時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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第73話 出撃と素性が掴めない敵

 会議室には大勢の人が集められた。各パイロット達、士官、そして参謀が集められた。全員、502部隊の反抗作戦に同意したものである。当然、その中に提督と時雨達がいた。艦娘達も作戦に参加するので当然である

 

陸軍将校らの幹部達が入り、作戦内容を行った

 

「時は来た。これより反攻作戦を決行。この基地に居る全軍を首都に向けて進軍する。目標は浦田重工業と日本から脱出を図ろうとする艦隊殲滅。既に湾内で出港準備が進められている。この艦隊を逃せば我々は追尾する事は不可能。放っておけば、浦田重工業は深海棲艦を使って世界に攻撃する手を緩めないだろう。我が国も対象のようだ」

 

 隊員達は顔を見合わせた。浦田重工業のやり方に不満を持ち、かつ、502部隊が勇敢に戦った事から志願したのだ。しかし、浦田重工業の裏の顔を聞かされた時は、全員思考停止に陥ったのだ。浦田社長を全員国賊として死刑すべきだ、と過激な発言をした士官でさえ、驚愕したと言う。まさか、ここまでやっているとは思ってもみなかったらしい

 

「奴らは自分の戦力である戦艦ル級改flagshipを使って深海棲艦を操り、世界を的確に攻撃している。数日前には沖縄が大攻撃を受けているとの情報も入った。時間が無い。そこで今回の作戦だ。艦隊が出港前に、浦田重工業は我々の罪を告白すべく副社長が国会で証人として現れる。皆が注目している事象だ。そこを狙う」

 

将校は貼られている関東地方の地図に指揮棒で目標地点を刺した

 

「我々は関東地方にある空港と国会議事堂とマスコミを占拠し、副社長とそこにいる閣僚を人質として立てこもる。既に先遣隊は現地に到着し待機中だ。統合参謀長である元帥は、包囲している部隊を引き上げさせてくれたため、こちらの動きは悟られていない。占拠し、こう着状態になった隙に例のビデオをテレビに流す。これは浦田重工業が数々行った不正の映像だ」

 

 残念ながら、このビデオは癒着や裏金などだ。しかし、浦田重工業の警備兵との戦闘はばっちり撮っていたため大丈夫だろう。戦闘ヘリとの交戦記録もである。これだけでなく過激な映像もあるが、果たして流していいのかどうか。しかし、その映像に映っている本人は、同意しているから問題はないはずだ

 将校と博士が何とか元帥に連絡を取った。元帥も話の内容に驚愕し、何とか秘密裏に手を回してくれたらしい

 

「日本国内は大混乱だろう。混乱している最中、浦田重工業の本社ビルと港を攻撃。空と陸で同時攻撃だ。だが、当然のように待ち構えているはずだ。前回のクーデターの際は、航空兵力は使われなかった。ヘリコプターと呼ばれるものを持っているが、全体の規模は不明である。本隊が浦田の警備兵と交戦する中、手薄となっている所を別動隊が『X兵器』と共に接近する。効果の範囲は200メートルだが、万が一を考えて100メートルで起爆させる」

 

 X兵器がどんなものか隊員達も首を傾げるばかりだ。何しろ、非殺傷兵器が切り札となるとは思わないだろう

 

「別動隊は3つに分ける。1つは試作爆撃機である『深山』に載せ護衛機と共に空から接近。もう1つは陸路だ。残りは予備だ。但し、到着出来ないと判断したら、躊躇わず起爆させろ」

 

 将校は説明を終えると見渡した。隊員達も覚悟している顔だ。将校は時雨や不知火からの話を思い出した。彼女達は、大東亜戦争を経験したという。もし……もし、浦田重工業や深海棲艦が現れていなければ、どうなっていたか?ここにいる人達は、米英と戦争している事だろう。しかし、それは『もしも』だ。今は国内にいる敵を倒さないといけない

 

「何か質問は?」

 

 隊員達は誰も手を上げなかった。いや、1人だけ上げた。その者は海軍のパイロットだ

 

