時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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第67話 侵略者の過去

浦田重工業の本社ビル

 

 浦田社長は計画を前倒しした。いずれ真実はバレるだろう。しかし、時間稼ぎであるねつ造は可能だ。陰謀やそれに近い情報を流せば簡単な話だ。幾つかのカバーストーリーを流せば、国の機関は愚か国民も分からない。マスコミは企業には頭が上がらず、平行世界の日本とは違ってインターネットというものは存在しない。真実は闇の中だ。こちらが警察捜査するような話があれば別だが、今はそれはない。まだ異世界とのつながりは重要だ。ワームホールは機械に組み込まれているため、そう簡単に消滅はしない

 

 

 

 あの日。隕石が落ちて己の田畑が滅茶苦茶になり絶望した日。私は変な現象を見つけた。自分の田畑の真ん中に光の靄のようなものだった。初めは霧か何かかと思ったが、どうも違う。煙にしてはおかしい。その靄は空気に散開せず留まっている。そして、その近くに妙なものがあった。小さい四角のような変な物体だ。あちこち弄ったが、あるボタンを押したら四角い物体は光ったのだ。よく調べると機械だ。こんな精巧な機械は見た事が無い。初めは軍か何かの極秘研究ものだと思った。しかし、調べてみる内に分かった。これは違う。一般人が娯楽で使うものだと。写真に写っている人や風景を見たら分かる。軍が遊び道具に使うものを開発する訳がない

 

 私は光の靄を調べるために小屋を建てて邪魔者を片付けた。野次馬を追い払い、警察や専門家達に隕石を渡して立ち入りを拒否させると早速、例の現象である光の靄を調べた

 

 私は色々試した。石を投げると靄に消える。石の他にボール、桑、植物……光の靄に投げると物体は、神隠しにあったかのように消滅する。数日間、小屋に籠り実験をしていたため、周囲から変人と呼ばれた

 

だが、呼ばれても気にはしない。田んぼは無くなった。両親は既に他界し、妹は別の場所にいる。こいつをどうやって金儲けするか考えなくては

 

ある日のこと……靄から人が来た。いや、人と言うより死体だ。変な服を着ていた間抜けた男性の死体だ。遺体を調べたが、どう見ても光の靄のせいではないと分かった。無数の切り傷と殴られた跡が死体の身体に沢山あったからだ

 

「これは?」

 

私は恐怖よりも興味が沸いた。もう失うものはない。父は戦死し、母は病死した。自分自身では生活できないため妹は親戚に預けられた。百姓として田畑を耕したが、隕石で全滅。だからこの目で確かめたい。光の靄の向こう側には何があるのかを。距離を保つと光の靄に向けて突進した

 

 

 

 気がつくと私は、ベットに寝ていた。誰かが快方してくれたのだ。起き上がって辺りを見渡したが、部屋には変な置物と神具。そして、如何にも怪しい女性が微笑みながら座っていた。私が起き上がった事に気付いた女性は、一例をすると語り出したのだ

 

「大丈夫ですか?教祖様が驚きました。神が使いを送ったと聞いて皆は喜びました」

 

「ここは何処だ?あの光の靄は何だ?知っているのか?何処にある?」

 

しかし、女性は神だと教祖様だと言っているだけで話にならない。外の様子が知りたく窓を覗いたが、風景を見た途端驚愕した。バカデカイ建物が沢山並んでいたのだ

 

「ここは……何処なんだ?」

 

 女性に迫ったが、わけのわからない事を口走ってこちらに罵って来た。話にならないので、行く手を阻む女性を押し倒すと脱走した。周りから変な衣服を着た集団が来たが、全員殴り倒した。幼い頃、いじめられていた事もあって喧嘩には強い。それに隠し武器もある。ある者が見たこともない拳銃を取り出したが、私は引き金を引くよりも早く銃を奪った。刃物で脅かされ金を巻き上げられた事もあったので死の恐怖はない。寧ろ、刺して見ろとハッタリを噛まして追い出した

