時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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第70話 戦艦棲姫との密約

 時雨と不知火、そして龍譲はがむしゃらに攻撃した。北方棲姫は伸びている。博士達が診ているが、パワーを与えていたため失神している。攻撃してきたが、相手は何もしない。いや、後ろにいる艤装のような怪物から真っ赤な光を放ち始めた。艤装の化け物は赤く、そして怪しげな光だった

 

『時雨、不知火、龍讓!攻撃を止めて離れろ!あれはダメージを受けた現象にはとても思えない!』

 

 提督の無線連絡に時雨は、反射的に砲撃を中止した。未だに攻撃している不知火を遮り、距離を取る

 

「どうしたんですか?今がチャンスです」

 

「待って!嫌な予感がする!」

 

不知火を強引に距離を置いた。爆撃していた艦載機も高度をあげて退避していた

 

「ホウ……イイ判断ダ。人間も賢クナッタナ。チョット前マデハ馬鹿ミタイニ攻撃スル人間トハ違ウヨウダ。貴様ラ、アノ一族ノ者ノ手先カ?」

 

 戦艦棲姫はダメージを受けているものの、外傷はほとんどない。それどころか残忍な笑いをしている。時雨は気付いた

 

「提督!こいつ、さっき『あの一族』って!」

 

『まさか、俺の先祖を知っているのか?』

 

 提督は無線で思わず返信しらしいが、時雨はそれどころではない。戦艦棲姫の艤装の化け物は、咆哮を上げるこちらに向けて砲塔を向けた。真っ黒で不気味な砲身は、高温で鉄が溶けたかのような真っ赤に染まり、何かエネルギーを貯めているかのようだ

 

「何度デモ……沈メテ……アゲル……」

 

「回避して!」

 

 時雨は反射的に叫んで回避行動に移った。不知火も直感的に動いたが、遅かった。化け物に取り付けられていた全ての砲門は、戦艦棲姫の合図で開いた。真っ赤な砲弾が、時雨達に向けて突進して来る。時雨は紙一重で躱したが、至近弾を食らった。まだ、戦えるが、他の者は悲惨だった。不知火は、直撃してしまい大破まで持っていかれた。離れていた龍譲も飛翔した砲弾をモロに受けてしまい、艦載機の発着艦機能を喪失してしまった。距離が離れているにも拘わらず、初弾で命中させた。偶然かそれとも、姫級の力なのか?

 

「うっ!」

 

 不知火は爆風で飛ばされ地面に叩きつけられた。大破し倒れている不知火に近づく戦艦棲姫。無線では提督が逃げるよう喚いている

 

「『重巡棲姫』ト『駆逐古姫』ハ何処ダ?遥カ昔、コノ世界ニ流レ着イタ事ハ知ッテイル。戦艦ル級改flagshipモ貴様ラノ仕業カ!」

 

 戦艦棲艦の全砲門が不知火に向けられた。不知火を木っ端微塵にするくらい攻撃するらしい。不知火は息を荒げながら戦艦棲姫を睨んだが、逃げようにも足を怪我しているため走れない。不意に銃撃が戦艦棲姫を受けた。戦艦棲姫に向けて拳銃を発砲する提督と抑える大淀の姿があった

 

「クソ!不知火!」

 

「提督!落ち着いて下さい!危険です!」

 

 隠れていた提督は、不知火の危機に駆けつけたらしい。確かに助ける行為は正しいが、強大な敵を前に出るのは自殺行為だ。感情的になって助けようとする提督を大淀が抑えている。戦艦棲姫は二人を睨むように見ていた

 

「貴様……アノ一族ノ者カ。『重巡棲姫』ト『駆逐古姫』ヲ実験台ニシテ殺シタノハ。ソシテ、ソノ屑鉄ヲ装着シテイル兵器モドキヲ産ミ出シタカ」

 

「兵器……もどき」

 

 大淀は呟いた。自分達の艦娘の存在や役目を知っている。しかし、深海棲艦を参考に造り出されている事実を突きつけられた事に大淀は狼狽した

 

「ドウデモイイ2人ダガ、死ヌガイイ!」

 

戦艦棲姫の叫び声に大淀は、提督を庇うように前に出た

 

 戦艦棲姫が砲撃する直前、艤装の化け物が突然爆発した。それも半端な爆発ではない。化け物はうめき声を上げ、その衝撃で砲弾は明後日の方向へ飛んでいった

 

「ナ!誰ダ!」

 

戦艦棲姫は辺りを見渡し攻撃してきた者を探した。攻撃してきた相手は直ぐに見つかった。髪飾りをつけた少女が、こちらを攻撃している。何か長い物を投げている。コイツは何だ?

