時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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艦これのメンテが終わるのを待っている私です
2期はどうなるのか?


第9章 希望と絶望
第81話 元陸自隊員の逆襲


 本社ビルの敷地内では兵士達が盛んに動いていた。数十分前までは余裕だった顔も、今では焦りに変わっている。電磁パルスの兵器のせいで大半の兵器が駄目になった。高高度核爆発のような強力なEMPではないため無事のものもあるが、兵器の数は少ないため痛手だった。とにかく、撤退する友軍と船に貨物を載せる作業で人員は割かれ、本社ビルの警備には申し訳程度にしか配備されていない。本社ビル内も同様だ。社員全員が避難して貨物船に搭乗中であるため、人はほとんどいない

 

 そんな混乱の中、侵入者はフェンスを切って入ってくる。502部隊と時雨達は別方向から進入した。固まっていては発見されやすくなる

 

「こんな所にヘリの発着場があるなんて」

 

「固定翼機と違って僅かな広さでも降りられるからな」

 

 先ほどまでAH-1SやUH-60が補給のために着陸し、作業が済むとすぐに飛び出したのを見た直後だった。中にはCH-53まで降りて来る始末だ

 

「まだ、ヘリが生き残っているなんて」

 

「X兵器の効果は半分しか効かなかったね」

 

 本社ビルの効果範囲内だったものの、帝国陸軍の地上部隊の迎撃のために出撃した兵器は無事だったようだ。予想はしていたものの、出来ればすべての兵器を無力化したかった

 

「仕方ないさ。ここまで来れたのが奇跡だ。油断というか、戦術をミスったのか分からんがな」

 

 恐らくトレーラーの中身は、爆弾か何かと思ったらしく、接近する前に包囲して捕らえようとしたらしい。現に、本社ビルの前にはT-72戦車と装甲車が各三台配備されていた。車両侵入防止措置もされており、途中で墜落したヘリまでいたことから捕まえる予定だったらしい。しかし、早めにEMP攻撃したため戦車は動かずヘリも墜落した

 

そう考えるしかない。こちらを過小評価していたらしい

 

 

 

 実は浦田重工業側も接近していることは認めているものの、数が少ないため、小数の部隊で対応していた。特殊爆弾の可能性も否定できず、生物・化学兵器も考慮し、艦娘と特殊部隊を排除した上でトレーラーを確保する。うっかり起爆されてしまってはこちらにも影響する。旧日本軍も生物兵器や化学兵器の研究をしていたことは浦田社長も知っていたための対応だった。尤も、731部隊のメンバーの拠点であった陸軍軍医学校などは早々に爆撃して潰した。しかし、密かに手に入れた可能性もある。ヤケクソになって自爆攻撃して来たのか?警備隊長も首を捻ったが、特攻の一つだろうと思い、あまり重視していなかった。兎に角、旧日本軍は自爆攻撃がお家芸だ。手持ちの兵器や戦術が通用しなくなると、馬鹿の一つ覚えのように自爆する。この世界でも同じだと思った。自殺攻撃には既に対処出来ている。旧日本軍は神がかりであるため、深く考えなかった。艦娘も旧日本海軍の艦艇の擬人であるということも知っていたためでもある。おまけに、戦艦ル級改flagshipが艦娘達を追いかけて分散したお陰でやりやすくなった。尤も、戦艦ル級改flagshipはそんな事を知らない。浦田社長は「彼女」が楽しんで追い掛け回すことを知っていたので、ある意味助かったのである。分散も想定内だったのだ。後は、502部隊の排除と特殊爆弾確保というシナリオでいた。そのはずだった

 

 だが、トレーラーの中身がまさかEMP兵器とは夢にも思っておらず、慌てて攻撃命令を下したが、既に遅かった

 

 つまり、浦田重工業もまさかEMP兵器だったのは思わなかった。完全に想定外である。電磁パルスという概念も核実験で生まれたものだ。核開発グループだった人たちは既に暗殺した。つまり、消去法でこの世界の人間が考え発明したものではない

 

 浦田社長は警備隊長の指摘を受けて怒り狂ったが、そんな事情を時雨達と提督は知らない

 

 

 

