時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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二期の海域を全て解放するのにちょっと手間暇かかった私です
オリョクルは無くなったり、2-4がちょっとだけ簡単になったりと変化していますね
ただ、中部海域(6-5は除く)は相変わらず鬼畜。しかし、燃料弾薬ペナルティの改善は大きいから多少はマシになったのか……
尚、イベントでは神鷹(客船シャルンホルスト)が実装されるとの事。スウェーデン海軍であるゴトランドも登場するらしく、賑やかになって来そう


第84話 新たな仲間

 時雨達は薄暗い廊下を走った。提督は龍譲を抱えている。とてもではないが、回復する見込みは無い。今は、目的地に着くためだ。既に502部隊は到着していると言う。制圧部隊が妨害されると思ったが、今のところはない。しかし、彼等は気が気でなかった。薄暗い物陰から、浦田結衣が襲ってきそうである

 

走る事数分――

 

「見て!研究室から灯りが!」

 

 時雨は叫んだ。このビルは電磁パルスで照明が落ちた。しかし、数メートル先の扉からは光が漏れている。つまり、誰かが研究室を復旧させたと言う事だ。一同は止まると、提督は大声で上げた

 

「風!風!」

 

「川だ!大丈夫だ、味方だ!」

 

 互いの合言葉は作戦決行時に決まっていた。風と質問をぶつけられたら川と答える。簡易的な合言葉だが、非常に役に立つ。扉は開くと同時に眩しい光が襲った。薄暗い所にいたため、目を覆う羽目になった。それでも、時雨達は転がるように研究室の中に入る。あの怪物に襲われるのだけは勘弁だ

 

「よく無事――おい、1人足りないがどうした?それに、龍譲は、どうした?」

 

「僕達を庇うために大淀さんは――」

 

時雨はそれ以上、声が出なかった。大淀が今、どうなっているのか分からないからである。無線にも返事が無いのが不気味だ

 

「龍譲を!手当てをしてくれ!」

 

「何だ、これは?衛生兵、診てやってくれ!」

 

衛生兵は駆け寄り、ぐったりしている龍譲を診た。解毒剤はあるのだろうか?

 

「ところで中佐、建造ユニットは?」

 

「大丈夫だ。奴等は動力源を壊したらしいが、それ以外が無事だ。工廠妖精のお蔭で建造可能だ」

 

提督と時雨はホッとした。どうやら、建造ユニットは無事のようだ

 

「だけど、本当に建造出来るかどうかやってみないと」

 

「大丈夫だ。私達で出来た」

 

 中佐は合図をすると、灰色の制服を着た女性がこちらに来る。時雨は驚いた。未来ではない。『艦だった頃の世界』でも珍しいかも知れない

 

あり得るのだろうか?

 

「自分、あきつ丸であります。ここの守りは万全であります」

 

「もしかして……揚陸艦?」

 

「そうであります!」

 

 時雨は聞いた事があった。陸軍籍船という存在を。よく見ると彼女の周りに陸戦隊と思われる戦闘妖精がいる

 

「信じられんな。よろしく。ところで、軍曹は?」

 

 提督が質問をすると、2人共目線を落とした。何があったのだろうか?まさか……

 

時雨は辺りを見渡したが、ある一角の所に落ち込んでいる男性兵士がいた。よく見ると軍曹だが、どうしたのだろう?表情は分からないが。何やらブツブツと言っている

 

そんな彼を小さい子どもが揺さぶり、励ましている

 

「ねぇ、隊長さん。落ち込まないで下さい。まるゆも、お役に立ちます!」

 

「やっぱり陸の人間は、深海棲艦に挑んではいけないんだ……うん……こうなるんだったら親父の跡を継ぐべきだったんだ。……でも、酒屋なんて俺には似合わないし……」

 

 軍曹は何か憑りつかれているのか、よく分からない。その隣には、小さな女の子が必死に励ましている。しかし、この小さな女の子は、スク水を着た小学生中学年程度に見えるショートカットを来ている。もしかすると……

 

「なぁ、軍曹の隣にいる子供って艦娘?」

 

「僕は見たことないけど」

 

時雨は必死に思い出そうとしたが、未来では潜水艦娘はいなかった。誰だろう?

