時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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現代兵器(深海棲艦) VS WWⅡ時の兵器(艦娘)


第9話 火力発電所防衛戦 前編

倉庫から出た一同は、直ぐに迎撃体制をとるために準備をした。サラトガ、酒匂、大淀、プリンツ・オイゲンも戦いに加わる事になった。何しろ相手は最新鋭兵器を持っている。質が高い相手には数でカバーするしかない

 

「資源消費はもう気にするな。あるものは全て使え。ここが決戦だ」

 

艦娘達は頷き、準備を進める。姉妹を失って落ち込む者も戦いの準備をしている

 

「天龍、無理にして戦う必要はない」

 

「何言ってるんだ?龍田の仇を取るチャンスじゃねーか」

 

天龍はやる気満々だ。天龍だけではない。姉妹を失い悲しみに明け暮れた艦娘。比叡、北上、足柄、筑摩、暁は完全ではないものの以前の彼女に戻りつつあった。敵に一矢報いたいという事もあるだろう

 

「本当はもっと戦力が欲しい。大型建造で建造出来たのは矢矧と伊401…。伊401はもうこの世にいない。お前だけだ」

 

「心配しないで下さい。阿賀野姉と能代姉の死は無駄にはしません。テキパキと片付けましょう」

 

実は提督は大型建造に着手した事はある。しかし資源が不足していたため満足に建造は出来なかった。最新鋭軽巡である矢矧が出て来たのだが、彼女が出て来たころには敵はミサイル保有していたのだ。敵を防ぐ手段とミサイルを防ぐ手段がほとんどない以上、無駄と判断し大型建造は中止された

 

「阿賀野と能代の事はすまなかった。時間稼ぎに戦わせたとは言え、もう金剛も長門もいない。赤城も飛鷹も妙高も利根も大井も雪風も朝潮も……。撃沈した数が増えるばかりだ。俺の事を聞いて駆けつけ共に戦った海外の艦娘も沈んでしまった」

 

『艦娘計画』は海外に輸出されたが、既に手遅れだった。それでも何カ国は艦娘を建造する事に成功したらしいが、もはや深海棲艦を止める力は無かった。欧州が陥落する直前、海外の艦娘は日本のある軍人が実は『艦娘計画』と関わりがあるという情報を聞きつけ駆けつけた。欧州を取り戻すためなら、異国だろうと気にしない。しかし、安全な海域が少なくなる現状において、日本に向かうのは容易ではなかった。日本に到着する前に沈んだ艦娘が多すぎた。また日本についたとしても、やはりミサイル攻撃の前には無力だった

 

「イタリアとイギリスの艦娘はほとんど全滅した。ウォースパイトは運よくたどり着いたものの、救助作戦で撃沈された。フランスとロシアは建造に成功したらしいが、現状は不明だ。ドイツもプリンツオイゲンしか生き残っていない」

 

手を握りしめ悔やむ提督。プリンツオイゲンは目を閉じ思い出していた。ビスマルクと一緒に出撃した光景を。そして戦艦ビスマルクや空母グラーフ・ツェッペリンを撃沈に追いやった深海棲艦に対する怒りを

 

「サラさん、アイオワは何処へ?」

 

不意に霧島がサラトガに尋ねた。彼女の記憶が正しければ、アイオワも明石達のチームの一員だったはずだ。アメリカの艦娘であるアイオワとサラトガは、何故か日本で建造された。その中で深海棲艦と立ち向かえる唯一の艦娘がアイオワだった。ミサイルやジェット戦闘機など最新鋭兵器を防ぐ手段は知っていたらしく、欺瞞紙やCIWSなどミサイル対策やホーミング魚雷対策の兵装は彼女の手土産だった。彼女曰く、そのような世界に行っていたとか

 

「本当はシースパロー(艦対空ミサイル)やECM(電子対抗手段)があれば対抗出来るわ」

 

