浦田重工業の副社長と秘書を捕らえ会議室を追い出し、別の部屋に監禁させた直後に何者かがテレビの電波ジャックされた。この後の放送の予定はない。502部隊が流す映像はさっきので全てだ。しかも、チャンネルを変えても同じ場面だ。罵声や野次に満たされた会場は、たちまち静まり返った
『おめでとう、502部隊と艦娘の諸君。君達の勝ちだ。我々の悪事をこのような形で世間に暴露するとは』
テレビの画面に映し出されいるのは、椅子に深々と腰を掛け拍手する姿だった
(一体、何をする気だ?)
元帥はこの男の考えが分からなかった。どうみても浦田重工業は終わりだ。日本経済には大打撃だが、このような悪を見逃す事は許されない。そのため、憲兵隊に浦田重工業の本社ビルに向かわせたのだが
(やはり、こいつ……)
密かに知らせてくれた502部隊の将校と艦娘計画を唱えた後輩である大佐の忠告。それは聞いていたが、未だに信じられなかったからだ。たかが一企業相手に軍隊出動するよう要請した事には、元帥も驚きを隠せなかった
しかし、502部隊の将校と大佐は、何とか説得をさせて岐阜基地を包囲させている部隊を解き、浦田重工業を攻撃に向けて待機させるよう説得した。浦田社長が、ただの非国民や国賊のような輩だったらいい
だが、狡猾な輩だったら?少なくとも、浦田社長は意地になったり、怒りに任せたりして突っ走るような人ではない
この目で見なければ信じられないのが人間だが、悲しきかな。元帥は想像力に欠けていた
『我々は、何処ぞのバカがやるように放送局を無断で過激な映像を流すような真似はしない。関東一帯のテレビ放送を完全にジャックする事なぞ容易な事。しかし敢えてやらなかったのは、一部隊とは言え、中々興味深かったからだ。まさか、報道を介して我々の悪事を暴くとは』
(なっ?)
元帥を初め、その場にいた者は硬直した。自分達に不利になるようなことを認めるのか?
『だが、遅すぎる。我々はもう、この国には用はない。私は日本人だが、この国には失望した。父が日露戦争で戦死しても無駄死にと罵られ、母は重労働で周りから蔑まれた。労働者に味方と謳っていた共産党ですら私に失望させた。だから、私は会社を築き日本経済を支えてきたが……もう、どうでもいい。我々は真実を知ったからには、それを防ぐ義務がある。世界大戦を止めるための』
浦田社長は演説ぶっているが、どうも怒りを含んだ言い方だ。元帥は狼狽した。何が言いたいのだろうか?この男は何がしたいのか?
『深海棲艦の出現には予想外だが、それを利用する方法を思ついた。我々は平行世界が望んだ世界平和を実現するために実行した。例え、どんな手段を使っても実行する』
会議にいた人達は、何も言わない。何が言いたいのか分からないのもあるが、悪事がばれても、ここまで堂々としているのを見たのは初めてだからだ
『やはり、艦娘と502部隊は始末しないといけない。だが、『神国日本』や『皇国不敗』と唱えて亡国の道を導こうとする輩も始末しないといけない。何人かは秘密裏に始末してやったが、あまりやり過ぎると我々の行動に支障が出るのでな。副社長は囮だ!丁度、大勢集まっていたので助かる!政治家も軍人もマスコミも刈り取らなければならない!』
全員は唖然とした。この人は何をしようとしているのだろう?しかし、元帥は嫌な予感がした。まさか……
『最後に私を知る者に対してこう言おう。時雨と息子を殺せ!どんな手段をとっても構わん!お前は、もう隠れる必要はない!』
浦田社長は叫ぶと同時に、画面が変わりデジタルタイマーと上空から撮影されているだろう国会議事堂が写し出されていた
(まさか……そんなバカな!)
