時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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第83話 揚陸艦

 提督が戦艦ル級改flagshipと交戦している中、502部隊は制圧部隊と戦っていた。いや、正確には押されていた。狭い空間とは言え、相手の装備は優秀で練度も高い。物凄い撃ち合いになったが、やはり押されていた

 

「中佐!軍曹!早く行ってください!ここは引き受けます!」

 

 部下の一人が自分の上司に向かって叫んだ。電磁パルスを食らって電子機器を麻痺させたというのに、相手の火力は低下していない。士気も旺盛だ

 

「仕方ない!行くぞ!」

 

 将校は軍曹と数人の部下を引き連れて目的地までいった。誰もいな薄暗い廊下には、銃声と爆発音が響き渡るが、進むにつれて遠ざかっていく

 

既に502部隊の人数は10名まで減った

 

(3分の2もやられるなんて!)

 

軍曹は悔しそうに心のなかで叫んだが、今は悲しみに暮れる暇はない。任務第一だ

 

「この階です!建造ユニットは研究室に入れられたままです!」

 

「潜入工作員が居た日まで、だ」

 

 軍曹は訂正した。さっきまで動かされた可能性も否定出来ない。一同は暗い廊下を進んだが、突然、ビルが揺れたような爆発音と振動が襲った

 

「な、何だ!?」

 

「誰かが、ビルを破壊しているのか?」

 

全員身構えたが、その爆発音はそれ以上起こらなかった

 

将校も軍曹も首を捻った。今のは何なのか?

 

 実は別の場所で戦艦ル級改flagshipがビル内で時雨達に向けて主砲を発射させ、その砲弾がビルに命中し爆発した衝撃である

 

 一同は身構えたが、何も起こらないと分かるとすぐに移動した。一々、構っていられない。本社ビルも無人だ。だったら、先へ進むのが先だ

 

 502部隊の一同は、制圧部隊と交戦はしたが、それ以降の妨害はない。将校も軍曹も不審に思っていたが、彼らは知らない。ビルには侵入者防止措置が色々と張り巡らせていた事を。そのシステムも電磁パルスでシステムダウンしているため、全く作動していないのだ。予備電源は生きてはいるが、照明がつくだけでは意味がない

 

そのため、制圧部隊は予備電源を切ったのだ。照明がないビルの中は昼間とは言え、薄暗い

 

 

 

「もうすぐです!」

 

「ああ、ここを行くぞ!俺も建造ユニットがどんなものか知りたいしな!」

 

 軍曹の心臓は、早鐘のように打っていた。待ち受けているのは罠か、それとも希望か?

 

 分厚い扉を爆薬で爆破されると、全員、部屋に圧倒された。見たこともない機器類や研究機材、そして資源が入っているコンテナが沢山あったが、その部屋のど真ん中に巨体冷蔵庫のようなものがドンと置かれている

 

 その周りは標本なのだろうか?深海棲艦の駆逐イ級や軽巡ハ級などがガラスに納められているのがたくさんある。将校は近寄ってガラスに記した表札を見た

 

『建造第1号』

 

「艦娘を造ろうとしたら深海棲艦が出てきた訳だ」

 

 懐中電灯で研究室内をよくよく見ると、壁や床に所々傷痕がある。恐らく、建造ユニットから出てきた深海棲艦が暴れたに違いない

 

「よし、頼んだぞ」

 

 軍曹はポケットから博士から預けられた工廠妖精を優しく置いた。工廠妖精は敬礼すると、早速作業にかかる

 

それまでの間、502部隊は辺りを警戒した。追っ手が来るかもしれない

 

(なぜ、こんなものを爆破しようと思わなかったんだ?)

