時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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第79話 X兵器、炸裂!

 捨てられたバスに乗り込んだ時雨達は、浦田重工業の本社ビルを目指していた。今のところは妨害はない。囮となってくれた人のお陰なのか、艦載機は明後日の方向へ行ってしまった。しかし、気づかれるのは時間の問題である

 

「X兵器……気づかれたりしていないよね?」

 

「そう願いたい。本当に気づいているなら、あの時に攻撃しているはず」

 

 今のところ、X兵器の正体は気づかれていない。無線通信でもX兵器を搭載し遠くで上空待機している爆撃機は、撃墜されていない。しかし、燃料の関係でいつまでも長くは飛べない

 

「だけど、俺が気になるのは戦艦ル級改flagshipの性格だ。あいつ……楽しんでこちらを攻撃している」

 

 普通、こういった状況で手を緩めるのは考えにくい。戦争というのは叩くときは叩かなければならない

 

 だが、戦艦ル級改flagshipはそれをしなかった。あの場で人質をとって揺さぶるのは、戦艦ル級にとって何の得があるのか?それとも、あいつの戦い方だろうか?隙をついて倒せるのなら未来の俺でも倒せていたはずだ

 

「考えていても仕方ないよ。未来でも、ああいうものだったから」

 

「……だとしても解せんな」

 

 時雨は未来での戦いを思い出した。横須賀にいた時、戦艦ル級改flagshipが形成した艦隊は無敵だった。しかし、優位だったにも拘わらずミサイル2発を撃ち込んだだけだ。未来の提督が極秘裏に製造している『新型兵器計画』、タイムマシンを探るためなら、ある程度理解出来る。だが、目の前にあるX兵器を目も暮れずにわざと手を緩めて攻撃するのは不可解だ

 

提督も時雨も内心では、この不可解な行動に疑問を抱いていた

 

(舐められているにしてはおかしい)

 

 時雨は指摘しようとしたが、ここでは発言するのを止めた。他の者も混乱するからだ。特に不知火、大淀や龍譲は未来の戦争を経験していない。混乱させて作戦に支障が出てしまう。そう考えていた

 

「ちょっといいですか?」

 

提督が考え込んでいる時に大淀が声をかけた

 

「博士から連絡がありました。浦田重工業の私設軍隊は強力で、X兵器を乗せた爆撃機は近寄れないとのことです」

 

 大淀の報告で提督は、苦虫を噛みしめたような顔をした。相手は、兵器の正体を知らなくても、効果を発揮させないと意味がない

 

「それで、引き揚げるのか?」

 

 提督が諦めたかのように返事をした。これでは、未来の自分自身と同じではないか?そう思っていた

 

だが、大淀の返事は予想外だった

 

「いいえ、敵の飛行場にX兵器を仕掛けるとの事です」

 

「「え?」」

 

時雨と提督は同時に間抜けた声を上げた。予定変更したらしい

 

「そんな。本社ビルに向かっている軍曹が危ない!」

 

 時雨は叫んだのは無理もない。本来は敵を引き付け、守りが薄い所に忍び寄り、X兵器で攻撃する手はずだ。

 

しかし、リスクはある。だが、切り札破壊されてしまったら、こちらの負けだ

 

「いや、これでいいのかも知れない。ジェット戦闘機という脅威がある以上、こちらに勝ち目はない」

 

「でも――」

 

「元帥もそれは承知だ。手元の装備では、勝ち目なんてないのだから」

 

 戦力差があれば勝ち目はない。これは当たり前なのだが、だからと言って白旗を掲げるのも愚行である。次は無い

 

「大丈夫やで。あいつらなら――」

 

 龍譲は悔しそうに言ったのも無理もない。先日の宴会で仲良くなったパイロット達は、間違いなく敵飛行場に向けて攻撃するだろう。この作戦が終わって、再び顔を見合わせる人は何人なのだろうか?