 

「おい、まるゆ。こっち来て自己紹介を」

 

将校は声をかけると、まるゆは小走りでかけてきた。動きが子供そのものだ

 

「初めまして…まるゆ着任しました!」

 

まるゆは時雨達に向かって敬礼をした。陸軍仕様の敬礼であるため、全員困惑した。これは陸軍の船なのか?

 

「やっぱり、この敬礼の方がいいのかな~?」

 

今度は海軍式に敬礼したため、余計に混乱する。時雨も首をかしげる

 

「時雨。この艦娘を知っているか?」

 

「知らない」

 

「不知火も知りません。まるゆという船も聞いたことがないです」

 

「え?聞いてないって…そんなあ!」

 

提督、時雨そして不知火からも首を傾げるような仕草にまるゆは泣きそうである

 

「君は潜水艦なの?」

 

 時雨は慌てて質問した。ごーや達と同じように水着と艤装らしきものを纏っていることから潜水艦娘と判断した。ただ、潜水艦が曳航して使用する無動力の水中輸送コンテナである運貨筒をなぜ持っているのか、不明だが

 

「まるゆは――」

 

「平行世界の太平洋戦争時の陸軍が自前に開発した輸送用の潜水艇だ!……平行世界の日本軍人はバカばかりなのか!」

 

 ゆらりと立ち上がった軍曹は、まるゆの説明を遮るかのように、力無くしてこの世の終わりかというくらい呆れるように叫んだ。まるゆは驚いて提督の影に隠れたが

 

「ぐ、軍曹殿。お、落ち着いて下さい。これには色々と訳あって――」

 

「わかるよ。説明は大体分かった。建造された経緯も。でもな、魚雷も撃てない潜水艦って何なんだ!どうやって戦うんだ!しかも輸送艦の割には、搭載量は少ないって!」

 

あきつ丸は落ち着かせようと宥めたが、軍曹は再び落ち込んだ

 

「そうとうショックだったようだな」

 

「そのようだね」

 

まるゆに罪はない。が、あきつ丸という陸軍船が出てきたことにより、期待していたらしい

 

「あの~。まるゆはどうしたら?」

 

「とりあえず、軍曹を慰めてやってくれ。こっちも、作業をするからな」

 

まるゆは提督に聞いたが、提督は簡潔に答えた。これではラチが明かない

 

「本部、応答してくれ。『荷物』は無事だ。タンゴの連中が上手く稼働させてたようだ」

 

『そうか!予想外じゃが、それでいい。妖精は持っているな』

 

 提督は持っていた工廠妖精を取り出すと、早速作業にかかる。それまでは時間がかかりそうだ

 

一方、時雨と不知火は手当てを受けている龍譲の方を見に行った。しかし、こちらの方は酷い有り様だ

 

衛生兵は処置はしたので命を落とすことはないと言われたが、とんでもない事を聞かされたときは驚愕した

 

「「フグ毒!?」」

 

「そうだ。症状からして、間違いない。残念だが、ここでは処置出来ない」

 

時雨は龍譲を見た。意識はあるが、本人は苦しそうだ

 

「何とかならないの!?」

 

「フグ毒であるテトロドトキシンは、解毒方法はない。フグ毒が身体から抜けるまで呼吸を維持できるようにするという方法が精一杯だ。大抵は死ぬが、生きているのが奇跡だ」

 

衛生兵は信じられないように語っているが、時雨はそうは思わなかった。艦娘は艤装を纏っているからこそ、生きる事が出来る。しかし、痛みや苦しみは別だ。あの戦艦ル級改flagshipはとんでもない事を思い付く!

 

「時雨、龍譲は何かいっています!」

 

 不知火は気づいたのだろう。みると龍譲の口から微かだか、何かを言っている。時雨は急いで耳を近づけて聞いたが、それはとんでもない事を口走っていた

 

「……こ……殺し……て……くれや……苦し……い……」

 

「ダメだ!死のうだなんて思わないで!」

 

時雨は叫んだ。このままだと何も変わらない!

 

「絶対助かるから!だから――」

 

時雨は励まそうとしたが、大淀の事を思い出した。龍譲でこの扱いだ

 

時雨は立ち上がり、入ってきた扉に向かって突進したが、誰かに止められた

 

「離して!」

 

「落ち着いてください!」

 

「そうです!これは罠であります!」

 

不知火とあきつ丸が慌てて時雨を押さえつけた。助けにいこうと見抜いたらしい

 

「大淀さんを助けないと!」

 

「飛んで火に入る夏の虫です!敵はこちらを誘っています!」

 

「でも、あいつは!僕達をゴミのように扱って殺すんだ!」

 

 時雨は怒りと焦りで一杯だ。大淀はどうしているのだろう?自分と同じ酷い目にあっているかも知れない。楽しみながら攻撃している!