 

 軍曹は疑問に思ったが、実は戦艦ル級改flagshipの独断である。利用するために置いておいたのだ

 

 兎に角、建造ユニットは無事だ。しかし、ここを運び出す手段がない。近くに貨物用のエレベーターがあるが、電源が無いため動かない

 

作業音が研究室内に鳴り響く中、無線が入ってきた。大佐の息子からだ

 

『中佐、聞こえますか!』

 

「聞こえている。こっちはもう着いたぞ。早く来い」

 

『聞いてください!奴と接触しました!軍曹の推測は間違っていません。戦艦ル級改flagshipは元人間!繰り返します!元人間です!』

 

 無線を聞いていた将校と部下達は驚愕した。深海棲艦の親玉が元人間。誰が予想出来ようか

 

「やはり、あの秘書は――」

 

『浦田社長の妹、浦田結衣です!自殺は偽装です!』

 

 将校は士官だったこともあり、冷静に通信していたが、内心では驚きを隠せなかった。潜入工作員から聞いた奇妙な報告。軍曹によると戦艦ル級改flagshipと秘書が同時に現れることはない。刑務所で時雨を拷問していた戦艦ル級改flagshipの行方が分からなかった。しかし、部下の推測で変身しているのではないかと指摘した。工作員は一喝される覚悟で報告したが、軍曹は追及しなかった。ここのところ、妙な事が起こっている。あり得ると感じたのだ

 

 そして、その推測は正しかった。まさか、浦田結衣とは思わなかったが、血の繋がった仲ならあり得るだろう。だから、従ったのだ

 

『恐らく、建造ユニットは我々をつり上げるための餌!あいつは異常です!能力が上がっています!』

 

「待て!どういう意味だ!」

 

予想外の報告に将校は、咄嗟に聞き返したが、答えたのは時雨だった

 

『未来でも見たこともない姿になっている!何度も見たから間違いない!パワーアップしている!』

 

 将校は、愕然とした。大佐の話ではボスを倒せば深海棲艦は洗脳から解かれ浦田重工業から離れるだろうと教わった。しかし、そのボスが強くなったという。これでは倒しようがないのではないか!

 

『急いで向かっていますが、あいつはこちらを狙っています!振り切るため時間がかかります!』

 

無線では悲痛な報告だが、こちらも同じだ。微かだか、遠くで物音が聞こえた

 

「早く来い。特殊部隊がこっちに来る。通信終わり」

 

 無線を切ると軍曹は全員を見渡す。将校は頷き、直ちに戦闘態勢に入る。こちらに特殊部隊が来る。時間稼ぎのために牽制していた部下達はもう……

 

「中佐!建造ユニット完成しました!」

 

小さな声が響いたが、将校は誰の声なのか察しが着いた。工廠妖精だ

 

「本当か」

 

「はい。建造可能です」

 

 しかし、喜んではいられない。敵が来る!もしかすると戦艦ル級改flagshipなのかも知れない。将校は突然、あることを閃いた。狂ったと言われるかも知れないが、どうでもいい

 

「私達で艦娘を建造出来るか?」

 

 全員が唖然とした。確かに資源や開発資材はある。しかし、テストもやっていないのに出来るのか?

 

「危険過ぎます。深海棲艦が現れる可能性だって――」

 

「承知の上だ。軍曹、私はバカではない。このままだと全滅する。まだ、戦いに勝っていない」

 

「しかし――」

 

「敵が近づいて来る。ここで博士や息子が来るのを待っている訳には行かない。彼等だけでは太刀打ち出来ない」

 

 ここでいう彼等とは提督と艦娘達の事である。まだまだ数が少なく、とてもではないが厳しい戦いだ

 

しかし、深海棲艦が召喚されれば、502部隊は全滅。一瞬のバクチである

 

「電気なしでも建造できるか?」

 

「はい!」

 

工廠妖精は中佐の質問に頷いた。妖精はやる気満々だ

 

「よし、作業にかかれ!」

 

 兵士達は直ちに行動を開始した。とは言え、やり方はある程度は聞いていたものの、やはり操作は難航した。取りあえず適当に資源と開発資材を建造ユニットに投入すると、建造ユニットは直ちに動き出し、建造完了までの時間が2時間30分

 

「早く出来ないのか!」

 

「出来ます」

 