 

 

 

 時雨は戦艦棲姫の攻撃から逃れると、魚雷すべてを取り出した。海上ではないため、魚雷は重荷になるだけ。そう思ったが、あることに閃いた。海上しか使えないわけない。他の方法があるじゃないか!

 

 こいつに勝てなければ、宿敵である戦艦ル級改flagshipを倒す事が出来ない。手持ちの兵装だけでは倒せない。正攻法が無理なら奇策でやるしかない。相手が対策される前に倒さないと

 

 時雨は自分が何者かを再確認した。僕は……僕は白露型二番艦、時雨。「呉の雪風、佐世保の時雨」と並び称された武勲艦。雪風と並ぶ幸運艦

 

 

 

さあ、戦おう

 

 時雨は不知火を助けるために出てしまった提督と大淀を攻撃しようとしている戦艦棲姫に向けて魚雷を投げつけた。その後、時雨は素早く主砲を展開して魚雷に向けて攻撃した。当てるのは難しいが、やるしかない。魚雷は艤装の化け物に当たる直前に炸裂。成功だ。ニ本目を投げたが、残念ながら戦艦棲姫の足元に落ちてしまった。しかし、爆破範囲内であるため失敗ではない。魚雷を爆破させ、爆風を受けた戦艦棲姫は呻いた効果はある!

 

 戦艦棲姫は予想外の攻撃にたじろいた。まさか、魚雷を投げつけて爆破させるような事をするとは思わなかった。魚雷の炸薬量は戦艦の主砲よりも多く搭載されている。そのため、爆発は半端ない。しかし戦艦棲姫は相手の予想外の攻撃に笑った。戦艦ル級改flagshipの件での怒りよりも、目の前の敵に興味が湧いていた

 

「コイツ、戦イ慣レシテイル!」

 

戦艦棲姫はゾッとするような笑みを浮かべた

 

 

 

 時雨は立ち止まった。相手にダメージを与えているのは確かだ。しかし、戦艦棲姫を倒せる程の火力はない。ノーマルの12.7cm連装砲と魚雷だ。そして、何よりも相手が笑ったのだ。しかも、こちらをみて笑っている

 

「フフフ……面白クナッテキタ。久シブリニ楽シメソウダ」

 

時雨は息を呑んだ。戦艦棲姫は楽しんでいる

 

「貴様ノ度胸ト戦イブリニ敬意ヲ払オウ。駆逐艦ガ戦艦デアル私ニ攻撃スルトハ」

 

 戦艦棲姫は時雨を睨んだ。通常の人なら冷たい視線に青ざめるのだが、時雨は全く動じなかった

 

「僕はこの程度の戦艦と戦った!だから、このまま行かせて貰う!」

 

 時雨は再び魚雷を投げたが、戦艦棲姫の方が早かった。戦艦棲姫の副砲が火を吹いた。砲弾は魚雷に命中。爆発は時雨を巻き込むように包み込む

 

「時雨!」

 

 提督は絶叫するが、その数秒後には驚愕する。何と爆煙から時雨が飛び出して来たのだ。しかも、損傷は少ない。時雨は、主砲を戦艦棲姫に撃ち込んでいる。しかも、偽装の化け物を支える脚に集中攻撃している。動きながら反撃を避け、的確に当てている

 

「す、凄い……」

 

 大淀は目を見開いた。時雨は改装が施されており改二である。未来からやって来た事を聞かされた時には半信半疑だった。しかし、時雨の戦いぶりを見て納得せざるを得なかった。明らかに戦い慣れしている

 

 戦艦棲姫の砲撃を避け、近づく時雨。戦艦棲姫は時雨にすべての砲を向けた。駆逐艦娘にしては過剰攻撃だが、戦艦棲姫は笑っていた

 