「我々は命令を受けて戦う覚悟はあります。どんな敵だろうと戦います。今回の作戦も事前に説明があったお陰で、この国が危機的状況であると理解しています。しかし、浦田重工業は強敵です。考えたくありませんが、失敗した場合、我々はどうなるのですか?」

 

 全員の目がそのパイロットに集中した。これが新兵だったら、怒鳴られるかも知れないが、そのパイロットは凄腕であるため誰も文句は言わない。いや、隊員達の心境も同じだろう。クーデターの時はコテンパンにやられたのだから

 

「分かっている。失敗及び押し返された際は自動的に予備作戦が実施される。但し、発動の兆候は誰でも分かるものだ。その時は、以下の行動を取れ。――巻き込まれるな。民間人の避難を最優先にさせろ」

 

 隊員達は顔を見合わせた。何が起こるのだろうか。しかし、その予備作戦が何なのかは教えてくれなかった

 

 

 

 時雨達は待機中である航空機に向かった。8機ある深山と呼ばれる陸攻に502部隊と一緒に乗り込んだ。X兵器も積んでいる。但し、X兵器にのせて航空攻撃に使うのは1機だけだ。残りは関東の近くの空港に降りる。その後は車で移動だ

 

「何で浦田重工業の近くで下ろさないの?」

 

「敵の対空兵器が恐ろしいものだからだ。それにヘリと無人機があると言うことは、強力な戦闘機も持っているはずだ。全滅してしまう」

 

 浦田重工業の航空戦力が依然として不明だ。数は少ないだろうが、兵器の質は桁違いだろう。その理由は、千葉の田舎に、浦田重工業が保有する飛行場がある。それだけならいいが、その滑走路が異様に長いのである。住民が少ないため未確認であるが、雷のような音を何回も聞いた事があるという。しかし、飛行場を中心に半径20km立ち入り制限されているため、中に入れない。新兵器の開発のための拠点と謳っているが、もしかすると……

 

「ジェット機ってそんなに恐ろしいもんなのか?」

 

「未来では深海棲艦がジェット機の艦載機を持っていたけど、滅茶苦茶強かった。赤城さんや加賀さんはそれで敗れた。短時間に」

 

 本当は時雨もあまり見ていない。しかし、ミサイルと呼ばれる兵器でレシプロ機が成す術もなく撃墜されれば誰だって放心状態に陥る。まだ浦田重工業は、深海棲艦用のジェット機は用意していないだろう。しかし、平行世界の日本から戦闘機を持ち込んでもおかしくはない。あのアパッチという兵器もそうだ

 

「覚悟はいいか?着陸したらX兵器を守れ。いいな?」

 

 提督の言葉に艦娘達は頷く。提督も同行するが、提督は生身だ。万が一のため大淀が護衛するという。大淀もより良い通信機を持っているため大淀を通じて指示を出せる。博士は明石と共に空港で待機。建造ユニットを確保するまでは動かない。この二人が死なれては意味がない

 

 

 

「提督、大丈夫?」

 

「大丈夫に見えるか?」

 

提督は顔をしかめている。手は固く握り閉めている事から、緊張しているのだろう

 

時雨も緊張している。これが最後だ。もう後は引けない

 

「提督、僕は大丈夫だよ。仲間に会えるから」

 

潜入していた工作員によると強奪された未完成の建造ユニットは、完成したらしい。皮肉にも浦田重工業が完成させたのだから複雑だ。ただテストは、まだしていないらしく作業を終えると放置されているという

 

テストする時間がないのか、それとも意図的なのか。後者でないのを祈りたい

 

「でも、提督は柔軟性があるから指揮出来るはずだよ。僕は……『あの時』の……『あの戦争』のようになっちゃうんじゃないかって」

 

 時雨の『あの時』とは平行世界の日本の太平洋戦争の事を指している。当時、大日本帝国は『一億抜刀 米英打倒』などとみんなで一致団結し国のために……というスローガンを掲げて戦った

 

それが当たり前だった。『艦だった頃の世界』のでは

 

「僕は色々と学んだつもりだった。でも、平行世界もこの世界も戦争を経験して提督と皆と会って……気付いたんだ。僕は未熟だって」

 

「どこが未熟なんだ?ここにいる不知火達は演習してやっと改になったというのに、お前は改二で歴戦だ」

 

