か言おうとしたが、口を閉ざした。何があったんだろう?
「いや……いい。時雨……俺は逃げていた。自分の人生を切り開くのが……こんなに難しいなんて。しかも、組織のトップだなんて。俺には出来ないと思っていた」
「誰にも間違いはあるよ。僕達の仲間でもそうだから」
旗艦に当たった艦娘は、完全ではない。間違いはするし、失敗もする。それと同じだ。勿論、反省会はしている。過去から学ばなければ、同じ過ちをするだけだ
「時雨……俺はお前達である艦娘を指揮する者。提督になる資格はあるのか?」
「どうしたの?」
提督は未来の記録であるノートを引っ張り出し、手紙を見せた。それはアイオワが書いていたもの。提督はこれを読むように言われた
「未来の俺は、とんでもないものを造った。仕方ないとは言え、核兵器を造った」
「核兵器って?」
時雨は手紙を受け取ると恐る恐る読んだ。アイオワが書いた日誌。建造当日、あの大阪の戦いだった。アメリカ軍人が駐在していた別の場所で建造された。しかし、造られた日は既に深海棲艦からの猛攻を受けていた。アメリカ軍人は既に死んでいた。アイオワは己自身が近代化された装備を召喚してサラトガや長門達を救うために奮闘。だが、敵は強大になっており、自分だけではとても太刀打ちできない。そのため、冷戦期だった頃の戦争技術を思い出して対抗した。妨害電波、アルミ箔、待ち伏せ、全ての艦娘にCIWS配備、F-100スーパーセイバーやFIM-92スティンガーミサイルなど開発し基地の防空能力を向上……
しかし、敵も対策を繰り出しアイオワの対抗手段はほとんど無力化された。そして、核開発。アイオワはクロスロード組と言われる4人の艦娘……長門、プリンツオイゲン、酒匂、サラトガと共に核開発を推奨した。それはどんな都市だろうと巨大な軍艦だろうとたった一発で提督は余りの禁断の兵器に迷うが、行方不明だった艦娘達が人質にされ脅迫される事態になると核兵器の開発を許可した
「こんな恐ろしい兵器が……あるの?」
時雨は嫌な予感がした、いや、分かっていた。自分には。核兵器と呼ばれる究極兵器の使われたのは時と場所は。アイオワはウランの採取の際に襲撃に会い、プリンツオイゲン達を逃がすために奮闘し撃沈された。その中に未来の提督とのやりとりがあった
『アドミラル、核爆弾で自殺する気?』
『……違うと答えれば嘘になるな』
『世界の崩壊は誰にも止められない。国を守れず、避難民を見捨て、敵に敗北し、艦娘の大半を海に沈めた愚かな提督は他にはおらんよ』
時雨は歯ぎしりした。分かっていた。時雨を送り出した直後の仲間と提督は、何があたかを
「艦娘は俺を怨んでいるのか?敵が強かったとはいえ、敗北し仲間を沈めてしまった事を」
提督は悩んでいた。未来を変えるという気持ちはあるものの、これから起こる犠牲という弊害に少なからず躊躇いがあるらしい
時雨はポツリと呟いた
「酒匂さんは怖がっていた」
「え?」
提督は驚き時雨をマジマジと見た。時雨が酒匂を出したのは、提督が苦しんでいる1人だと直感的に感じた。後にアイオワからの手紙を見た。アイオワの記録を見て、未来の提督と時雨を除く艦娘達は死んだと言う現実を受け止めなければならなかった。なぜなら、手紙には核爆弾で自爆するような事をアイオワに言っていたからだ。長門達はどう思って恐ろしい核兵器を造ったのかは知らない。だが、酒匂の事は知っている。一緒に艦隊行動した事があるのだから
「港の廃工場の戦いで提督の無謀な行動に何か理由があるんじゃないかって。きっと、未来の記録で感じたんだよね。汚れ仕事を僕達に押し付けているって」
提督は何も言わない。恐らく、当たっているだろう。確かに現場で戦うのは僕達だ
「ある遠征の時に酒匂さんは旗艦に当たっていたんだ。でも、その前の日に僕は見たんだ。酒匂さんが阿賀野さんと能代さんの墓石の前で泣いているのを」
阿賀野も能代もミサイル艇を模した駆逐ナ級に沈んでしまった。矢矧は復讐に燃えていたが、酒匂は違っていた。気が弱かった
「その時は僕も一緒の艦隊だったから、声を掛けたんだ。明日、任務だから休んだらって」
時雨はその時の酒匂の言った言葉をそのまま伝えた。酒匂の本音を
『本当はね――本当の本当はね。旗艦なんてやりたくない。今すぐ何もかも放り出して逃げ出したい。お布団に包まって戦いや世界の終わりの事なんて全部忘れて眠りたい。でもね。それは出来ないんだ。逃げ場はないんだって。誰かがやらなきゃいけないんだって』
提督は銅像のように固まって動かなかった。プリンツオイゲンやアイオワ、そしてサラトガをあまりよく知らない。長門については、話す機会はなかった。しかし、時雨は酒匂を知っている
酒匂は阿賀野型4番艦。『艦だった頃の世界』ではほとんど活躍していない。姉である矢矧が大和と共に赴いた最後の戦いですら、酒匂は留守だった
「それでも、酒匂さんは戦った!完璧なんていない!だから!」
「そうか……だったら、艦娘は俺を怨んでいないんだな。俺は……お前達を指揮する資格はあるんだな!」
「そうだよ!」
提督は、神妙な顔つきで頷いた。その仕草は未来の提督と同じだった。改めて確認するが、この人は未来で艦娘を指揮していた人間だ!間違いない!