 

不意に右の頬に痛みが走った

 

「え?」

 

それが平手打ちされたと分かった。不知火が叩いたのだ。突然の出来事で、時雨は呆然とした

 

「時雨、誰だって助けたい気持ちは同じです。ですが、落ち着いてください!」

 

 不知火から鋭い指摘に戸惑ったが、時雨は見逃さなかった。不知火の目から涙が出てることに

 

「感情的になって行動してもやられるだけです!貴方まで捕まったら……何をされるか」

 

「……」

 

「全てを背負い込まないで下さい。時雨は強いですが、救世主ではないのです」

 

 時雨は冷静を取り戻した。不知火の言うとおり、あいつの思い通りになってしまう。あの戦艦を倒す手段がない

 

「ごめん。僕は……」

 

あの戦いで自分だけが生き残ってしまう恐怖。忘れたくても忘れられない。この世界でも似たような事が起こっている

 

「運命って……変えられないのかな?」

 

不意に口に出してしまった言葉。自分は誰も救えないのか?

 

「変えるために来たんだろ?それに、お前が行かなくてもいい」

 

それに応えるかのように提督が声をかけたが、慰めにもならなかった

 

振り向き反論しようとしたが、時雨はあるものを見て驚嘆した

 

「て、提督!これは!」

 

「お前が望んだことだろ?」

 

 提督はにやりとした。確かに時雨は考えすぎたかも知れない。ずっと1人だった事もあり、慣れてしまったかも知れない

 

もう会えないかも知れない。しかし、その考えは振っとんでいった

 

提督の後ろに沢山の人影がいたからだ

 

「はじめまして、吹雪です。よろしくお願いいたします!」

 

「あんたが司令官ね。ま、せいぜい頑張りなさい!」

 

「綾波型駆逐艦「漣」です、ご主人さま。こう書いてさざなみと読みます。」

 

「電です。どうか、よろしくお願いいたします。」

 

「五月雨っていいます!よろしくお願いします。護衛任務はお任せください!」

 

吹雪、叢雲、漣、電、五月雨がいた。いや、それ以外にもいる

 

「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」

 

「初めまして、龍田だよ。天龍ちゃんがご迷惑かけてないかなあ~」

 

「川内、参上。夜戦なら任せておいて!」

 

「私が鳥海です。よろしくです」

 

「古鷹と言います。重巡洋艦のいいところ、たくさん知ってもらえると嬉しいです」

 

「マイク音量大丈夫…?チェック、1、2……。よし。はじめまして、私、霧島です」

 

時雨は目頭が熱くなった。彼女達が建造された。これなら……これなら勝てるかも!

 

涙ぐむのを堪えた時雨は、皆の前に立つと一言だけ言った

 

「皆……お帰り」

 

 

 

 

 

「すると、敵は元人間で凶悪な深海棲艦のボスって事でいいのか?」

 

「そうだ、天龍。建造して早々だが、奴を倒さないといけない」

 

 これまでの経緯を簡潔明瞭に説明した提督。全員、半信半疑だったが、とりあえず危機的状況なのは認識したようだ。しかし、時雨は自分は未来から来たと説明すると、全員から質問攻めにあった。浦田重工業の件で驚いているのに、改二でしかも未来から来たとなれば驚くなと言う方が無理である。時雨は困惑しながらも一つ一つ質問に答えていったが……

 

「大和型戦艦を建造するには、もう少し改装しないといけない。親父をここに呼ばないと」

 

「でも、危険だよね?」

 

 提督の案に時雨は指摘した。残念ながら、大型建造を安定化させるためには、もう少し改良が必要だ

 

「心配するな。大佐と明石は、こっちに来る。地上部隊もこちらを押しているからな」

 

 陸軍将校はリアルタイムで戦線の状況を把握していた。一向に戦況が好転しない元帥は、試作である兵器を全て繰り出した。重戦車 と装甲車。そして、爆撃機と戦闘機を全て繰り出した。やけくそのように見えるが、深海棲艦による艦砲射撃と空襲によって海岸沿いの被害が無視できないレベルに達していたからだ。さっさと解決したいからかも知れない