 それは兎も角、彼らは侵入した。通信手段も明石が渡してくれたシールド付きのバックから取り出した予備の通信機器と電探を使った。電磁パルスを防ぐ方法もパソコンにあったためだ。さっきまで付けていた電探は電磁パルスのせいで壊れたが、修理する手段がない。壊した上で捨てた。勿体無いが、仕方ない

 

「タコ1から本部へ。X兵器攻撃は成功。しかし、効果は半分」

 

『聞こえるぞ。しかし……上手くいかんかったか。残念じゃ』

 

本部とは、博士である。明石と共に行動しているが、安全地帯にいる

 

『タンゴが破壊工作しているから、侵入して。早く『荷物』を確保しないと』

 

 明石が割り込んできて指示を出した。『タンゴ』とは502部隊の事で『荷物』とは建造ユニットの事である。明石や博士が言っているように建造ユニットの確保が最優先だ

 

「大丈夫……ちゃんと確保するよ。会うために」

 

 時雨は安心するよう伝えた。もし確保出来たら、仲間に会える。そう思うと早く行きたいという焦りとまた会えるといううれしさで複雑だ

 

「待っててくれ」

 

『絶対に死ぬんじゃないぞ!』

 

 通信は切り、敷地内に侵入した。警備システムは網のように張り巡らされていたが、電磁パルスのせいで案山子同然だ。見回りもいない。というより、人員を割いていないらしい。既に502部隊が対処したらしく、遠くで二人組の見回りが音もなく殺されているのを見た

 

「これが浦田重工業のビル……」

 

 大淀は唖然として高層ビルを見上げていたが、他の艦娘もそうだろう。彼女達は『艦だった頃の世界』の日本を見ていたための反応だ。高層ビルなんて太平洋戦争時の日本なんて存在しない。よって、不知火も龍譲も唖然として見上げていた

 

まるで力の象徴にも見える

 

「急げ急げ!」

 

 敷地内に入り、車列の影に隠れ、建物に近づく一同。その途中でとんでもないものを見つけた。新型兵器だろうか?大型コンテナと見たこともない戦闘機が格納庫から運び出され、近くの港に停泊している貨物船へ向かっている。一部は修理したらしく、作業用の車両は忙しそうに見たこともない戦闘機を運び込んでいた。CH-53がコンテナを吊り上げて運んでいる

 

「あれは戦闘機なんか?……変な形状をしているけどさ?」

 

「未来の奴か?」

 

「これに似たようなものを見た事がある」

 

 時雨は思い出した。アイオワが言っていたステルス戦闘機。F-35C戦闘機である。尤も、アイオワが覚えていたのは、まだ試作段階のF-35なので混乱したと言う

 

「F-35?おい……」

 

 提督はあのパソコンのデータを覚えたのだろうか?時雨は舌を巻いた。形状を見ただけで驚いている。記憶力はいいのは分かるが、それ以前に浦田重工業はなぜ、こんな兵器を持っているのだろう

 

急いで物陰に隠れると報告をした

 

「本部、応答してくれ。あいつら、未来兵器を持っていやがる。貨物船に載せている最中だが。信じられんが、運び込んでいる兵器はステルス戦闘機『F-22 ラプター』だ」

 

『そんなバカな!ディープスロートのデータに乗ってあった米空軍最強の戦闘機か!』

 

 ノートパソコンには兵器一覧があり、提督は兵器の特徴を覚えていた。知っていても損はないだろう。無駄知識だが、まさか役に立つとは思わなかった

 

「写真と形状が僅かに違うが、間違いない。レーダーに映りにくい兵器だ!」

 

『いや……ちょっと待ってくれ!幾ら何でもおかしいじゃろう!平行世界の米軍じゃぞ!国家機密をどうやって盗んだ!』

 

「しかし目の前にある!……待て、時雨が言っていたF-35まである!何であるんだ!」

 

 提督は驚きのあまり動揺し、時雨も唖然としていた。どうやって、手に入れたのだろう。機体が美しいとかではない。浦田重工業の不気味さに狼狽した

 

『……骨董品のジェット機を自前で改造して発展させたのはある程度筋は通るが、ステルス機になると話が別じゃ!第一、どうやって――』

 

『ちょっと待って!提督、明石です!もしかすると……ステルス技術はそんなに難しくないと思います!』

 

明石がマイクを奪ったのだろう。明石が興奮気味で話している

 

「どういう意味?」

 

時雨も唖然とした。工作艦には分かるのだろうか?

