時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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北海道の地震、凄まじかったですね
今回は長めです


第86話 ディープスロートの助言

 吹雪達は建造ユニット運搬を任している最中、時雨は提督と摩耶、そして不知火と共に行動をしていた。リーダーに案内役をさせながら

 

 どうやら、この人は平行世界の人間、つまり21世紀の日本から来たらしい。但し、肩書きは学歴以外は録でもなかったが

 

「俺は一流の国立大学出身だぞ。それをよくも――」

 

「そうか、そうか。大学では、銃もって人を殺したり、罪のない女の子を虐待する快楽殺人者に手を貸したりするのは犯罪だと習わなかったのか?」

 

 捕虜である遠藤は抗議していたが、提督の方が上手だった。学歴と経歴で自慢しているらしいが、提督は簡単にあしらったのである

 

「平行世界の日本は太平洋戦争に負けたが、見事立ち直り、平和になったと聞いていたが……何かがっかりだな」

 

「理想しか追い求めていないように見える」

 

「平行世界の人間って、こんな人間ばっかりなのか?」

 

散々言われて遠藤は腸が煮えくり返っているが、相手は武器も持っていて強い

 

 とてもではないが、中々反論出来ない。それはそうで、考え方や観点が違うからである。まして、『平行世界の日本』とは違い、この世界は平和ボケなどしていない。戦後の平和主義なんて知る訳が無く、時雨達にとって戦後の考えが中々理解出来ないものだった

 

 戦争で酷い目にあったから平和主義に走ったのはいい。しかし、そのためには自衛手段である軍事行為も禁じるという事については時雨と提督を始め、誰も理解出来なかった。よって、遠藤の悪口雑言には、何言ってるのかさっぱりだった

 

「軍国主義とか殺人集団とかネトウヨとか訳の分からない事言っているが……よく陸自の人間は、こんな奴を雇ったな」

 

「つまらないわね」

 

「爆弾造ってテロ起こすってどういう考えを持てば、そこにたどり着けるのか、知りたいぜ」

 

 摩耶も呆れ果てながら、監視していた。実際は、彼の両親が日本赤軍か何かだったらしく、思想も受け継いでいた。しかし、時代が変化しているので誰も見向きもしなかった。国際指名手配犯と言う事もあり、戸籍偽装で日本に住んでいるという

 

 だが、爆弾や銃器を扱えるので警備隊長は雇い入れたという。後に、時雨が知る未来にて艦娘に対してゲリラ活動を行ったという。簡易的な地対艦ミサイルで艦娘にダメージを与えたのは彼のお蔭と言っていい

 

 そのため、時雨だけでなく、提督も摩耶も不知火も目を光らせていたため遠藤は逃げる事すら出来なかった。時雨も可哀想とは思っていない。国を守るためには、どんな人でも守らなければならない。しかし、こちらに武器を向けたのであれば別だ。遠藤は怒りで一杯らしいが、どうする事も出来ない。武器は取り上げられ、反抗すると摩耶に殴られたため、プライドがズタズタに引き裂かれた

 

「こ、この扉の向こうだ」

 

「本当にここなのか?」

 

 提督は訝し気に聞いた。何の変哲もない扉だったからだ。もっと厳重な場所と思っていたのだが。ワームホールをくぐり抜けてこの世界に来ているため、知っているはずだ。移動された可能性もあるが、これは賭けだ。もし、ワームホールが持ち運び込まれたら諦めるしかない

 

「摩耶、こいつの顔を殴ってもいいぞ」

 

「いいのかよ!何か知らないけど、またムカついてきたから、殴りたくなったぜ!」

 

「待て、ちゃんと教えた!本当だ!カモフラージュだ!」

 

遠藤は必死になった。摩耶の鉄拳制裁には、懲りたらしい

 

「では、開けろ」

 

「ここは電子鍵でロックされている!開けるには、カードが無いと!」

 

「どうします、司令。爆破させますか?」

 

「やりたいが、爆破させるとこちらの存在がばれてしまう」

 

 たちまちいざこざが始まったが、時雨は加わらず扉を観察した。見た目は普通の鉄製の扉だ。しかし、遠藤の話だと厚さ100センチメートル、重さは30トンという銀行にある大型の金庫扉ほどあるらしい

 

 時雨は手を掛けて引こうとした。鍵がかかっているかどうか調べるためだ。が、予想に反して扉はゆっくりであるが、開いたのだ。非常用電源が入っているのか、扉の向こう側は明るかった。その代わり、長い廊下が続いていたが

 

「……」

 

「この先はどうなっている?」

 

ポカンとする遠藤に提督は、質問をした。手間暇が省けたので助かった

 

「小さな部屋があるだけだ。出入り口は貨物用の通路があるだけ」

 

「そうか。案内ご苦労」

 

 遠藤は何が起こったのか理解出来なかった。摩耶が後ろから殴って気絶させたからだ。これ以上の案内は不要だ

 

「提督、声が聞こえる」

 

「油断するな」

 

 時雨の忠告に提督は自動小銃を構えると前へ進んだ。摩耶も時雨も慌てて後を追った。気絶した遠藤を掃除道具に入れるロッカーに隠したためだ

 

「提督、お前もちょっとは落ち着けよ」

 

「落ち着いているなら、とっくにやっている」

 

 提督は小声で気遣う摩耶に指摘した。時雨も同様だ。何せ、聞き覚えのある声が響いているのだから

 

「浦田社長だ」

 

 それを聞いた摩耶は顔を曇らせた。時雨から聞かされた未来の事。自分達を地獄へ突き落した張本人。それがいるという

 

「どうするの?殺す?」

 

「出来れば捕らえて502部隊に引き渡す」

 

 尤も提督にとっては、浦田社長がどうなろうとどうでも良かった。ただ、彼は人を殺すのに抵抗感があるのは否めない。これが現在の提督のメンタリティの限界であり仕方なかった。未来の提督なら出来たかも知れないが。妹である浦田結衣に引き金が引けたのは、彼女は化け物であるため、抵抗感が無かっただけである。第一、それで死んでいたら誰も苦労はしない

 

「でも、変だね。……怒鳴り声が聞こえる」

 