デジタルタイマーの数字は3分。しかも1秒1秒とカウントされている
「ここを攻撃する気だ!早く避難を!」
元帥の叫びに会議場は阿鼻叫喚となった。トップの者は我先にと扉に向かったが、扉の広さはしれている。悲鳴と怒号が相次ぎ、その場にいた憲兵ですら抑えられない常態だった。パニックになり、皆は人間性を失っていた
元帥は早々と脱出すると、憲兵を率いて副社長と秘書を拘束した部屋に向かった。何とかして奴等の企みを阻止しなくては。その前に情報収集だ。あの2人をどうやって吐かせようか?憲兵隊の尋問は激烈であるのは有名だが、果たして彼等に通用するのか?嫌な予感しかしなかった
その嫌な予感は早くも当たってしまった。角を曲がり2人を監禁している部屋の扉の前に来たが、元帥は絶句した。扉の前に立っていた歩哨二人が死んでいる。いや、殺され方が異常だ。まるで鈍器にでも殴られたかのように撲殺している。胴体にはいくつもの穴があいているが、大きさからして銃弾にしては大きすぎる。まるで拳に殴られたような。しかも、顔は恐怖を浮かべながら死んでいる。元帥は憲兵に命じて扉を開けたが、その光景を見た者は1人残らず顔を覆った
「うっ……うわあぁぁぁ!」
憲兵隊長は、絶叫した。耐えがたい血の匂いが鼻孔を刺激し、元帥は反射的に鼻を押さえた
「な……何だ、これは!」
憲兵の1人は恐怖で床にへこたれた。無理もない。部屋は監視役として10名の憲兵を置いていたが、何と全員殺されている。その殺され方も異常だ。胴体が滅茶苦茶になったり、首が無くなったり、心臓が抉られたりしている。変死体ばかりで床は血の海だ
「一体、どうやったらこんな事が出来る!」
元帥自身も若かった頃は戦場に出向いた事はある。陸軍出身であるため、死体を見るのは慣れている。しかし、こんな変死体は初めてだ!しかも、副社長も秘書もいない!あいつらがやったのか!?
「元帥!早く避難を!」
憲兵隊隊長の警告に我に帰った元帥は、一瞥すると外へ向かった。玄関は、逃げようとする人で溢れ人込みが出来ている。とてもではないが、出ることは出来ない。しかし、外へ出ようともがいていた人々が突然向きを変え、悲鳴を上げながら国会議事堂内へ走っていく。まるで、何から逃げているようだ。元帥と憲兵隊は慌てて壁際に逃げたが、逃げ遅れた憲兵は人込みに紛れてしまい人の波に飲まれてしまった
お蔭で玄関の出入りは容易になったが、何があったのか?急いで出たが、何もない。しかし、国会議事堂の周りにいた人々は何かから逃げ回っている。警官も憲兵も同様だ。なにがあったのだろうか?
「元帥!あれを!」
憲兵の1人が空に指を指した。指を指した方向に元帥は目を向けたが、彼は仰天した
何かが空を飛んでいる。それは上空を通過すると凄まじい轟音とともに、迷彩色の矢じりのような飛行物体が、国会議事堂の上空に擦過したのだ。4つの飛行物体は、反転するとこちらに向かっている
「早く国会議事堂から離れろ!」
元帥は人々とは違って外へ逃げるように走った。あいつらの狙いは、この国会議事堂だ!吹き飛ばす気だ!あんな飛行機は見た事が無い。あんなものは、我が軍には持っていない!迎撃は無理だろう
中年の身体には酷だが、まだ死ぬわけには行かない。国会議事堂の敷地から出た直後、その飛行物体は黒い物体を数個落としている。国会議事堂は見慣れない飛行物体を見て逃げ隠れた者も巻き込んで吹き飛ばした。急いで地面に伏せ、飛んで来る爆風と瓦礫から身を守った。人々の悲鳴と怒号、そして爆音が一気に耳に入る
ようやく収まり立ち上がったが、目に入り込んでくる光景に呆然としていた。国会議事堂が瓦礫と化としていた。遠くでも爆発音と煙が上がっているのを見ると、あの飛行物体が爆撃したのだろう