提督どころか明石ですら彼女のアドバイスはチンプンカンプンだったが、彼女の話だと、この手の兵器を防ぐ手段はあるとの事だ。ミサイル防御のシステムは完璧ではないものの、艦娘の生存率は高まった。アイオワ自身も改修を積み重ね、最終的にはミサイル戦艦となった。資源はバカ食いするが、最新鋭兵器を持つ深海棲艦を幾度も撃退し、多くの艦娘を救ってくれた。特に改装時に持ってきてくれた射程距離が長いトマホークというミサイル兵器には驚かされた。勿論、ミサイルの補給は難があったため、乱用は出来なかった。しかしレーダーも兵装もオーバーテクノロジーであり、提督も艦娘達もアイオワの戦いぶりに驚愕した。しかし、タイムマシン製造のための防衛と特殊任務に就いたので暫く離れていた

 

「……Iowaは」

 

「アイオワは佐渡島だ。3ヶ月前に鳥取県である鉱石を手に入れるために輸送部隊の護衛を就かせたのだが、帰り道に急襲された。サラトガとプリンツ、酒匂を守るためにアイオワは奮闘し、敵を撃退した。しかし舵の損傷が大きく、4日ほど漂流していたらしい。復旧次第、合流するつもりだ」

 

サラトガの代わりに提督は答えた。しかし、サラトガは表情は暗かった。事実とは違うからだ

 

「そうですか…」

 

霧島は釈然としなかったが、これ以上、追及はしなかった

 

「提督、これ」

 

酒匂はあるものを提督に渡した。起爆装置らしいが、霧島には何に使うのか検討もつかなかった

 

「出来れば使いたくないが」

 

「世界の終わりに好き嫌いとか言ってられませんから」

 

 明るく笑う酒匂だが、プリンツもサラトガもあまり浮かない顔をしている。実は明石達にもう1つあるものも開発しているのだが、あまり良い代物ではなかった。本当の事は皆に伝えていない。タイムマシンを破壊するための自爆装置だと伝えたが、これは本当に最終手段だ。どうしようもない時、非常手段にてタイムマシンを敵の手に渡らせない最終手段であるためだ

 

「提督、ご命令を。最後の戦いです」

 

加賀は既に出撃準備完了だ。皆の視線がこちらに向けていた

 

「各員、防衛線を張れ!いいか、命を張ってでも火力発電所を守れ!間宮、速吸、大鯨は俺と来い!あれを使うぞ!」

 

 決戦である以上、艦娘は全て総動員である。潜水母艦や補給艦や給糧艦も例外ではない。ただ駆逐艦と同様に出すのは、無理があるため別行動をするよう指示した。他の艦娘は火力発電所を守るために沖合にて展開。陸軍将校が率いる兵士達は、陸からの侵略に備えて火力発電所の守りを固めていた

 

 

 

「敵ノ拠点ハ此処ダナ。見ツケルノニ苦労シタガ、ココデクタバッテ貰オウ」

 

空母ヲ級からの報告に戦艦ル級改flagshipは口角を吊り上げた。作戦は順調だ。『主』の指揮と最新鋭軍事技術を駆使して厄介だった艦娘を難なく撃破出来るようになった。一人だけでこっちの艦隊を壊滅させた化け物の艦娘が何人かいたが、その内の大半は海の底に沈めた。暫くして『主』からの情報では、敵は『新型兵器』を開発しているらしい。開発メンバーは艦娘しか構成されておらず、新型兵器の実態は愚か開発場所も不明だった。潜入スパイを送り込もうとしても、人が送り込めるのはゲリラから艦娘を守っている陸軍の兵士だけ。こうなると迂闊に手が出せない。ここまで情報が徹底していると言う事は相当な兵器だろう。だからと言って攻撃し相手を全滅させたら、その『新型兵器』とやらの場所が分からなくなる。最悪の場合、こちらに大打撃を与えるかも知れない。しかし、今は新型兵器を開発している場所を見つけた。提督を捕まえ情報を吐かせるつもりだ。偵察機の情報だと火力発電所から多数の熱源が探知された。分析によると、奴らは火力発電所を起動させたらしい。いよいよ作戦開始だ