 時雨は不思議がった。話す内容は分からないが、怒鳴っている声が微かに聞こえる。廊下にはあちこち物が散乱している。大きなコンテナが二、三個ある。その内の1つには、日本語以外の文字が書かれていた

 

「ロシア語と英語……海外から手に入れたらしいな」

 

「しかも、これ。西暦が2000年代のものばかりだ。間違いない」

 

 どうやら、当たりらしい。ワームホールを通じてここに運び出している。長く続いている廊下を慎重に進む一同。その間も怒鳴り声が時々聞こえるが、それも大きくなっている。近づいている証拠だ

 

「提督、扉」

 

非常口と書かれた扉から声が聞こえる。一同は、頷き微かに開けた

 

 扉の隙間から見えた光景に息を呑んだ。広い部屋だ。学校の体育館くらいはある。そこも機材やらコンテナやらが散乱しているが、量は遥かに多い。遠藤の言ってる通り、貨物運搬用の扉もある

 

 そして、その空間のど真ん中に光る霧を見つけた。機械が周りにあるため何かの実験らしいが、時雨も提督も直感で分かった

 

「ワームホールだ。あの機械は、維持装置だろう」

 

「電磁パルス食らったのに復旧させるなんて」

 

 時雨は舌を巻いたが、考えてみれば向こうはこちらの世界よりも高度な文明の発展を遂げた日本である。向こうの世界の人が修理したのだろう

 

 そして、その霧の前に人の集団がいた。制圧部隊だろう。完全武装した人達がおり、リーダーがある人物に対して忠告している

 

ある人物とは……

 

「社長、艦隊の出港は準備完了です。既に、東京湾に待機しております」

 

「もう少し待ってくれ……貴様、私を裏切ったな!どういうつもりだ!?」

 

 間違いない。浦田社長だ。しかも、電話で誰かを罵っている。時雨達は、滑り込むように部屋に入ると、荷物の影に隠れた。大丈夫だ。警備兵も浦田社長も気づいていない

 

「よくも新兵器で私の邪魔をしてくれたな!……惚けるな!お前のせいでこっちは大損害だ!」

 

 浦田社長は電話で怒鳴っている。何があったのだろう?電話で怒鳴る相手が知りたい。しかし、ここはチャンスだ。例え、外しても駆逐艦の主砲は威力がある。ここで仕留めればいい

 

「EMP兵器とやらを私の敵対する組織に送ったな!……知らんだと?いい加減にしろ!嘘が下手くそだ!それで騙せると思ったか!」

 

 時雨は艤装を構えようとした時、止められた。誰だろう。止められた手を見ると、何と提督だった

 

「提督?」

 

「待て。まさか、この会話……」

 

提督は信じられない顔で物陰から覗いていた。何か気がついたのだろうか?

 

しかし、相手は待ってくれない。浦田社長の電話は終わった

 

「良いだろう。そこまで惚けるならこちらにも手を討つ!タダで済むと思うなよ!」

 

 投げるように受話器を置くと、メモ帳を取り出した。あるページを破り捨てて近くにあったゴミ箱に捨てると、速足で貨物用通路に行く

 

「ワームホールを運び込め!直ちにだ!」

 

 護衛の武装集団も慌てていくが、こちらには気付いていない。2人ほど残っていたが、一団が視界から消えると摩耶と不知火は素早く無力化した。2人は油断した事もあって、何が起こったか理解が出来ないまま気絶した。提督は発砲を禁じた事もある。時雨は浦田社長を追いかけようとしたが、それは提督に止められた。何で邪魔をするんだ?

 

「提督、どういうつもりだよ!チャンスだったじゃないか!」

 

 時雨は小声で、非難がましく言った。最大のチャンスを失った。提督は何がしたかったんだ!

 

しかし、提督は首を振った。どうしたのだろうか?

 

「奴を殺すチャンスはまだある。奴が電話で何を話していたか、覚えているか?」

 

 提督の質問に時雨は呆れていたが、先ほどの浦田社長の電話のやりとりを思い出した。……そう言えば、電話でEMP兵器と言った

 

「まさかっ!」

 

「そうだ。あの電話はワームホールを通じて向こう側に通じているんだろう。電話線が光の靄に続いている。かけた相手はもしかすると……」

 

「そいつがあたしたちを助けたディープスロート?」

 

 摩耶にも一連の事を簡潔明瞭に伝えているため、話についていける。実は提督はこういった事は得意のようだ。未来の提督も、過去の提督に事情を説明する内容は、分かりやすいものだった

 

 提督は光る靄に近づき電話を調べていた。この電話機も見た事が無いものだったが、未来テクノロジーを感じさせるものだ。提督はゴミ箱から浦田社長が丸めて捨てた紙を拾うと広げた

 

「間違いない。電話番号と……メールアドレス?よく分からんな。連絡先だろう」

 

「大丈夫なの?」

 

「今の所は俺達の味方だ。周囲を警戒してくれ。特にゲートをくぐり抜けて来る人も現れるかも知れない」

 

 提督は受話器を取り上げると、ボタンを押した。受話器は僅かながら離しているので、周囲を警戒していた時雨と摩耶、不知火には聞こえている

 

 

 

 しばらく電話の呼び出し音がなったが、切れたと同時にその直後に不愉快な怒鳴り声が受話器から喚き始めた

 

『いい加減にしろ!知らんと言ったら知らん!お前の敵対する組織なぞ――』

 

「ディープスロートか?」

 

提督は怒鳴り返さず冷静に、そしてはっきりと言った。電話の相手は急に黙った

 

「俺は……そうだな。提督と呼んでくれ。浦田社長と敵対している組織の1人だ。ノートパソコンと呼ばれる機械に隠されたデータを見た。EMP兵器のお陰でこちらに有利に戦っている。とても感謝している。あれが無ければ俺達は、死んでいただろう」

 

『ちょ……ちょっと待て!まさか……いや、いいだろう』

 

「本当にディープスロート?」

 

「まさか、浦田社長を欺いた人と話せるなんて」

 

 時雨も不知火も驚き、摩耶は困惑していた。別世界で、しかも浦田社長に非協力的だった人と話せるとは思わなかった。電話の向こうは慌てているだろう。動く音が聞こえる

 