 提督は不思議そうに聞いた。確かに時雨はタイムスリップの事もあって、実戦経験している。大淀達も改になったばかりだが、時雨は改二だ

 

「僕が言いいたいのは、戦いの強さじゃない。初めは……大義のために戦えば勝てるかと思っていた。でも、それは間違いだと気付いた。浦田社長に捕まった時に見せられた太平洋戦史の映像とディープスロートが記したデータを見て……実は間違っている。ただ、無意味な戦いになっているんじゃないかって」

 

時雨は思い出した。牢屋に入る前に太平洋戦史の映像を見せられた事を。浦田社長は嘘をついているが、あの戦史の映像は本物だった。ディープスロートの資料に第二次世界大戦時の資料もあったが、内容は一緒だ。それどころか、自分が知らない事まで記している。あの戦争は、間違いだったかも知れない。浦田社長の野望を食い止めなければならないのは分かる

 

「僕は……あの時、反論出来なかった。第二次世界大戦を止めようとする姿勢だけは同調してしまったんだ。僅かだけど。太平洋戦争の戦史を見せられると」

 

「時雨、今は関係ありません。私達が出来る事は、浦田を止めるだけです」

 

 大淀は毅然として言った。確かにそうだろう。仲間の死がかかっているのだから。大淀は、未来でも最期までしっかりとしていた。しかし、龍譲と不知火は一瞬だけ顔を見合わせたが、直ぐに時雨に顔を向けて首を振った。2人も戦史は知っている。ディープスロートの資料を見たのだから

 

「分かっている。僕は誰の血も流したくはない。でも、黙っていれば殺されるだけ。僕達の運命に左右される戦いなのは分かっている。でも――」

 

「しっかりしてや!そんなに悩んでいては戦えへんで!」

 

 龍譲は呆れたが、内心では時雨と同じで不安を抱いている。自分達よりも詳しい戦史に艦娘達は驚いた。提督もである。アイオワが記した記録よりも詳しかったのだ。ディープスロートは、平行世界の日本の住民であるはずなので詳しいのは当たり前であるが

 

「時雨。まずはその過去は頭の片隅に留めておけ。この世界は、平行世界の日本ではない」

 

提督はきっぱりと言った

 

「次に、こう思っておけ。お前は生きている。生きるとは選択する事だ。相手を愛するのか、憎むのか、手を差し伸べるのか、拳を握りしめるのか。人間関係でさえ簡単に答えが出せる訳ではない。それが、社会や国家間になると複雑怪奇になる」

 

提督は本当に……未来の提督だ。緊張しているのに、なぜこうも答えられるのだろう?

 

「俺も色んな事を学んだ。お前が出会った時からも。俺は目的がある。バカな事を考えている組織と異様な戦艦ル級を吹っ飛ばすために。今はそれだけだ」

 

「提督は周りを気にしないの?旧日本軍は、計画無しに戦争を進めたのに」

 

 第二次世界大戦で日本軍は目的がないまま計画無しに戦争を始めた、と戦史に書かれていた。あの論文には唖然とした。僕達の『艦だった頃の世界』の戦争は、無駄だった事に成る

 

「気にはしている。ただ平行世界の日本の太平洋戦争時、ディープスロートが作成した資料通りは『大本営は、未来の自国をどういった形にするか、という「国家戦略」が無いまま戦争を始めた』ことが敗戦の一因だ」

 

提督は顔をしかめながら言った

 

「だから、奴らに何が正しいのかを教える必要がある。ありのままの世界を受け入れたくないのなら、自分で戦って変えるしかない。それも、短絡的な考えではないものでないとな」

 

時雨は頷いた。どうして、こう思ったのだろう?やっぱり、博士の話を聞いた時から。僕は……もしかすると……

 

しかし、提督も不知火達も気付かない。この悩みは僕自身のもの。しかし、心配なのはこの戦いの後、どうなるかが気になった。提督も大丈夫だろう。未来が変わっても、人格が変わらないはずだ。長く近くにいたのだから

 

「それを聞いて安心したよ。博士も提督もしっかりしているって」

 

「その代わり、俺はお前達のように戦えない。武器は手に持っている自動小銃と拳銃しかない」

 