 

「出口は何処だ?」

 

 男性は失禁しながらも簡潔明瞭に答えると殴り倒した。拳銃を隠し持ち、出口に逃げる私。出口には行く手を阻むものがいたが、私が拳銃で2,3人射殺すると全員は尻尾を巻いて逃げた。外に出た私は混乱した。見たこともない建物と物凄いスピードを出して走る車。見慣れない服装をして歩いている一般人。そして、例の奇妙な機械を弄りながら歩く者もいる。光の靄に現れた機械とソックリだ

 

 しかし、驚くことは後だ。私は逃げたが、遠くまでは行かなかった。ここが何処なのか?アメリカかと思ったが、看板や道路標識は日本語だ。話している通行人も日本語を話している。天国かと思ったが、違う。こんな変な天国は聞いた事が無い

 

「見つけたぞ。神の使い!」

 

後ろを振り返ると変な集団がまたしても来たのだ

 

「教祖様がお待ちだ。我々には救済が必要なのだ」

 

 私は気付いた。こいつらは宗教団体なのだと。教祖様というのもペテン師なのだろう。私は素直に彼等の脅しに従った。いや、従ったフリをしていた。下手に動くとこちらが危ない

 

 

 

 それからは私が驚くようなものばかりだ。ここは確かに日本だ。文明が発達した日本。私がいた世界とは違う日本。高層ビルが立ち並び、私が知っている東京は見違えるように変貌していた。そして、何よりも食い物が沢山ある。この世界の住民は、こんな美味いものを食って生活しているのか?

 

この世界で色々な事を学んだ私はある結論に達した。あの『光の靄』によってこの世界に来たのだ。その光の靄はある宗教団体が保有する施設に出現したらしく、信者達は崇めていたという。祠に収められた感じで。そして、どうも私を神の使いか何かと勘違いしているらしい。教祖様にも会ったが、うん臭い者だった。第三者が見れば、ペテン師だと言う事くらい分かるのに、入信者は驚くほどに多かった。イワシの頭も信心からと言うことわざがある。正にそれだった

 

 

 

 私は天国に用があると誤魔化して光の靄に入ったが、あっという間に私が住んでいた小屋の中についた。夢かと思ったが、違う。盗んで隠し持っていた拳銃がある。私はあの宗教団体に捨てたと誤魔化した。警察が聞いたら鼻で笑う嘘だが、あの宗教団体の信者はそれを信じている。間抜け過ぎる。いや、奇妙な現象が起こったのを目の当たりにしたのだから無理もないのだろう

 

 

 

 その日以降、私は向こうの世界から金目になりそうなものを持ち込み、土地一帯を買った。邪魔な奴らは自殺を見せかけて殺した。色々と調べていく内に分かった事があった。専門用語を使うなら、あの世界は別次元の世界……つまり、平行世界の日本だと。向こうの世界にも西暦があったため分かったが、どうやら半世紀以上の未来の日本だ。時間旅行したかと思ったが、違う。歴史の成り立ちが微妙に違うのだ。信者の中に高学歴の学生がいたため、私はその学生から歴史と科学を学んだ。その学生は天国と勘違いしているらしく、丁寧に教えてくれた。そして、平行世界の日本の歴史も学んだ。そう……第二次世界大戦勃発から現代までの様子を

 

「間違っていないのか?」

 

「歴史は間違っていない」

 

「つまり……軍が暴走して日本を堕落させただと?そして……アメリカの傀儡になっていると。今も在日米軍がいるのだな?」

 

「そうです」

 

信者は私を恐れながらも答えた。神の使いがお怒りになられたと勘違いしているらしい

 

「地下活動していた共産党は?軍部が無くなったのだから、喜んだのだろう。私はマルクス関連の本を読んだ。当然、富を平等に分け与えたという行動をしたのではなかったのかね?」

 

「それは……」

 