 予想外の時間に悪態をついたが、工廠妖精はさらっと肯定した。出来るなら早く言ってくれ、と怒鳴りたかったが、今はそうも言ってられない

 

「やってくれ」

 

工廠妖精はガスバーナーを何処からか召喚すると建造ユニットに入り込む

 

 カウンターが一瞬でゼロになり、扉が開く。502部隊全員は息を呑み、またある者は銃を構える。軍曹も将校も息を呑んだ。軍曹は拳銃を構えたが、将校は武器も構えない

 

扉が開いたが、中々出てこない。暗くてよく見えないが、姿からして深海棲艦ではない。帽子をかぶっているのは分かるが。中学生あたりか?

 

「大丈夫だ――銃を降ろせ」

 

姿を確認した将校は、部下に指示した。軍曹達は目くばせしたが、素直に従った

 

その者は将校に言った

 

「あ――貴方は誰なのでありますか?」

 

「私は――」

 

将校は簡潔明瞭に事情を説明した

 

 

 

 

 

 制圧部隊であるアルファチームは、足止めとして残した少数の502部隊の兵士達を蹴散らすと、先へ進んだ

 

「アルファ1からハンター1。敵は建造ユニットに到着した模様」

 

『よし、一網打尽にしてやれ。釣り上げは成功のようだな』

 

 本来は色々とトラップを仕掛けていたが、EMP効果で全部ダメになってしまった。しかし、EMPのお蔭で建造ユニットは動かないはずだ。あれにもコンピュータが仕込まれている。壊れているため、動かすのに四苦八苦しているだろう。それに、貨物用エレベータも動かない。つまり、着いたとしてもそれは希望ではない

 

『奴等は、何とかして建造ユニットを動かすだろう。だが、コンピュータが吹っ飛んでいる今、建造ユニットもシステムダウンしている』

 

「了解。鉛玉を食らわせます!」

 

 制圧部隊のリーダーは、慎重に進んでいく。警備隊長の話では、建造ユニットには、こちらの技術を使っているという。つまり、コンピュータを組み込んであるという。本来は、罠を仕掛けて捕まえる予定が、今では餌釣りである。しかし、先の電磁パルスのお陰で建造ユニットの制御システムは壊れている。つまり、建造ユニットを動かすためには、あの『狂人』の手が必要である。だから、囮に使ったのだ

 

 戦艦ル級改flagshipの件もあり、血眼になって探すよりと誘き寄せ、一網打尽にするのが効率がいい。予備電源も切ってあるため、そう易々と再稼働出来ないはずだ

 

 

 

 制圧部隊も警備隊長も浦田社長もそう考えていた。電気が無くては動くものも動かない

 

 しかし、彼等は誤解していた。建造ユニットは確かにそうだ。しかし、これは未知の技術も加わっているのだ。それは妖精である。博士は妖精を呼び出す事も操る力もあった。主従関係というより人とのコミュニケーションが必要になる。よって、使い捨ては出来ない。妖精も嫌気が差して働かなくなるからだ。しかし、心を通わせたものだけが、操れるし妖精も働いてくれる。

 

 妖精の技術は人類のものとは違うため、コンピュータや電気がなくても動かせる力はある。但し、万能ではないが

 

 よって……建造ユニットは電気無しでも動く。浦田重工業が気づかないのは、単によく分からないものだったからである。『平行世界』から仕入れた未来技術ということもあり、早々に取り外され捨てられた。その代わり、博士から奪った設計図通りに作業を進めたため、工廠妖精の仕事の手間隙が省けた。心臓部である重要区画を弄るだけである。その部品も、先の簡易建造ユニットで実証済みだ

 

 つまり、浦田重工業は代々続く研究と技術を軽視していた。元々、『超人計画』は野望のために造られた計画。それは間違っていなかったが、提督の父親である博士は違った。報われなかった事もあって世間に知れ渡る事はなかったが、それが役に立つとは思わないだろう。コンピュータや未来技術に敵わない妖精の力には。だから、建造ユニットはなぜ深海棲艦の……それも下級の深海棲艦が生まれるのか理解できなかった