 提督はニヤリとした。何しろ、戦艦ル級flagshipを対処しないといけないのに、指揮官は通常の武器しか持っていない。つまり、せいぜい自衛用というわけだ

 

提督は時雨の肩に手を置いた

 

「お前は、未来の俺の意志を受け継いでいる。理不尽な事態を変えなければならないという意志を。俺は昔、親父のやらかしの件で周りからバカにされた。人間不審に陥った事もあった。しかし、浦田のような過激な事は望んではいない。地道に努力して道を開くしかないのだよ」

 

 提督の過去は、博士のせいで暗いものだった。しかし、諦めたり匙を投げたりはしなかった。だからなのだろう。あの未来の敗戦で艦娘を見捨てなかったのは本心だった

 

「例え世界が闇に包まれたとしても、その闇から救い出す者が現れる。未来では俺が、この時代では時雨、お前だ」

 

「僕は何もしていない」

 

「クソガキだった俺を矯正しただろ?」

 

この言葉に全員が笑った。クールな性格の不知火も微かであるが、笑っていた

 

「闇に立ち向かわないとな。しかし、決して飲み込まれるな。飲み込まれたら、同じ過ちをするだろう」

 

 笑いが落ち着いてから、提督は言った。しかし、提督は時雨とは別の問題を抱えていた。それは、敵の正体が依然として謎であると言う事である

 

 

 

昨日、会議室

 

 その会議室では、数人しかいなかった。将校が父親と共に話があると言って来たのだ。その場にいたのは、親父と502部隊を率いる中佐と軍曹である。この4人だけだった

 

「戦艦ル級改flagshipの件が分かったって本当ですか?」

 

俺は会議が始まると同時に、将校に質問した

 

数日前、戦艦棲姫の証言を元に戦艦ル級改flagshipの正体を突き止めていた。北方棲姫と兼ねて話の経緯は大体つかめたのだ

 

 

 

 深海棲艦がこの世界にやって来て、多国籍軍を排除した日。トラック島にいた島民や軍人など人間を捕虜にした時に、ある女性が戦艦棲姫と取引をしたという。自分がどうなってもいいから、他の人間達の捕虜を逃がして欲しいと

 

戦艦棲姫はその女性を気に入り、自分達の駒として使うようにした

 

『彼女ニ今後、スパイトシテ人間社会ニ潜入シテ貰ウ。人間側ノ事ヲ良ク知ッテイル。行方不明ニナッタ仲間ヲ探シ出セルチャンスニモナル』

 

 港湾棲姫は反対したが、戦艦棲姫は独断で行った。そして、逃げ出さないように自分達の血を体内に注入し、その女性を深海棲艦の一員としたらしい。見た目は人間だが、所々に角や鍵爪があったという。潜入の際には深海棲艦の特徴である角や鍵爪は消えて見えなくなるが、それには体力を消耗するため制限時間があるという

 

 

 

「その女性は、日本に上陸して工作員として働いたらしい。そして、なぜか戦艦ル級改flagshipとなり深海棲艦の拠点として使っていたトラック島を襲撃。姫三人は倒され、ワームホールもブロックした。大佐が考えた対深海棲艦の怪電波を使っているらしい」

 

「……信じられんが、本当じゃろう。しかし、外見を変形できるとは」

 

 父親は呻いた。こんな事に成っているとは思わなかった。対深海棲艦の怪電波とは、深海棲艦を追い払うためのものである。深海棲艦が嫌がる強力な電波を発信して近寄らせないようにする。しかし、それには巨大なエネルギーと施設が必要である。駆逐イ級くらいなら、小型の通信施設があればいいが、姫や鬼級となると、巨大な船が必要である。最低でも戦艦大和並の巨大な船が必要である。莫大な金がかかるためとても非現実的だ。浦田重工業は、どうやって造ったのだろうか?