「提督、僕に変わって!話したい事があるから!」

 

「待て、こちらも色々とあるんだ」

 

 受話器は一つしかないため、話す人は限られている。……と思った矢先にディープスロートは呆れるように言って来た

 

『……他にもいるのか。その電話機にハンズフリー機能はついているか?受話器を取らなくてもスピーカーとマイクで話せる』

 

「よく分からないけど、凄い機能だな」

 

摩耶は呆れるように言った。電話機が、ここまで進歩するなんて考えられなかった

 

 

 

 この世界の事情やワームホールの事を簡潔明瞭に説明する提督と時雨。ただ、艦娘や深海棲艦は触れなかった。パソコンには深海棲艦は無かったためだ。向こうの人間には理解出来んだろう

 

『……事情は分かった。やはり、こちらの世界の兵器と科学力を君達の世界に持ち込んで暴れているんだな』

 

「知っていたの!」

 

『バカを言え。ワームホールや平行世界の概念なんて、まだSF小説か映画の産物だ。だが、俺は薄々感じていたんだ。しかし、こんな無頓着な事を警察に言っても精神異常者とみなされるから俺は、何もできん。パソコンデータの改ざんが精一杯だった』

 

 時雨は叫んだが、相手は否定した。未来の平行世界でも、ワームホールというものは空想科学の分類らしい

 

『だが、これでつじつまが合う。実は、こちらの世界で突拍子もない出来事が立て続けに起こっていた。中古で廃棄が決定された自衛隊の兵器が忽然と消えたり、国際指名手配の武器商人達の死体が日本のある港で発見されたりと騒がれている。中古のコンピュータや工業機械が何者かによって大量に仕入れたり、海外で日本人が武器を買ったりして大騒ぎだ』

 

「無人戦闘機もか?」

 

「無人戦闘機?まさか……いや、MQ-9ガーディアンが1機、日本上空で行方不明になった。そちらに現れたのか?」

 

 提督も時雨も顔を見合わせた。間違いない。浦田社長は向こうの世界から、武器を大量に仕入れていた。しかも、非合法で

 

「お前は何者だ?パソコンのデータを見る限り、自衛官と呼ばれる軍人だろ?そうなのか?」

 

『……そうだ。俺は防衛省の航空幕僚監部の防衛部に働いている。航空自衛官で一等空尉……君達に分かりやすく言うと日本空軍軍人の大尉だ』

 

「日本に空軍が創設されるなんて」

 

 不知火は驚くように呟いた。なぜなら、自分達が住んでいる日本は、まだ空軍を持っていない

 

 実は第二次世界大戦では、イギリスやドイツ、そしてソ連などは組織として独立した空軍を保有していた。それに対して、アメリカと日本は陸軍航空部隊と海軍航空部隊をそれぞれ主力航空戦力として擁していた。日本とアメリカが空軍を創設しなかった理由は、諸説があるものの、要は別に空軍を創設しなくても陸海軍の各航空隊で充分だったからである。空軍が創設しなかったのは、航空兵力を軽視していなかったという訳ではない。日本もアメリカも独立した組織である空軍を創設したのは戦後である

 

「それでは大尉。浦田社長が行っている侵略行為に手を貸していたのか?」

 

『失礼だな。俺は血を流す事はしない。少なくとも、有事……失礼、戦争でも起こらない限りは。浦田は、第二次世界大戦の軍団と現代の軍隊が戦ったらどうなのか、をシミュレーションしてくれと頼まれた。初めは軍事学を教える事がきっかけだったが』

 

「つまり、こういう事になるのを知らなかったと?」

 

『そうだ。身勝手な母が、宗教団体に入ったお蔭で退会させるのに苦労した。途方に暮れた俺の前に浦田がこちらに接触して来た。特別に退会させてやる。その代わり、色々と教えて欲しい、と』

 

 ディープスロートは不機嫌そうに言って来た。まさか、浦田社長に手を貸すと思われていたのだから、たまったものではない

 

「だが、お前のお仲間である陸上自衛官だった人間が、AH-64Dアパッチと呼ばれる戦闘ヘリで俺達を殺そうとしたんだ。何か知っているのか?」

 

『……あの金の亡者め。やはり、あいつは陸自の戦闘ヘリを盗んだんだな。数が少ないと言うのに。……すまない。止めなかった俺が悪いと言うべきか』

 

「どういう事だ?」

 

どうやら、ディープスロートは、警備隊長を知っているらしい

 

『あいつは自衛官候補生という任期制隊員……つまり、派遣社員に近い待遇で働いていた。この制度の給料は民間企業の派遣社員よりも良いが、それでも少なくてな。昇任する人間は、極一部に限られている。限界を感じたんだよ。運よく三等陸曹になったのはいいが、全く報われなかったため自衛隊を辞めた。ヘリパイロットは大変だからな』

 

提督は呆れた。どうやら、自衛隊に入ったものの、自分に合わなくて辞めたらしい

 

「軍の人間が、こんな事をするなんて」

 

『仕方ないさ。国を守るという立派な行いも大事だが、自分の人生や将来も無視は出来ん。そこまでは面倒も見きれない。強要は出来んよ。それにあの件で自衛官の給料が下がって事もあって辞めてしまった』

 

「あの件とは?」

 

『政権交代した時期が最近起こったんだ。ただ、その政党はよく分からん政治家ばかりでな。近隣諸国とべったりなんだ。前政権の政党には、親米ポチと罵っている癖にな。自衛隊の給料を再び減らしたんだ』

 

 ディープスロートは仕方ないという風に言ったが、それでも時雨は納得できなかった。平行世界の日本は何があったのか分からない。政局不安定というのは分かるが

 

 しかし、自衛隊は予算不足と人数不足であるため、悩みを抱えているのだから無理もない。実は自衛隊というのは、特別職国家公務員に当たる。太平洋戦争の反省と言う名目でシビリアン・コントロールを取り入れているが、意味を履き違えられている。軍事のプロでないただの役人達が組織を牛耳っている

 

 憲法9条を見ても分かるように、健軍の大義というものが全く否定されているため、隊員のモラルを盛り上げるのにも限界がある

 

 大体、世界中何処を見ても、健軍の大義、つまり存在の意味がはっきりしない軍隊はない

 