「ようやく分かった。あいつらがなぜ余裕でいられるのを」
奴らはとんでもないものを持っていた。502部隊からの報告では、あんな飛行物体についてはなかった。正直なところ、元帥は半信半疑だった。502部隊から交戦記録を読んだが、その中に奇妙な航空機と交戦したという。ヘリはともかく(回転翼機の飛行原理は以前から知られていた)、無人航空機という報告には流石に信じられなかった。しかし、目の前の奇妙な航空機を見れば信じざるを得ないだろう
だが、後悔先に立たず。恐らく、政治家や官僚の大半は殺されたのだろう。中にいた将官も生きているかどうか分からない。幸い、軍の指揮系統は生き残っている
「司令部に行くぞ」
「しかし、どちらへ?」
憲兵隊長の困惑に、元帥は一喝した
「何処でもいい!奴らは本性を出した!戦う気だ!このままだと、あの狂った企業に乗っ取られるぞ!」
「は、はい!」
憲兵隊長は慌てて指示を出したが、元帥は不安があった。深海棲艦は艦娘が対応させるとして……あの私兵軍団に勝てるのだろうか、と。さっきの未知の航空機を倒せる手段が思い浮かばない。となると、奴らが保有する私設軍隊や地上兵器の強さが容易に想像ができる。こちらが待機していた一個師団と戦車連隊。そして、岐阜基地から出撃した陸海軍の航空隊で倒せる相手だろうか、と
空港では待機していた出発の合図が出た。X兵器の1つは陸路で、もう1つは空で運ぶ。残り1つは予備だ。後は効果範囲に近づけばスイッチを押すだけだ。非殺傷なので民間人の被害は含まれない。……ライフラインは死す可能性はあるかも知れないが
元帥の指示によって陸と空から浦田重工業の本社ビルに総攻撃をする。その隙に守りが薄い所に侵入。X兵器を運搬する。ただ、問題なのは陸路ではどうしても海岸を伝っていかなくてはならない。内陸だと、大混乱で足止めを食らいかねない。しかし海岸沿いの道路は、待ち構えている深海棲艦の攻撃を食らうだろう。戦艦ル級改flagshipが指示を出しているだろう。その攻撃を防ぐのが艦娘である時雨達の役目だ
「よし、何としてでもX兵器を積んだトラックを守れ!」
大型トラックを守るのは装甲車とジープ数台だ。提督と時雨は装甲車を選んだ。防御力もあり、戦えるからである
「そう言えば、未来でも火力発電所に向かう時でもこの装甲車はあった」
時雨は懐かしそうに装甲車を乗った。兵員輸送車であるが、武装もあり防御力はあるためそう簡単に破壊出来ないだろう。未来でも、艦娘達と502部隊の一団は、タイムマシンの隠し場所でエネルギー源である火力発電所に向かう際に使われた軍用車両を見たため、見覚えがある
「ああ。これは陸軍が開発した最新鋭の兵器だ……と言いたい所だが、浦田重工業の協力を得て造ったものだ」
軍曹は皮肉たっぷり言った。元々、日本は列強国に比べると国力に乏しく、また島国という環境から日本陸軍の装備は貧相である。しかし、それは平行世界の日本の歴史。この世界では浦田重工業のお蔭で数は少ないものの兵器は一新された。戦車も装甲車も自走砲も供給されて喜んだ。しかし、タネを明かすと平行世界の日本の旧式兵器の技術を持って来ただけである。高度成長を利用して機械化部隊を進めただけに過ぎない
「しかも、この装甲車……パソコンのデータによると『60式装甲車』というものだそうですよ。向こうの世界では既に退役しているようです」
「「……はぁ」」
提督の説明に軍曹もドライバーもため息をついた。提督がパソコンのデータを調べたが、兵器は元よりライフラインや日用製品が発達したのは、浦田社長が平行世界の日本の歴史である高度成長期を参考にしたらしい。よって、この世界の日本は、アメリカを抜いて豊かになったのだが……