 

 戦艦ル級改flagshipの命令を受けて空母ヲ級改は発艦準備に入った。アウトレンジだけで決めるためである。本来の空母ヲ級は頭の上にある艤装の口から艦載機を発艦させているが、今ある空母ヲ級改は違う。口の中にはカタパルトが装備され、その中にはジェット戦闘機が複数いた。機体の種類は3種類あるが、いずれも黒く塗りあげられている。カタパルトに射出された機体は、アフターバーナーを吹きながら飛び立った。艦載機であるジェット機は編隊を組むと火力発電所に向けて飛び立つ。3種類のジェット機の内、2種類のジェット機には、AGM-84ハープーン(空対艦ミサイル)を沢山装備しており、もう一種類にはAIM-7スパローとAIM-9サイドワインダーの空対空ミサイルを装備していた

 

 

 

 

 

「アドミラルさん!レーダーに反応が!」

 

『来たぞ!迎え撃て!』

 

プリンツに装備されているFuMO25 レーダーに敵を感知した。プリンツが持つFuMO25は21号対空電探よりも性能が良かった。そのレーダーから捕らえた敵機のスピードは恐ろしいものだった。正規空母(加賀、瑞鶴、サラトガ)や軽空母(千歳、龍譲)は弓と巻物などから艦載機を次々と発艦させる。あのジェット機には通用しないと分かっているが、何もしないよりかはマシだ。そう判断した。勇敢に発艦した100機以上の艦載機の大半は、いきなり爆発四散した。ジェット機から発射されたロケットによって撃ち落されたのだ

 

「今度こそ、撃ち落してやるぜ!」

 

「弾幕が薄い……ような気がします。弾幕です!」

 

摩耶と秋月は弾幕を張るが、敵機は中々墜ちない。生き残ったF6Fや烈風や紫電改二が必死にジェット機を追いつこうと目いっぱいエンジンを唸らせたが、中々追いつけない。ジェット機は雷鳴じみた音を轟かせたながら艦娘の上空を通り過ぎると反転して向かって来たのである

 

『何でもいい!CIWS以外、空に撃てるものは全て撃て!』

 

提督の滅茶苦茶な命令に艦娘達は呆れたが、今はそれが最善かも知れない。陸奥、比叡、霧島を始め重巡・軽巡・駆逐艦は一斉に撃ち始めた。主砲、高角砲、機銃、ありとあらゆる火器が火を吹き、上空は曳光弾の軌跡と三式弾の花火で一杯になった。このような濃密な弾幕を張ってもジェット機は墜ちない。それどころかジェット機はこちらに向けて飛翔兵器を撃ってきたのだ

 

「ミサイル防御!」

 

各艦娘はアオイワが残したミサイル防御手段を起動した。Mk.36 SRBOC という艦載用のデコイ展開システムと呼ばれるもので三式弾乙とは性能が桁違いだった。ただ量産は難しく温存していたのだが、今回は全ての艦娘に装備させた。チャフフレアに惑わされて誤爆したのが数発あるが、半分以上のミサイルが向かっている。CIWSも展開したが全て回避するのは無理だった

 

 

 

提督は3人と一緒にあるものを運び出す作業をしていたが、作業していると同時にリアルタイムに戦場の状況は把握していた。作業している途中で海のほうから爆発音が聞こえた。それもたくさん。提督は反射的に無線機を入れた

 

「どうした!大丈夫か!?」

 

『ザザー……陸奥よ。約30機のジェット機は…去っていったわ。あのジェット機……そんなにミサイルを積んで…いないみたい』

 

「本当に無事か?」

 

『日向と比叡が中破、足柄とプリンツは大破したわ。…数人は、やられて撃沈された。たった一発で』

 

「クソ!」

 

提督は悪態をつき、大鯨達は息を呑んだ。アイオワが残してくれたミサイル防御システムも全て防ぐ事は無理だった

 

『おい、しっかりしてくれ!こっちも敵が押し寄せてきた。深海棲艦はゲリラまで動かしたみたいだ』

 

不意に陸軍将校から無線が入って来たが、無線越しに銃撃と砲声、そして爆発音が聞こえる。敵が攻めてきたんだ!