 信者は口ごもっていたため、私は強引に聞きだした。彼は共産党支持者だった事は知っている。しかし、彼から出る言葉は意味を持たない『平和』のことばかり。敗戦を軍部に押し付けたのはいいが、よく分からない政党になっていた。中身が全く無い

 

「我々は世界平和のために――」

 

「何てことだ!相手を罵る事しか出来ないのか!」

 

 怒りを顕わにした事により、その男は逃げてしまった。テレビというものを見たが、政治家というのは、考えている事が分からない

 

 その日から私は、この世界の社会情勢や世界史を学んだ。情報社会もあって、様々な事を学んだが、どれも失望させるようなものだった。日本は米国と近隣諸国から振り回されている。経済も停滞しており、少子化対策もままならない。工場も人件費削減のために海外に出る始末だ。貧乏だった頃に憧れていた『共産主義』もソ連や中国の実態を見れば明らかだ。マルクスの考えているものは理想しかない。しかも、ここの政党も首相を蹴落とす事しか考えていないのか、国会討論も下らないものばかりだ

 

「良いだろう。政治理想はそんなものだ。所詮、夢物語だ!リーダーが贅沢な暮らしが出来るシステムだ!私は私の世界を変える!第二次世界大戦が起こるであろう世界を変えて見せる!」

 

 

 

 私は光の靄についてどうにかならないか調べていた。幸い、有名大学の学生がいたために教授を紹介してくれた。教授もこの宗教団体の信者だったため、口止めは容易だった。光の靄を維持するための装置は、教授が用意してくれた。何でも物理学の人らしいが

 

「私もよく分かりませんが、この光の靄は一種のワームホールでしょう。信じられませんが、これは興味深い現象です。アニメに出て来る猫型ロボットのアイテムが実現出来るかもしれません」

 

 教授は目を輝かせていた。そして、向こう側の世界に行って見たいらしい。しかし、それは私が禁じた。お前たちは天国へ行く資格はないと脅したのだ。例え、入ったとしても向こうの世界には罠を仕掛けている。何人かは入ったらしいが、気絶させ連れ戻した

 

 教授が作ってくれたワームホール維持装置のお蔭で持ち運びが出来た。と言っても小型トラック並に大きかったため、不便過ぎた。鉄の箱から幾つものの電線が伸びており、光の靄に絶えずエネルギーを与えている。電力は小型発電機のもので十分だという。そして何故かは知らないが私のいる世界では、鉄の箱を通じて光の靄は動かせるのに、平行世界の日本に現れた光の靄は動きもしない。向こうの世界にも同じ処置は施しているにも拘わらずだ

 

 しかし、それで十分だ。私は行動を移した。教祖様に従い宗教団体のために誓うと共に仲間を通じてあれこれ購入する事を命じた。私は教祖様の従うフリをしながら、資金調達のために商社を立ち上げた。信者の仲間も喜んで私の手伝いをしてくれた。利益を上げているのだから付いて来るのは当然だろう。しかし、私には野望があった

 

 この宗教団体の信者は、人材が豊富だった。溺れる者は藁をもつかむというのか、何かを信じなくては生きて行けないらしい。そこで私は、彼等に目標を与えた。私のために働いて欲しい。そうする事で神に救われるのだと

 

 私は大掛かりな計画を実行した。私の世界の横浜に小さな工場を立てると早速、業務を開始した。平行世界の日本の業者だけでなく、海外からの大量の古い機械を一式購入させると、私の世界に持ち込んだ。企業からリストラさせ職を失った技術者を雇い入れ、私の世界に送らせ働かせた。但し、外出は禁止だ。平行世界の日本とこの世界との技術差があり過ぎるため、私の世界で雇った社員が科学知識を理解するのに長い年月を労した

 