 

「二式大艇で来るよう手配した。だから、この建造ユニットを運ぶぞ」

 

 既に工廠妖精によって、貨物用のエレベーターは動かせる。短時間で修理できるのは、流石と言いたい所だが、それでも一時間くらいはかかる

 

しかも、重量があるだけに人手はいるだろう。人力しか手はないのだが

 

「よし。なら、どうするかは分かった」

 

 提督は頷くと、時雨と話している艦娘一団に向かった。一同は提督が近づくことに気づくと騒がしかった彼女達は、お喋りを止めて提督に集中した

 

「出来ればゆっくり状況を話したい所だが、今は無理だ。単刀直入に聞こう。お前達は戦えるか?」

 

「はい!」

 

吹雪を始め、全員が答えた。艦娘の誰1人拒否する者はいない

 

「情けない話だが、何処ぞのバカの集団が、深海棲艦を使って世界を攻撃しようとしている。浦田重工業の地上部隊は、陸軍に任せるとして……こちらは例の戦艦ル級改flagshipを倒さなければならない」

 

 全員は互いを目配せした。龍譲の症状を見れば、戦艦ル級改flagshipは明らかに常軌を反している

 

「浦田社長は第二次世界大戦を止めるために動いたらしいが、今では過激になっている。軍を嫌っているせいか、俺も含め艦娘も嫌っている」

 

艦娘達は何も言わない。ただ、提督の言葉を傾けていた

 

「だが、俺の考えは違う。艦娘は帝国海軍の亡霊ではない。そして、俺は先祖の野望のために艦娘を召喚したのではない。故郷を守るためだ」

 

「それを偏見と差別を受けて黙っている俺達ではない。起こりもしない変化をただ黙っているだけの俺ではない。奴等に教えてやる。俺達は、以前とは違う存在だと。だから、国防を軽視すれば痛い目にあると!」

 

全員声を上げた。提督に賛同したのだ。時雨は懐かしい目でやり取りを見ていた

 

 この時代に来たときは、提督と僕だけだった。それが今では増えている。予断は許されない状況だが、提督の言うとおり1人で抱え込まなくていいかも知れない

 

「俺達は奴等の遊び道具ではない。笑ったり、愛したり、胸を張る事に権利は必要なのか?そうじゃない。誰だって思っているはずだ。ただの兵器ではないと!お前達は生きている。その事実を奪わせしない」

 

 誰も声を上げなかった。中には驚く者もいた。この少年は何なんだ?だが、戸惑いは一瞬だけだ。全員の意識が自分へ向いたのを確認すると、彼は指示を出した。

 

「よし、早速、作戦を開始するぞ! 救助隊、前へ!」

 

 提督の声を受け、選抜された乗組員が彼の前に整列した。霧島、鳥海、古鷹、天龍、龍田、そして川内だ。駆逐艦は除外した。流石に荷が重すぎる

 

「お前たちの任務は、捕まった大淀の救出、及び戦艦ル級改flagshipの威力偵察だ!奴らと遭遇した場合、可能であれば撃破しろ!不可能であれば無理に戦わずに撤退しろ!必ず生きて帰ってこい!いいな!?」

 

「了解しました!」

 

 霧島は眼鏡を光らせながら頷く。しかし、霧島には提督と事前に打ち合わせをしていた。撤退する気はない。『予備作戦』のために戦艦ル級改flagshipの気を逸らさないといけない。それでも、霧島はやる気満々だ。なぜなら、『艦だった頃の世界』の大戦時には、戦艦と戦った事があるからだ。そう簡単にはやられないだろう

 

 それはともかく、一同は早速、準備にかかる。工廠妖精は装備を開発して装備を支給させた。霧島達が優先であるため、仕方ない。残りは、建造ユニットの警護と運運搬だ。その間、提督は建造ユニットの前で腕組みをした。本来なら強力な艦娘を召喚したかったが、残念ながら建造ユニットはランダムである。研究用だろう。まだまだコンテナの中には資源が沢山ある。余裕でもう十人くらいは建造出来そうだ。しかし、無計画に建造する訳には行かない

 

「この戦力だと烏合の衆だ……」

 