 

「こいつを早く使えるようにするぞ」

 

効果があるかどうか不明だが、やるしかない!

 

 

 

沖合いは地獄と化していた。陸奥が無線で被害報告したのは嘘である。実際に被害は甚大だった。戦艦や重巡はミサイルの直撃に耐えられたが、大破中破で戦闘能力を奪われた。軽巡と駆逐艦は残念ながら無理だった

 

「しっかりして!もうどうしようもない!」

 

目の前で如月が撃沈され泣く睦月に川内は激励した。他の艦娘の同様で撃沈され怒りと悲しみが蔓延していた

 

「川内姉さん、編成を立ちなおして!敵が来るわ!」

 

ジェット機はミサイルを撃ち尽くしたのか、急上昇すると空の彼方に消えた。その後はどうなるか。過去の経験から嫌ほど分かる

 

「敵が見えて来たら攻撃よ!」

 

旗艦である陸奥は命令を下す。もう後戻りも出来ない。応急修理要員である妖精が必死に損傷した艦娘を応急修理していたが、完全に立ち直せるものではない。敵の侵攻を食い止める自身は正直ない

 

(もう勘弁して)

 

戦闘機から発射された対艦ミサイルも威力は半端なかった。まるで戦艦の一斉射撃全てを食らったような衝撃である。初めからこの調子だと、いつまで食い止められるか見当もつかない。もうアイオワから貰った対抗手段も少ない

 

「敵艦隊、接近して来ます!」

 

付近を偵察するよう命じた瑞鶴からの報告を受け各員は戦闘体制を取る

 

「敵の数は!?」

 

「撃ち落されたので正確な情報は分からないわ!」

 

瑞鶴の悲鳴じみた反応に陸奥は歯ぎしりをする。「我ニ追イツク敵機無シ」と謳われた彩雲もミサイルという魔の手から逃げられなかった。敵の対艦ミサイルは恐ろしい。撃たれる前に撃つ。これが戦いの鉄則だが、ハープーンミサイルと呼ばれる対艦ミサイルは戦艦の主砲よりも射程距離が長い。向こうが近づく前にこっちがやられてしまう

 

 

 

「敵ヲ重大ナ損害ヲ与エマシタ。第二次攻撃ハドウシマス?」

 

「待機シテロ。艦隊戦ヲ仕掛ケル。『新型兵器』ヲ手ニ入レル事ガ最優先ダ」

 

戦艦ル級改flagshipはニヤリと笑った。ジェット戦闘機による攻撃で艦娘達を大打撃を与えた。目標はあくまで『新型兵器』を入手することが最優先であるため、殲滅されると困るからである。艦娘を生け捕りにする必要があるため、作戦は海と陸から攻撃を仕掛ける。実は以前に何人かの艦娘を生け捕りにし『新型兵器』について聞き出そうとしたが、知らないと1点張りだった。拷問しても口を割らないため本当に知らないのだろう。無駄骨と分かると、新型ミサイルの実験と称して捕らえた艦娘を標的艦として逃げ惑う艦娘を撃沈した。提督に撃沈映像付きで脅迫したが、提督からは返事は一切なかった。大抵の人間は人質と脅しで屈するが、艦娘を率いる提督は一筋縄ではいかなかった

 

 陸はゲリラとは言え人間であるため、あまり期待はしていないが、提督は焦るだろう。追い詰め、捕らえ奪う事が目的だ。対艦ミサイルであるハープーンミサイルはまだ沢山あるが、これらに頼るつもりはない。対水上戦闘で挑んでやる

 

「イイダロウ。付キ合ッテヤル。ザコヲ排除シロ」

 

