岐阜基地では忙しかった。反撃するための戦力が密かに集められた。浦田重工業に不満を持つ勢力はある。数は少ないが、何とかなるだろう。イージス艦と貨物船の出航を阻止しなければ、それで終わりだ。浦田社長はこれが世界を救っている行為だと信じているが、事実は違う
「作戦はこうです。出港の三日前に浦田重工業の副社長が、国会で証人喚問されます。我々の犯罪を国会で証言するためです」
陸軍将校は時雨と提督と軍曹。そして、作戦参加の要請に応じてくれた基地司令も参加していた
「元帥や海軍大将などの将官達も招集されます。恐らく、ここを攻めるかどうか協議しているのでしょう。陸軍は難色を示していますが、海軍は既にクーデター残存部隊を排除するよう強調しています。海軍の陸戦隊を送ろうとしているくらいですから」
「我々、同志達と戦うのは不味い。戦力の潰し合いになってしまう」
岐阜基地の司令は青ざめた。ここで他部隊が来たら今度こそ終わりだ。国軍としてやっていは行けない事。それは内部対立。特に帝国陸軍と帝国海軍の仲は悪かった
しかし、これは日本だけでなく何処の国でも同じである。何処の国でも陸海軍、あるいは陸海空軍それぞれの仲は悪い。縄張り争い、政府高官ポストの奪い合い、予算や手柄の取り合い等、対立するネタは無限にあるといい。だが、血を流すような争いは愚かだと言っていい。敵が喜ぶだけだ。浦田重工業が漁夫の利として笑うだけだ
「元帥が抑えていますが、今はそれどころではありません。何しろ、真の敵が日本を脱出します。――悔しいですが、誰も信じないでしょう」
陸軍将校としては総攻撃してまで攻撃したいが、残念ながらそれは叶わない。一枚岩として働いていないからだ。彼等は必死に他の部隊に呼びかけを続けているが、相変わらず応答はない。しかし、幾つかの部隊は応じてくれた。海軍も航空隊は応じ岐阜基地には陸海軍の機体が並んでいたのだから
「赤城さん達が見たら驚くよ」
「俺は矢が機体に変わる方が凄いと思う」
提督は見た事はないが、空母組は弓矢か巻物を使って艦載機を飛ばすといえ記録を見たため知識はあったが未だに信じられないらしい。しかも、ミニチュアサイズで妖精が操縦するとは想像も出来ない
滑走路に並ぶ機体を後にして艤装のチェックに入ろうとすると、博士がこちらに向けて走ってきた。大事な事かと思ったが、博士は笑っている。何事だろう?
「どうしたんだ?」
「来てくれ!早く!時雨にも見せてやりたい!」
博士は時雨の手を引っ張りながら連れていこうとする。慌てて時雨はついていったが、力強く引っ張るため小走りに走る羽目になった。
「どうしたの?」
「見れば分かる!会わせてやりたいからじゃ!」
聞いても、帰ってくる答えは興奮ぎみに話すため答えにもならない。提督も後についてくる。何だろう?先日の博士の閃きの成果を見せるためだろうか?