 皆は教祖様のため、そして神のために働いているだろう。それは私が言える立場ではない。本人が幸せならそれでいい。但し、私はうん臭く国家転覆を狙おうとしている教祖様とは違い、目標があった。それは私が住んでいた世界を変える事。そのためには、私の住んでいる世界で財閥に匹敵する程の大企業になる事。それを実行するためには苦労した。光の靄を通じて持ち込める資材の大きさは限度があるものの、ワームホールを通じて機械や車両、資材等をどんどん運び入れた。私の世界で浦田会社を設立し、様々な改革を推し進めた。戦後の高度経済成長期を参考に様々な製品を日本に売りさばいた。尤も、平行世界の日本とは違って技術はローテクだ。しかし、私の世界ではこれでいい。中古だろうが、立派なものだ。特に冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビは人々を驚愕させた。たちまち、商売が繁盛して大企業まで発達した

 

 勿論、平行世界の日本である宗教団体にも金を渡さないといけない。使っている貨幣が違うため、金塊で払う事にした。これであの教祖様は満足だろう。躍起になって選挙運動しているらしいが、どうせ落選する。悪趣味な格好と現政権の揚げ足ばかりしている演説に誰が同調するのだろうか?しかし、隠れ身には最適であるため当面は維持しておきたい

 

 だが、問題が起こった。余りに商売が上手く行く事から周りが不満を持ち、中にはヤクザを雇って社員を襲って来た。私は民間警備会社を立ち上げ警備と治安維持に当たらせた。初めは傭兵だけだったが、今では陸軍の一個師団にも渡り合える程の戦力を増した。兵器は密輸を利用して私の世界に持ち込ませた。しかし、私は私が住んでいる世界でも現代兵器が使えるよう考え始めた。『光の靄』が突然、閉じるかもしれない。補給や物資が途絶えたら、平行世界の兵器はスクラップになるだけ。中古のものでいい。何とかしなくては

 

 私は直ぐに行動に出た。その頃だろう。平行世界の日本の軍人と出会った。いや、平行世界の日本だと『自衛官』と言う名称らしい。1人は元陸上自衛官らしく、宗教団体の用心棒として雇われた者。もう1人は母親が宗教団体に入信したためあの手この手で引き戻そうと躍起になっているらしい。母親は気の毒に騙されてしまったらしい。しかし、その母親は病弱している。私はそれに目を付けた

 

 私は2人の自衛官と接触した。前者はともかく、後者は私の行動に不信感を募らせていたが。しかし、彼は幕僚監部という自衛隊の中央に働いているため、逃すのは惜しい。母親の退会と治療費を利用して彼から平行世界の軍事学を学んだ。それを元に私は警備会社を増強させる事に成功した。兵器も自衛隊が退役し廃棄しようとしているスクラップ工場から頂いた。中身は大改修になるが、それでも強力だ。また、海外からも兵器を幾つか調達した。平行世界の水準だと骨董品だろう。しかし、私の世界では最新鋭兵器だ。それ以来、襲撃は無くなった

 

それからだ。私の世界の日本と浦田重工業が急成長したのは

 

 私は私の世界で大企業の社長になり、国を豊かにすることは出来た。私は経済界だけでなく政治の発言力を増した。私の世界では人々の生活は一変した。平行世界の日本とは比較にならないが、それでも急成長した事には変わりない。周りから日本の大天才と称されたが、気にもしなかった。それよりも、世界大恐慌や関東大震災の被害を防ぐ事に力を注いだ。こちらのやり方に不満を持ち、軍のクーデターも持ち込んだ兵器と警備会社の警備兵によって撃破した。全て平行世界の日本のお陰。あのワームホールは私の宝だ。利用してきた

 

 ただ、誤算があった。確かに私の世界では、日本は豊かになった。しかし、政治家は何処の世界にいっても変わらない。政治家や軍人や他企業の社長と付き合う事になったが、形だけ。助言はしたものの口約束か無視かのどちらかだ。それどころか、平行世界の日本の歴史と同じように戦争……第二次世界大戦が始まろうとしている。既にヨーロッパの国々が火花を散らしている。また世界大恐慌を凌いだ事もあってか、軍部は野心を高め中国大陸に進出しようと躍起になっているし、政治家もよく分からない存在になっていた。クーデターを起こして大人しくしていたかと思ったが。アメリカも急成長した日本を警戒してか、技術を寄越せと言って来ている。内容も恐喝に等しかった

 こんなはずはない。国を豊かにしたはずなのに……戦後の高度成長期を真似たはずなのになぜ、こうもばかな事をしているのか?