 

 

 

 上空で待機していた四発の輸送機『深山』12機に無線で作戦の命令が下された。ただ、当初予定していた浦田重工業の本社ビルではなく、千葉にある飛行場を占拠及び破壊工作である

 

『いいか。敵の兵力は、我が軍よりも少数だ。しかし、強力な航空兵力を何とかしないと、我々に勝ち目はない。大尉、作戦内容は理解出来たな』

 

「分かりました!X兵器と共に飛行場で暴れるという訳ですね!」

 

 空挺部隊の隊長は、ニヤリとした。想定していたとは違うとはいえ、敵陣のど真ん中に降りて暴れろ、という無茶な命令だ。敵の対空砲火やジェット機は強力で全滅するかも知れない

 

『済まない。しかし、航空戦力を何とかしなければ……」

 

「構いません。当時のクーデターは軍の暴走とはいえ、数百人という仲間が死にました。全てあの異様な兵器です」

 

空挺部隊長である大尉は、淡々と無線で語った

 

「戦闘で死ぬのも、この輸送機が撃墜されて死ぬのも、死ぬのは同じです。奴らは調子に乗っています。浦田重工業の新兵器に息の根を止めてやりますよ」

 

 この場にいる部下達も覚悟の上で参加している。状況は無線でリアルタイムに聞いているが、戦況はこう着している。このままだと、浦田重工業は日本を手中に収めてしまうだろう

 

『……分かった。幸運を』

 

無線が切れると同時に輸送機は、元帥が示してくれた飛行場に向けて飛び立つ

 

 元帥の指示だろう。零戦や隼など沢山の戦闘機も現れ、付き添うように護衛している。その後方に四発爆撃機である『深山』が飛んでいた

 

「さて、切り札は通用するのか?」

 

空挺部隊長は、呟いた。今のところ、この『X兵器』を開発した艦娘達(正確には明石だが)信じるしかない。例え、不発に終わっても命を落とすまで徹底的に飛行場を破壊するつもりだ

 

 しかし、敵も待ち構えているだろう。空振りになるかもしれない。もしかすると、敵の飛行場の警備は少数かも知れない。いささか博打であるが、そんな事を言ってられない

 

 これは、一種の肉薄攻撃に近い。実は、平行世界の日本でも帝国陸軍は似たような事をした。沖縄戦で義烈挺空隊という空挺部隊が、米軍の読谷飛行場に強行着陸。破壊工作をするための決死コマンドである。既に米軍と日本軍の戦力差は隔絶しているため戦況はほとんど影響はなかった。しかし、この世界において戦っている相手は、米軍ではないためどうなるかは未知数だ

 

 余談であるが、このような肉薄攻撃という人命軽視の作戦は、全体主義国家でよく見られる。朝鮮戦争では、義勇軍と呼ばれる中国軍。そして、スターリン政権のソ連である。

 

何故かと言われるとそれだけ人員を投入出来る程の力を持っているからである。

 

 尤も、毛沢東は『我が国には五億人の人民がいる。例え、百万人失っても大した事はない』とうそぶいた事は有名である。だから、人海戦術が出来るのである。ソ連はというと多民族国家であるため、他の地域から人を強引に集められた。当然兵士の質は悪いと言うのは言うまでもない。逃亡させないために督戦隊(逃亡すれば問答無用の銃殺)を配備させたほどである。つまり、一種の消耗品である

 

 自由主義国家には、当然こんな事は出来ない。アメリカでは自軍の兵士、特にパイロットの救助にはとても力を入れている

 

 これはヒューマニズムだと思われがちだが、実はそうではない。もっと実利的である。兵士やパイロットを一から育てるよりかは実戦経験を持つパイロットを救助した方が費用対効果において勝るという考えから来ている

 

 しかし、悲しい事に旧日本軍にはあまりこういった思考法はない。白兵戦や自爆攻撃などは、骨を切らせて肉を立つと同じである。つまり、味方の犠牲を顧みずに敵を倒すというものだから、消耗は激しいのは当たり前である

 

 余談であるが、クーデター事件の際に陸海軍が浦田重工業を攻めて来たが、やはり肉薄攻撃を仕掛けて来た。しかし兵力はともかく、兵器の質は隔絶されている。そのため、正攻法が通用しないと分かると、『平行世界の日本の過去』と同じように対戦車地雷を抱えて自爆攻撃や神風特攻などが行われたのだ。だが、何故か通用しなかった。問答無用の無差別攻撃によって陸海軍のクーデター部隊はあっという間に壊滅させられた。無論、神風対策したのが、浦田社長が勧誘した警備隊長である

 