勿論、ハープーンミサイルを全く使わないとは言っていない。艦娘との距離をある程度近づくと軽巡駆逐に搭載されている全ての対艦ミサイルの発射を命じた。軽巡駆逐に装備されているランチャーからハープーンミサイルが飛び上がっていった

 

 

 

「敵がこちらに向かってきます!」

 

伊勢からの報告で艦娘一同の間に緊張が走る。敵が来た。最新鋭兵器を持つ相手にこちらの武器が通用するか見当もつかなかった

 

「よくも私の仲間を……。第二次攻撃隊!稼働機、全機発艦!」

 

「待ちなさい!五航戦!」

 

加賀の制止よりも早く瑞鶴は残った艦載機を全て上げた。軽空母である千歳も龍譲もミサイル数発受けて撃沈された。こちらには空母が3隻しかいない。何が何でも一矢報いたい。怒り任せに瑞鶴は持てる艦載機を全て上げたのだ。彗星一二甲や流星改の大群が敵艦隊に殺到するが、別の悲鳴じみた声に背筋が凍った

 

「ミサイル、接近します!」

 

艦娘は再びミサイル防御を取ったが、やはり全て躱す事は不可能だ。ミサイルの飛翔音と爆発と悲鳴が聞こえたが、奇跡的に瑞鶴にミサイル標的にされなかった。己の無事を確認した瑞鶴は静かに目を閉じ、艦載機との意識を繋げる。頭の中に自身の流星改から見た景色が映り出された。まだ遠いが、敵の艦隊がいる。ざっと20体近くいるだろうか。戦艦ル級から駆逐ニ級までいる。その中で極めて目立つ戦艦ル級がいた。戦艦ル級改flagshipと呼ばれる深海棲艦。深海棲艦の指揮官であるらしいが、こいつのお蔭で散々な目に会わされたのだ

 

(よくも翔鶴姉を…)

 

流星改と彗星一二甲の速度を上げ、敵に殺到する

 

(よくも仲間を……)

 

悲しみと怒りを身に任せて近づく。あの恐ろしいジェット戦闘機は深海棲艦の上空にはいない。敵は油断している!もう少しで魚雷の射程距離に入る!そう思った次の瞬間、軽巡ツ級5隻からいくつもの白い煙が上がる。すぐにあのロケットだと分かると回避行動を取る。しかし、残念ながらシースパローやスタンダードミサイルと呼ばれる艦対空ミサイル(SAM)から逃れる手段は持っていない。アイオワも今ある航空機では、躱す事は不可能と言われたのである

 

 特に軽巡ツ級は、何でも浦田重工業が製造したイージス艦を自身に取り込み、最強の防空艦として君臨していた。一時はアイオワの指揮の元、倒す事が出来たが、敵は対策を取ったため姑息な手は二度と通用しなかった。どんな攻撃も通用しない。経験で嫌ほど分かっていたが、艦娘である空母が敵を攻撃する手段はこれしかない

 

「チクショー!」

 

瑞鶴が放った全ての攻撃隊は、一分足らずで対空ミサイルと単装速射砲だけで撃ち落された。流星改が撃墜された事により、意識が途切れ悔しそうに叫ぶ瑞鶴。攻撃を進言するよう加賀に顔を向けたが、隣にいたはずの加賀はいない。代わりに壊れた弓が海の上に浮かんでいるだけだった

 

「う、そ……?そんな。いやああああ~~!」

 

加賀は撃沈された。いつも沈着冷静な性格している癖に五航戦の自分達には厳しい態度を取る。腹は立つが、いいライバルであると認識していた。そんな彼女がもういない。敵は姉や仲間だけでなくライバルまで奪うのか?