一同はある施設に入り、博士が使用している部屋に入った。以前にも訪れたことがあるが、やはり色々な機器があちこち転がっている。しかし、時雨は先日に訪れた時と違うものを見つけた。冷蔵庫のような鉄の箱があった。壊れているのか、白い煙を出している。しかし、冷蔵庫にしてはおかしい。扉は開いているが、何もない。しかも、工廠妖精達は何故か喜んでいるのだ
「時雨さん、こちらです!」
時雨の姿を確認した妖精の一人は、時雨を案内した。ある三人の人影があった。それは……
「……っ!」
時雨の肩は震えていた。もう会えないかと思っていた。建造ユニットは奪われ、未来では浦田重工業や戦艦ル級改flagshipの餌食となった。時雨が知っていた彼女達の姿は、常に表情が暗かった。しかし、目の前にいる者は違っていた
「工作艦、明石です。修理とか工作機械の手入れとか、色々やることあるから、大丈夫です!」
「軽巡大淀、戦列に加わりました。艦隊指揮、運営はお任せください。と言いましても、ここは内陸ですが」
「不知火です。ご指導ご鞭撻、よろしくです……貴方は?」
「軽空母、龍驤や。独特なシルエットでしょ?でも、艦載機を次々繰り出す、ちゃーんとした空母なんや。期待してや!……そんであんたは誰や?」
四人は雑談をしていたが、時雨達が来た事により中断をし挨拶をした。しかし、時雨の姿を見た三人は不思議がった。この子は誰だろうと?艦娘であるのは確かだが
「う……うう……」
時雨は何度泣いただろう。以前は痛みと恐怖、そして悲しみしか涙は流せなかった。今は違う。これは嬉しさのあまりに泣いた
「貴方は時雨ですか?どうかなされました?」
不知火は駆け寄ったが、時雨は彼女の胸に飛び込み抱きしめた
(何で……嬉しいのに……僕は泣いているんだ?)
本当は嬉しかった。建造に成功したんだ。そうとしか考えられない。時雨と同じように未来から来てはいない
「ごめん……ね。僕のために」
まだ事情を知らないのだろう。しかし、僕は覚えている。未来の艦娘達に何があったのかを。不知火は何も言わずに時雨の体を抱き締めた。泣き続ける時雨の姿を、不知火は泣き止むまで撫で続けていた
「教えてくれませんか。彼女に……時雨に何があったのかを」
「ああ。そうじゃったな。喜ぶと思って呼んだが、間違いじゃったな」
大淀は博士に質問したが、彼はどう答えればいいか分からなかった。提督もだ。提督もまさか、ここで艦娘を建造するとは思っていなかったようだ
「なぜ建造ユニットが?」
「いや、これは簡易的なものじゃ。耐久力が弱く、数回使用するとスクラップになる。こいつを造るだけでも資材はかなりいるから、基地司令に頭を下げてお願いしたのじゃ」
後に聞いたところによると、博士は簡易的な建造ユニットを造る事を閃いたらしい。今は、完璧な建造ユニットを造る必要性は無い。しかし、非効率のため本来はしない。そして、博士自身も研究を続行していたため前回のように深海棲艦が出て来る事は無かった。そして、博士は工作艦である明石を建造するために造ったという。余った資源は、艦娘建造に使ったが、3人建造した後に建造ユニットは自壊したという
「長くなりそうだから座ろう」
提督は皆に座るよう促した。提督もどう反応したらいいのか分からなかったからだ。歓声を上げるべきかどうか迷ったからだ。何も知らないため、順番に説明する必要はある
四人の艦娘は頷いたが、不知火は泣き続ける時雨を泣き止むまで撫で続けていた
提督はこの世界で何があったのかを順序に説明した。四人とも艦娘がどのような存在かは分かっているらしく、博士の説明を省き、迫り来る危機を簡潔明瞭に伝えた。未来の提督のメッセージであるビデオを見せた。大淀も明石もショックを受けた。自分達の姿がとても哀れに見えたからだ
全ての説明が終わった頃には、時雨は泣き止んでいた
「ごめん……その……」
「大丈夫です。不知火はここにいます。時雨はよく頑張りました」