 彼は陸上自衛隊出身であり、レンジャー課程はないものの、ゲリラ対策はしっかりと学んでいる。そのため、神風対策万全で待ち構えていたのだから相手はたまらない。自爆攻撃に有効な攻撃は無差別攻撃と豊富な火力を撃ちまくる事である。隠れていても赤外線カメラで見破られ全員殺したという。敵の指揮官を空爆で殺害した事もあって、米軍が苦戦するような戦法は、彼等には通用しなかった

 

「勝手に死んでいくとは、バカなのか?」

 

 尻尾を巻き退却する陸海軍の部隊を攻撃ヘリから嘲り笑うように見つめながら呟いた。勿論、こういった映像をマスコミを通じて問答無用で公開したのだから、民間人から反発されたのは言うまでもない。しかも、浦田社長が自爆攻撃する映像を天皇陛下にまで見せたのだ。流石の天皇陛下も怒りを露わにしてしまい、軍部も何も言えなくなった。実際に命じたのは自分自身だからだ

 

 だから、浦田重工業には誰も頭が上がらなかった。幾ら『欲しがりません。勝つまでは』とスローガンを掲げても国を豊かにした浦田重工業の前では、無意味と化した。娯楽施設もインフラ整備も家庭用品も全て与えたのは浦田重工業だ。経済力もあり、多額の寄付もし、しかも労働環境は他と比べて悪くない。

 

 国民の関心は主義主張をバカみたいに叫ぶ軍や政治家よりも浦田重工業についていった。軍は半ば逆恨みでクーデターを起こしたが、逆に返り討ちとなって世間から批判を浴びてしまった。今では立場が逆転したが、浦田重工業はまだまだ余力はある

 

 

 

 上空には輸送機に改造された四発爆撃機『深山』12機とX兵器搭載している四発爆撃機『連山』は、各航空基地から出撃した戦闘機や攻撃機と合流した。送り込んだ航空機一部隊は全滅したが、まだまだある。計200機はある。しかし、各航空基地には整備中の航空機以外は出払っている。言い換えれば、これが通用しなかったら終わりということに繋がる。制空権は失ったとみていい

 

「司令部から命令を受けた。目標は千葉にある敵航空基地」

 

零戦に乗っている飛行隊長は、無線で全機に命じた。各機とも『了解』という答えしか返ってきていない

 

「陸海軍の航空機が、こんなに飛んだのは初めて見るな」

 

飛行隊長は呟いた。零戦、隼、飛燕が一式陸攻や九六式陸攻を護衛するように編隊を組んでいる。四式爆撃機『飛龍』も確認できる。全て繰り出したのだろう

 

『どうしましたか?」

 

「いや……ちょっと考え事をしていた。行くぞ!」

 

先日の岐阜基地での話。宴会場で艦娘である龍譲から聴かされた『平行世界の日本』について。龍譲によると艦だった頃は、発着訓練艦として搭乗員を育成していたという

 

 本物の空母である龍譲が就航していたら、自分も搭乗員になっていたかも知れない。しかし、それは『もしも』だ。今は目の前の敵を倒すだけ

 

 

 

千葉県・某飛行場

 

 ここは、浦田重工業が保有する航空基地である。『平行世界の日本』から頂いた技術を使って見事、航空基地を作り上げた。戦闘機もF-4EJ改とミグ21がそれぞれ10機、MQ-9リーパーが1機。攻撃ヘリや武装ヘリが計25機もある。時雨脱走時に無人戦闘機1機、攻撃ヘリ1、輸送ヘリ1失われたが、大した影響はない。作戦機も半数は出払い、残りは交代で待っている。基地警備も配置しており、防空兵器も多数配備している。ミサイルも爆弾も多数あり、ある程度は戦える

 

 ……と浦田社長は思っていた。現に陸海軍の戦闘機や陸上攻撃機を数十分で追い返したのだ。レシプロ機とジェット機は隔絶している。勝負にもならない。ドイツ軍が開発していたMe262のようなものだったら、面白かっただろう。しかし、ここではそれはない。よって、パイロットも整備員も警備に配置されていた兵士達も浮れてはいた。油断ではないが、こちらにはレーダーも対空兵器もある。奇襲なんて無理だ。この時代には、ステルス機も巡航ミサイルもない。例え襲ってきても対処できるだろう

 

しかし、レーダー員からの叫び声で全員が仰天した

 

「未確認の航空機が多数接近!数は100機以上います!」

 

「友軍か?」

 

「違います!」

 

 スコープには多数の反応している。どういう訳か、日本軍の航空機が全てこちらに向かっているのだ。直ちに迎撃機を上げたが、対処できるかどうか?