 

『多分、形だけ真似したんだと思います。中身は別です!これまでの浦田重工業の兵器を見る限り、平行世界の軍事技術を何らかの方法で再現しています!』

 

 明石が言うには、ここにはミサイルもジェット機もない。敵対国も無理だろう。例え漏れたとしても、技術差があり過ぎて再現どころか対策なんて出来ない。つまり、天敵がいないのである。機能もオリジナルである米軍と比べものにならないだろう

 

「……確かにパソコンにあった写真と形が微妙に違うな。国籍マークもない。それに、こっちにはジェット機もミサイルもない。確かにわざわざ高性能にする必要はないかも知れないが」

 

『これは私の考察です。……時雨の証言とアイオワの手紙を見て考えました。あれは人が乗るのに造られたのではなく、空母ヲ級の艦載機用として開発したのでは?』

 

「「え?」」

 

 時雨は頭が真っ白になり、提督も間抜けた声を上げた。大淀も不知火も龍譲もだ。余りにも、推理が斜め上をいっている

 

『冷静に考えて下さい。……未来の記録では、夜の哨戒時に艦娘が行方不明になったという記述を見ました。更にレーダーには映っていないに突然、攻撃を受けたという記録もあります。私が敵の大将ならステルス戦闘機を夜中に飛ばして奇襲させます。だって、レーダーに映らないのですから』

 

「ちょっと待て!どうやってステルス技術を盗んだ!?未来の技術のものだろ!ガラクタ集めの奴らがそんなものを開発出来る訳ないだろ!」

 

 提督の言っている事は尤もだ。レーダーに映らない飛行機。少なくとも自分達の軍事常識に反する。これでは、電探の意味がないのではないか?

 

そう思った矢先だ。無線から突然、何者かが無線に割り込んで来た

 

『……残念だな。ステルス技術は第二次世界大戦のドイツでも開発していた。種を明かせばステルス技術の理論は、冷戦時代のソ連が生み出したものだ。アメリカは、それを応用させ成功したに過ぎない。つまり、コンピュータと理論さえあれば造れるんだよ。ステルス技術は米国専売の技術じゃねぇ。あの国は高性能の機器を詰め込め過ぎているからだ。命を懸けてX-2計画のデータとサンプル一部を持ち込んだ甲斐があった訳だ』

 

「この声!」

 

時雨は驚いた。この声は知っている!警備隊長だ!確か平行世界の日本の軍隊、陸上自衛隊に所属していた人だ

 

『お前らのせいで鉄くずになってしまった。まあ、どうでもいい。修理すればいいだけだからな。ところで……また会ったと言うべきかな?電波傍受という事を知らないとは愚かだ』

 

「警備隊長……お前は、本当に陸自にいた人間なのか?」

 

『どこまで俺を知っている?『陸自』という単語を使っている事は、俺が住んでいた世界を知っているようだな。ハッ、少しだけ褒めてやる。さっきの会話も面白かったぞ。旧軍の癖にこんな奴等がいるとは。道理で手を焼くはずだ』

 

 提督は話しながら移動し始めた。無線傍受されたと言う事は、既に部隊がこちらに向かっている。その前に侵入しないと。移動している間も、警備隊長が無線で喋っている。周波数を把握したのか?

 

『艦娘も面白いな。ボスの話だと、艦娘は旧日本海軍の亡霊だと思っていたが……実際に見て見ると中々、可愛い所があるじゃないか。……だからか。ボスが考えた計画が上手く行かなかったのは。時雨という艦娘がタイムトラベルしたというのも現実味が湧いた。さっさと降伏しないと鎖で縛られて拷問されちゃうぞ』

 

「僕は……僕は二度と捕まらない!」

 

 時雨は声を荒げた。あれは本当に地獄だ。挑発に乗らないというのは基本なのだが、残念ながら抑えきれない

 

『生意気な小娘が。深海棲艦と戦うしか能のない奴は、哀れだな。不要なものだ。反抗心むき出しだから慰め者しか使えんだろうがな』

 