少し頬を赤らめて時雨は謝罪したが、不知火は優しく頭を撫でた。しかし、他の三人は唖然としていた。あまりの衝撃のあまりしばらくの間、言葉が出なかった。不知火も内心では、驚いているのだろう。四人は気まずそうに互いに顔を見合わせた。ここまで酷いとは思わなかったらしい
「これが、この世界に起ころうとしている危機だ。何か質問はあるか?」
提督は見渡しながら言ってきた
「ええと。キミが将来うちらを指揮する司令官なんやな?未来が破滅するのを食い止めるために時雨を送った」
龍驤は慎重に言った。何とか事態を飲み込んだらしい
「未来では異変した深海棲艦の猛攻により私達艦娘は全滅。それを防ぐために行動したが、浦田重工業の野望が原因だった」
不知火はてきぱきと言っていたが、内心では動揺しているらしい。未来で自分達は、敵の強大な力に負け撃沈されたことを聞かされたのだから無理もなかった
「そして深海棲艦を操っているとされる戦艦ル級改flagshipが浦田重工業に従っている」
大淀の声は震えていた。まさか、人が深海棲艦を操るなんて思っても見なかった
「それどころか、戦艦ル級改flagshipは姫級どころか未来では、長門やアイオワなどの戦艦の艦娘を倒したという化け物じゃないですか!おまけに私達仲間を拷問したり楽しみながら沈めるなんて!……ごめんなさい」
明石は怒りに満ちた声を上げたが、時雨を見て謝罪した。未来の記録に戦艦ル級改flagshipが艦娘を蔑むあまり酷い扱いしている事を説明すると、明石は怒りの声を上げた
「いいよ。僕は大丈夫だから」
弱々しく答える時雨に周りは気まずい空気になった。時雨が辛い目に合っていたのだから
「それで、私達は何をしたらいいのでしょうか?」
大淀は既にヤル気満々だった。浦田重工業が日本から離れる前に倒さないといけない
「……なんですか、この兵器の設計図と科学方程式!?これ、難し過ぎますよ!?資源が足りる問題ではないですよ!開発なんて1年かかっても無理ですよ!?」
「だからわざわざ使い捨て建造ユニットを造り建造したのじゃ。無駄口叩く前に手を動かせ!」
「便利屋さんか何か勘違いしてません?人使い荒すぎますよ~!」
明石は早速、博士と共にX兵器の開発にとりかかった。X兵器というのは、提督がパソコンで見つけた兵器のコードネームである。明石を建造した理由は、ノートパソコンに入っていた秘密兵器を製造するための助っ人のため。明石自身は知らないが、未来では博士が研究資料を元にタイムマシンの製造に成功している。つまり、腕を買ったわけだ。陸軍将校が手配してくれた登戸研究員も到着し、例の兵器設計図とそれに必要な科学知識を見せたが、全員チンプンカンプンだった。何とか、理解は出きるものの開発できるかどうか分からなかった
しかし、そうも言ってられない。早速、着手したが、一日目から全員疲れ果ててしまった。だが、これでは間に合わないということになり、代替品で賄うことになった
「でも、それだと予定よりもかなり大型になってしまうじゃないですか!」
「仕方ない。機能すればそれでよしじゃ」
明石は愚痴を言っているものの、博士と負けないくらい手を動かしている。いや、明石は艦娘であり工作艦だ。腕利きは明石に軍配が上がるが、知識は博士の方が上手だ
「電圧に異常が見られる。この配線系統ではダメじゃ。全部取り外せ」
「えぇー!せっかく組み立てたのに!」
「鉄の塊で戦う気か!文句言っとらんで手を動かせ!」
「鬼!悪魔!創造主!」
二人の間で言い争いがあるものの、やはり技術者同士では息が合っているのだろう。2人のお蔭でテキパキと作業をしているため、一緒に働いている他の者の方が、煽りを受ける形となった。それでも、流石に一ヶ月も不眠不休でやる訳にはいかない。交代で開発する事になった
一方、時雨と不知火、そして龍譲は作戦を考えていた。大淀は将校達と作戦を擦り合わせるためにここにはいない。仲間集めと戦力を調整するのに忙しかったからだ
「敵は来ないですね。相手は分かっていると思いますが」
「うん。僕もそう思う。戦艦ル級改flagshipが来なくても警備兵を送れるから」