 余談であるが、任期制という自衛官候補生も職業訓練と資格を取るために入るようなものである。任期が近づくまで昇任しなければ、肩叩きが待っている

 

 

 

 何処の軍隊も同じだが、給料は良いものの、中々見合ったものではない。自衛隊の場合は、人を増やそうにも予算が厳しいため、上手く行かないのが世の常だ。また、政治家も相当厄介のようである。一部の政治家は、自分達は高額なお金をもらっている癖に、国を守る自衛隊に対しては冷たい目で見ると言う。これでは、誰からも呆れられる。どうも一部の政治家は、日本という国なんてどうでもいいらしい。そのような事が、どうも『平行世界の日本』で起こったらしい

 

 

 

『情けない話だが、世の中バカが蔓延っていてな』

 

「すっごく分かる。こちらも似たようなものだ。だけど、その大バカのせいで、こっちの日本はヤバイ事になっている。それどころか、世界を攻撃している!第二次世界大戦を止めると言う名の下で!既に世界各国は攻撃を受けた!手を貸してくれ!」

 

『おいおい。俺は陸自の普通科や基地警備のような銃持って戦う人間ではないぞ!それに俺は、防衛省にある戦史研究室にいる。海上自衛官の幹部が自殺したのとイージス艦の情報漏洩の事件でこちらに疑惑がかかって左遷させられたから何も出来ない』

 

 どうやら、ディープスロートは左遷させられているらしい。……ん?海上自衛隊の幹部が自殺?イージス艦の情報漏洩?

 

「提督!」

 

「間違いない――そのイージス艦とやらがこちらの世界で建造された。それだけでない。無人戦闘機やら戦車やらジェット戦闘機やらが出て来て、地上部隊では苦戦を強いられている!そちらの日本の空を守っていたF-4EJが、この世界で浦田社長が悪用している!仲間も皆も爆撃された!だから、何でもいい!手を貸してくれ!!」

 

「……」

 

「お前は浦田社長を疑ったからデータを隠した。敵対する相手がいると信じて。正直言って、あれが無いと俺達は勝てなかった!いや、それだけでない。時雨も摩耶も不知火も……全員の命が掛かっているんだ!今も戦っている!浦田重工業が生み出した怪物戦艦と!データを読んだ!自衛隊は、日本を守る軍事組織だろ!お前が国を守るという使命があるなら、俺達の世界を救う手伝いをしてくれ!こちらも国と国民を守らないといけない!戦術でも戦い方でも何でもいい!」

 

 提督の説得に相手は無言だった。確かに戦史研究室にいる航空自衛隊の幹部だろう。しかし、自衛隊は国を守る仕事だ。軍隊とはそういうものだ。国が無くなればどうなるかなんて分かっているはずだ!

 

しばらく沈黙が続いたが、やがて相手は口を開いた

 

『提督、勘違いしないで欲しい。俺は国を守るために自衛隊に入隊した。金のためだとか景気不況で仕方なく入ったとか、どこぞの三等陸曹のような理由で自衛隊に入った訳ではない。俺の祖父は、海軍航空隊の零戦パイロットだった。ガダルカナル島の戦いで戦死した。祖父はどう思って軍人になったのか、興味があったからだ』

 

 ディープスロートの入隊動機に時雨は勿論、摩耶も不知火も目を見張った。祖父は海軍航空隊?ガダルカナル島って……

 

『俺は防衛大学校に入学し、希望通りに航空自衛隊になれた。パイロットには成れなかったが、幹部候補生学校を卒業し職種が決まった時に、事件は起こった。同期である友人が自殺した。海に憧れて海上自衛隊になったというのに。身分を偽って機密文書を盗み、その後で自殺なんて誰も浮かばれない。……何がやりたいのか分からない政党が政権を握り、明らかに異常な宗教団体が姿を現した。マスコミも周りも学校の先生でさえ、特定の政党や宗教団体を持ち上げる始末だ。今では、もはや国民どころか国が可笑しな道に進もうとしている』

 

 ディープスロートの話だと、日本は平和になった。ただ、冷戦時代の米ソ対立からおかしな考えを持つ人が現れていたのだと言う

 

「軍国主義を嫌うのは良いが、だからと言って他所の国とべったりなのはどうかと思う。とは言え、そんなおかしな考えをこちらに持ち込まないで頂きたい!浦田社長は俺達の世界の住民だが、怪物に変えたのはあんた達だ!責任はあるぞ!」

 

『……そうだな。安全の所から傍観するのは目覚めが悪い。三等陸曹の件もある。それに向こうでは浦田重工業だっけ?それを倒さないといけないのは分かった』

 

「そちらの世界では浦田はどんな立場だ?」

 

『ある宗教団体の幹部だ。商工のトップで宗教団体の資金の援助をしている。浦田の経歴は偽造なのは分かっていたが、本当の経歴が何なのか誰も分からなかった。だが、これではっきりした。浦田は、お前達の世界の住人だな』

 

「そうだ」

 

ディープスロートは確信したかのようにとんでもない事を告げた

 

『そのゲートの向こう側は、恐らく過激な宗教団体の拠点だ。その宗教団体が厄介だ。信者も多く、政治家や大企業にも顔が効く。噂では極道も手を結んでいるらしい。浦田をそこを住処に使っているだろう』

 

 しかし、時雨達はここに着いたが、誰一人ゲートをくぐって現れた者はいない。向こうでは何があったのだろう。電磁パルスによって機械の修理をしているのか?それとも、別の理由があるのか?しかし、最大のチャンスである事には変わらない

 

「宗教団体ってどんなものだ?」

 

『俺も詳しくは知らん。興味なくてな。ただ、最近になって過激になって来ている。武器を海外から買い付けたり、化学兵器を造っていたりしている。お役所は目を瞑る始末だ』

 

摩耶は驚愕した。どういう考えを持ったら、こんな事が出来るのだろうか?

 

「何処と戦う気だよ?」

 

『俺達、自衛隊だろうな。しかし、こちらは憲法に記載されている『宗教の自由』という名目で自衛隊どころか警察も動かけない』

 

「情けねーよ!さっさと全員逮捕しろよ!」

 

『取りあえず聞け。爆弾は持っているか?』

 

爆弾?どうするつもりだ?