「抑えて!あいつの言葉を無視して!」

 

 時雨が逆上して罵倒しようとしたが、龍譲と不知火が口を押え、大淀は時雨を覆いかぶさり抑えた。時雨は抵抗しようとしたが、大淀が震えているのに気がついた。彼女も怒っているのだろう。しかし、無線は相変わらず喋り続けている

 

『全く……これだから旧軍は。頭が固いのか?それとも、変なプライドがあるのか?国を守るって国のエゴに使われるだけだと言うのに、馬鹿みたいに張り切って何の得がある?人類のために戦うとか言われてもピンと来ないな。そんな精神の持ち主の集まりだから、日本は負けた』

 

「お前はどうなんだ?」

 

 不意に提督は指摘した。時雨も動きを止め、他の艦娘も時雨を抑えたまま提督を見ている

 

「アンタは国防のために働いていたんじゃないのか?自衛隊の資料を見たぞ。見る限りは――」

 

『ハハハ。確かにそうさ。でもな、それは会社の広告と同じなんだ。綺麗事しか表に出さないのと同じさ。俺の知り合いに刑事ドラマに憧れ警官に入った奴がいるが、数年で辞めたさ。社会も知らない人間が得意そうに語るんじゃない』

 

「何が言いたい?」

 

『バカでも分かりやすく言うと、ヒーローなんて存在しねえんだよ。そんなのは、お子様が喜んで見るようなテレビ番組だ。悪の組織をやっつけたら世の中は平和になるのか?ん?艦娘は元は旧日本海軍の艦艇だろ。聞こえているんだろ?お前ら、『大東亜戦争』ではヒーローだったのか?米軍にコテンパンに負けた軍艦さんよ?』

 

 時雨は怒りで一杯だったが、残念ながら反論が見つからない。知っているからだ。太平洋戦争の事を。自分達は、米海軍に負けた。悔しさで一杯だったが、提督は違った。内心では怒っているらしいが、冷静だ

 

「浦田社長は深海棲艦と戦艦ル級改flagshipを使って世界を破滅させようとしている。金をいくらか貰っているか知らないが、世界が滅ぶとその金も使えない」

 

『勿論、幾つかの都市は残すさ。それに、今でも人類同士争っているんだ。終止符を打つには、必要な事だ』

 

 時雨は唖然とした。本末転倒もいい所だ。深海棲艦が現れて人類が滅びても、仕方がないと言っているようなものだ

 

「愛国心や国防よりも金を選ぶのか?」

 

『浦田社長は、太っ腹だ。下っ端の3等陸曹がもらえる給料の千倍の金を支払ってもらえるんだから。必死になってヘリの操縦免許を取って攻撃ヘリのパイロットになっても給料はあまり上がらない。手当も保険云々で消える始末だ』

 

「誰かを守るために戦うという考えはないのか!誇りは無いのか!」

 

『バカ言ってるんじゃね。正直者はバカを見るという奴だ。大和魂というヤツか?ならば、俺の考えを言ってやる。そんな下らない誇りでメシが食えるかよ!』

 

「扉が見つかりました!」

 

不意に大淀が指を指した。ガラスの扉だが、開けて入れるだろう

 

 その時だ。突然、爆音が聞こえた。聞いた事がある爆音。ギョッとして音のする方向へ向けるとアパッチが向かって来る

 

「何でヘリが無事なんだ!?」

 

時雨は叫んだが、それに応えるように無線から嘲り笑い声が聞こえて来た

 

『このアパッチは陸上自衛隊から盗んだ機体だ。当然、電磁パルスにも対処出来てる!ツメが甘かったな、能無しに屑鉄女が!』

 

「早く、建物に入れ!」

 

 提督は絶叫したと同時に全員が建物に入ように逃げた。機銃射撃音が鳴り響き、辺りに無数の穴が空いた。幸い、逃げたお蔭で誰も負傷していない

 

全員、息を切らせて立ち止まっている中、時雨は無線で喚いた

 

「僕は、仲間を守るためにタイムスリップしたんだ!君とは違う!確かにオカシイ人もいる!だけど、仲間が理不尽に死ぬのを黙って見過ごす訳にはいかない!」

 

