岐阜基地からある一団が出発した。トラック2台と装甲車が1台の小さな軍団。502部隊の隊員数人と艦娘。そして北方棲姫や博士までいた。
既に岐阜県の周辺は陸軍に包囲されている。こちらは犯罪者として扱われているので仕方がない。しかし完全には包囲はしておらず、抜け道もあるため妨害もなく目的地までたどり着いた。但し半日かかるため、朝早く出発したのだ。着いた頃には正午過ぎである
「姫級って互いに意志疎通しているのか?無線ではない?」
「そうじゃ。姫級は通常個体の深海棲艦とは違い、遠く離れても意志疎通は出来る。複雑な会話は出来なくても、簡単なメッセージなら可能じゃ。我々でいうと超能力というべきか」
「そんな事できるんですか!」
博士は説明していたが、横から聞いていた明石は驚きを隠せない。いや、車の中にいた時雨も他の艦娘も驚いた
「ただ……当の本人は自覚あるのかが問題じゃが」
北方棲姫を見ながら博士は付け加えた。北方棲姫はキュービックを葬りながら遊んでいる。角や艤装がなければ、幼い少女にしか見えない
「浦田重工業の連中も?」
「それはないじゃろう。能力は知ってはいるが、とても不便なのは間違いない。命令も簡単なものでなければ空母ヲ級や戦艦ル級などの個体の深海棲艦も聞かないのだからな」
大淀は安心した。もし、無線のように通信手段が使われるのであれば大変だ。北方棲姫も従えていない深海棲艦を操るかも知れない
「でも、戦艦ル級改flagshipは違う」
「そうじゃな。どういう訳か鬼や姫級と同様の能力を持っておる。深海棲艦全体に各国の都市と軍事基地を襲えと命じたんじゃろう」
なぜ深海棲艦は突然、世界の都市を攻撃したのかはわかったような気がした。戦艦ル級改flagshipはどうやったかは知らないが、姫や鬼級の能力を吸収した。突拍子のない考えだが、その方が説明がつく。自分の常識で物差しを図っていてはいけない。そう考えると同時に時雨は深海棲艦を恐れた。こんな化け物だったのか?自分達が戦う相手は、こんな人外なのか?それを言ってしまえば、艦娘もそうだが
「それなら北方棲姫に深海棲艦を襲うなと命じれば」
「……それが深海棲艦の話だと北方棲姫の命令を無視しているらしい。理由は不明じゃが」
時雨は項垂れた。なぜ深海棲艦はボスの命令を拒否しているのだろう
「考えても仕方ない。どっちにしろ鬼や姫級以外の深海棲艦は、浦田重工業の指揮下だ。これを何とかしないと」
提督は言いながらノートになにかを書き記していた。記録だろうか?
「北方棲姫の話だと、岐阜基地に養生中に回復したとか。牢屋では、使えなかったのを見ると、浦田重工業は何らかの方法で能力を奪った。いや、無効化させられた」
「……」
「何か心当たりがあるんじゃないか?」
「すまん。それはワシにも分からん」
提督の質問に博士は首を振った。しかし、時雨は見逃さなかった。提督はそんな答えにも拘わらず、何かしらノートに書いているのを。些細な事でも記録を残す。今後の対応をするためだろう。実は提督の仕草は、未来でも行っていた。あの記録もずっと書いていたのだろう。提督は日記を書くのが日常なのだろうか?
「提督。戦艦棲姫が生きていたとして、どうする気?」
話を逸らすための質問したが、時雨自信もこの質問をしたのは何回だろうか?実は、提督は戦艦棲姫が生き埋めになっていることを博士や陸軍将校に伝えたが、掘り起こす以外は何も答えない。考えがあるとした言っていない
提督が戦艦棲姫を掘り起こすと提案してから軍曹はずっと問いただしたが、提督はぐらかした。ただ誰も賛成しない。案は後で話す。その場所へ行って掘り起こしたいというだけだ。本来は不透明な行動はお断りだが、何しろ時間が無い。X兵器も完成には間に合うかどうかも分からない。提督が考えているのは、予備の作戦だという
「心配するな。俺は正常だ」
答えはそれだけだ。提督は何を考えているのか?