 

「確か、浦田重工業は海底資源と深海棲艦の生態の謎の究明と称して巨大な調査船を造ったらしいが、まさか――」

 

「それじゃよ。研究用の機材と称して電波発信機を積みおったな。あの時、対深海棲艦の兵器の試作をテストするためと言っておった。誰も不審に思わんかった」

 

 502部隊が調べた資料を漁りながら博士は頷く。しかし、それは重要なものではない。問題となっているのは戦艦ル級改flagshipである

 

「しかし、捕虜を乗せた船が上陸したという話は無い。証言を元に似顔絵を書かせたが、誰だか分からん」

 

 当時のトラック島の記録は、深海棲艦が攻めて来たお蔭で失われた。尤も、現在は警察に頼むことは不可能だ

 

 皆が話し合っている中、軍曹は黙り込んでいた。こんなバカげた話は信じられないのに珍しく黙っている

 

「軍曹、どうした?」

 

「中佐……実は時雨を助け出した時、刑務所にいた工作員が妙な事を言っていました。戦艦ル級改flagshipは時雨を拷問していたらしいのですが、誰も戦艦ル級改flagshipが刑務所を出入りするのを見ていなかったと言っています。変形能力があるなら筋が通りますが」

 

 将校に声を掛けられた事により、正気に戻ったらしい。軍曹はとても言いにくそうだった。ここのところ、突拍子のない事が立て続けに起こっているせいで、感覚が鈍っている。しかし、軍曹はそうではない。それ以上の事態についていけないからだ

 

「誰か分かるか?変装した者を?」

 

「変装する所は見ていません。実は――」

 

 軍曹はある人物を言った。俺も驚き、父親と将校は顔を見合わせた。とても、信じられなかったからだ

 

「確かなのか?」

 

「確かです。部下に二度確認しました。連れて来て貰ってもいいのですが」

 

「そう言うことじゃない。……しかし、あり得るのか?」

 

将校も予想外だったらしい。戦艦ル級改flagshipは、浦田社長の影に隠れていた

 

「だから目を付けられた。観艦式のあの時、時雨がただの人間でない事を一目で分かったんだ。だから、浦田社長は俺と時雨に近づいた。席に盗聴器を仕掛けたのも」

 

 俺は苦し紛れに言った。あの艦観式に行ったのが間違いだった。確かあの時、時雨は強力な殺気を一瞬だけ感じ取ったという。いや、あの時はそんな事を誰が予測できたのだろうか?

 

「実は私も独断で、調べました。……確かにこの人はいました。書類上では。しかも、住所も経歴も学歴も出鱈目です。部下に命じて密かに向かわせましたが、たどり着いたのは住宅街です。聞き込みも行いましたが、誰もこの者を見ていないというのです。学校の教師ですら、その者は在籍していないと言うのです。本当に……何者なのかも分かりません」

 

「つまり、書類偽装か?」

 

 こういうのはあり得なくもない。しかし、戦艦ル級改flagshipが元人間である可能性は大だ。浦田社長が陰で糸を引いていたのは確かだが、戦艦ル級改flagshipになった人間の方が不気味だ

 

「浦田社長の親戚か親族である可能性は?」

 

「彼以外の親族は既に死んでいます。両親だけでなく、妹も既に死んでいます」

 

「妹がいたのですか?」

 

俺は驚いた。てっきり一人息子だと思っていたが

 

「そうだ。だが、その妹は高校時代に自殺した。いじめられていたらしい」

 

「とすると何者だ、こいつは?」

 

「分かりません。浦田社長との関連性が不明です。私も初めは、余りにも怪奇過ぎてついていけなかったのですが」

 

 軍曹の報告に将校も親父も頭を抱えた。敵の正体が、こんな異質だとは思わなかっただろう

 

「親父、人が深海棲艦になるって」

 

「ああ、『超人計画』の一環だ」

 

父親は苦々しそうに言った

 

「深海棲艦の力は強大だ。人に近い……いや、亜人と言うべきか?深海棲艦の力を人体に取り入れると確かに強くなれる。理論上は」

 

「理論上は?」

 

将校は指摘した。とても、気になったからだ

 

「そうじゃ。上手く行けば艦娘に近い能力を持つ人間になれるじゃろう。じゃが、深海棲艦は怨念の集合体のようなもの。理性がある限り、拒絶反応を起こし醜い化け物になる。最悪の場合、死に陥る」

 

「先祖はそれを実行したのか?」

 