 

 

 

 アルファチームであるリーダーは、研究室の前に着くと、合図で進軍を止めた。罠を警戒したが、それらしきものはなかった。しかし、待ち構えているに違いない。彼は拡声器を手に取りボリュームをマックスにすると、警告を発した

 

「502部隊に告ぐ!直ちに武装解除して投降しろ!ジュネーブ条約に従い、捕虜を丁重に扱う事を約束する!」

 

 リーダーは待ったが、返事はない。居ないと思ったが、研究室に続く廊下はここだけ。よって、逃げたとは考えにくい。貨物用のエレベーターを伝って行けば別だが。リーダーは次のように指示を出した

 

「よし、催涙弾を撃ち込め」

 

 命令を受けた部下は、グレネードランチャーに催涙弾を込めると、研究室に撃ち込んだ。これで炙り出してやる

 

たちまち白い煙が研究室内に充満したが、中々人が出てこない

 

(おかしい……催涙ガス食らっても平気なのか?)

 

 催涙ガス……催涙剤は、涙腺を刺激するため、涙や鼻水などが出る他、皮膚にはピリピリしたような刺激を与える毒ガスの一種である。ガスマスクを持っているのか、それとも逃げているのか

 

「ガスが治まったら、進むぞ」

 

 部下に命じながら、M-16を構える。浦田重工業は重く扱いにくい兵器よりも、優れたものを与えてくれるのだから喜ばしい。実際は、『平行世界』から密輸して持ち込み、量産したものだが

 

 ガスが治まり、制圧部隊であるアルファチームは警戒しながら入る。誰もいない。いや、一人だけいた。建造ユニットの前に立ち、ガスマスクをしている者が

 

「手を上げて膝をつけ!」

 

 全員が銃を構えたが、相手は投降する気配がない。それどころか、ゆっくりとガスマスクを外す

 

「お前は……誰だ?」

 

「陸軍のようですが……502部隊にこんな奴はいません」

 

 502部隊の潜入工作や諜報によって、こちらも対抗し制圧部隊を編成した。過去に西村軍曹達の潜入を見破ったのはそのためである。ここを攻めて来るまで潜入し建造ユニットの状況を必死に伝える部下も居たが、放って置いた。建造ユニットは餌であるため、別に気にはしない。つまり、双方の間で諜報合戦が繰り広げられたのである

 

しかし、目の前にいる女性兵士は、リストには載っていない。いや、彼女が来ている制服も見た事が無い

 

「答えろ。新兵のようだが、意地を張っても負けは負けだ」

 

 リーダーはニヤリとしながら近づいた。目の前の女性は、抵抗どころかこちらを見つめ返している

 

 リーダーは目の前の女性に首をかしげた。服装からして陸軍だろう。しかし、この制服仕様は見たことがない。艦娘にしてはおかしい。砲搭が見当たらない

 

「貴様は誰だ?」

 

「自分、あきつ丸であります。将校殿の命令により、貴官を無力化するのであります」

 

「な!」

 

 全員は一斉に構えた。艦娘なのか?しかし、このような情報は一切なかった。リーダーは浦田社長が持っていた帝国海軍の艦艇の名前を一通り覚えていたが、『あきつ丸』というのは聞いたことがない。それもそのはずで、『あきつ丸』は『平行世界の日本の太平洋戦争』では陸軍が建造した軍艦であるからだ

 

 リーダーが知らないのは無理もないが、兎に角、確保する事が優先だ。恐らく、オリジナルの艦娘だろう

 

「さあ、さっさと手を上げろ」

 

「1つ質問して宜しいですか?貴官は艦娘を虐げていると?」

 

「当然だ。日本を狂わした軍国主義の兵器なぞ信用なるものか」

 

 リーダーは素っ気ない返事で返したが、元々は浦田社長の考えを真に受けただけに過ぎない。『平行世界』の歴史を学んだこともあって毛嫌いしているのだ。実際に艦娘は関係ないが、先入観もあって浦田社長と同じ考えを持っていたのである

 

「そうでありますか。なら、汚名返上という形で貴官を倒すのであります」

 

 あきつ丸という女性は、キッと睨むと右手を帽子の翼に手を添えた。何をしようとするのだろうか?