 

 イージス艦は輸送艦隊に配備され、深海棲艦も無差別の恐れがあって関東地方にはほとんど配備していない。しかも、戦艦ル級改flagshipの命令がないと動いてくれない。その戦艦ル級も『忙しい』と返答するだけで切られてしまった

 

「ふざけるな!艦娘を追い掛け回すよりも味方を助けろよ!」

 

 航空基地を指揮している隊長は怒鳴ったが、元々戦艦ル級改flagshipは社長以外の命令を受け付けない。深海棲艦の仕組みは知っていたものの、やはり納得は行かない。このままだと空爆にさらされてしまう。一式陸攻が搭載されている爆弾の威力は無視できない。貴重な現代兵器が破壊されてしまう。航空基地を取り囲んでいた防空兵器が火を噴いたが対処出切るかどうか?

 

 ホークミサイルを真似て創り上げた自作の中距離地対空ミサイルを全て吐き出され、自衛隊やドイツが保有する自走式対空砲を参考に創り上げた対空砲も撃ちだした。これらは流石にコピー出来なかったが、力をつけた浦田重工業と元陸自によって作り出すことに成功した。レーダー管制であるため命中率は極めて高い

 

 F-4EJやMig21は離陸した後、鷹のように航空基地に押し寄せる日本軍機に襲いかかった。空対空ミサイルを放ったのだからたまらない。レシプロ機である零戦や一式陸攻などは次々と落された。たちまち40機落とされたが、それでも侵攻してくる。直ちに作戦に出している機体を呼び戻したが、ジェット機とはいえ、時間がかかる

 

「数が余りにも多すぎます!」

 

「爆撃機優先で攻撃しろ!……くそ、ここを叩き潰す気だな。だが、ここを爆撃しても無意味だ!」

 

 確かにこれは一理あった。燃料タンクは地下に埋み込まれている。戦闘機は全てで払っているため格納庫は輸送ヘリぐらいしかない。攻撃ヘリや無人機は全て本社ビル防衛に行っている。しかも、この航空基地の部隊も貨物船に載ってトラック島に行くのだ。つまり、遅かれ早かれこの基地は、爆破処理される

 

「敵が接近します!」

 

 部下の叫びに隊長は双眼鏡で見た。対空砲であるバルカン砲やスティンガーミサイルなどのミサイルが打ち上げる中、いくつもの機影を確認した。ミサイルや重機関砲からの攻撃を受け落ちていく航空機が沢山いる。双発の爆撃機が対空網を爆撃したり、戦闘機が地上に向けて機銃射撃している

 

「何と無駄なことを。ここを破壊しないのか?」

 

 隊長は首を捻った。こちらの管制塔や施設に爆弾を落としたほうが大打撃であるはずだ。しかし、日本軍機はなぜかそれをしていない。張り巡らせた対空兵器を執拗に攻撃しているという

 

「いよいよ頭がおかしくなったのか?」

 

 実はそうではない。恐るべき兵器が来ていることを知らない。現代兵器の弱点を積んだ兵器が来ていることに

 

 

 

「対空兵器を攻撃しろ!防空網の穴を開けるんだ!」

 

 飛行隊長は無線で連絡をした。あの博士や時雨から敵の兵器を教えて貰ったが、それでもこの兵器の存在には驚きを隠せなかった。百発百中のロケットなんて聴いたら、驚くな、という方が無理である。しかし、そこで投げ出すのは許されない

 

 よって、博士の息子から取り入れた兵器の情報を分析・研究したが、中々思いつかない。時雨がいた未来では、アイオワがチャフフレアや妨害電波などがあるが、とても間に合うものではない。試作機があるのだが、そんな兵器をここで使うわけにはいかない。よって、考えた作戦は対空兵器を爆撃することだった。確かに、損害を無視して進むのは一応可能だ。だが、これでは切り札が無くなってしまう

 