 

 

 

 そして、もう1つの問題があった。そう……深海棲艦という正体不明の艦隊だ。私の前に現れたのと同じようにワームホールが開いた。ただ、違うのは黒い穴だった事だろう。そして、巨大な故かエネルギー供給しなくても消滅はしない。そこから現れたのは、深海棲艦という異形の怪物

 

 通常兵器が効かないというよりも、私はこの現象に驚いた。平行世界の日本の歴史とは違う現象に戸惑いを感じた。そして、更に悲しい事が起こった

 

 妹が死んだ。何とトラック島で働いていたらしい。そこを深海棲艦に襲われた。生存者は数人だけ。その中に妹はいなかった

 

 実は事件以前にこちらの勧誘したが、妹は断った。何故かはわからない。ただ、学生時代からいじめに会った事もあり精神面に不安定だった。私は何も出来なかった。高校で自殺を図ったのを聞いて駆けつけても彼女は何も答えなかった。水商売を始めたらしい。会社経営に馴染めないのか入社をことごとく拒否した。しかし、私は咎めなかった。本人の自由だ。そうだろう

 

 私は深海棲艦を撃破するための兵器を開発しようとしたが、どれも失敗の連続だった。どういう仕掛けかは知らないが、兵器が全く効かない。試しに近海で泳いでいる駆逐イ級に対戦車ヘリであるコブラで攻撃したが、ケロリとしている

 

「何なんだ?」

 

 私は困惑した。平行世界の日本の科学技術でも効かないとなると倒し用が無い。金儲けに繋がると思ったが、それも無理だ。イージス艦という兵器を持って来れば勝てると見越した考えも甘かった。奴等はどういう原理で物理攻撃を無効にしているのか分からなかった。大東亜戦争は起きないだろうが、それでは解決出来ない。第二次世界大戦は日米戦争だけではないのだから

 

私は世界を変える事に諦めた。あの戦艦ル級改flagshipと出会うまでは

 

「久シブリ」

 

あの日、深海棲艦の工作員か何かが侵入してきた。彼女は人間とは思えないほどの身体能力で警備兵を無力化すると私に交渉しに来た

 

「社長、気は確かか!?罠かも知れないぜ!」

 

 元陸自の隊員である警備隊長は警告したが、私は無視した。私はこの異形の女を知っている。本能で分かった。目の前にいる戦艦ル級改flagshipは敵ではないと

 

 

 

 彼女から提案があった。私に手を貸すと。その代わり、トラック島にふんぞり返っている姫を倒すための力がほしいと。警備隊長は不審な目で睨んだが、通常兵器で深海棲艦を倒す方法を教えると提案した事に彼は納得した

 

 直ぐに要求に応じ、どこにも負けない戦艦の設計図に取り掛かった。戦艦ル級改flagshipの話だと艤装を自在に操り設計図だろうが、それを元に実現出来るものだという。但し、それが実現可能なものであるのみ限る。例えばSF創作に出ているレーザー銃や人型ロボットは不可能だ。あくまで人が開発した兵器のみ。平行世界にある兵器も人が造ったものだ。架空兵器ではない。よって再現出来るはずだ。しかし、問題があった。平行世界の未来には戦艦は無かった。空母とミサイル駆逐艦が主流となっているため、全く参考にはならない。ミサイルもいいが、当時は護衛艦の資料は持っていない。私が立ち上げた警備会社も海戦なぞ想定しておらず、海上保安庁が保有する巡視船ぐらいしかない。そのため、あの自衛官に最強の戦艦を造るにはどういった兵装がいいか聞いて見た