長野県××鉱山跡地
その場所は、昔は金や水晶が採掘されていた。武田信玄が16世紀に採掘した鉱山といわれる。しかし、採掘され尽くしたため閉山。今では寂れた場所となっている。人影はなく、イノシシや鹿などの野性動物しかいない。そんな場所に山道を強引に進んでいる車列があった。その後方にブルドーザーや油圧シャベルなどの建設車両の数台が後に続いている。陸軍将校が友好的な部隊と連絡を取り、工作部隊から建設車両を借りのである。まだこちらに味方はいる。形だけだが
一同は車を降り、辺りを調べた。戦艦棲姫を何処に埋めたか?北方棲姫の後を付いていったが、直ぐに行き止まりを食らった。地肌ばかりの所にコンクリートで固めたのを見つけた。そして、近くには看板が掲げられている
『有毒ガス発生のため立ち入り禁止』
「明らか嘘っぽいですね」
不知火の言っている通り、看板がうん臭い。看板もそこまで古くない。明らかに作為的なものである
「時間が無い。早速、作業にかかるぞ」
将校は合図をすると同時に建設車両は動き出した。人手でやると時間がかかるからである
「本当に埋めているのかな?」
「分からん。信じるしかないだろう」
作業を初めてから二時間経つが、未だに変化はない。北方棲姫の指示に従ってい掘っているが、中々辺りは来ない。皆がウンザリして休憩に入ろうとしたその時、地面を掘っていたシャベルカーの動きが止まった
「何かあるぞ!」
隊員の掛け声に皆はその場所に集まった。明かりを集中させ、手持ちの道具で正体を見るために掘った。やがて、地面からコンクリートの塊の一部思われるものが覗かせている。
「間違イナイ。コレ!」
「よし、掘り出すぞ!」
皆は喜んだ。北方棲姫の言った通り、コンクリート詰めて地面に埋めたのだ。後は引き上げるために周りを掘ったが、全体が顕になるに連れて、皆の顔はひきつっていた
「なあ……親父。戦艦棲姫ってどんな人だ?」
「女性で角があり、そして……」
「誰も先祖の言い伝えを聞いているんじゃないよ。どうみても……でかすぎだろ!」
コンクリートの塊を発掘したが、埋まっていたコンクリートの塊は大きすぎた。小さな家並みだ。余りの大きさに引っ張り出して持ちだすというのは不可能だった
「鬼が出るか蛇が出るか」
「鬼だよ。提督」
提督は近づくと、コンクリートに耳を当てたが、首を振った。何も聞こえてこない。本当に生きているのだろうか?
「どうするの?」
「想定内だ。時雨、戦闘準備をしてくれ」
提督は何を考えているのか分からなかった。コンクリートの塊のあらゆる所に何か細長いのを置いている。近寄って見たが、提督が置いている物が何なのか分かると仰天した
「おい、おいておけ。死にたいのか?」
「ちょっ……提督!ダイナマイトで何をするの!?」
「コンクリートの塊を爆破させるんだ」
時雨だけでなく、龍譲も大淀も驚愕した。この人、何を考えているの?