俺は驚いたが、親父は何も言わない。本当にそうなのだろう

 

「だからワシは忌み嫌ったのじゃ。先祖の研究を一度見直し『艦娘計画』を立案し成功させた。しかし……本当なら、とても信じられん。拒絶反応もせずにどうやって完成させたのか?」

 

「浦田重工業の科学力では何とかなったという点は?」

 

俺は聞いたが、父親はかぶりを振った

 

「いや、それは考えられん。深海棲艦の力の源は、海の力の他に恐怖や憎悪、苦痛など感情の負の部分を数倍もの増大させておるからじゃ。そんなものを普通の人間如きが耐えられる訳がない。人格崩壊、多重人格を引き起こし、戦えるどころか生きる事さえ難しい。科学でどうにかなるという問題ではないのだ」

 

 父親の説明を受けて俺は黙り込んだ。親父の説明だと、人が耐えられるものではないとの事だ。……しかし、戦艦ル級改flagshipになった人間は、それをクリアしている事に成る。何なのだろう?

 

「親父、それは後にしよう。俺も艦娘達と同行する。――後方で指示仰ぐだけだ」

 

 父親から厳しい目で見られたため、慌てて言った。何度でもいうように指揮官は、安全の場所に居なくてはいけない。万が一、指揮官に何かあったら大変だからだ

 

「だけど、ここで議論しても無駄です。作戦中に向こうから正体を現すかも知れない」

 

「確かに一理ある。情報が足りな過ぎる。お前と艦娘の因縁だ」

 

 将校も頷いた。何しろ、証拠が足りない。浦田重工業の悪行で手一杯で戦艦ル級改flagshipにはお手上げだった

 

 

 

 提督は先日、議論していた事を思い出した。戦艦ル級改flagshipの謎。それを解き明かし弱点を見つけ倒す。大変な作業だ

 

「時雨、戦艦ル級改flagshipを倒すぞ。その前に仲間を集めないとな」

 

「建造ユニットがまだ破壊されていないのが前提だね」

 

 勿論、建造ユニットが無事である事が前提条件だ。資源が無いため再び造ろうにも無理である。よって、無傷で取る必要がある。提督の読み通り、艦娘を標的艦にするために大事にとっていれば

 

「ああ、これが最後だ。ここで奴を逃がしたら終わりと思え!」

 

 八機の深山と多数の戦闘機は滑走路に向かった。目指すのは関東地方にある飛行場である。先遣隊が既に占拠したらしい。先遣隊が簡単に占拠出来たのも、実は元帥のお蔭である。反攻作戦には、心強い味方がいたのでスムーズに進める事が出来たのだ

 




目的や目標がなしに実行してしまうととんでもない事になってしまいます

話で上げられました、旧日本軍は『未来の自国をどういった形にするか、という「国家戦略」が無いまま戦争を始めた』事は事実です
手を伸ばしやすいところに手を伸ばした結果、いたずらに敵を増やしていました

 対米戦も陸海軍は楽観(?)し過ぎて、自力で勝利か講和できるとは考えてなかったらしい
と言うのも真珠湾攻撃に成功して、なおかつドイツがイギリスを破ればアメリカの世論が揺いで講和の可能性が生まれるという、 いわばドイツ頼みの戦争というもの

尤も当時の陸海軍は官僚組織だった事もあり、予算をふんだんに使って戦艦や空母を建造してしまったため、「対米戦?無理です!国力の差で勝てません!」とは言えなかった、という事情もあるとの事
まあ、「やるなら今しかねえ!今なら、短期決戦でいれば何とかなる(かも)!」と調子いいことを考えてしまったのが終わりの始まり、ということらしいです

この世界の日本軍は目的がしっかりしているため大丈夫でしょう。皮肉にも浦田重工業のお蔭かも知れませんが

私の場合だと試験勉強の際、うっかり試験範囲を間違えてしまい、試験本番で焦ってしまいました。お蔭で頭の中でずっとあの人の声が響いていましたよ

DIO「ほぉ。貴様、試験終了チャイム直前まで問題を解いている受験生のように必死こいた気分になっているなぁ」

計画もですが、確認も大事ですね(勿論、試験の点数は悪くありませんでした)
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