「……世界を攻撃するような狂気に走らなければいい会社だったのにな」
「太平洋戦争を知っていれば、何で浦田社長は戦争を止めようと努力しなかったんだろう?話し合いでやれば良かったのに」
提督も時雨も愚痴を言ったが、実は世の中そんなに簡単なものではない。大東亜戦争が起こった理由は、覇権争いと利益である。アメリカは太平洋や中国大陸を手に入れるため、日本は手に入れた満州を守るためである。どちらに非があるかはここでは記さない。当時の人間でなければ分からない事が、色々あるからである。並の努力だけでは、世の中は簡単に動かない。尤も、浦田社長は過激な行動をとったが
「ま、気にしても仕方ない。深海棲艦という海の化け物が現れている時点で、平行世界の日本の歴史とは違う流れになっているんだ。浦田社長はそこまで考慮していなかった。それだけだ」
気にしても仕方ない。今は目の前の敵に集中するのみだ。502部隊と提督達は、浦田重工業の本社ビルに向けて車を飛ばした。既に外は大混乱だった。テレビによる暴露は上手く行ったようだ
『全車両に次ぐ。この作戦失敗は世界終焉に繋がる。後は無い。我々の世界を好き放題にした輩を倒し、再び祝杯を上げる事を期待している。平行世界の日本によると我々は、関東軍隷下部隊であり、活躍出来なかったそうだ。この世界は違う!諸君は日本だけでなく、世界を救うためだ!』
将校は無線を通じて兵士達を奮い立たせた。これから向かう相手は手強い。強力な兵器を持つ私設軍隊に戦艦ル級改flaghsipを始めとする深海棲艦を従えた軍団。どちらも強力だ
『軍曹、覚悟はいいな』
「死ぬ覚悟はとっくに出来ています」
軍曹はマイクを取るとニヤリとした
「後は死ぬ事に相応しい意味があるかどうかという事だけです」
『世界を滅ぼそうとする浦田社長と戦艦ル級をやっつけるためなら文句はない。例えどんな手段を使っても倒す。我々は無駄ではなかった』
全員が頷いた。時雨も提督も頷き、大淀も龍譲も不知火も同様だ
「これで平行世界の日本で言われた陸軍悪玉説は無くなりますね」
「バカ言え。海軍善玉説の方がドン引きするわ」
全員が笑った。大淀は苦笑したが、内心では呆れているだろう。尤も、これは平行世界の日本の戦後の認識である。パソコンのデータには簡単に書かれてあったが、あくまで偏見である。実際は似たような過ちを陸海軍はやっている。軍が政治に首を突っ込んだ事が間違いだっただろう
パソコンのデータによると明治憲法には統帥権というものがあり、天皇が裁可さえすれば、政府の承認なしに軍を動かせる。そのために軍部が暴走し、日中紛争から始まり太平洋戦争にまで戦火を拡大してした、というのが戦後の史観である。確かにいくら優秀な軍人がいようが、軍人は政治家ではないのである。 近代国家で国家戦略を考えたり交渉をしたりするのは軍人の仕事ではない。国の政策と軍事は分けるべきである
話は逸れたが、一行は本社ビルに向かった。本社ビルに向けて攻撃している本隊次第だ。粘ってくれればいい。こちらの侵入が容易になる
しかし、作戦通りには中々思い通りに行かないものである。出発して走ること数十分後、空母ヲ級が放ったと思われる艦載機が襲って来た
『3時の方向に敵機!さっさと撃ち返せ!』
「分かった!」
時雨は高角砲と電探を上手く使いこなして艦載機を撃ち落した。不知火も大淀も懸命に戦っている
「つまらないわね」
不知火もこちらを執拗に狙う深海棲艦の艦載機を撃ち落していた。今は走る装甲車の上に乗りながら応戦している。不知火も大淀も同様だ。龍譲は艦載機を繰り出している。ただ、今回は直掩機のみ上げている。沖合に居る空母ヲ級を仕留める余裕がないからだ