 

「妙な動きをするんじゃね!さっさと……ギャー!」

 

 リーダーは何が起こったか分からなかった。ただ、右頭部に強烈な痛みが走ったからだ。アルファチームは、驚愕した。リーダーが悲鳴を上げたかと思ったら、頭から血を吹き出して倒れたからだ。床で悶絶している所を見るとまだ、生きている

 

「リーダー!……クソ女が!」

 

部下の一人は激昂し銃を構えたが、引き金を引く直前にM-16が木っ端微塵に壊れた。前触れもなく突然、壊れたのだ。何が起こったか分からない。混乱する隙に、あきつ丸は即座に離れると、何処かへ隠れてしまった

 

「今のは何だ!」

 

「イッテェ~!あの女!俺の耳に何をしやがった!」

 

「リーダー!無事だったのですか!」

 

一同は直ぐに後退し、円陣を組むと辺りを見渡した。敵は見当たらない。いや、どこからだ!

 

「敵は何処からだ!今のは何だったんだ!」

 

「リーダー、見て下さい!私の銃に小さな穴が空いています!」

 

「ライトを使え!502部隊が隠れているぞ!」

 

破壊されたM-16をよく見ると、小さな穴が開けられている。破壊力は凄まじく鉄も貫通しているらしい。ヘルメットを被っていなかったら間違いなく死んでいただろう。もはや、敵の位置を悟られても問題ない

 

「居たぞ!」

 

ライトで辺りを照らしていた部下が、鋭い声を上げた。全員が目を向け銃を構えたが、リーダーは驚いた。一瞬だが、見えた。動いていたのは人型だ。しかし、あまりに小さい

 

「小人?」

 

部下は素っ頓狂な声を上げて愕然とした。リーダーも同様だ。こいつが俺達を攻撃したのか?

 

「何だ、あれ!おもちゃの兵隊か?」

 

「たかが虫けらにビビるな!」

 

 部下達は一斉に銃撃したが、別の方からM-16とは違う銃声が聞こえ、一人が悲鳴を上げる。銃声は明らかに三八式歩兵銃だが、銃声が小さすぎる。しかし、威力は本物だ

 

部下達が混乱する中、リーダーはまさかと思い、発煙筒を炊いて掲げた

 

「な!」

 

 リーダーは驚愕した。小さな小人の集団が、こちらに向けて三八式歩兵銃と九六式軽機関銃をこちらに向けている。九七式手榴弾を構えているものもいる

 

「気づいたでありますか。自分は陸軍の特種船。その丙型の『あきつ丸』であります。陸上戦闘ならお家芸であります」

 

 隠れているのだろう。何処からかあきつ丸の声が響き渡った。よく見ると、こちらは囲まれている

 

「くそ!一旦、退却するぞ!」

 

 リーダーの命令に数人の部下は、小人がいない出入り口に向かって走ったが、あるものを見て慌てて引き返した。戦車砲が鳴り響き、壁を破壊したのだ

 

リーダーは目を凝らした。それは小さな物が動いている。オモチャかと思ったが、違う。エンジン音が戦車そのものだ。近づく小さな物にライトを当てると、リーダーは驚愕した

 

「八九式中戦車だと!おい、冗談だろ!」

 

「おい……小人が持つサンパチが銃を壊す威力だとすると……」

 

 つまり、小さくても威力は本物。つまり、戦車砲の威力はそのままだ。人が木端微塵に成るかも知れない。しかも、よくよく見るとく九五式軽戦車や九七式中戦車まで居やがる。空には見たこともないオートジャイロ機がいる。戦車6台に20名前後の小人の戦闘集団。そして、オートジャイロ機が1機がハエのように飛び周っている