 そこで、張り巡らせている防空網である対空兵器に爆弾の雨を降らすという事にした。確かにこれは効果があった。対空ミサイルや機関砲は強力だが、無限ではない。弾切れになった兵器に爆弾を落とした。その代わり、撃墜された機体は多いのだが

 

 水平爆撃なので命中率は悪いが、多数いるといくつかは当たるだろう。また、戦闘機による機銃掃射も効果はあった。ジェット戦闘機に対しては御手上げだ。速度が違いすぎる。なので無視して攻撃した

 

「後、もう少しだ!防空網に穴を開けられるぞ!」

 

 奇跡的に落ちていない飛行隊長は叫んだ。これでX兵器を搭載した爆撃機と輸送機は通れるはずだ

 

 

 

 待機していた深山は飛行隊長の合図を待っていたが、ついに痺れを切らした。燃料が少ない。これでは、敵飛行場に着く前に墜落してしまう

 

『待ってくれ。まだ敵の対空砲を片付けていない』

 

「もう待てない!パイロット、進め!連山も着いてくるよう言うんだ!」

 

「了解。皆、捕まってろ!」

 

 深山12機と連山は旋回して飛行場を目指した。4発の爆撃機がエンジンをうならせながら、飛行場に突撃する。虎の子の爆撃機であるが、出し惜しみしても仕方ない

 

『X兵器及び義烈隊発進。彼らを優先的に守れ!』

 

 飛行隊長の無線で大勢の戦闘機が集った。今の所、空母ヲ級からの艦載機による襲撃はない。爆撃され対空砲が破壊されている場所を低空飛行で飛んでいる。近くにいた警備兵は火器で攻撃したが、とても速く捕らえられない

 

「四発爆撃機なぞ落としてしまえ!」

 

 地上にいる兵士は叫んだが、それは無理な話だ。先ほどの対空戦闘で地対空ミサイルも対空機関砲も弾薬を撃ち尽くしてしまった。更に爆撃され大破してしまっているため、どうすることも出来ない。しかし、生き残っている兵器はいるらしく、熾烈に攻撃してくる

 

『対空砲を攻撃しろ!』

 

 火を噴き始めた対空砲には、各機が対応した。中には体当たり覚悟で突っ込む者もいる。流石に地上兵は逃げ出した。いくら強力な対空砲でも限度はある

 

 しかし、ここに厄介な敵が現れた。F-4EとMiG21だ。彼らは基地に降りて素早く補給を済ませると、再び舞い上がって襲ってきた

 

『敵を邪魔してくれ!気をそらせるんだ!』

 

 飛行隊長はまたしても無線越しに命令をしたが、いささか無理があった。速度が速すぎて話にならない

 

「散開しろ!狙い撃ちされる!」

 

 深山の航空隊は散開した。固まっても意味はないが、何もしないよりかはマシだ

 

 零戦や隼は守るように飛んでいたが、ジェット機には適わない。ついに深山1機が対空ミサイルを受けて撃墜した

 

「三号機、四号機が撃墜!」

 

「連山は?」

 

「無事です!」

 

 部隊長は焦った。あの輸送機には約20人の搭乗員が乗っていたが、その機体が落ちていく。焦りは禁物だが、そんな余裕ない。そうしているうちにジェット機からの攻撃を受けて落ちる深山がいる

 

「半数やられました!」

 

「構わん!飛行場は目の前だ!」

 

 

 

 奇跡的にミサイルや対空砲の攻撃を逃れた連山6機と深山が敵飛行場近くまで接近した。護衛戦闘機も少ない。それだけ犠牲を払ったのだ

 

 敵飛行場を視認するために空挺部隊長はコクピット越しで見たが、彼は目を疑った。滑走路が長い。どう見ても2,000mはある

 

「滑走路に降ろしてくれ!後は我々が――」

 

 空挺部隊長がパイロットに怒鳴ったが、それよりも早く地面からロケットのようなものが多数向かっている

 

「間に合いません!胴体着陸します!」

 

「衝撃に備えろ!何か捕まれ!」

 

 空挺部隊長とパイロットがコクピット越しで見たロケットの正体は、携帯対空ミサイルであるスティンガーミサイルである。赤外線パッシブ・ホーミングミサイルであるため、ミサイルは狂いもなく深山連山に向かった。フレアもIRジャマーもない4発の大型飛行機にミサイルが命中して次々と火を吹いた