「褒メテヤルワ。沈ミナサイ!」

 

 戦艦棲姫の命令で偽装の化け物は、この世とは思えない程の咆哮を放つと時雨に向けて砲撃をした。時雨がいた付近に再び大爆発が起こった。余りの爆風に提督も大淀も物陰に隠れるほどである

 

「時雨……さん……」

 

 大乱闘と爆発で気がついたのだろう。不知火は呆然としている。時雨がやられたのか?龍譲も駆け寄り、立ち込めていた煙を見守っていた。視界が悪く、戦艦棲姫も時雨も見えない。それに加えて、パラパラと小石か何か落ちる音以外は聞こえない。暫くして煙が晴れると、提督と不知火達は仰天した

 

「し…時雨……」

 

 提督はうめき声を上げた。何と、時雨は無事だ。戦艦棲姫の目の鼻の先にいる。主砲を戦艦棲姫の顔に突き付けている。この距離だと戦艦棲姫もタダでは済まないだろう。逆に時雨も同じだ。戦艦棲姫の艤装の化け物も拳を上げていつでも時雨に殴れるよう構えている

 

 

 

 二人の間の空気は重苦しかった。提督も不知火も龍讓も大淀も声を発しない。声をかければ、両者とも動き出さだろう。まるで西部劇のガンマン達の決闘で互いに銃を突き付けるシーンにも似ている

 

 長い時間、沈黙が続いたと思いきや、不意に戦艦棲姫が動いた。いや、艤装の化け物に攻撃を止めるよう手で制した。艤装の化け物は大人しく下がったが、戦艦棲姫はずっと時雨を睨み続けている。そんな鋭い視線にも負けずに時雨も睨み返しながら構えていた偽装を下ろした

 

「貴様、駆逐艦ダナ。何故ダ……何故、ソコマデ戦エル?」

 

戦艦棲姫は時雨に語りかける。戦艦棲姫は何を言っているのか?

 

「皆を守るため。それだけだ」

 

「ソコマデシテ戦ウ理由ガアルノカ?火力ガ違ウノニ挑ムトハ。自殺行為ダ」

 

 あのまま戦ったら間違いなく時雨はやられていただろう。しかし、紙一重の回避と的確な射撃で応戦したようなもの。時が経てばいずれは戦艦の砲弾が当たる。戦艦の装甲は頑丈だ。魚雷も限りがある

 

「皆と提督……そして未来を守るためだよ。君には分からないけど」

 

「ククク」

 

「っ!何がおかしいの!」

 

時雨は問いただした。まるでバカにされたかのようだった

 

「私ニ戦イヲ挑ム者ハ、イツモソウ言ッテイル。『家族のため、国のために戦う』『よくも友人の命を奪ったな』ト。ダカラ、笑ッタ。私ヨリモ弱イ癖ニ」

 

 博士が言っていた深海棲艦に挑んで負けた数年前の多国籍軍の事を言っているのか?時雨は怒りを抑えると挑発した。本来の目的を忘れた訳はない

 

「でも戦艦ル級改flagshipには負けた。違う?」

 

痛い所を付いたのだろう。戦艦棲姫の笑顔は消え、怒りに満ちた顔になった

 

「アイツノセイデ……コノ手デ――」

 

 戦艦棲姫は悪態をついたが、途中まで言ったきり黙った。戦艦棲姫の目線は時雨の後ろに向いている。時雨は素早く振り替えると博士と北方棲姫、そしてビクビクしている明石が立っていた

 

「戦う気はない。だから、話を聞いてくれ」

 

 戦艦棲姫は博士の言うとおりにした。いや、応じたのではなく小走りでこちらに向かっている北方棲姫を迎えたのだ。北方棲姫は戦艦棲姫に抱きついたが、戦艦棲姫はこちらを警戒している。やがて、提督達も近づいてきた

 

「戦艦棲姫だな。話を聞いて――」

 

「1分ダ。北方棲姫ヲ助ケタカラト言ッテ、頼ミヲ聞クトハ限ラナイ。一族ノ末裔メ」

 