「俺は面倒くさいのはさっさと片付ける人だ。こんな塊を時間かけるよりも爆破して吹っ飛ばせば解決だ。中に埋まっている相手は、どうせ通常兵器なんて効かない相手だから」
「いや、やり方が大胆し過ぎやろ!」
提督の答えに龍譲は突っ込んだ。まさか、こんな過激な事を実行するとは思わなかった。時雨は博士に目を送ったが、博士も承知の上か額に手を当てていた
「まあ、仕方なかろう。ダイナマイトの使い方を教えてくれと頼まれたから、教えたが」
「止めないの!?」
「どうせ時間が無い。それに、こんなバカデカイ塊を運ぶのにはクレーンとトラックが必要じゃしな。これを砕くのも骨が折れるわい」
博士はため息をつき、将校も明石も呆れてていた。確かにここは人里から離れているため、直ぐには誰も駆けつけないだろう。しかし、全く気付かれないという保証はない。不知火は、何も疑問に思わないのか既に場を離れて耳に手を抑えている
「よし、爆破するぞ!」
導火線に火をつける提督に、慌ててコンクリートの塊から離れた。提督は本気だ。作戦を立て指揮する能力はあるだろう。ただ合理的な行動を重視しているためか、遠回しで実行することが嫌うタイプだろう。でなければ、ダイナマイト使ってコンクリートで生き埋めにされた戦艦棲姫を救うなんて考えはしない。確かに深海棲艦は通常兵器は効果ないが
一同は離れ、耳と目を塞いで爆発を待った。鉱山跡地は再び静まり返ったが、突然大爆発が起こった。艤装の砲声や着弾による爆発とは違う爆発なのか、耳を塞いでも鼓膜が破れるかと思った程だ。時雨は目を開けると、爆炎とはコンクリートの破片が飛び散る中、そこから人のようなものが宙に舞っているのが見えた。それが高々と飛んだと思ったら落下し地面に衝突した
「あ、あれが……戦艦棲姫?」
ダイナマイト数本の爆発でも目立った外傷がないのは凄いというべきか。しかし時雨は、その人影に棒のようなものが刺さっているのを見た
爆発が収まると同時に一同は、慎重に倒れている一抱えに向かって進んだ。時雨も不知火も艤装を展開して慎重に進んだが、一人だけ走って近寄るものがいた。北方棲姫だ
「起キテ!」
北方棲姫は体を揺らしたが、動く気配がない。安全だと確認した一同はも急いで駆け寄る。ライトを照らし写し出された人影を見て、時雨は息を呑んだ
「これが……戦艦棲姫……人間とそっくりだ」
戦艦棲姫を見たのははじめてだ。額には鬼のように一対の角が生えており、胸元にも4本の小さな黒い角が生えている。長い黒髪とネグリジェのようなワンピースを身に着けているため角がなければ、人間と区別出来ない。ただ、人間の心臓の位置あたりに金属の棒が戦艦棲姫の身体を突き刺している。ダイナマイトで突き刺さっていた訳ではなさそうだ。何があったのか?
「艤装無いが、没収されたのか?」
「さあ?ワシにはサッパリ……」
博士も分からないのか、困惑している。艤装は取り上げられたのだろうか?
「時雨、貴方は未来で姫級を見たことはないのですか?」
「うん……姫級を見たのはこの時代。それも、これで3人目」
港湾棲姫とは異なる深海棲艦の姫級。未来の深海棲艦にはこんなのは遭遇していない
「博士、本当に死んでいるの?」
「分からん」
「よく分からないけど、冷や汗が出てくるんだ。……まさか、起き上がって襲ってこないよね」
時雨は感じていた。よく分からないが、心臓は鐘が打っているようにバクバク鳴っている。警鐘を鳴らしているような気がしてならない。こいつは死んでいない。北方棲姫は手を握って泣いている。……まさか、エネルギーを与えているのでは?北方棲姫が無意識にやっているだけかも知れない。第一、岐阜基地で養生中に北方棲姫と意志疎通出来たんだ。脳だけ生きていたとは思えない!第一、鉄棒が心臓に刺さっている以外、身体は無傷だ!