 

「胴体着陸しろ!」

 

 空挺部隊長は機体の壁に捕まりながらパイロットに向かって叫んだ。パイロットは言われなくてもそうするつもりだが。運が良かった事に連山深山の爆撃機は、爆装していないことだ。よって、被弾関係なく全ての四発爆撃機は、奇跡的に空中爆発することもなく滑走路に強行着陸した。ジェット機は全部出払っているのだろう。機体が見当たらない

 

 ミサイルを食らってエンジンから火を吹きながら格納庫に突っ込む機体もいる。爆発炎上し、一瞬にして修羅場となった

 

 

 

「連山を探せ!早く!」

 

 空挺部隊長は着陸するや否や外へ飛び出した。怪我人がいるが、全滅しなかっただけでも良しと思うしかない。強行着陸した他の機体からも隊員が飛び出している

 

しかし、時間はない。浦田兵がこちらに向かっている。包囲されたら終わりだ

 

「ありました!あれです!」

 

 部下の一人が指を指した。滑走路のど真ん中に着陸したらしい。X兵器は起爆させたのだろうか?確認する必要がある。幸い、距離は離れていない

 

「時間を稼げ!早く!」

 

 既に空挺部隊と浦田兵との間で激しい銃撃戦が発生した。その隙に空挺部隊長は、連山に向かって駆け出した

 

(全滅する前に確認しなくては!)

 

 空挺部隊長はそう思ったが、ある意味正しかった。近代兵器を持つ浦田兵と第二次世界大戦時よりも少しだけ進歩した兵器を持つ空挺部隊の対決は、初めから決まっていた。強い方が勝つ。戦うよりも任務優先だ

 

 胴体着陸し煙をあげている連山にたどり着くと、扉を開ける。中の様子を見た空挺部隊長は絶句した。全員、死んでいる。いや、生き残りが一人いるが気を失っている。恐らく、胴体着陸の際に衝撃でやられたのだろう。奥には、爆弾倉があるがそこには爆弾ではなく、巨大な何かだった。配線やバッテリーがあるため、何か電子機器なのだろう

 

「早く、そいつを起こせ!さっさと起爆させろ!」

 

 部下に命じながら、短機関銃を構えて外に出る。既にあちこちで爆発音や銃撃音が聞こえているが、確実に追い込まれている

 

こちらに向かって来る敵兵を攻撃している中、雷のような轟音がしたため、空を見上げた。例のジェット機が旋回している。また、応援で駆けつけたのだろう。回転翼機二機が現れた

 

「まだか!」

 

「後少しです!」

 

 部下も必死だろう。そうしている間に回転翼機が味方の一分隊を攻撃している。反撃で墜落する気配もない。一分隊を殲滅したAH-1Sが連山に向かって飛んで来る。部隊長は焦った。このままだとやられてしまう!

 

AH-1Sコブラが連山に重機関砲を向けているが、攻撃して来ない。弾切れかと思ったが、期待は早くも裏切られた

 

『そこに隠れているは分かっている!諦めて降伏しろ!ロケット弾で木端微塵になりたくないなら、白旗を掲げて出て来い!』

 

 スピーカーで降伏勧告してくる。連山は滑走路にいるため、二次被害は気にしていないため、ロケット弾を使用できる

 

「もう限界だ!早く!」

 

 コブラが近づきホバリングしているのを見た空挺部隊長は怒鳴った。このままだと任務失敗する!覚悟を決めたとき、奥から叫び声が聞こえた

 

「準備出来ました!」

 

「何してる!早く起爆させろ!」

 

「はい!」

 

 部隊長は悲鳴に近い叫び声を上げながら回転翼機に向かって短機関銃を放った。しかし、ヘリには効果は薄い。と言うより、落ちる気配がない。また、いくら待てど爆発音がしない。X兵器は不発だったのか!