 時雨の怒りの声に、全員は時雨に目を向けた。時雨は怒りのあまり、肩で息をしている。こんな連中のせいで。こんな人達のせいで僕達艦娘は犠牲になった

 

『……ハッ。勝手にほざいてろ。理想と現実くらい見分けたらどうだ?国を守る事が正義なのか?素晴らしい事なのか?国のエゴのために?国は正義なのか?日本でなくてもナチスやソ連を見れば一目瞭然だ。アメリカですら怪しいぞ?今でも正義気取りか?なぁ、旧日本海軍の亡霊さんよ。何か言ったらどうだ?』

 

「僕達は違う!」

 

『大義なんて何の役に立たないぜ。嘘や切り捨てなんて何回もしたら、愛想が尽きて辞めるのが目に浮かぶな』

 

 しかし、時雨は今度こそ無線を切った。話し合いは無理だと言う事を理解していた。だが、警備隊長の言葉に全員、何も言わない

 

「行くぞ。建造ユニット確保が先だ」

 

「提督。僕は……」

 

「言うな。アイツは何かあったのだろう」

 

 提督はそれ以上、言わなかった。時雨も他の艦娘も同じだ。時雨は反論出来なかったのではない。軍の短所を知っていたからこそ、反論出来なかった

 

 『艦だった頃の世界』の帝国海軍の軍人はプライドが高い。兵学校に鍛え抜かれたのだから当然だ。幼年学校から純粋培養された帝国陸軍の軍人ももっと頭が固い

 

 柔軟な戦術と工業力を持つ米軍とは違い、艦隊決戦思想から中々抜け出さなかったのも敗因の1つだ。そのため、海軍のしごきは凄く、特に戦艦に至っては新兵を犯罪者のように見ていたらしい

 

こんな歌があった

 

『鬼の山城、地獄の金剛、音に聞こえた蛇の長門。日向行こうか伊勢行こか、いっそ海兵団で首つろか』

 

『地獄榛名に鬼金剛、羅刹霧島、夜叉比叡、乗るな山城鬼より怖い』

 

 戦艦陸奥の第三砲搭爆発も新兵による自殺だと言われているほどだ。米軍でも新兵の教育は厳しいが、帝国海軍のようなやりすぎの私刑はしない

 

 これでは、国を守るどころか士気が駄々下がりである。しかも、帝国海軍の戦艦の中で大活躍したのは金剛型くらいだ

 

「まあ、軍や国に失望したのも無理ないかもな」

 

 提督は内心、呆れ果てていた。未来の記録でも、父親の影響もあって、艦娘建造出来るまでは隅っこの部署に配属されたという

 

 どうやら人が人を統治している限り、物事は簡単には行かないようだ。だが、ならず者のテロ集団である浦田重工業を止めないと不味い。何しろ、大日本帝国という国を押し潰そうとしている。少数精鋭もあって、旧日本軍の強さはバカに出来ない。米国ですら手を焼き、原爆まで落とした程だ。それを赤子の手をひねるかのように攻撃して来る。知識と科学力だけで出来る事ではない。いや、深海棲艦を使ったとは言え、列強国を壊滅させたほどだ。思想はともかく、やり方が異常過ぎる

 

「大淀……戦艦棲姫に打電しろ」

 

「提督……それは!」

 

大淀だけでなく、全員ギョッとした。まさかやるつもりなのか?

 

「提督、私が打電すれば後戻り出来ません。まだ時間は――」

 

「考えたさ。だが、奴等の好きにはさせん。俺も少しは期待していた。奴等の改心にはな。話し合いも。しかし、もう無理だ。相手は聞く耳なんて持たない。これは俺の手に追えるものではない」

 

 誰も声を発しなかった。相手が悪過ぎる。自分達のメンバーでは、組織を倒せる程の力は無い。既に犠牲者が大勢いるのだ

 

「提督、僕はついていくよ」

 

時雨は不意に言った

 

「このままだと、遅かれ早かれ同じ道に行ってしまう。だから……あいつらの自信を奪うんだ。あれは、浦田のものではない」

 