 戦艦棲姫はどういう訳か知っているらしい。この世界に来た際に独自の情報を入手したのか?いずれにしても、人間と艦娘に対して快く思っていない。浦田重工業の連中とは違う冷たい対応だ

 

「分かった。だが、その前に過去の因縁はなしだ。それが前提条件だ」

 

 提督は話を始めた。簡潔明瞭で分かりやすく戦艦棲姫にあることを提案していた。だが、これは誰も話してしないだろう。回りにいた人全員が、提督の提案に驚愕した

 

「オ前……馬鹿カ?」

 

戦艦棲姫は嘲笑った。いや、戦艦棲姫だけではない。周りも驚愕している

 

「……貴方は……正気ですか?」

 

 大淀は呆れ果てていた。龍譲や不知火は何も発せず、明石は博士に目を向けていたが、博士は何も言わない。将校も軍曹も同様だ。ただ、時雨は提督の提案には全く動じなかった。いや、僅かに動揺したのは確かだった

 

「いや、正気だ」

 

提督は目線が集まっているのにも拘わらず、戦艦棲姫を睨んでいた

 

「何故、私ガソレヲスル必要性ガアル?貴様ラノ手ハ借リン」

 

「いいさ。ここで、俺達を殺しても」

 

戦艦棲姫の挑発に提督は、顔色を変えなかった

 

「ただ、お前はあの戦艦ル級改flagshipに負けた。死んだと思ってコンクリート詰めにした。実際に俺達が掘り起こさなければ、ずっと生き埋めだ」

 

「……」

 

「例えお前が復讐に走って戦艦ル級改flagshipに挑んでも返り討ちに会うだけ。俺達は奴らを倒す。お前も奴らに恨みはあるはずだ。深海棲艦の指揮権を奪ったのだからな」

 

「ソンナモノハ奪イ返ス!」

 

 戦艦棲姫は苛立ちを隠せなかった。彼女にもプライドがあるのだろう。余りの殺気に北方棲姫は小さく悲鳴を上げて、戦艦棲姫から離れた

 

「出来ないはずだ。もうお前の仲間はこの世界にはいない。ここは現実を見よう。……利害の一致だ」

 

 提督の言葉に戦艦棲姫は小さく笑った。だがその声は除々に大きくなっていき、やがて耐え切れないとばかりに決壊を迎えた

 

「何が可笑しい!」

 

 陸軍将校は怒鳴ったが、戦艦棲姫は聞く耳を持たない。ただの人間の事はどうでもいいらしい

 

「イイワ。話ニ乗ッテ上ゲル。但シ、捕ラエラレタ港湾棲姫ヲ助ケル為ダ。オ前達ノ交渉ニ応ジタ訳デハナイ」

 

 戦艦棲姫は両手を上げ、艤装の怪物も威嚇はしなくなった。もう戦う意志はないのだろう。北方棲姫もホッとしたようにため息をついた

 

 

 

「……司令。説明して貰います」

 

 一同は戦艦棲姫を岐阜基地まで連れ帰った。装甲車は失った為、襲撃に会ったら圧倒的に不利だろう。時雨達と提督はトラックに乗っていたが、乗るな否や、提督は質問の集中砲火を浴びた

 

「分かっている。……その前に俺の意見に賛成だった人は居るか?」

 

 提督は質問を質問で返して来た。皆は手を上げない。いや、2人だけは賛同した。博士と時雨だ

 

「僕は提督に従うよ。決めるのは提督だから」

 

「いや、そりゃそうだけどさ」

 

時雨の意見に龍譲は突っ込んだが、歯切れが悪い。先ほどの件で不満の用だ

 

「分かっている。まあ、そうだろう。皆が不満を持っているのは。俺は未来の事を考えていたんだ。人類の敵は結局は、人類だったんだなって」

 

 提督は何を言っているんだろう?人類の敵は、所詮は人類だって?深海棲艦ではないのか?