 

 彼は渋りながら戦艦の設計図を製作したが、ますますこちらを不審がった。しかし、後は引けない。完成した設計図は架空艦だった。ある国が造ろうと予定されていた戦艦を参考にあれこれと電子機器を取り付けた感じだ。流石に全て搭載すると大負担になるため、分散する必要があると助言されたが、私は満足した。戦艦ル級改flagshipは、このような設計図や兵装を再現可能だからだ。戦艦のデメリットは聞き流した。まさか、この自衛官も軍艦が擬人化しているなんて思ってもいないだろう

 

 戦艦ル級改flagshipは通常よりも大幅に強化された。そしてトラック島を拠点としていた姫級3人と戦艦レ級を襲って大破させ、トラック島を完全に制圧した。深海棲艦はボスである姫級全員がやられるのを見ると蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。しかし、いくつかは従うのか膝を着いて忠誠を誓った。どうも、蟻や蜂のような存在らしい。戦艦ル級改flagshipのお陰で一部の深海棲艦は操れる事が出来た。深海棲艦がやって来たワームホールを抑え、その海域を封鎖した。深海棲艦を研究している海軍中将。後の狂人が深海棲艦を嫌う特殊電波の発生装置を設置した。それにより、ワームホールを破壊しなくても向こうの世界から深海棲艦がやって来れないだろう

 

 私は壮大な計画を立てた。深海棲艦を操り第二次世界大戦の参戦国を徹底的に破壊して戦争を止める。例え深海棲艦がこの世界から居なくなっても、連合国と枢軸国は戦争をするだろう。誰も平和なぞ考えてもいない。特にアメリカとソ連が立ち上がれないほど徹底的に叩かなければならない。そうすれば冷戦は起きない。そのため、深海棲艦の兵装更新と対抗する兵器であるイージス艦建造を行った。

 

 イージス艦を作ったのは深海棲艦を倒すための兵器。しかし、それは嘘八百だ。金を巻き上げるためのもの。本場のイージス艦と比べても天地の差だ。本当の目的は、軽巡ツ級にイージスシステムを取り入れる事。イージスシステムは強力な兵器である分、ある程度の大きさが必要であるため軽巡ツ級を選んだ。確かに通常兵器は効かないだろう。しかし、念に越したことはない。港湾棲姫が嘘を言っているかも知れない。他の深海棲艦が急襲された場合の対処法だ

 

 イージス艦建造は流石にすべてコピー出来なかったため、民間用の電子機器を組み込んだ。平行世界の日本では、イージス艦は最高機密の兵器だ。彼から聞き出せない。怪しむからだ。データは機密だったため入手出来なかったが、ある手段を使った事によって手に入れた。勿論、偽装工作もバッチリだ

 

 この事件は、公安も防衛省も不審に思うだろう。海上自衛官1人自殺、近隣諸国の工作員多数と大使館の関係者が全員殺された不審死事件には。外交問題になるかもしれないが、平行世界の日本がどうなろうが知ったことではない。それに、市民団体も使える。何しろ、訳の分からない事を喚きながら国会議事堂前に居座っているのだから。彼らには殺した犯人は政府が雇った右翼と警察が極秘裏でやったと吹き込んだら、市民団体どころかマスコミまで疑いもなく信じたのだ。平行世界の日本の国民はこの程度だ。科学技術は素晴らしいが、思考が幼稚だ。これで暫くは真相にたどり着けないだろう

 

 これで安泰だ。そう思ったのもつかの間……あの海軍士官が対深海棲艦用の兵器を作り上げた。そう。それが艦娘計画だった。しかも、平行世界の日本の過去の軍艦から生き返らせるというやり方らしい

 

 私は怒り狂った。このままだとこちらに優位が立てないと。第二次世界大戦の参戦国が艦娘やらを建造されればこちらの計画は破綻する。時雨の能力を見てもそうだ。練度が高いと無双とも言える存在になれる。しかも、そう簡単に沈まない。深海棲艦ほどではないが、身体能力も高く生存率は軍艦に比べて遥かに高い