「提督、気をつけて」
艤装を構えながら顔を覗き込ませる時雨。過剰な反応かも知れない。しかし、龍讓も不知火も大淀も反論はしない。他の艦娘も感じたかもしれない。こいつは生きていると
「分かった」
提督は恐る恐る近づき、閉じている瞼を開いた。人は死亡すると、瞳孔は大きく開き、「光を当てると小さくなる」という瞳孔の特徴が無くなくための死亡確認なのだが、深海棲艦にこれは通用するのか?姫級の瞳は真紅で宝石のように反射している。瞳孔は光に反応していないため死んでいる。時雨は安堵した。そう思っていた
突然、真紅の瞳が動き出した。戦艦棲姫は起き上がると、回りにした人を突き飛ばした。提督と博士は反射的に逃げたためなんを逃れたが、北方棲姫は避ける事が出来ず突き飛ばされ数メートルまで飛ばされた。将校と部下の隊員は銃を発砲したが、戦艦棲姫は全く効果がない。戦艦棲姫は身体に刺さっていた鉄棒を引っこ抜くと地面に捨てた
「生きている!コイツ、コンクリートの中で埋まっていたのに生きている!」
「装甲車!機関砲で応戦しろ!」
隊員の1人は錯乱したが、将校は動じず装甲車に攻撃するよう命じた、重機関銃は戦艦棲姫に向けて発砲したが、装甲車の装甲を貫通するほどの銃弾が、跳弾するばかりで効果はない
「提督、攻撃する?」
「いや、待て!攻撃するな!一旦、距離を置け!様子見だ!」
時雨はいつでも攻撃するよう艤装を構えたが、提督は攻撃許可を出さない。何か策はあるだろうが、相手は姫級だ。威圧感が半端なかった
「人間メ!ヨクモ私ヲ!」
戦艦棲姫の叫びはこの世とは思えない程の冷たいものだった。こちらを浦田重工業か戦艦ル級改flagshipと思っているのだろう。しかし、敵でないと言っても通じる相手ではない。時雨や不知火だけでなく、提督も博士も将校も目の前の敵が、とんでもない化け物だと言う事に嫌ほど思い知らされる
銃弾が効かないという能力だけではない。海にのんびりと航行している深海棲艦とは違い、冷たくも威厳に満ちた瞳。何よりも人語を解する知能。博士の話では、深海棲艦には独自の言語はあるものの人の言葉を理解し話しているのは姫・鬼級だと言われている。稀に空母ヲ級や戦艦ル級など人型の深海棲艦にも教えていると言われているが、理解しているかどうか分からないと言う。だから、艦娘も人間も無防備に倒れ込んでいた戦艦棲姫に対して息を呑んだのだ
戦艦ル級改flagshipとは違う威圧感。しかも、胸に刺さっていた傷口は塞がっている。これが、戦艦棲姫の力なのか?港湾棲姫も本気を出していたなら相当な威圧感だったに違いない
戦艦棲姫は装甲車の重機関砲に撃たれているにも拘わらず、何もしない。いや、何かを待っていた
「地面が揺れている?」
隠れていた時雨は驚いた。前ぶれなく、地面が揺れだしたのだ、地震?いや、それにしては可笑しい。
突然、大地が裂いて何が現れた。舞い上がる土と砂煙。砂煙が風によって吹き消されると、そこには巨体を持った黒い生物が立っていた
「ギシャアァァ!」
怪物はおぞましい叫び声を上げている。なんだこれは?新手の深海棲艦なのか?あちこちに砲塔が覗かせているからには生物兵器のようにも見えるが
巨体を支える二本の足は、大木の根の様に太く逞しい。そんな怪物が現れても戦艦棲姫は怯まない。それどころか、頭部らしい所を撫でている
「殺レ!全員、皆殺シダ!」
顔を歪ませながらおぞましい声を叫ぶ。怪物は装甲車の方に砲を向けた
「アカン!逃げて!」
龍讓の警告に隊員は一目散に逃げたが、怪物は素早かった。雷のような砲声とともに装甲車はダイナマイトの数倍もの大爆発が起こった。装甲車は爆炎に消滅し、激しい炎が上がった
「まさか、あの怪物は戦艦棲姫の艤装か?」
「ええ!そんな馬鹿な!あれが!」
岩の物陰に隠れた提督は戦艦棲姫を観察していたが、隣にいた明石は信じられなかった
あの化け物が艤装!?どうみても生き物じゃないか!