10cm高射砲と12.7cm高射砲が吠え、龍譲の零戦52型の艦戦隊が深海棲艦の艦載機をバタバタと撃ち落していく。しかし、いくら撃ち落しても次々と湧き出ている。弾薬はまだ十分にあるが、この調子で襲い掛かってくると脱落する車両が出るかもしれない。深海棲艦を倒せるのは艦娘だけだからだ。なた、別の問題が発生した。浦田重工業の車両が後ろから追いかけていた。ジープとバイクで追いかけて来て重機関砲や突撃銃でこちらに向かって攻撃している。こちらは502部隊が引き受けて応戦している。とにかく、何が何でもX兵器を乗せたトラックを守らなければならない
更に、別の問題も生じた。X兵器を乗せた連山を率いる航空隊は足止めを食らったのだ。なぜなら、先陣隊の航空隊が未知の航空機に遭遇しているという。しかも、全く歯が立たないそうだ。装甲車の中では、提督が敵の兵器の正体を探っている
「どんな奴です?」
提督は軍曹から渡された無線で連絡を取っていた。元帥によると浦田重工業が保有していると思われる未知の航空機は、政府機関と近くに会った軍事基地を全て爆撃したとの事だ。機体の特徴から、何とか敵の兵器の正体を割り出した
「恐らくF-4とミグ21のジェット戦闘機だと思います。どれも平行世界から手に入れたものらしいですが。しかし、これは骨董品です」
『その骨董品に我が軍の戦闘機が役に立たないんだ!というか、何処が骨董品だ!最新鋭の間違いではないのか!』
元帥が怒鳴っているのも無理はない。陸軍の隼や飛燕、海軍のゼロ戦や雷電などの大量の戦闘機がたった数機のジェット戦闘機に翻弄されているからだ。速度が違い過ぎるため、勝負にもならないという。そのため、浦田本社の爆撃に向かった航空隊の一隊は丸々全滅したという
「提督、どうしたの?」
弾薬の補給に装甲車の中に入った時雨が、聞いてきた。恐らく、ジェット戦闘機という言葉に引っかかったんだろう
「あいつらジェット戦闘機を持っていやがる。退役した機体を分捕ったものと海外から古い機体を買った機体をこちらに持ち込んだそうだ。その機体が、東京の政府機関を全て爆撃。それに加えて、航空隊に大打撃を与えている」
提督は呆れるように言ったが、内心では感心しているのだろう。なぜなら、この時代でジェット機を製造するのは、困難に等しい。この世界に持ち込むにしても、ワームホールという制限の大きさがあるからだ。初めは恐らく、分解して持ち込んだのだろう。工業力と技術力を付けてから、自力で生産したらしい。中身も魔改造して自分達に使いやすく改装している事だろう
何と浦田重工業はヘリや無人航空機だけでなく、ジェット戦闘機まで持っていた。但し、流石に最新鋭を持ち込むのは無理があった。そのため、航空自衛隊にて退役が続けているF-4EJ改を密かに入手し、更には海外からMiG-21を数機買い寄せた。戦闘機だと分からないように分解し、密輸入したのだ。勿論、協力してくれる国もいたお蔭で成功したのが、そんな事情を提督も時雨も知る訳がない。実際に浦田社長は、平行世界でかなり危ない橋を渡ったが、何とか誤魔化して持ち込めたらしい。しかし、そのお蔭で平行世界の日本はある事件が発生したのは別の話
関東の上空では、大混乱していた。航空攻撃を仕掛けようと多数の戦闘機と爆撃機が浦田重工業の本社ビルへ向けて飛んでいたが、そこに10機程の機体が現れた。その姿と速さに全員が驚愕した
「何だ、あれは!」
初めて見るジェット戦闘機に飛行隊長が絶句した。いきなり目の前に現れたと思うと、雷鳴のような轟音と共にすれ違ったのである