時雨は提督を向き合った。ずっと言おうと思っていた事を……
「提督……約束してくれない?」
「何だ?」
「浦田重工業を倒したら……僕達を探してくれない?」
時雨は腹を括っていた。この人なら大丈夫だ。本人は分からないだろうが
「どういうことだ?」
「僕は『艦だった頃の世界』から来た艦娘。でも、他にも大勢いる」
もう、仲間の記憶も薄れている。親しかった艦娘も曖昧な記憶になっていた。しかし……名前までは忘れていない
「白露姉さん、夕立、村雨、吹雪、暁、加賀さん、瑞鶴さん、鳥海さん、足柄さん……神通さん……川内……」
出来れば全員の名前を言いたかった。しかし、それが出来なかった。名前を口にする度に悲しさが溢れ出た。そして、自然と目から涙が流れた。仲間は沈められた。僕には何も残っていない。だけど、まだ希望はある
「ああ……約束する」
不意に視界が真っ暗になった。提督が僕を抱き締めたのだ。抱きしめられた腕も体も暖かかった
「それだけは約束する。浦田重工業をぶっ倒して、建造ユニットを取り返すと建造に取り掛かろう。その時、お前の仲間を紹介してくれ」
「う、う、う、うああぁぁー!!」
提督の言葉が引き金になり、今まで溜めていたものを全て曝け出す様に泣いた。暖かい涙がとめどなく零れて行った
「もう嫌だ!1人は!もう仲間が沈む姿を見送るなんて……僕だけが生き残るなんて!だって!」
「ああ。そうだな」
暫くそうしたい。そう思ったが、不意に提督の手が緩んだ
何があったのだろう。目を上げたが、提督は扉の方へ向けている。時雨は、扉の方へ目を向けると、即座に提督から離れた
何時から居たのだろう?扉に博士が居た
「すまん。ノックしても返事が無かった。それに泣き声がしたから慌てて入ったのじゃが」
「言い訳は醜いのではなかったのか?」
提督は呆れるように言ったが、その反応は落ち着いていた。以前と比べて
「一本取られたな。実は見せたいものがある。時間があるときに来てくれ」
「僕はもう大丈夫。何があったの?」
時雨の返事に博士は頷いた
「前日に無人航空機から襲われた時に渡された対空機銃、CIWSというものについてじゃ。あれは、キャリーケースに巧妙に隠されていた。あるものと共に」
「あるもの?」
「見ればわかる。だが、とても辛い内容じゃ。それでも、知りたいかね?」
博士の問いに時雨は頷いた。無力だからと言って逃げてはいけない。提督も頷いていた。提督も腹を括ったらしい。もう大丈夫だろう
僕はまだ大丈夫だ。建造ユニットさえ取り戻せば、仲間に会える
……僕が生き残れたら。仲間は僕が守る
おまけ
提督「何か……未来世界の俺は、ブラック鎮守府SSにあるブラック提督みたいだ」
時雨「流石に違うよ。内容も違うから」
提督「なら、安心だ。ブラ鎮SSは嫌いだよ。内容が何処かの独裁者みたいで。艦娘のキャラ変わっているし。救う手段もほとんど似たような内容だから」
時雨「もし、提督はブラ鎮にいる艦娘をどうやって救うの?」
提督「ん?俺ならこうする」
~回想(あり得たかも知れない物語)~
ある新米の海軍士官に異動命令が下った。それはある鎮守府にいき、提督の補佐として就くこと。しかし、そこの鎮守府はブラックだった
士官「酷い。ここは刑務所か?」
ここって軍の施設だよな?整理整頓は当たり前という軍の常識を無視、そのため鎮守府は幽霊屋敷。腹が減っては戦は出来ないということわざを知らないのかと思うほど食事すら与えず、娯楽すらないため艦娘達も生気がない。海軍士官学校に出たのかと思う程の頭の悪いブラック提督だ