 戦いにおいて質と量のバランスは難しい。質を優先してしまっては、数で負ける。かと言って量を重視しても質が劣れば、ただの烏合の衆である。両方を両立させて運営している国は、アメリカくらいだろう。言い換えれば、それだけ国力があると言う事だ

 

「提督~。司令官が弱音を吐いてはいけませんよ~」

 

 提督の呟きに応えるかのように龍田が囁いた。提督が振り返ると、龍田の他に天竜と鳥海がいた

 

「すまない。仕方ないとはいえ、こんな仕事を押し付けるなんて」

 

 戦艦ル級改flagshipの能力は、依然として未知数だ。先ほどのような変身能力は、時雨も知らない。注意深く調べる時間も無いため、こちらから攻撃を仕掛ける

 

幸い、戦艦である霧島の建造が出来たため、これは喜ばしい。撃破は出来なくても、何らかのダメージを与えるはずだ

 

「計算通りに行かない事もあります。心配しないで下さい」

 

「しかし……」

 

 提督は迷っていた。やはり、戦いに送りたくないのだろう。皆の前では、ああは言ったが、いざとなるとやはり躊躇してしまう。彼が躊躇する理由は、あの戦艦ル級改flagshipの戦い方である。何しろ、気づかれずに襲ったり、毒攻撃を仕掛けたりしているからだ。彼女達に酷い目に会わせたくない。それだけだ

 

だが、その気遣いは艦娘にとっては不要なものだ

 

「提督。将来、軍人というのは前向きの考えをしないとやってられないだぜ。どうこう言われようが、オレは天龍なんだぜ」

 

天龍はニヤリとした。自分達の運命を知ったとしても戦う気だ

 

「私達はただやるだけですよ。任務達成に向けて。……失敗すようとして失敗する人は居ません。もしいたとすれば、それは人間の屑です。向上心のない人に生きる価値はありませんから」

 

 鳥海の指摘には流石の提督も苦笑した。まさか、ここまで言われるとは思わなかったからだ

 

「分かった。頼む。時間稼ぎをしてくれた大淀を救ってくれ」

 

 提督は頷いたが、隣にいた時雨は浮かない顔をしている。不安そうな目で自分たちを見つめるのに気がついた3人は、今度は時雨に話しかけた

 

「……不安か、時雨?」

 

時雨は、無言のままで小さく頷いた

 

「あまり心配するな。オレや鳥海は、夜戦には慣れている。川内もいるのだから問題ないぜ」

 

 そこで一度言葉を切って、天龍は後ろに控える霧島や川内、そして古鷹を見やる。今度は鳥海も話しかけた

 

「私も含めて、戦闘力と防御に自信がある者を選抜しました。深海棲艦ごときに早々、やられるようなことはありませんから」

 

それに応えるように龍田は頷いた

 

「大丈夫よ~。ところで……私はいつ死んだか聞かせてくれない?」

 

 龍田は甘ったるい声で質問したが、時雨はハッとした。龍田は時雨が建造される前に沈んでいた。天龍はショックで人格が変わったという。だが、それは旧史だ。今は時雨が知っている未来ではない

 

「2人共互いに励まし合っていたよ」

 

「そう~」

 

 しかし、龍田は直感的に時雨が嘘をついているのを見破っていた。だが、龍田は時雨を問い詰めたりしない。時雨は、不安と安堵の両方の感情を持っているのを感じた

 

「だから、提督と陸軍の連中を頼むわよ。建造ユニットが破壊されたら終わりだから~」

 

 尤も、戦艦ル級改flagshipの考えている事は、違うだろう。だが、奪われたら奪われたでこちらが不利になる。駆逐艦娘達とあきつ丸、そしてまるゆは建造ユニットを移動させるための作業員だ。幸い、制圧部隊の捕虜がいる。盾には出来るだろう。……奴等に人の心があればだが

 

「分かった。だから……全員生きて帰って来てね」

 

 

 

 研究室の扉の前に霧島、鳥海、古鷹、天龍、龍田、川内が身構えていた。電磁パルスの事もあって研究室以外は真っ暗だ。それに、敵が扉の前に待ち構えているかも知れない。しかし、6人は恐怖の微塵も無かった

 

「将校殿、扉を開けます!」

 

「よし、合図したら開け!準備はいいな!」

 

一同は一斉に身構えた。502部隊だけでなく、あきつ丸の戦闘妖精達も駆逐艦娘も警戒している。もしかすると、扉を開けた瞬間に、敵が雪崩れ込むかも知れない

 