 

『警察も腰が抜けるような大量の爆弾をゲートに放り込め。時限式にセットするんだ。投げ込んだ直後にゲートを破壊しろ。爆発したら物騒になるかも知れんが、警察は確実に動ける』

 

「分かった。――探せ!」

 

一同は一斉に探した。金品や電子機器などがあったが、中々見つからない。しかし――

 

「提督、これ使えないかな?『爆発物』って書いてあったから」

 

時雨は床に散らばっていたコンテナから粘土のようなものを手にかざした。提督は時雨から受け取ると急いでコンテナの中身を見た。そして、駆け足で電話機に向かうと興奮しながら話した

 

「コンテナの中にC4だっけ?プラスチック爆弾というものが大量にある。これは使えるのか?」

 

『やっぱり海外から武器を買い占めていたな。プラスチック爆弾をかき集めて起爆準備に掛かれ。起爆のやり方はパソコンに入っているはずだ』

 

「よし――本部、聞こえるか?」

 

提督は無線で自分の父親と明石を呼び出した。明石と父親は状況を呑みこむと早速、時雨達に指示を出した。あのパソコンは明石が持っている。当の本人は、目をキラキラさせながら弄っていたが

 

「よし、不知火、摩耶。爆弾の起爆の準備をしてくれ」

 

「いいぜ!」

 

「分かりました!」

 

 不知火と摩耶は無線を聞きながら爆弾の起爆準備に入った。傍受される恐れがあったが、ここで何とかしないと後がない。周波数を変えているから、暫くの間は大丈夫だ

 

『……ところで、お前達の世界では女性も武器を持って戦っているのか?』

 

「不思議か?」

 

『いや、1940年代の世界と思っていたが』

 

「ここは、そういう世界だ。お前達の過去の世界ではない」

 

 提督の言葉に相手は困惑したらしい。それもそのはずで、第二次世界大戦の時に女性が武器を持って戦うのは考えられなかった。女性差別ではなく、当たり前だったからだ。実行した国はソ連だけだ。尤も、ソ連は平等を謳っていたため、「男女平等だから」という名目で女性も戦っていたらしい。尤も、提督は艦娘について説明は省略した。深海棲艦や艦娘なんて『平行世界の日本』には無いのだから

 

「準備するまで時間がかかる。次に怪物戦艦についてだ。お前は関わっていたのか?」

 

『そうだ。だから、あいつに出鱈目を教えた。ナチスドイツが計画していたH級戦艦というバカげた戦艦の存在を教えた。超大和型戦艦に匹敵するからあいつは愕然とするだろうな。空母の方が強いと言うのに強くて大きい戦艦を設計して欲しいなんて』

 

 相手は笑っていたが、提督も時雨もあんぐりと口を開けた。間違いない!戦艦ル級改flagshipがやたらと強い理由が分かった!悪意はないかも知れないが、ディープスロートのミスである!

 

「ちょ……超大和型戦艦に匹敵って……」

 

「嘘だろ」

 

 どうやら、戦艦ル級改flagshipの強さの理由の1つが、モデルがとんでもないものだ。これでは勝てる訳ない。道理で未来の戦いにおいて長門や近代兵器装備されたアイオワやられるはずである。しかも、今ではどういう訳か強くなっている

 

「大尉……残念ながら奴は戦艦を造った!しかも、滅茶苦茶強くて苦戦している!ここだけは、お前のミスだ!」

 

『え?何だって?冗談だろ?』

 

向こうは呆れるように返事したが、こちらはそれどころではない。霧島達が危ない!

 

 

 

 その頃、霧島達は大苦戦していた。戦艦ル級改flagshipに変身した浦田結衣に対して、どんなに砲弾を叩き込んでも平然としている。ただでさえ、古鷹は中毒になっているというのに

 

「ここまで固いなんて!」

 

 鳥海は歯を食いしばった。ただの戦艦ではない。防戦一方である。砲塔が大和型戦艦よりもデカいため、恐らく架空艦だろうと推測した。しかし、どうする事も出来ない。そして、何よりも相手は主砲を一発も撃っていない!つまり、主砲を撃たなくても勝てると言いたいのだ!相手の副砲と毒攻撃を躱しながら撤退する霧島達

 

(司令、霧島艦隊は……持ち堪えられません!)

 

霧島は死を覚悟していた。自分は本格的である戦艦に勝てないと。だが、弱音を吐く訳には行かない!

 

「戦える者は!」

 

「古鷹と大淀以外は戦える!だけど、何か策を立てないと全員、やられてしまう!」

 

 天龍の怒鳴り声に霧島は冷静になった。こちらの攻撃が通用しない。まともにやりあってはダメだ

 

ならば……

 

「皆さん、いい作戦があります。死にたくない艦娘は、直ぐに逃げて下さい」

 

霧島は最後まで戦う気だ。勿論、残りの者も霧島についていく

 

「全員、やるわよ!」

 

 毒攻撃してくる浦田結衣に対して再び動き出した。その動きを見ていた戦艦ル級改flagshipは呆れるように見ていた

 

「勇敢ト馬鹿ハ違ウノヨ」

 

浦田結衣は口角を吊り上げた。すばしっこい艦娘を捕まえなければ

 

 

 霧島が戦っている間、時雨は考えた。霧島さん達が浦田結衣である戦艦ル級改flagshipを倒せるとは思えない。数は多いが、攻撃防御は浦田結衣が上だ

 

「本当なんだ!僕はあいつにやられた!奴を倒さないといけない!悪いけど、倒す方法を教えてよ!」

 

『倒すって……そちらに空母はいるのか?航空攻撃を仕掛ければ沈むはずだ』

 

「出来なかったんだ!イージス艦やジェット機に阻まれて倒せない。今は電磁パルスのお陰で未来兵器を無効化出来たけど……それでも強いんだ!」

 

 時雨は訴えた。簡単に言う相手に腹が立つ。実際は電磁パルス範囲の外に居たため、免れたのである。提督をバカにしていた人が囮として引き連れて時間を稼いでくれたが、それがアダとなってしまった

 