時雨も困惑していた。あの無人航空機や戦闘ヘリがあれば空襲だって可能だ。録音したのも含めれば航空戦力だってある。しかし、なぜか敵はこちらの反撃のチャンスを与えている。時雨達は知らないが、実は浦田重工業の兵力は少ない。質が如何に高くても数は少ないため、攻めるのには不得意である。そこで、この問題を大本営に全て投げたのである。大本営も帝国陸海軍もこれには頭を悩ませた。何しろ、岐阜基地には浦田重工業に不満を持つ部隊も幾つか加わった事から、迂闊に手が出せない。強行に攻撃すると内戦になってしまう。これでは、何の解決にもならない。議論だけで無駄に時間が流れている。ただ、内陸部を囲むように部隊を展開させて待機しているのは確かだった
しかし、浦田重工業は岐阜基地の件は放って置いた。艦娘よりも大事な事を実行しなければならない。そう考えていた
「まさかと思うが」
提督はゆっくりと言った
「浦田重工業はこちらを構っている暇はないのでは?」
「どういう事でしょうか?」
不知火は怪訝な顔をして聞いてきた
「多分、何か行動を起こす気だ。そのために人員を割く事が出来ないだろう。大本営は岐阜基地を抑えようとしているが、周りからの反発が強くて実行できない」
聞けば博士の先輩である元帥が抑えているらしい。仲間同士の血の争いを嫌っている
「何や、それだと安心やな」
龍譲は明るく言ったが、提督も時雨も暗い顔をしていた
「どうしたんや?」
「こんな下らないことでここを攻撃しない訳がない」
時雨は直ぐに否定した。浦田社長は狂っているが、バカではない。背後には戦艦ル級改flagshipがいる
その時だった。駆ける足音がし近づいたと思ったら、扉が勢いよく開いた。大淀が新聞を持って息を切らしている
「どうかしました?」
「大変です!深海棲艦が!」
不知火は大淀の姿に驚かず、落ち着いたように話すが、大淀はまるでマラソンをしてきたかのようだった
「深海棲艦が世界各国を攻撃しています!」
「「「な!?」」」
大淀の報告に全員が驚いた。新聞の一面には深海棲艦が各国の都市や軍事基地、そして工業地帯を攻撃しているという
アメリカのワシントンやニューヨーク、そしてロサンゼルスは徹底的に爆撃に合ったという。ヨーロッパも酷く、戦艦ル級と空母ヲ級を中核とした深海棲艦の艦隊が艦砲射撃と爆撃によって都市が根こそぎに破壊されたという。イギリスも酷く、深海棲艦の艦隊はテムズ川をさかのぼり無差別に攻撃したという
ソ連は攻撃を受けなかったものの、空母ヲ級の艦載機による空爆は受けたらしい。しかも、政府高官や軍の上層部は何者かによって暗殺されたとの事だ
この大規模な攻撃により、ヨーロッパ各国で火花を散らしていたドイツ、フランス、イギリスは戦争を止め、深海棲艦の迎撃に向かった。しかし、数が多い事に加え、通常兵器には効果が無い。大都市や軍事基地などは火の海と化した
幸い、日本は攻撃を受けていない。しかし、その理由は時雨には分かった。自分達が日本にいるからだ。まだ、日本から出る準備が整っていないからだ。浦田重工業が日本を離れれば、容赦しないだろう。もう、時雨が知っている歴史ではない。大幅に狂いだしたのだ
「北方棲姫は何処だ?」
「……まだ何も話していません。傷は癒えましたが、『帰レ』と追い返す始末で」
「今は話してもらう!何か知ってるはずだ!」
提督は苛立ちながら北方棲姫がいる部屋に向かった。他の艦娘も慌てて付いていった。何故かこちらを攻撃しないゆえに、可愛さもあって丁重に扱っている。牢屋に入れてはいないのだが、面倒な事があった
北方棲姫は部屋に籠っている。それだけならいいのだが、ソファーに寝転がりながらテレビを見ている。お菓子を食べながら
「おい!話を……って待遇良すぎるだろ!姫級って日常はこうなのか?引きこもってないで外で遊んでこい!」
「違ウ!暇ダカラ仕方ナイ!ト言ウカ、帰レ!」
提督は部屋に押し入ったが、北方棲姫の意外な生活感に呆れ果ててしまった。他の艦娘も提督と同様、呆れていたが、時雨は違った。時雨は黙っていた