「間違いない!信じられんが、本体と艤装がそれぞれ独立しておる!」
「化け物が化け物を飼っているのか!」
伸びた北方棲姫を担ぎながら観察していた博士も同意見のようだ。彼は戦艦棲姫のうなじから伸びた太いコードで艤装と繋がっているのを見たからだ。ただの怪物ならあんなことはしない。それに、戦艦棲姫本体は艤装を持っておらず、攻撃手段は専ら怪物だ
「作戦は失敗だ!逃げるぞ!」
将校は無線で指示を出したが、予想外の返事をするものがいた
「中佐、僕は引かない」
「お言葉ですが、私も同感です」
将校は驚いた。艦娘はあの怪物と戦う気か!無謀もいい所だ!だが、確かに時雨が言ったように逃げては何も解決しないだろう。あの大佐の息子……何をやろうとするのか?
時雨は戦艦棲姫が覚醒したと同時に攻撃体制を取った。やはり、生きていた。浦田重工業は死んだと思って生き埋めにしたらしい。しかし、実際は違った。それどころか、化け物を引き上げるとこちらを攻撃してくる
「逃げて!ここは僕が引き受ける!」
これ以上、無駄な犠牲を出す訳には行かない
時雨は12.7cm連装砲を構えたが、声をかけられた
「待ってください!時雨、あの敵に豆鉄砲を撃ち込んでも効果はありません!返り討ちにあいます!」
振り向くと、声の主は不知火だった
「このままだと犠牲者は出る!だから――」
「分かっています。火力は負けますが、こちらは駆逐艦2と軽空母がいます」
不知火は冷静だった。この艦娘は、いつもは冷静だったと記憶している
「駄目だ。まだ練度は低い。あいつに勝つための――」
「司令から貴方の事を聞きました」
不意に不知火は言った。いや、こちらの言葉を遮った
「確かに辛かったかも知れません。未来で私達が撃沈しているのも分かっています」
不知火はそこまで言うと肩を掴んだ
「ですが不知火は、ただ時雨と戦艦棲姫との戦闘を観戦するためにいるのではありません。時雨の目の前にいるのは、ただの女の子ではありません。第十八駆逐隊、不知火です」
時雨は黙った。いや、思い出した。そうだ。僕は……僕達は艦娘だ。戦うためいる。暴れている怪物を倒すために。不知火や龍讓さんは守る対象ではない。戦友だ
「どうかしましたか?……不知火に落ち度でも?」
反応が無かったため無言で頷いた
「それでいいです……司令、時雨を落ち着かせました。ご命令を」
『よし、配置について合図を待て』
時雨は不知火の後に付いて行った。何時ぶりだろう。他の艦娘と一緒に戦うのは。もうこのような事は無いと思っていたが
「不知火」
時雨は周りを気にしながら小さく言った。不知火は立ち止まらず、顔を向けた。不知火の顔は、未来も変わらなかった。戦う時の表情が
「ありがとう」
「感謝はいいです」
茂み隠れながら、戦艦棲姫に近づく。こちらに気付けば集中攻撃される。何しろ、自分達駆逐艦は、戦艦の主砲に耐えられる程の装甲はない
「こちら不知火。現在、戦艦棲姫の側面にいます」
『よし、合図したら攻撃しろ』
提督はこれを想定していたのか、声に迷いはない。それとも、自分の運命を受け入れているのか。始めに会ったときは、本当にガキのような存在だった。今は……
「提督、ありがとう」
『お前だけ戦っても死ぬだけだ。幸い、数はこちらが上だ。龍讓、爆撃しろ!』
『よっしゃー!やったるでー!』
無線はオープンチャンネンであるため、龍讓は張り切っている。上空には、九九式艦爆と九七式艦攻ばかりだ。敵機はいないため、戦闘機はいらないと判断したらしい
戦艦棲姫は龍讓の艦載機の爆音に気づいたのか、空を見上げた。初めて見るためか、顔を歪ませている。多分、艦娘の存在を知らない。機関銃と同様、効かないと思っているのだろう