 

『それが貴様の答えか!』

 

「くそ!」

 

空挺部隊長は弾切れになった短機関銃をヤケクソ気味で地面に投げ捨てた

 

 

 

その時だ

 

 

 

 上空を飛んでいたヘリが、何の前触れもなく突然、制御不能になり墜落した。攻撃を受けた所は見ていない。文字通り、突然落ち来たのだ

 

「え?」

 

 突然の現象に空挺部隊長は間抜けた声を上げた。遠くに飛んでいた、もう1機のヘリも同様に墜落している。目にも留まらぬ速さで低空飛行で飛んでいたジェット機も、何の前触れもなくコントロールを失い、管制塔に激突した。爆発炎上し管制塔は破壊されたが、空挺部隊長は喜びもしなかった。基地の付近を飛んでいた2,3機のジェット機とヘリも制御を失って落ちている。味方機も例外ではないらしく、零戦などの戦闘機もエンジン不調になったのか、胴体着陸する機体も確認できる。こちらを命懸けで守ってくれた、あの飛行隊長は無事だろうか?

 

 何が起こっているのか分からない。浦田兵も何やら混乱している。近づいて来る車両もヘリが墜落して以降、燃料切れなのか、全く動いていない。銃は火を吹いているが

 

「大尉、やりました!任務は成功です!」

 

「え?……いや、よく分からないのだが?」

 

 部隊長は困惑したが、連山の乗組員は知っているのだろう。見たことも無い携帯無線機を掲げながら、喜んでいる。こいつはX兵器の正体を知っているのか?

 

「ちょっと無線を貸せ!……おい、X兵器って何だ!?」

 

無線で応答して来たのは、何と女性だ。しかも……

 

『明石です!これは極秘事項なので答えられません!』

 

「お前がX兵器を造ったのか!?」

 

『え……ええ……そうですけど』

 

 新兵器が極秘なのは分かるが、なぜ歯に物が詰まったような言い方をするのか理解出来なかった

 

『兎に角、効果範囲が予想よりも広範囲である事が確認出来ました!まさか半径500メートルまで影響があるなんて!あのデータは本物だった!』

 

 明石と名乗る女性は、興奮気味に話している。もう少し問い詰めようとしたが、止めておいた。なぜなら無線越しに多数の人が歓喜を上げている声が聞こえたからだ。X兵器は奴等の切り札だと言う事は本物だろう

 

しかし……彼女は一体、何を造ったのだろう?超能力を兵器化したのだろうか?

 

 空挺部隊長は任務達成したという実感がないため、戸惑いながらも戦い続けている味方に援護しに向かった。相手が混乱している事から、全滅は免れそうだ。増援も来るだろう。兎に角、この基地を破壊しなくては

 

 

 

 しかし、空挺部隊長とは反対に驚愕したのが、浦田重工業の警備会社である警備隊長だった。特殊無線機によって伝えられた被害に仰天した

 

「バカな!なぜ、奴等がそんな兵器を持っているんだ!!」

 

 警備隊長は怒鳴った。まさか……まさか、あのトレーラーは!爆弾ではない!自爆攻撃だと思っていたが……

 

「早く、ボスに繋げ!緊急事態だ!早く、出せ!」

 

 無線で喚いたが、中々繋がらない。そうしている間も502部隊が護衛しているトレーラーが本社ビルに近づいている!

 

「いいから早く繋げ!……なぜ、こいつらがこの兵器の類いを持っているんだ!あり得ない!」

 

 




おまけ
空挺部隊長(一体、何を造ったんだ?超能力?魔法?古代兵器?エリア51で宇宙人の兵器を奪って来た?それとも……。いや、分からん。考えると頭が痛い。明石とかいうヤツ、何者だ?何故か眠気が来る。多分、明石に……ナニカサレタヨウダ)
明石『ちょっと!失礼過ぎるんですけど!何時から私がマッドサイエンティストになったんです!?大尉、試験問題解けずに寝てしまったアホの学生と一緒ですよ!』
空挺部隊長「……なんて事だ。心を無線越しで読むとは。私は人間でなくなってしまったのか?」
明石『さりげなくネタを入れるのであれば、頭を修理しましょうか?待っていますよ』


 X兵器が敵航空基地で炸裂。何故か近くを飛んでいたヘリとジェット機が勝手に墜ちていきます。次話で正体が明かされますが、気付く人は気付いたのではないでしょうか?元陸自の警備隊長が慌てているので相当厄介な代物でしょう
 勿論、頭の中を何かされた訳ではありません。ACもネクストも登場しません
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