『しかし空母の方が、戦艦よりも強いのは証明されているはずだ。こちらの太平洋戦争において、大和武蔵やプリンスオブウェールズの戦歴を見れば分かる。決して理論で語っている訳ではない』

 

「それは分かるよ!でも、倒すためには――」

 

『可笑しいな。日本海軍は艦隊決戦のために艦隊を編成させたと聞いている。相手は一隻なんだろ?航空機が無くても、艦隊戦を仕掛ければ勝てるはずだ』

 

 相手は軽く言っているが、残念ながらこちらの事情は分からない。軍事常識も違うのだろう。これでは、どうする事も出来ない。しかし、提督は時雨に向かって首を振ると電話機に話し始めた

 

「俺の部下がすまない事をした。とにかく、航空攻撃に対して戦艦は弱いのだな」

 

『ああ。それは間違いない。しかし、妙だな。偽物とは言え、イージス艦を造るくらいなら、戦艦は不要だと気付くはず。タフで速度も速いゆえに、とても固く容易に偽装が出来る戦車とは違う。地上戦闘と海上戦闘は別物だ。そちらの世界では戦艦を一体、どういう使い方をしているんだ?』

 

 これを聞いて提督も時雨も確信した。浦田結衣は、バトルマニアであるが、戦い方は正々堂々とやりあってはいない。恐らく陸海両用のために戦艦を選んだのだろう。海上ではバックアップがいるかもしれない。しかし、地上ではどうか?遮りがあまりない海上とは違い、陸では偽装が容易で隠れる事も可能だ。戦場の鉄則として航空機では全ての陸上戦力を駆逐することはできないのだから

 

「大尉……実は……」

 

提督は艦娘と深海棲艦について説明した。これでは埒があかない

 

 

 

『……つまり、俺達の世界の軍艦の魂がそちらの世界に流れ着いて擬人化したというのか?女の子になるというのか?』

 

「信じろとは言わない。だが――」

 

『いや、いい。科学では説明できない現象が起こっている。信じよう。しかし、仮にそうだとしても航空攻撃が圧倒的に有利である事は変わりない』

 

 ディープスロートは指摘した。この人、呑みこみが早い。いや、身の回りに奇妙な事が起こっているから驚かないのだろうが。下手をしたら、初日に提督と出会った反応をしていたかも知れない

 

「自己紹介はまだだったけど、僕は白露型駆逐艦、時雨。だけど、あいつの防空能力には、龍譲の航空隊は手も足も出なかった」

 

時雨はここに来る途中、龍譲の艦載機が難なく打ち落とされていくのを見た

 

『使った兵器は?対空ミサイルか?』

 

「違う。『マジックヒューズ』というので落とされた。何なのか、分かる?」

 

 本当は龍譲の艦載機の搭乗妖精が聞いた言葉だ。詳しい説明をしても理解出来ないだろう

 

『マジックヒューズ?あのVT信管の事か?』

 

「知っているの!?」

 

『近接信管、または電波信管とも言う』

 

 ディープスロートは簡単に説明したが、時雨にとっては驚愕なものだ。VT信管は太平洋戦争にてアメリカが開発したもの

 

 高射砲の弾から電波を出して目標との距離を測り、近くなったところで炸裂するという。時限式とは違い事前セットの必要がなくなり、飛躍的に『命中率』が向上する代物だ

 

 レーダー、近接信管、そして航空管制という当時の米艦隊の防空体制に時雨は舌を巻いた。何しろ未来兵器ではなく、自分達が『艦だった頃の世界』のアメリカと戦っていた相手の力である

 

 これには作業を行っていた摩耶も不知火も同じだった。『艦だった頃の世界』の時の米軍はとんでもない事を考える。自分達は何と戦っているんだ!

 

「……道理で瑞鶴さんが七面鳥を嫌うはずた」

 

『気合いは必要だが、気合だけでは戦争には勝てない。特に科学が発達している時代は。戦国時代とは違う。気合だけで勝てるなら太平洋戦争では、とっくに日本はアメリカに勝っていたよ』

 

 時雨は何も言えなくなった。敵を知るのは戦いにおいては重要だが、残念ながら、あの時の日本はそれどころではなかった。国力が違いすぎていたのである

 

「対処法は?」

 

『電波妨害やチャフを使えば凌げる。しかし、命中率がいいと言うなら、その近接信管は真空管ではなく、マイクロチップを使ってるな。火器管制レーダーを破壊しない限り、苦戦は免れない』

 

「どういう意味だ?」

 

提督は首を傾げた。近接信管を持っているのなら、倒しようがない

 

『高射砲というのは航空機に当てるものではない。航空機は速いからな。敵機の近所で爆発させ、敵機を爆発に巻き込む兵器だ。命中しなくてもパイロットに心理的負担を与えるのにも使える。VT信管はあくまで防空兵器の一部に過ぎない』

 

「そうなのか?」

 

 提督は唖然とした。高射砲のイメージが違っていたからだ。数打てば当たるものだと思っていたが

 

「提督、そいつの言ってる事は間違っていない」

 

 作業しながら聞いていた摩耶もこれには同意した。摩耶は防空巡洋艦である。真価は発揮できなくても、戦い方は知っているのだ

 

『どちらかと言えば、対空射撃やレーダー管制、そして連動している対空機関砲が脅威だろう』

 

「CIWSとか?」

 

『いや、恐らく隠し玉で温存しているだろう。弾丸を沢山食うからな。恐らく、ボフォース40mm機関砲の改修版を使用しているだろう。L/70機関砲かも知れん。神風特攻隊に対して活躍した兵器だ』

 

提督は何も言えなくなった。敵は弱点を見せない

 

『しかし、そいつは対空ミサイルを持っていない。ある意味、賢い選択だな。戦艦にミサイル積んでも邪魔なだけだ』

 

「でも、アイオワは積んでいた」

 

 時雨は思い出した。未来では、アイオワは第三砲塔を外して対空ミサイルを沢山積んでいた。その事を説明するとディープスロートは唸った

 

『アイオワ級戦艦か……確かに昔は改修案があったが、計画だけで実行していない。しかし、それはお前達の中にミサイルなんて持っていないから無理矢理やったのだろう。苦肉の策ではないか?』

 