 

「深海棲艦は敵だ。それは分かる。散々、ニュースでやっていたからな。俺は見ていないが、未来でも艦娘はよく戦ったよ」

 

 不知火達は顔を見合わせた。提督の発言は、建造されて間もない自分達が戦っていないようなものである。流石にそれは聞き捨てならない。大淀が切り返した

 

「提督。お言葉ですが、私達はまだ練度も兵装も足りません。先ほどの戦いも相手は戦艦棲姫です」

 

「そんな事は分かっている」

 

提督はいなした

 

「俺も見たよ。初めての実戦なのに、良く戦っている。しかし、お前達は無敵ではない。戦艦棲姫と同等かそれ以上の力を浦田重工業の戦艦ル級改flagshipは持っている。それに加えて、浦田重工業は俺達が持つ兵器よりも進んでいる。それを倒すのは難しい。記録を見せたから分かるだろう」

 

「それは……」

 

 大淀は口ごもった。未来で深海棲艦がミサイルやジェット戦闘機などの強力な兵器を用いた事によって、自分達は惨敗した。体験していないとは言え、アイオワが残した近代兵器のスペックや時雨の証言などで恐ろしいものである事は容易に想像出来る。何しろ、イージスシステムを搭載した軽巡と駆逐艦の艦隊だけで戦艦や空母を滅多打ちにしたと聞けば、誰も楽観できない。先ほどの戦いもそうだ。戦力差だけではない。能力が違い過ぎた

 

「しかも、浦田重工業は平行世界の日本から兵器や物資をこちらに持って来ている。平行世界の日本が、浦田社長の悪行を食い止めるという希望もない。仮にあるとするならば、時雨がいた未来では地獄を見ていない。ワームホールは奴の物だ。しかし、攻めるには火力が足りない」

 

 艦娘達はまた顔を見合わせた。何しろ、浦田重工業は戦闘ヘリや無人航空機という化け物を持っている。何機持っているか分からない。情報が無いため、不明だ

 

「そうですが、しかし……」

 

大淀が言いかけるのを提督は遮った

 

「待て、俺は君達を責めている訳ではない。悔しいが、誰が指揮を取っても同じだろう。問題はどう戦うかだ。その前に、君達の疑問を答える。大淀……残念ながら、俺達の味方は少ない。それに対して浦田重工業は兵力は少ないだろうが、味方している人は多い。それに奴が『あの兵器』を知らないという保証はない。万が一、先に対策されたらこの作戦は空振りだ」

 

 大淀は黙り込んでしまった。自分達に置かれている状況を嫌というほど、思い知らされる

 

「私も見ましたけど、確かに『あの兵器』は浦田社長が知っていなくても、誰かが知っているはずです。平行世界の米軍が研究しているのなら、対抗策も研究されているに違いありません」

 

 明石は思い出したかのように付け加えた。ディープスロートは確かに狡猾な人だっただろう。しかし、情報だけで戦争に勝てるとは限らない

 

「ミサイルやジェット戦闘機を造る技術だってこちらには、無いんだ。アイオワでも出来なかったのを奴らは、製造し使っている。勝負にもならない。それなら、保険を掛けてから挑むしかない」

 

 時雨は顔をしかめた。確か未来では、アイオワと合流するまでは敵の兵器が分からなかったのだ。不発したミサイルを解析しようとしたが、全く分からなかったという。『艦だった頃の世界』であるアクタン・ゼロのようにはならなかった

 

「司令は私達にどうしろと?私達は浦田重工業が言っていた『標的艦』なのですか?」

 

 不知火は呟いた。嫌味で言ったかのような感じであるが、不知火も内心では分かっていた

 

「いや、違うよ。提督が言っていた。利害の一致だって。何も深海棲艦と仲良くする訳じゃない」

 

時雨の言ったことにより、今度は時雨の方に目線が集まった

 

「時雨。幾ら何でもそれは、無いやろ?」

 

「龍譲さん。僕はずっと地獄を見ていた。雪風と同じように幸運艦。そして仲間の死をたくさん見た。1回目は『艦だった頃の世界』、2回目は破滅した未来」

 

龍譲は何か言いたそうだったが、反論する言葉が見つからないようだ

 

「僕はもう、仲間が撃沈されるのを見たくない。そのために、この時代に来た」

 

 時雨はトラックの壁に背をもたれながら言った。もう、何も失いたくない。しかし、自分が出来る事は限られている。

 

「だから、提督の考えは従うよ」

 

「そうか」

 