 

 私は恐れた。自分の計画を台無しにする存在を。私は憎んだ。太平洋戦争で悲劇を生み出した旧日本軍の亡霊に。だから、博士が造り出そうとしている艦娘を葬る必要がある。海に沈めるべきだ。幸い、私には奪った未来兵器がある。これがあれば、こちらは被害を受けずに難なく沈める事が出来る。戦艦ル級改flagshipは艦娘の報告書を見て鼻で笑った。建造した際には、演習として使いたいと。要は標的艦と言う事らしい。私は許可した。あの旧日本軍の亡霊を始末するなら何だって許可する。深海棲艦の方がまだマシだ。戦艦ル級改flagshipが操っているとはいえ、命令に忠実だ。たかが、1人の艦娘で私の計画を破たんする事は不可能のはずだ。そう思っていた

 

 しかし、現実は違った。時雨と言う艦娘が実は未来からやって来たという報告を聞いた時には仰天した。こんなバカな事があってたまるか!あの自衛官は言っていたじゃないか!簡単に勝てると!未来の私はどうなっているんだ!しかし、過ぎたことは仕方ない

 

 ……計画を早めなければ。そして、手に入れた建造ユニットを利用しよう。戦艦ル級改flagshipと深海棲艦を強力にするための生贄にするためのものだと。ローマで剣闘士試合のようなものだ。艦娘が命尽きるまで深海棲艦と戦わせてやる。建造ユニットから召喚されなくなるまで全ての艦娘を沈めてやる。旧日本軍の亡霊は、この世から消さなければならない。でなければ、平行世界の過去の日本のように大惨事を招くだろう。時雨もあの場で始末すべきだった。もう手加減する必要はない。現在は岐阜基地に立てこもっているらしいが、私は放って置いた。爆弾が勿体無いからだ。空爆しようにも、爆弾やミサイルの数が余りに少な過ぎる。平行世界のアメリカが、なぜテロリストの首謀者を殺すのに苦労したのかが分かったような気がした。死んだという証拠がないと安心できない。かと言って陸で虱潰しに攻めようにも数が少な過ぎる

 

「平行世界の米軍のような兵力と兵器があれば楽に勝てるが、無いものをねだっても意味がない。私は魔法使いではない。しかし、もう日本に用はない。出航するまでどう出るか楽しみだな」

 

 私は笑った。トラック島とハワイに移住し本格的な兵器工場を稼働させれば、もう敵は居ない。深海棲艦用の最新鋭兵器も大量に製造できよう。イージスシステムを搭載した軽巡ツ級やジェット機搭載の空母ヲ級が第二次世界大戦の参戦国を徹底的に破壊させなければ。そして、艦娘と呼ばれる兵器を葬るために

 

バカは死ななきゃ治らない

 

 浦田社長は心の中で呟いた。世界を変えるには犠牲が必要だ。人は痛い目に合わないと分からないらしい。私が間違っていた

 

 しかし、彼もその1人に入っている事を知らない。知識が他の者よりあったために悲劇を招いている事を彼は知らない。破滅の未来から来た時雨やこれから起こる事を知っている提督が長い時間説得しても耳を貸さないだろう。何しろ、当の本人は自分の行いを善であると決めつけているのだから

 




 浦田重工業が現代兵器を持っている理由は、ワームホールを通じて平行世界の日本(現代世界)から兵器や工作機械、資材等をじゃんじゃか運び入れたというのが正体
 しかし、中々思い通りに行かず遂に狂気に走ります


ファンタジー世界に転生して兵器を造るよりも『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』のようにワームホールがあれば融通は聞くはずです。補給は出来ますから
ただ、現代日本に世界的な圧力を掛けられるのは間違いなく、この作品でも何かしら騒がれています。伊丹耀司のような人がいれば……
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