 時雨はアイオワの事を思った。アイオワは無茶をしたのだ。着任した当時は、敵から奪った兵器とばかり陰口を叩いていたが。そんな事は無い。タイムマシン建造のために時間稼ぎしてくれたのだ

 

「でも、勝てるとは思えない」

 

 時雨は心細く言った。難攻不落の戦艦だ。弱点もしっかりと対策されている。恐らく、独自で改修して使っているのだろう

 

『時雨、これだけは言う。兵器は人間と同様に完全なものは存在しない。向き不向きは必ずある。戦艦の弱点は航空攻撃と潜水艦だ』

 

「でも……」

 

『戦艦は制空権があってこそ真価を発揮する。制空権を確保出来たら一式陸攻なり重爆なり殺到させてお陀仏させるんだ』

 

 時雨はどう反応したらいいのか分からない。この人は軍人なのだが、兵器を知り尽くしている。分析官らしい

 

『駆逐艦でも状況によっては戦艦に打ち勝てる。落ち込む事はない。最強は存在するが、無敵は存在しない』

 

「分かった。少しは気が晴れたよ」

 

話が終わるときに摩耶と不知火から爆弾のセットが終わったと告げた

 

「大尉、今すぐ逃げるんだ。浦田社長の追っ手が来るかも知れない」

 

『俺は逃げんよ。入信した母は既に他界した。何でも難病を神の力で治せると信じたらしい。止めなかった責任はこちらもある』

 

 ディープスロートの告白に誰も言わなかった

 

「お気の毒です」

 

『ああ、母の入信のお陰で、家族に負担が懸かった。そのお蔭で妻は一方的に離婚。娘にも会っていない。イージス艦の情報漏洩の件で濡れ衣を着せられた。騙されたとは言え、浦田に軍事学を教えたのは私だ。責任はある。お前達に迷惑をかけた』

 

 不知火も絶句した。この人は、不幸な道を歩んだのだ。隙をつけこまれたとはいえ、余りにも可愛そうだ

 

『しかし驚いたのは、隠したパソコンのデータを見てEMP兵器を造るとは。ダメ元で入れたが、まさか製造する力があるとは。造った人は何者だ?』

 

「工作艦、明石と父のお蔭だ。何時までも手を招いている俺達ではない。俺や艦娘はただの飾りではない。深海棲艦と戦うためにいる。与えられた仕事をしているだけだ」

 

 時雨は提督を見た。この時代に来た時は、ガキだった。今では違う。未来の提督そのものだ

 

『お前達の世界では、お前達の強さがあるって事か。……そうだな。俺も酒で逃げるのは終わりだ。EMP兵器の設計図は、装備開発庁からコピーしたものだ。米軍が開発したHPM兵器を参考に計画されていた。予算関係で凍結されて金庫に仕舞われていたが』

 

「ちゃんと伝えておけ。立派に機能したぞ。見直したらどうだ?爆弾を投げ込んだら、ここのワームホールを破壊する。もう、話す事はないだろう。ありがとう、一等空尉」

 

『健闘を祈る。提督に艦娘達』

 

 電話は途切れた。やることは決まった。コンテナに大量に詰め込んでいたプラスチック爆弾のセットは完了した。幸い、起爆装置は機械式であったため電磁パルスの影響はない

 

その他にもう一つのコンテナにそこら辺に散乱したものを詰め込んだ。銃器類、火薬類、刀剣に機械部品。どれもこの世界のものではない。ディープスロートによると、銃器類は違法だ。爆発跡で銃器の跡が見つかると、流石に支援して来た愚かな政治家達は手のひらを返したかのように庇う事はしないだろう

 

「摩耶。済まないが、あの遠藤をここに連れて来てくれ」

 

 

 

「ほら、連れて来たぜ。どうするよ」

 

 未だに気絶している遠藤を摩耶は呆れるように抱えて来た。どうするつもりだろうと時雨は首を傾げたが、提督はテープと自動小銃、そしてプラスチック爆弾を抱えている

 

「そこに置いてくれ。――乱暴に扱うなよ。よし、こうしてと」

 

 提督は何を考えているのだろうか?しかし、提督の作業に三人共、吹きだしそうになった

 

「提督……もう危険人物じゃない?」

 

「安心しろ。弾は抜いてある――よし、放り込め!」

 

 提督と時雨達は爆弾が沢山入ったコンテナと武器と機械類が沢山入ったコンテナを光の靄に投げ込んだ。ほとんど蹴飛ばしたのだが

 

次に気絶した遠藤を無理やり起こした

 

「イッテー!何……ちょっと待て、何を……うわあぁぁ!」

 

 摩耶に投げられた遠藤は、情けない悲鳴を上げながら光の靄に消えていった。あっちでは面白い事に成っているだろう

 

「よし、機械を破壊しろ!撃って、撃って、撃ちまくれ!」

 

「「「てっ-!」」」

 

 三人はワームホールの周りに合った機械に向けて砲撃を開始した。駆逐艦2に重巡1の砲撃だ。機械は轟音を上げながら爆発炎上した。光の靄であるワームホールもエネルギー供給を断たれたのか、光が増している

 

「くそ!魚雷でも何でもいい!あの中に投げ込め!」

 

 時雨達は魚雷を抜くと放り込む。提督も手榴弾を投げ込んだ。爆発が再び起こり、光の靄は一層輝きを増した。部屋が真昼の太陽みたいに明るくなる。一同は目を覆った。しかし、数分だっただろうか、光は突然消え部屋は何事も無かったかのように消えた。光の靄であるワームホールは消えた

 

 

 

ワームホールの向こう側の世界

 

 ここは宗教団体の施設であり、浦田社長が青年時代に流れ着いた場所である。今では改装を終え、立派な商工の会社になっている

 

 信者達は定期的に光の靄に出入りして浦田社長に物資を投げ入れ入れていた。制限はあるが、人の行き来自由であり、電磁パルスのせいでワームホールのエネルギー供給が断たれたとしても、こちらで修理できる。浦田社長の命令によって、光の靄の出入りを禁じて機械の修理をするよう命じた

 

 よって人の行き来自由を中断したが、それが命取りになった。突然、コンテナ2つに1人の男が光の靄から現れたのだ

 

「クッソー!あの女、よくも俺を殴りやがって!」

 

 遠藤は悪口雑言吐いたが、周りの人はそれどころではない。突然現れたコンテナを調べた人は、驚愕して叫んだ

 

「爆弾だ!しかも、起動している!」

 

「30秒後に爆発する!逃げるんだ!」

 

 この警告に周りは阿鼻叫喚となった。ワームホールの修理のために人を呼んだ事もあって、一目散で逃げた

 

 遠藤はコンテナを見た。C-4を時限式にセットさせてやがる!あいつら、なぜC-4の使い方を知っている!?旧軍にプラスチック爆弾なんて無いのに!