これは一種のデモンストレーションだった。余りにも早いので、連山の爆撃機や雷電などのパイロット達は、目で追い切れなかった。たちまち見失ってしまった。思考停止状態に陥る者もいる。司令部からは浦田重工業の兵器は、とんでもないものだと説明を受けたが、まさかここまでぶっ飛んでいるとは思わなかった
ジェット戦闘機は、反転すると遥か彼方の空中からロケットを発射させた。気付くのが遅かった。気付いたとしても振りほどくのは難しい
1機、また1機と空対空ミサイルに食いつかれ雷電や連山は次々と火の玉となった。バルカン砲による攻撃で隼と飛燕はズタズタになり金属の塊と化した
精強である陸海軍のパイロット達は我を失った。自分達は何と戦っているのだろうか?……この地球にこれほどの性能を持つ航空機は存在しないはずだ。流石のアメリカでも無理だろう
「帰投しろ!このままだと全滅してしまう!」
1人の中隊長の叫びが引き金となり、全機パニックにとらえると反転した。
実は未来でも一航戦も五航戦も元帥と同じ反応だった。ジェット戦闘機を保有する空母ヲ級は、正に脅威だった。赤城、加賀、翔鶴や瑞鶴などはたった数分で自慢の艦載機がジェット機によって壊滅させられた時は、思考停止状態に陥った。ジェット戦闘機にとって彼女には宇宙から来た飛行体と戦っているような錯覚に陥った。『艦だった頃の世界』でもこのような航空機は見た事が無かった。そのために衝撃が大きかったのだろう
「護衛機が役に立ちません!これではX兵器を乗せた爆撃機が近寄れません!」
元帥は航空参謀からの悲鳴に手を握りしめていた。まさか、浦田重工業はこんな隠し玉を持っているとは思ってもみなかった。クーデター時には、対空砲火だけでこちらの航空機を撃墜したが……今度は航空戦力を持っているとは!今の浦田重工業は、まるで魔法使いのようだ。魔法の杖を振る度に新しい戦力と兵器が生まれて来る。平行世界の日本が経験した太平洋戦争だったら、こんな報告は握りつぶして喝を入れていただろう。神風もやっているかも知れない。しかし浦田重工業という敵は、不気味過ぎてその気になれない。やったとしても、嘲笑うかのように躱されるだろう
臨時にたてられた作戦司令部では、どれもひっきりなしに無線の交信が流れており、状況を把握しているが、どれも苦戦している。陸でも同様だ。大部隊を浦田重工業の本社ビルに向けているのに、戦線がこう着状態に陥っているのだ。一個師団と戦車連隊を送り込んだのに、数分で増援要請が出たのだ
「何が起こっている!」
元帥は報告を寄せたが、陸も恐ろしい報告を受ける事になるのである
「……こういった連中を取り締まるべきだったな」
陸軍大将は悔しさのあまり涙を流した。彼等がした行為は許さないものだ
おまけ
ある部屋にて複数の憲兵の変死体を発見した
元帥「一体、どうやったらこんな事が出来る!」
憲兵隊長「仕方ありません!こうなったら、探偵を呼びましょう!」
元帥「軍の警察官が何を言っている!?誰を呼ぶんだ!」
憲兵隊長「待って下さい、電話しますから。え~と。……毛利探偵事務所の電話番号は何番でしたっけ?」
元帥「やめろ!小さい探偵がこっちに来たら不可解な事件が立て続けに発生するわ!」
江戸川コナン「ハックション(誰か噂している)!」
時雨達が出発している中、別の場所では大変な事に
浦田重工業、本性を露わにします。バイオハザードに出て来るアンブレラ社のように怪物を放ち始めます。隠し玉とも言えるジェット機も持っていたようです。これを参考に空母ヲ級の艦載機がジェット機を乗せて、未来では空母組艦娘を……
そして、問答無用の爆撃。よって、不可解な殺人現場も爆撃によって吹っ飛んでしまいました
コナン君がいれば爆撃を防いでいたかも?何しろ、黒の組織が保有している武装ヘリ(アパッチ?)とやり合って撃墜させましたからね(漆黒の追跡者より)