「ずっと牢屋に閉じ込められていたし、可哀想だから」
「時雨、お前なぁ」
「怪我が治ったけど、誰も面倒見てくれなかったから」
実は北方棲姫の怪我は、深海棲艦の事もあってか数日前に治ったが、誰も面倒を見てくれなかった。他の皆は北方棲姫に構う暇はなかったからである。姫級にしては大人しかった事もあり、危害を加えずに放って置かれたのだ。尤も、敵である事には変わらないため誰も近寄らなかったという。北方棲姫も人間や艦娘に係わりたくなかった。しかし、暇だったので遊んでいたのだ。時雨は食事を持ってきたが、相手は受け取っただけで礼もせずに追い返したという
「司令、攻撃しますか?」
「今は撃つな。……攻撃準備だけしておけ」
全員やる気満々であったため、提督は抑えた。北方棲姫も殺気を感じ取ったため黒い艦載機を召喚した。艦載機はニヤリと笑いながら口を開き、北方棲姫の回りに浮遊している。今にも飛びかかってきそうだ
「提督、どうする?」
「いいから落ち着け!休戦だ!確かに敵同士だが、今はそれどころではない。龍讓、式神仕舞え」
今にも衝突しそうだが、提督は間に入り、抑えた。時雨は構えなかったが、万が一のためにいつでも攻撃する準備をしていた
不知火と龍讓、大淀は武器を下ろし、北方棲姫も攻撃してこないのを確認すると黒い艦載機を引っ込めた
「やっと回復したか。時間が無いから遠回しは無しだ。どうして浦田重工業に捕まっていた?誰にやられた?」
「知ラナイ。オ前達ハ奴ラトハ違ウカラ言ウ。……突然、アイツカラ攻撃ヲ受ケタ」
てっきり拒むと思っていたが、北方棲姫は浦田重工業とは違う相手だと理解はしていたらしい。しかし、予想外の答えに時雨も提督も呆れた。知らない?
「知らないって……言っている意味が」
「襲撃ヲ受ケタアノ日、遊ンデイタカラ」
北方棲姫は、人間でいう子供に当たるらしい。しかも、港湾棲姫の妹という。そのため、状況を聞き出す事に苦労した
北方棲姫が言うには、太平洋上にワームホールが出現したその日、3人の姫級がこの世界に来たらしい。住みやすい環境だったため深海棲艦は、この世界に来たと言う。港湾棲姫は、深海棲艦を指揮を取り攻撃してきた。ハワイやトラック島を力づくで奪ったのは自分達であるという
「3人?もう1人は誰だ?」
「戦艦棲姫サン」
提督は北方棲姫の言葉に違和感を覚えた。3人?港湾棲姫と目の前にいる北方棲姫の他にいるのか?
北方棲姫言うには戦艦をモデルにした姫級らしい。攻撃や防御は優れているという。多国籍軍相手に戦った相手はこいつらしい。らしいというのは、こいつは目撃されていない。いや、参戦した帝国海軍では目撃されていない。後に博士の話によると恐らく、米軍の大艦隊相手と戦って壊滅させたのは戦艦棲姫らしい。生き残った米海兵が簡単な絵を描いたが、正に戦艦棲姫だったという。当時の多国籍軍の作戦は、東西挟み撃ちで攻撃するものだという。アジア主力の艦隊を港湾棲姫と北方棲姫が、欧米軍主力の艦隊は戦艦棲姫が率いる深海棲艦が対処したという。そして、多国籍軍は一方的に敗北したのだ
戦闘に勝利した後、深海棲艦は仲間を呼び寄せる前に、港湾棲姫と戦艦棲姫が捕まえた島民や軍人をどうするか悩んだ。まだ、彼女達は人間というのを余り知らない。反撃能力を身につけるかもしれない
そのため、港湾棲姫と戦艦棲姫、そして戦艦レ級が会議していたのを何度も見たという
「その後は?」
「……」
提督は促したが、北方棲姫は答えない。それどころか震えている。深海棲艦の、しかも幼いとは言え姫級が恐怖でふるえている
「僕に任せて」
時雨は質問しようとする提督を制止し、北方棲姫に近寄った
「僕が牢屋に捕まった時、君の姉さんは手当てしてくれた。借りを返すよ。僕達は戦艦ル級改flagshipを倒さないといけない」
時雨は北方棲姫を説得した。今は北方棲姫を倒すどころではない。しかし、北方棲姫は未だに震えているのだ。しかも、尋常ではない。深海棲艦が恐怖で震えている?何があったのだろうか?