九九式艦爆と九七式艦攻は急降下すると爆弾を落とし、戦艦棲姫を爆撃した。戦艦棲姫は驚愕した。ダメージを追っているのだから
「コ、コレハ!」
爆撃によって煤で焼けた腕を見ながら、戦艦棲姫は叫んだ。直ちに対空戦闘に入ったが、側面からも攻撃を受けた
『今だ!撃って撃って撃ちまくれ!』
提督の合図とともに時雨と不知火は、物陰から身体を出すと同時に12.7cm連装砲を発砲した。近距離であるため、ほとんど命中した。戦闘棲姫は驚くと同時に背後にいた艤装の化け物を盾にした。しかし、上空から爆弾も降ってくるため完全には防げない
「姫級と聞いて覚悟していましたが……意外と弱いのね」
不知火も時雨と同様に攻撃している。砲弾と爆弾が面白いように戦艦棲姫に当たる。不知火は不敵の笑みを浮かべていたが、時雨は違った
(まだ目覚めたばかりだから本気を出していないかも……だとしたらチャンス)
本気なら恐らく勝てないだろう。時雨は反撃してこない戦艦棲姫を不審に思ったが、考えても仕方ない
戦艦棲姫はこちらを攻撃する相手に驚愕した。よく分からない武器を持つ少女によって自分は攻撃されている。致命傷にはならないが、確実にダメージを追っている
あれはいつの日だったか。この世界に来たのはいい。人間の攻撃を簡単に押し退けた。しかし、戦艦ル級改flagshipの反乱により仲間はやられ、自分は幽閉された。相手の人間や戦艦ル級改flagshipは自分が死んだと思ったのか、こちらをコンクリート詰めにされた。意識はあったものの、海から得るエネルギーは途絶えたため意識を保つのが精一杯だ。死ぬのは楽だが、あの戦艦ル級改flagshipと人間を倒すまで死ぬつもりはない。長いこと怒りと憎悪を蓄積していたが、コンクリートを割る力はない。長い年月が経っても事態が変わらないため諦めたその時、変化が起こった。微弱ながらテレパシーで仲間の連絡が取れた。北方棲姫らしい。らしいというのは微弱過ぎて相手が分からない。幼いためテレパシーの使い方がまだ分からないのだろう
戦艦棲姫は懸命に伝えたが、やはり複雑な会話は無理だ。しかし、北方棲姫の言い分だと掘り起こすという。何を考えているのか分からなかったが、花火のような爆発を感じたあと、目から強烈な光を浴びせられた。感覚で分かった。コイツは人間だ。そしてなぜかは知らないが、パワーが満ち溢れてくる。実は北方棲姫が無意識にエネルギーを与えていたのだが、長い間幽閉された事により怒りに満ちて判断力が鈍っていた。そのため、仲間である北方棲姫にも被害が出たのだが、そんな経緯を知る訳がない。戦艦棲姫は咄嗟に攻撃をしたが、よく分からない存在から反撃された。しかも、この姿は……。いや、あの一族が産み出したものか?
「良イダロウ。アノ一族カ。モット撃ッテ来イ。退屈シノギニ成リソウダ」
戦艦棲姫は自分自身の艤装に命じた。敵は3体。姿形からして、とても小柄な軽空母が1、駆逐艦が2。そしてどうでもいい人間が沢山いるが、どこかにあの一族がいるだろう。まずは目の前の邪魔な兵器を倒すのが先だ
戦艦棲艦は化け物である艤装に攻撃準備を命じた。これから、こちらに攻撃する不届き者を嬲り殺すために
戦艦棲姫の絵で後ろに立っている化け物のような怪物
あれって戦艦棲姫の艤装なんですね。そのため、本編では復活する艤装の化け物は怪獣のような出現に
艦これの深海棲艦の動きや立ち回りはどうしようかと迷っていた時期がありましたが、艦これアーケードでは華麗に動いてくれるため、助かります。映画ではダイソンは数十秒しか登場しなかった
限定イベントである『決戦!鉄底海峡を抜けて!』のE5でダイソンの事、戦艦棲姫が登場しました。しかも、難易度丙でも平然と2隻登場しますから驚きの連発です。装甲の固い大和が1発で大破するくらいの攻撃力を持っていますから