 時雨の言葉を聞いても、提督は笑わなかった。提督も本来はやりたくなかったかも知れない。しかし、何もしないよりかはマシだ。何しろ、正攻法で勝てるとは到底、無いのだから。『平行世界の過去の日本』でのマリアナ沖海戦でもそうだ。日米の戦力差は既に開いており、いかなる手段を持っても米艦隊を対抗する戦力は無かったのだから

 

 それが自分達がいる世界でも起ころうとしている。いや、マリアナ沖海戦よりも最悪な状況になりつつある。提督が神風特攻を立案していたら流石に反発するが、幸いそんな人間ではない

 

 後に提督から聞いたが、提督も『平行世界の過去の日本』において太平洋戦争で何が起こったのかを知っていたと言う。艦娘には太平洋戦争と呼ばれる戦争の記憶があるらしい。提督はそれを教訓にして指揮していた。未来の提督も同様で負け戦が続いても自殺攻撃はやるなと厳命したほどだ

 

「正しい決断だったと思いたいな」

 

 皆は議論を止め、だんまりとしている中、提督は僅かに呟いたのを時雨は聞いた。しかし、トラックのエンジン音や揺れで時雨以外、誰も聞こえていないようだ

 

 

 

運命、現実、そう理解して受け止める事が出来るのなら、どれだけ楽だったろう

 

 しかし、時雨と提督は茨の道を選んだ。世界が滅ぶのを防ぐため、歴史を変えるため、元凶である浦田重工業と戦艦ル級改flagshipを阻止するため

 

 歴史を変革するという神にも近い難行の道を時雨と提督は選んだ。どんな試練だろうと、投げ出すわけには行かない。愛する者を守るために

 

新たなる未来を獲得出来るか。差し込む光は、神ではない。己の力で導く

 

例え悪魔と取引しようとも




おまけ
戦艦棲姫「オ前達ガ艦娘。『ぬいぬい』ト『わんこ』ト『任務娘』。ソシテ、『まな板』カ」
龍譲「ちょっと待てや、そこの姉ちゃん!今、サラリとうちが気にしている事を口にしたな!」
戦艦棲姫「何?何処ガ間違ッテイルノ?」ギロッ
龍譲「くっ……こうなったらこっちも言うたる!『ダイソン』『ケツダイソン』『ジェットストリームダイソン』『インフルエンザ発症でイベント皆勤賞しなかった』……」
戦艦棲姫「モット褒メテモイイワヨ」
龍譲「あかん。悪口が褒め言葉になっている」
時雨「ダイソンの方が一枚上手だったね」
提督「しかも火力が違うから攻撃しても返り討ちに会うからな」


提督は戦艦棲姫と何を話したのかは秘密。密約のようにも見えますが
ただ、現代兵器を持っている相手に対して保険は掛けたようです

理由としては兵器の性能差が主です
浦田重工業は戦闘ヘリや無人航空機などの現代兵器を持っているため、これを倒すには容易ではありません

本編でもゼロ戦がほぼ無傷でアメリカの手に渡って、研究・対応されたアクタン・ゼロについて少しだけ触れられていますが、実は旧日本軍も鹵獲機や撃墜した機体を研究はしています

史実ではフィリピンで捕獲した米軍機(B-17爆撃機)は綿密に研究されており、試作陸攻である『連山』ではB-17の研究成果が反映されています

……とここまではいいのですが、B-17を解析した人達の感想は「(B-17自体)凄すぎて真似できない(汗」という事だった(『連山』自体も完成されず)

更に付け加えますと、撃墜したB-29爆撃機の残骸を分解や研究もされましたが、「……こんなの作れる国と戦争したのが間違いだったなぁ(溜息」 という結論になったという

ただでさえ、史実でもこの状態なのにミサイルやジェット戦闘機相手だと次元を超えています
猿が人間の道具を入手しても、研究や真似なんか出来ない。なので、別の方法で戦うようです

イベントと言えば戦艦棲姫と空母棲姫。いつも苦しめられています(笑)。戦艦棲姫(ダイソン)は艦これアーケードでちゃっかりと出たりしていますから、今後は空母棲姫も登場する可能性は高いですね
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