「どなんしたん?」
龍讓は声をかけたが、緊張している。他の艦娘も気づいたのか、息を呑んだ。何か聞いてはいけないような、そんな気がした
「戦艦ル級……アイツハ……」
やがて北方棲姫は口を開いたが、声が震えている。思い出したくないのか、声が暗かった
「アイツハ……元ハ人間ダッタ」
「「「「えっ?」」」」
その場にいた全員は、思考が停止した。元は人間だった?
「誰だ?どんな奴だ?奴の名前は?」
「分カラナイ」
北方棲姫は首を激しく横に振った。北方棲姫が言うには、多国籍軍を追い払った後、捕虜の扱いに悩んだらしい。そのため、戦艦棲姫は皆殺しにしようとしたが、彼女の前にある1人の女性が立ちはだかったという。捕らえた人達を逃がして欲しい、その代わり私は残る。どうなってもいい、と言ったらしい。力もないのにも拘わらず、戦艦棲姫と港湾棲姫はその度胸ある女性を気に入り、約束通りに1人を残して捕虜の人間達を逃がした。但し船は自分達で操縦しろ、と言いほったらかしにしたらしいが。余談であるが、捕虜を乗せた船が陸地にたどり着いたという記録は無い。行方不明だという。沈んでしまったのだろうか?
「その後は?」
「分カラナイ……ソノ数日後、ソノ人間ノ女ハ戦艦ル級トナッテ襲ッタ。レ級モ戦艦棲姫モヤラレタ。港湾棲姫モ立向カッタケドヤラレタ。戦艦ル級ニシテハ強スギタ。アンナ戦艦ル級改flagshipハ見タ事ガ無イ」
北方棲姫の証言に全員が衝撃を受けた。戦艦ル級改flagshipの力はある程度は知っている。しかし、戦艦ル級改flagshipは強敵だ。未来で長門や現代兵器を保有していたアイオワを倒しただけでなく、深海棲艦の姫級も倒したと言うのか?正に一騎当千。これでは、倒すのが容易ではないと言う事ではないか
「奴の正体を知っている戦艦棲姫は死んだのか」
提督は残念そうに呟いたが、北方棲姫はまた首を振った
「違ウ。生キテイル。奴等ハ死ンデイルト思ッテイルダケ」
北方棲姫は説明した。戦艦ル級改flagshipとの戦いで戦艦棲姫が死んだと判断した浦田重工業は、コンクリート詰めにして埋めたという。しかし、どういう訳か生きているらしい。正真正銘の化け物は戦艦棲姫だ
「生きているの?」
時雨は驚愕した。コンクリート詰めて生きてるなんて普通なら死んでいる。艦娘でも無理だろう
「甘ク見ルナ。戦艦棲姫ハ強サダケジャナイ」
北方棲姫は誇らしげに語る。自分達は、人間や艦娘とは違うのだと
「場所は何処だ。そこへ案内させろ」
「まさか……」
「掘り起こす。生きているなら、作戦を見直さないとな」
時雨の予想通りに提督は、墓荒らしをするらしい。いや、この場合は救助というべきか。しかし、何という生命体だろう。通常兵器が効かないだけでなく、生命力が凄まじい
「司令。お言葉ですが、危険すぎます」
「そうです。敵の罠の可能性も」
「ああ。そうかもな」
提督の意外な答えに不知火や大淀だけでなく一同は顔を見合わせた。提督は罠の可能性も視野にいれているが、それも承知の上で戦艦棲姫を助けるらしい
何をしようというのか?