 

「全たーい、構え!狙え!」

 

「フン、旧軍の癖に生意気な」

 

あきつ丸の号令で構える小人集団と迎え撃とうとするアルファチーム

 

一瞬、静寂が訪れたが、両陣の同時合図で火を吹いた

 

「「てーっ!」」

 

 

 

 

 

 502部隊の隊員達は貨物用のエレベーターの近くに隠れていた。建造された艦娘から「自分が追い払います!」と自信満々に言ったのだ。将校はやらせてみた。何か策があるらしい。そして、三八式歩兵銃の銃声と制圧部隊の銃声が鳴り響ていたが、どうも時雨達とは違う力のようだ。2,3分だろうか?長く続くと思われる戦闘が続いたと思いきや、銃声も悲鳴も消えた

 

「終わったのか?」

 

軍曹は呟き、将校達は貨物エレベーターから顔を出した。辺りは暗かったが、工廠妖精がここの電源を復旧させたのだろう。研究室だけ照明が付いた

 

「将校殿、任務は終わりました。文字通り、なるべく殺さずに無力化に成功しました!」

 

 あきつ丸は中佐の姿を確認すると、姿勢を正して敬礼をした。見ると、制圧部隊全員が倒れている。中佐は情報を聞き出すために生かすよう命じた。また、人質として使える。そう判断した

 

 無茶難題だが、あきつ丸はあっさりと了承した。しかも、あの強力な制圧部隊を無力化させるとは流石だ

 

 それもそのはずで、制圧部隊にとっては戦闘妖精の存在が驚異だったからだ。夜目が良いのか、正確に狙い撃ちされるし、カ号観測機からは手榴弾の雨が降らされる始末だ。それに加えて、八九式中戦車や九五式軽戦車などは脅威だった。確かに装甲は薄い。しかし、アルファチームは対戦車兵器なんて持っていない。装甲が薄いとはいえ歩兵にとっては十分な脅威だ。それに対してアルファチームは、近代兵器は持っているものの、こういう事態は初めてである。流石に自動小銃と手榴弾では厳しい。小人を吹き飛ばすためグレネードランチャーをぶっ放したが、効果があるかどうか分からない。幾ら応戦しても別方向から銃弾が飛んで来る。あきつ丸という存在のお蔭で、制圧部隊は大混乱したのだ。その隙にあきつ丸は突進して格闘戦で丁寧に無力化させた。流石に小火器では倒せない。被弾もあまり気にしない事もあって、的確に格闘戦で相手を倒した。戦死者は数人出たが、負傷者も含めほとんどの者を捕らえる事が出来た

 

 

 

 一部始終を見ていた502部隊にとっては、目を見張るばかりだ。これが陸軍所属の軍艦なのか?

 

「ああ。ありがとう。お前たちもな」

 

 陸戦隊や陸軍の服装を着こんだ妖精達は、あきつ丸にならって将校に敬礼をした。彼女達のお蔭だ

 

「自己紹介が遅れた。私は502部隊を率いる陸軍中佐だ。名前は非公式だから、そこは分かってくれ」

 

「分かりました、将校殿!ところで502部隊というと……機動第2連隊の事でありますか?」

 

「君が思っている『艦だった頃の世界』の機動第2連隊とは違うかも知れない。何しろ、満州事変なんてこっちの世界には無かったのだから」

 

あきつ丸は驚いた。この世界の歴史が根本的に違うのだから無理もない

 

「色々と話したい事はあるだろうが、現在の状況を簡単に説明する。君も手伝ってもらう。君は――」

 

「揚陸艦であります!」

 

「よし、戦闘員である妖精に命令してここの守りを固めてくれ。もうじき仲間がここに来るだろう。敵に奪還されたなんて出来ないのだからな」

 

 あきつ丸は命令通りに研究室の守りを固めた。他の者は、負傷し動けない制圧部隊を拘束し、彼等の所持品は全部取り上げた。よく分からないものが多かったが。その時、軍曹はゆっくりとあきつ丸に聞いた