「夜じゃないけど、やりますか」

 

「……相変わらずだね」

 

川内の不満そうな言葉に古鷹は、呆れた。昼間だが、電源が落ちて建物のほとんどが真っ暗闇という事に不満だったらしい

 

「3……2……1……開けろ!」

 

 まるゆのショックから立ち直った軍曹とあきつ丸は、研究室にある重い扉を開けた。目に映ったのは、薄暗くなっている廊下だけ。戦艦ル級改flagshipも警備兵もいない。安全が確認されると吹雪達はホッとした

 

「霧島艦隊、出撃します!」

 

「任せたぞ!」

 

 6人は一斉に薄暗く続く廊下に向けて突進した。6人が出て行くと同時に研究室の扉は閉められた

 

「不安か?」

 

「うん。ちょっとだけ」

 

 本音は行ってほしくなかった。まだ、建造されたばかりで、練度もそこまで高くない。工廠妖精が開発した装備も何とか数を揃える事が出来たため、簡単にはやられないだろう

 

 しかし、相手はあの戦艦ル級改flagshipだ。まだ、時雨しか交戦していないため未来の時のように強くはないだろう。だが、バージョンアップしているため、予想が全くつかない。つまり、提督は作戦が終わるまで祈る事しか出来ない

 

 だが、相手の方が更に上を行っていた事を時雨も提督も知らない。深海棲艦の艦載機が、遠くから霧島達を観察している事に。つまり、研究室に深海棲艦の手下と制圧部隊を送り込まなかっただけの話である。戦艦ル級改flagshipは自由奔放な戦いであるために、提督も予想できなかった。未来の提督が、なぜ苦労したかと言うと、戦い方が常軌に反していたからだ。お蔭で心身共に疲弊していたが

 

 距離が離れた場所で偵察機の報告を受けた戦艦ル級改flagshipはニヤリとした。敵が多いと喜ぶ人はいない。こちらが不利になるだけだ。しかも、戦艦ル級改flagshipを従えている他の深海棲艦は一部を除いて、別の場所で待機している

 

つまり、今の状況はワンマンアーミーと言う事だ。だが、それでも戦艦ル級改flagshipは焦らない

 

「ネェ?私ヲ倒ソウトコチラニ仲間ヲ送リ込ンダヨ。聞イテ?助ケニ来タラシイヨ?ネエ?」

 

戦艦ル級改flagshipは床に転がっているあるものを強く踏みつけていた。それは捕まってしまった大淀だた。しかし、今の大淀の姿は、ボロボロであった

 

 制服は泥と血で汚れ、眼鏡は壊れ、傷口が破れた制服のいたるところから覗く。逃げないようにしたのだろう。足はおかしな方向に向いている。常人の人から見れば見るに堪えないものだ。艤装も屑鉄になるほど壊れている。もう砲は撃てず、海上に浮かぶことは出来ないだろう

 

「マア、喋レナイカ?『ふぐ毒』デ麻痺シテイルカラ。苦シイよね?分かるよ。私をバカにした人や裏切った友人が、そんな表情して死んでいったかを」

 

 浦田結衣に変身して嘲笑ったが、大淀は反応しない。反応出来ない。ふぐ毒であるテトロドトキシンは、麻痺毒だ。本来なら呼吸が出来なくなり、窒息死してもおかしくないのだが、艤装を付けているため艦娘は人間とは違い、死なない。その代償として、大淀本人にはふぐ毒が身体から出て行くまで十数時間以上耐えなければならない。その上、戦艦ル級改flagshipは大淀をボコボコにしたのだ

 

 やり方は簡易的でサンドバック代わり。毒が回った大淀を鎖で両手で縛り天井に吊るすと、徹底的に殴ったのだ。しかも、戦艦ル級改flagshipの力で暴力を振るい、最終的には鎖が力に耐え切れず切れて大淀は遠くまで飛ばされるくらい殴ったのだ。普通の人が食らえば、既に死んでいる

 

「戦艦がいるから楽しめそうだ。さて……どうやって倒そうか?」

 

浦田結衣はゾッとするような笑いをすると通信を入れた

 

「バトルシップからブラボーとチャーリー。艦娘がそちらに向かっている。ブラボーは、攻撃を仕掛けろ。効果がないと思ったら下がれ。後は私がやる」

 