「時雨、俺は正常だ。しかし……保険はかけておきたい」
「何をするの?」
時雨の視線を感じたのか提督は付け加えた
「俺達は無力だ。戦力も時間も限られている。だからこそだ」
提督は何をしようというのか?
おまけ(サイドストーリー())
遂に深海棲艦を操って世界を攻撃するよう指示を出した浦田重工業
各国は右往左往する中、アメリカも反撃準備を進めていた!……いや、予定である。議員と国防省はある事で揉めていた
米大統領「深海棲艦が大都市を攻撃しているのに、ペンタゴンは何をやっている!」
補佐官「大統領、暫くお待ちを。現在、どの軍団を採用するか揉めている最中でして」
米大統領「何なんだ!敵が目の鼻の先なのに揉めてる最中か!」
補佐官「ええ。重要な事です。何しろ、ジャスティスリーグかアベンジャーズのどちらかを選ばなければなりませんので」
米大統領「なぜアメコミヒーローなんだ!」
米大統領の絶叫を他所に上院議員や下院議員どころか、ペンタゴンまで意見は真っ二つに割れた。軍の会議室では早速、口論になっていた
海軍大将「アベンジャーズの方がいい!アイアンマンやキャプテンアメリカを見て見ろ!カッコイイだろ!」
陸軍大将「屑鉄をかっこよくしたヒーロー映画で有名になったヒーロー軍団はダメだ。バットマンやスーパーマンに決まっている!」
少将「どうせ、今一つだったくせに(ボソ)。グリーンのCG塗れのヒーローとか」
参謀長「何だと!今、誰が言った!」
お互い譲る気はなく、怒号と罵り合いばかり。そんな中、刀を日本背中に背負い赤いタイツを着た者が顔を覗かせる
デットプール「あの~。僕ちゃんはこの後書きでグリーンランタンとして登場するって聞いたけど本当?」
会議室全員「「「「お前はデットプールで良いんだ!分かったら、さっさと出て行け!」」」」
この一瞬だけは全員、同じ意見だったらしい。それも束の間、再び口論が繰り広げられたという。DCヒーローの役をやらせないデットプールは喜んだらしいが
ホワイトハウス
米大統領「一体、どうなっているんだ!」
補佐官「空母ヲ級から発艦した艦載機がこちらに!」
武官「大統領、早く避難を!」
一同は避難を促すが、大統領は動かない
米大統領「いや、私は大統領だ。逃げるわけにはいかない。私も戦う」
補佐官「大統領、気持ちは分かりますが、幾ら何でも……」
米大統領「国民と国を救うため戦場へ向かう。何故なら私は……アメリカ合衆国大統領だからだ!!」
補佐官「え?……あ、あの……今の言葉。と言うか……何です、そのパワードスーツは?」
米大統領「大統領がパワードスーツを着るといったら、あれではないか」
補佐官(嫌な予感が)
米大統領「深海棲艦が来たな!よし、アメリカ製のゲームに出て来た兵器で侵略者を倒してやる……レッツ パーティー!」
パワードスーツを身に纏い深海棲艦に向けて突進していくメタルウルフ。勿論、窓から派手に登場した。さあ、歓迎してやるぜ
一方、大統領執務室に取り残された補佐官は絶叫した
補佐官「メタルウルフカオスは日本の作品です、大統領ー!」
使い捨ての建造ユニットで誕生したのは、龍譲・大淀・不知火・明石です。建造ユニットは使い捨てなのでもう一度造るのは不可能ですが、頼もしいです
一方、浦田重工業も動き出します
深海棲艦が世界を攻撃する中、時雨と提督は……
深海棲艦の本格的な地上攻撃に混乱する世界各国。大国であるアメリカも手を焼きます。マーベルファンとDCファンの対立に苛立ちを覚えた大統領は、パワードスーツに乗り込んで深海棲艦相手に戦います(嘘)。まあ、インディペンデンスデイでも大統領自ら戦闘機に乗り込んでUFO大群と戦う程の国ですから、これくらいは朝飯前でしょう