 

「君は『艦だった頃の世界』では陸軍によって建造された船と言う事か?」

 

「はい、自分は日本陸軍の特種船に当たるのであります。日本海軍からは『軍艦』とすらみなされず、十六条旭日の軍艦旗を掲げませんでした」

 

 あきつ丸のはきはきとした答えに軍曹は、更に困惑した。陸軍が建造した船?とてもではないが、自分の理解を超えている

 

時雨からは、陸軍所属の船なんて聞いた事がないのだが

 

 実は陸海軍の仲の悪さによって生まれた船というのを知らないのだから仕方ないかも知れない。『平行世界の日本』の太平洋戦争では、予算の奪い合いで陸海軍の仲が悪かったのは有名だ。ただ、これは上層部の話であって、現地で働く下士官達はそこまで悪くなかったと言う

 

 尤も、この世界の帝国陸海軍のプライドをズタズタに引き裂いたのは浦田重工業の事もあり、『平行世界の日本の過去』のような事は起こっていない。勿論、陸海軍の仲の悪さは緩和されたもののいがみ合いが続いているが

 

「建造ユニットは立ち会った軍人に影響されるというのか?他にも誰がいる?」

 

「分からないのでありますが、自分は『陸軍船舶部隊』である『暁部隊』に所属しておりました。もしかすると――」

 

しかし、軍曹は話を最後まで聞かずに建造ユニットの前へ駆け足で移動した

 

「おい、もう1人造れるか?」

 

「開発資材は一つしかないため、これが最後です!」

 

工廠妖精は答えたが、無理もない。元々、502部隊の任務は建造ユニットの確保である。開発なんて緊急時のみでしか配布されていない。動かないだろうと思って博士からあまり持たされなかったが、実際に建造できたのである。軍曹はもう一隻造るよう指示した

 

「よし、やってくれ」

 

「軍曹、確かに戦力になるかも知れないが、俺達は上陸戦を支援する艦艇しか出ないぞ?我々は、海軍ではないからだ」

 

「お言葉ですが、中佐。ここにも戦艦ル級改flagshipが来るかも知れません。万が一のために」

 

 本当はどうでも良かった。どんな艦娘が来ようが、深海棲艦と戦えるはずである。火力不足なら砲やら航空機やらを搭載して魔改造すればいい。もしかすると、陸軍にも面子が立つかもしれない。そう考え、建造ユニットを再び稼働させた

 

建造が完了し現れたのは――

 

 

 

 現れた彼女の姿と能力を知った軍曹は、絶叫した。過剰に期待したせいでもあって、ショックを受けて落ち込んでいるという。兵士達は困惑したが、中佐の命令を受けて作業を開始した。残念ながら、上司である隊長を構う兵士は居ない

 

落ち込んでいる軍曹を彼女は一生懸命に訴えた

 

「モグラじゃないもん!まるゆだもん!」

 




あきつ丸「自分はあきつ丸であります!戦闘妖精部隊に戦車、そしてカ号観測機を積んでいるのであります。これが自分の軍隊であります」
虹村形兆「装備は古いが、精強で強襲上陸を想定した部隊。我がスタンドのバットカンパニーに近い存在を持っているとは。艦娘もやるではないか!」


様々な理由から陸軍が建造したあきつ丸。まさかの出現に制圧部隊は、逆にやられてしまいます。そして、2人目は……

アルファチームが負けた理由は、クレイジーダイヤモンド(ジョジョ第4部)がいなかったから
あきつ丸「違うであります!」


※あきつ丸の戦闘妖精に関しては、『大発動艇(八九式中戦車&陸戦隊)』と『特大発動艇+戦車第11連隊』、そして『カ号観測機』を参考にして出しました。陸戦隊と陸軍の将兵は違いますが、ここは涙を呑んでスルーしました。建造時に持って来れたのも工廠妖精さんのお蔭……という設定です。初期装備だけだとインパクトありませんので
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