そして艦娘を差別しているにも拘わらずお気に入りの艦娘がいれば、ダッチワイフとして寝室に連れて行かれる
士官「こんな行為は許されない。何とか証拠を……」
証拠を掴むため提督室に入る。誰もいない。その代わり、床には艦娘が身に着けていた服をみつけた。パンツまで
河内「何しているんだ、あの提督。しかし、このパンツ……フォォー!」
寝室
ブラック提督「榛名、お前は俺の命令を無視した。大破進軍を拒否するとはいいご身分だな。お前の姉妹がどうなってもいいのか?」
榛名「申し訳ありません。お詫びに榛名を。榛名を……」
ブラック提督「うむ、いい眺めだ。では、姉妹を解放しようじゃない」
榛名「ありがとうございます!」
ブラック提督の言葉に榛名は思わず涙を流した
ブラック提督「そういう訳で榛名。君にプレゼントだ」
榛名「え……?」
ブラック提督「君は働かなくていい」
パァンッ!!
部屋に一発の銃声が響いた
???「残念、それは私の尻です」
榛名に撃ち込まれた弾丸を何者かがケツで受け止めた
ブラック提督「なんだこの変態は!?」
そこには艦娘のパンツを顔面に被り、ブリーフ一丁の男が立っていた。
士官(?)「俺の名は、変態魔神……貴様のような悪党を倒す為に神が遣わした正義の変態だ!」
ブラック提督「やはり変態じゃねえか、憲兵!」
ブラック提督の合図とサブマシンガンを構えた憲兵が現れると同時に銃声が響いた
ブラック提督「やったか!?」
士官(?)「くっ」
ブラック提督「これだけの銃弾を受けてまだ立ち上がるつもりか?」
士官(?)「バカめ、俺は痛めつけられればつけられる程に俺は強くなる!例え銃弾だろうと!」
ブラック提督「まさか、コイツはM!」
士官(?)「フォォー!」
震える憲兵達が予備の弾倉に手をかけるより早く次々と顔面に股間を押し込んでいく
「ひゃあぁ」
「ぎゃあぁ」
「うわあぁ」
一瞬で3名の憲兵達は悶絶しながら倒れた
ブラック提督「くっ、来るな!榛名を殺すぞ!」
士官(?)「トウ!」
ブラック提督「体の自由が!?」
投げつけられた縄が体に巻きついて一瞬で亀甲縛りになった
士官(?)「ここに所属する艦娘達を釈放しろ!」
ブラック提督「わかった。解放する」
士官(?)「よし、だがお仕置きは別だ!」
天井に亀甲縛りにされたブラック提督の綱を強く引っ張ると強烈な締め付けでブラック提督は気を失った
後日
士官「おはよう、諸君。本日からここの鎮守府の提督を勤めて頂くことになった。よろしく」
ブラック提督は逮捕され、新米の士官は提督になった。艦娘達は困惑した
霧島「あの人、大丈夫なのかしら?」
金剛「分かりまセーン。榛名は何故か落ち込んで部屋に籠ってイマース」
摩耶「変な噂聞いたぜ。ブラック提督をやっつけたのは変態だって」
龍田「さっき天龍ちゃんが刀を振り回して提督を襲ったけど、何故か顔を真っ赤にして泣きながら逃げていったわ」
夕立「他の皆も同じ事をやって、顔を真っ赤にして逃げていったっぽい。スカートを抑えながら」
鎮守府は新米の提督によって改善された。艦娘達も笑顔が戻った。ただ、変な能力を持っていたため艦娘は下着を隠すのに躍起になっていた。大本営も憲兵隊も変な能力を持つ新米提督にドン引きし、過度の干渉はしなかったという
~回想終わり~
提督「俺ならこうする」
時雨「何で変態仮面なの?」
提督「誰もやらないからだ」
時雨(ブラック鎮守府SSのテンプレを根こそぎ破壊したね)