 時雨は思った。僕達は深海棲艦と戦うために存在している。浦田重工業が喜ぶ標的艦ではない。未来で捕虜となった仲間達を思った。酷い目に合わされ、新型ミサイルの実験と称して沈められる映像を送られたのだ。僕が体験した事をこの人達には、味わって欲しくない

 

「……ええんやろうか?うちらが勝手にやって?うちは別にいいけどさ。……君と時雨の言い分は間違ってはないと思うし」

 

「少なくとも不知火は、姫級と戦う方がマシです。それに港湾棲姫は敵であれど、時雨を手当てをしました」

 

「全員一致だな。責任は俺が取る。敵の部隊が来る前にやるんだ」

 

 大淀は一瞬だけ躊躇したが、直ぐに打電を行った。別に機密でも何でもないので、平文で打った

 

それは、起動のコードである。機器類は、海に逃がした戦艦棲姫に渡したものである

 

 

 

当然、浦田重工業も傍受したが、何なのか分からない。通信班も首を傾げるばかりだ

 

『すみません、警備隊長。私にはよく分かりません。ただ、暗号ではないのは確かです』

 

「いや、いい。無線傍受、よくやってくれた。ところで、制圧部隊は編成出来たか?」

 

 通信班は艦娘達が使う無線を傍受し、攻撃したが、ビルの中へ逃げてしまった。流石に本社ビルをミサイル攻撃するわけには行かない。502部隊も侵入したらしく、数台の軍用トラックがやられた。だが、こちらのスナイパーが数人倒したと連絡したのでおあいこだ

 

『制圧部隊は三個編成です。これで制圧できます』

 

「油断するな。制圧は任せた。俺は撤退する部隊を指揮して来る。後片付けは頼んだぞ」

 

 アパッチは現場に急行し、制圧部隊はビルに突入した。電磁パルスの影響で電子機器は使えないが、予備電源は生きているため明るい。しかし、制圧部隊は予備電源も落とした。暗闇で襲うのが得意だからだ

 

 

 

???

 

 ある海域で戦艦棲姫と北方棲姫が航行していた。目指すのはあの場所だ。渡された機械。これが起動すれば障害無く行ける。しかし、コードを入力しないと起動出来なくなっている。イラついたが、壊してしまっては元も子もない。空母ヲ級や戦艦ル級などの部下達は、こちらの命令を受け付けもしない。あの『女』は厄介な事をしてくれたものだ

 

「ア!大淀サンカラ打電ダ」

 

 イルカと遊んでいた北方棲姫は不意に叫んだ。戦艦棲姫は注意深く聞くと確かに聞こえる。数字が15桁だが、間違いない。コードだ

 

「ヤレヤレ、何デ私ガ人間ノ後始末ヲシナイト、イケナイノカシラ?」

 

呆れるように呟いたが、内心では喜んでいる

 

 

 

やっと……やっとあいつに会える!

 




おまけ
提督「F-22とF-35のステルス戦闘機がある」
時雨「やっぱり盗んで?」
提督「いや、違うだろう。恐らくだが――」
一同「ゴクッ」
提督「宇宙から来たロボット生命体が教えたんだろう」
龍譲「んな訳ないやろ!」
時雨「流石にそれはなんじゃないかな?」
提督「多分、あの中に変形して隠れているかも知れん!」
不知火「となると全ての戦闘機を調べないといけませんね」
時雨「だから、無いから」
???「「トランスフォーム!」」
スタースクリーム「忌々しい小僧め、中々やるではないか!」
ブラックアウト「バレてしまっては仕方ない。殺してやる!」
大淀「提督、流石です!勘だけで見破るなんて!」
龍譲「何でや!」
時雨「ちょっとおかしいって」
提督「落ち着け、想定外だが仕方ない。戦うしかない!」
不知火「しかし、あんな敵と戦った事が――」
提督「心配するな!私にいい考えがある!」
時雨「提督、フラグ立てちゃダメだよ!」


ステルス技術をざっくり説明すると、レーダーが使われ始めた第二次世界大戦の頃から既に研究され始めた。レーダーが発達すれば、その目から逃れる技術を研究されるのも当然の流れ