 

 しかし、ここで怒っても意味がない。浦田社長が大切にしていたワームホールが爆発とともに突然、消滅したため遠藤は逃げざるを得なかった。パニックと怒りで我を失っていたため、両手と腹にあるものが巻きつけられている事に気がつかなかった

 

 遠藤が外に出た直後、巨大な爆発音と爆風が体全体を襲った。爆発の衝撃で施設の窓ガラスが割れ、買い物や通勤で賑わっていた通りは、一瞬で修羅場となった

 

「あの野郎~!」

 

 遠藤は悪態をついていた。足がよろめき、近くに会った電柱にもたれ掛かろうとした時、自分の腕を見て驚愕した

 

「なっ!」

 

 何と自分の右腕に拳銃が握られていた。いや、手に拳銃を握らせたまま腕ごとテープが巻かれている!左腕にはM-16を持っており、こちらもテープが巻かれている。離そうにも何重にも巻かれてたテープのお蔭で離せない!それどころか、体中にC-4が巻かれている!幸い弾は抜いているのか、引き金を引いても弾は出なかったが、この姿を見て不審人物ではない、と言っても誰も信じないだろう

 

「銃持ってる!この人、銃持ってる!!」

 

「爆弾を体に巻き付けているぞ!」

 

「誰か警察を呼べ!テロリストだ!」

 

 施設が爆発した事により、野次馬が集まった人々は遠藤を見て悲鳴を上げた。中にはスマートフォンで撮影している人もいる!

 

「クソったれ!!」

 

 遠藤は逃げたが、ここは大都市である。監視カメラはあるし、目撃者が大勢いる。数分後、駆けつけた特殊急襲部隊(S A T)に包囲されたのは言うまでもない

 

 

 

『ニュース速報です!東京都の××××で爆発事件が発生しました。この爆発により死傷者は――』

 

 テレビやネットを見ていた人々は驚愕した。そこは最近有名になった宗教団体だった。その施設の1つに、謎の爆発が起こったのだ。更に付近で銃を持っていた不審な人物を逮捕したというニュースまで飛び込んで来た

 

 警察と消防が駆けつけ死傷者を病院に搬送すると同時に爆発原因を調べた。爆発の残骸に大量の軍用銃や兵器を見つけるのは容易かった

 

 その翌日、警察は以前から目を付けていた宗教団体に対して家宅捜索を踏み切った。支援して来た市民団体やマスコミ、挙句には特定の政党まで反発したが、警察が付きだした証拠品に誰も反論出来なかった。何しろ、軍用銃や重火器などの兵器が大量に発見されたのだから

 

 夕方になっても現場が騒然としている中に、空自の制服を着込んだ人が近寄って来た。爆発によって滅茶苦茶になったビルを見て航空自衛官は、目を閉じた

 

(あれは夢ではなかったんだな)

 

彼は心の中で呟いた。平行世界というのは空想の産物ではなかったのだと

 

 

 

 ワームホールが消えた事を確認した提督と摩耶、そして不知火は喜ばなかった。なぜなら、時雨が気絶をしたのだ。理由は不明。声を掛けても返事はしない

 

「時雨、起きろ!どうしたんだ?」

 

提督は体を揺さぶったが、反応は無い。時雨はある夢を見ていた

 

 

 いや、時空を通って来たからこその現象とも言うべきか。神の悪戯なのか、ワームホールは爆発の余波で時雨にあるものを夢の形で見せた

 

過去の起こった、ある事実を

 




おまけ
刑事「つまり、別世界で戦争ごっこやっていたら、気の強い女に殴られ気絶させられたと?」
遠藤「はい」
刑事「気がついたら両手に銃を握らされたままテープが巻かれ、爆弾を持たされたと?」
遠藤「そうなんです!信じて下さい!」
刑事「そんな嘘を信じろと言うのか!警察舐めるなよ!何処でテロを起こす予定でいた!?」
遠藤「本当なんです!旧軍にスマートフォンも奪われたんです!」
刑事「旧軍って何だ!?」

マジックミラー越しで見ていた刑事(まあ、仮にそうだとしても間抜けだわな。女に殴られるって。最近の女性は、女子力が高いからな)


女子力(物理)

時雨達は、ディープスロートとの対話した後にワームホールを破壊しましたが……


 自衛官候補生の採用年齢が引き上げられても入る人はいるかどうか。自衛官候補生の制度は、職業訓練と称して入る者もいます。任期制であるため、期限が近づくと民間企業の就職活動を支援します
警備隊長がなぜ自衛隊を辞めたか、の理由がこれです。自衛官は24時間365日働いていますから。度重なる過度な仕事に嫌気が指し自衛隊を辞めて、民間会社に働いている所を浦田社長が目を付けられ……というものです。運よく三等陸曹になったのはいいが、仕事がきつかったらしいです
 そう言ってしまうとディープスロートである空自の幹部が通っていた防衛大学校なんて地獄ですから。タダで大学が行けると嬉々して入学し、数日で辞めていった人間は沢山います。国を守るのは大変である事は当然なのですから

 ブラック鎮守府もので愛で救われるなら……自衛隊のみならず全世界の軍隊は、苦笑いするでしょう。軍隊にホワイトなんて存在しない。と言うより、ホワイト軍隊というのを見て見たいものです

アメリカ海軍特殊部隊『ネイビーシールズ』の活動を描いた映画である『ネイビーシールズ』を見れば、ブラック企業のように無意味な作戦に戦力を使い捨てる事は事実上不可能と分かるはずですから(作戦ミスなんてしたら軍法会議もの)
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