『了解。しかし、浦田社長がまだこのビルにいます。何でも重要な要件でいるとか』

 

 浦田結衣は兄が何をしているのか、真っ先に分かった。あいつに問いただすためだろう。しかし、それは愚策だ。人を責めても好転にはならない

 

「チャーリーは迎いに行ってやれ。流れ弾で死んだらシャレにならない」

 

『分かりました』

 

 呆れるように命令した後に通信を切ると、意識が朦朧としている大淀を引きずって歩いた

 

 罠を仕掛けて、奇襲を仕掛け、混乱した隙に攻撃する。捕まえた後の楽しみは、終わってからでいい

 




おまけ
提督「まるゆに罪は無いが……しかし、武器もない状態でどうやって戦うんだ?」
将校「心配するな。武器が無くなった場合でも戦えるよう訓練されている。改善計画自体は非現実的過ぎて棄却されたが」
提督は首をかしげた。確かに『平行世界』の日本陸軍は、無茶な事をやっている。何か策でもあるのだろうか?
時雨「武器も弾薬も持たずにどうやって戦うの?」
将校「気孔部隊の編成を考えていた所だ」
提督・時雨「「気孔部隊?」」

将校の想像図

浦田重工業は強敵だ。兵器も戦術も隔絶している。そのためには、こちらも別の力を磨けば言い訳だ。2000年の歴史を持つ中国より伝わる一子相伝の暗殺拳を学べばよい

そして、決戦の時。武器を持たない数百人の502部隊の兵士が浦田重工業の部隊の突進する。嘲笑っていた彼等だったが、それは数秒で青ざめる事に成る。次々と浦田兵に被害が出ているからだ!
日本兵「泰山天狼拳」
浦田兵「冷たい!ベブッシ」
日本兵「泰山流双千条鞭」
浦田兵「ぐわあああ」バラバラ
浦田兵「撃って撃って撃ちまくれ!」
日本兵「華山鋼鎧呼法!ぬははは、弾丸なぞ効かぬわ」
浦田兵「銃弾が弾かれた!?」
日本兵「北斗有情鴻翔波!」
日本兵「南斗翔鷲屠脚」
日本兵「北斗剛掌波」
浦田兵「コイツら、本当に人間なのか!?」
強力な蹴りが戦車を吹き飛ばし、見えない熱波みたいなモノがジェット戦闘機を巻き込みながら墜としていく

浦田司令部
警備隊長「撤退だ!あの訳の分からない連中から逃げるんだ!早く運転しろ!」
運転手「ノボハッ!」
運転手の頭が破裂
警備隊長「嘘だろ!」
将校「お前が警備隊長だな」
警備隊長「クソ、死にやがれ!」
引き抜いた銃から飛び出した銃弾が日本兵に当たらず、空を切り警備隊長の背後に立った日本兵が頭に指を突き刺した
警備隊長「貴様、502部隊の……まさか、噂に聞いた中国より伝わる恐るべき暗殺拳か!?帝国陸軍が導入するとは……」
将校「そうだ、肉体の経絡秘孔に衝撃を与え内部の破壊を極意とした一撃必殺の拳法だ。そしてその経絡秘孔の一つを突いた。お前はもう死んでいる」
警備隊長「ひでぶっ!?」
警備隊長戦死

回想終了

将校「――という予定だった。こういうのをやって見たかった」
あきつ丸「凄いであります!これなら、自分の火力が上がり、もう『烈風拳』とネタにされずに済むのであります!」
まるゆ「まるゆも習いたい!」
提督「艦娘に教えたら、楽して海域攻略出来るな。装備開発せずにラスボスまで余裕で戦える。遠征で襲われても返り討ちに出来るから撃沈の可能性はほぼゼロだ」
吹雪「流石にそれは止めた方が……」
叢雲「あんた達、何と戦いたい訳?」
時雨「どうでもいいけど。提督……やったらダメだからね」



建造ユニットで建造すると、編成して大淀を救助するよう命じます。まるゆが出た理由?理由なんて無い
とは言え、あきつ丸(と「まるゆ」)は補助艦艇の類であるため、吹雪達と一緒に行動します
火力が低いので、暗殺拳を教えればいいかも知れません。レベルが低い艦娘に暗殺拳(北斗の拳)を教えれば、攻略は楽かも知れません(但し、合法とは言っていない)
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