警備隊長が言う「ドイツでもステルス戦闘機を開発していた」というのは全翼機のホルテン Ho229。全翼機であるため尾翼などの反射物が少なく、更にはレーダー波吸収を企図してカーボン塗料を塗布などステルス技術を考慮して造られたという。後にステルス機F-117やB-2の開発に際しても参考とされました

「ステルス技術の理論は、冷戦時代のソ連が生み出したものだ」というのは、ソ連の電波工学の権威、ピョートル・ウフィムツェフは1957年に『物理工学的解析理論』という理論を発表した事が発端です。内容はとても難しいが、簡潔明瞭に書くと『電波に関する物理学の論文』
 ただとても難しいものであったため、当時のソ連はまったく相手にされず、軍事機密扱いともされなかった事もあり、この理論は無防備に海を渡りアメリカへと伝わったという。そのアメリカも当初は関心を持っていなかったが、空軍の研究所がこれを翻訳。その後、本格的なステルス機であるF-117、F-22、F-35、B-2を造り上げたと言う

当然、後を追うようにロシアはSu-57や中国はJ-31を開発しましたが

ステルス機というのはレーダー反射断面積(RCS)を少なくするのが絶対条件であるため、設計に複雑かつ膨大な計算をこなさないといけません。今ではコンピュータがあるので楽(?)ですが、当時はそう簡単に出来るものでなく、仮にソ連が『物理工学的解析理論』やステルス技術の重要性を気付いても、既に国力の衰退が始まっていたので、開発は大きく遅れたり中止になっていたでしょう

余談ですが、『米軍が日本の塗料(フェライト塗料)を使ってステルス機(F-117)を完成させた』という話は嘘である。「エリア51ではエイリアンの技術供与によって新型航空機の数々が極秘で開発されている。その航空機がF-117だ!」と同じくらいの出鱈目である。ディセプティコンであるスタースクリームがステルス技術を教えたというなら納得は出来ますが(トランスフォーマー)


おまけ2
(ツイッターの)友人「『艦娘の人権を!』っていうSSがあるけれど、現代社会のリアルさを追求するとなると、最もリアリティ高いのは「艦娘がコンビニに来ると事件かと思う」「艦娘は出来るだけ市民の前に出て来ないでほしい」「艦娘は怖い」とか、そういう声がいっぱい出そうだと思う」
提督「そうなったら、艦娘達は辞めて別の仕事に就くなりすると思うよ。差別をするくらい余裕と言う事は平和である証拠。なら、わざわざ国を守る必要性ないから」
友人「え?いや、艦娘は国を守るのが――」
提督「人間だって人種や宗教や肌などで差別があるんだから、そこを棚に上げて差別するのは本末転倒過ぎるだろ。下手すりゃ、深海棲艦から攻撃受けても艦娘は助けてくれんよ」
友人「……」


ブラック鎮守府があったらどうなるか?私が思うに差別というか奴隷のように扱うと、艦娘は国を全く守らず軍を去っていくだろう
意外と知らないかも知れないが、軍人(自衛官)も毎年辞める人は少なからずいる
キツイ、汚い、危険という3Kで誰もが定年まで自衛官(軍人)になるたいと思う人はいません。海外も似たようなものが多く、こういうのは古今東西あります。人間ですらこれなのに、そこに差別要素が加わると全員辞めるでしょう。大儀名分もただの案山子と分かれば、士気もダダ下がりです
国防や平和はタダではない(今の日本が平和なのはアメリカのお蔭)
恐らくですが、タフで変人である人間が向く仕事だろうと思う
休暇を減らして出撃回数を増やすために書類を偽造してまで出撃したハンス=ウルリッヒ・ルーデルや撃墜された海に落ちたが、乗艦だった瑞鶴へ31km泳いで帰還した広瀬正吾(瑞鶴「!」)。米艦隊に単艦で突撃し、旗艦含む多数の艦をフルボッコにするという頭のおかしい戦果を叩き出した夕立の艦長である吉川潔(夕立「っぽい!」)
当時の海軍航空隊もバケモノの巣窟であり、結構な面子があったという(空母組「!!」)
要は、爆裂魔法ばかりする頭のおかしい爆裂娘のような人が沢山集まっていると思えばいいかもしれない(めぐみん「おい!」)
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