 

「早くそこから離れて下さい!嘆く暇はありません!」

 

嘆く瑞鶴に霧島は駆け寄り、涙を流し子どものように泣き喚く瑞鶴を陸の方へ向けて曳航した。今の瑞鶴は敵の恰好な標的である。そのため陸に強制的に撤退させた

 

そうしている内に敵が近づてくる。敵は砲雷撃戦をするつもりだ。日向や衣笠など中破大破している艦娘がいるのに対して、敵は無傷である。早速、心が折れそうだ

 

「砲門開け!ここで食い止めるのよ!」

 

陸奥の号令と共に生き残った艦娘の砲から火を吹いた。敵も艦隊戦で挑む気である。北上や他の駆逐艦は酸素魚雷を発射させ、サラトガも温存していた艦載機であるTBFやF4Uを飛ばして航空攻撃を仕掛けた。尤も艦載機は瑞鶴同様、イージスシステムを持つ軽巡ツ級によって全て撃墜されてしまった

 

たちまち両軍の艦隊から落下する砲弾の水柱に包まれた。特に損傷を受けた日向や比叡に敵の砲火が集中し撃沈されそうになる

 

「援護します!川内姉さん、ついてきてください!」

 

「ちょっと待って!」

 

普段は大人しい性格である神通だが、今ではまるで別人だ。いや、神通はもう以前の神通ではないかも知れない。那珂が撃沈された日から。それ以降、神通の戦果は恐るべきものだった。勝つためならどんな手段を問わなかった。補給し油断している敵艦隊をたった一人で奇襲し、空母を中核とする空母機動艦隊を海の底に沈めた。血まみれで帰投する姿に提督も川内も息を呑みこんだほどだ。

 

神通から発する殺気と威圧で深海棲艦は声にならない悲鳴を上げ、神通に向けて砲撃し続けた。しかし、神通は雨のように降って来る砲弾を軽々躱し確実にこちらの砲撃を当てている。他の艦娘も神通に続き突撃していく。だが、向こうは最新鋭の兵器を持っている。無誘導である酸素魚雷は軽々躱され、百発百中のレーダー射撃によってこちらを押している

 

 だからと言って艦娘も負けてはいない。彼女達は元は『ある戦争』を経験した者達だ。敵が砲雷撃戦を持ち込んだ事で、こちらも反撃したのである。砲雷撃戦は艦娘のお家芸だ。陸奥、比叡、足柄、摩耶などの戦艦重巡はイージスシステムや対艦ミサイルを搭載した軽巡駆逐艦を真っ先に攻撃し、暁や神通は魚雷で重巡リ級や戦艦ル級を大打撃を与えていた。

 

 イージスシステムを持った軽巡ツ級は大混乱した。確かにイージス艦を元に建造された深海棲艦の軽巡は最強だろう。しかし対艦ミサイルを撃ち尽くせば、ただの貧弱な軽巡である。その対艦ミサイルも初っ端で使い果たした。艦娘の士気は落ち、降伏するだろうと高を括っていたが、それがアダとなった。最新鋭の装備をしたお蔭で装甲はほとんどなし、艦対空ミサイルやCIWSは対艦用には向かない。短魚雷やアスロックは対潜水艦用であるため効果は薄い。いや、スタンダードミサイルも対潜魚雷もCIWSも水上艦への攻撃は可能だが、炸薬量や威力の関係により命中しても効果はほとんどない。大型魚雷や主砲とは比べものにならない。127mmの単装速射砲は駆逐艦相手はともかく重巡や戦艦に歯が立たない。如何に命中率が優れていても打撃力が全然違う。そもそも、モデルとなったイージス艦は砲弾や魚雷が飛び交うような艦隊戦なぞ想定して造られていない。特に陸奥の主砲の砲弾が命中した軽巡ツ級は悲惨だった。拍子抜ける程、撃沈した。艦娘の奮闘によりイージスシステムを持つ軽巡ツ級5隻は全て撃沈されてしまった

 

 駆逐ナ級はミサイルの他に5インチ砲を装備していたが、ミサイルを撃ち尽くせば脅威度はない。イージスシステムも装備されていないため、暁や綾波などの駆逐艦から総攻撃を受け撃沈されてしまった。重巡リ級や雷巡チ級、戦艦ル級は最新鋭兵器を搭載していないものの、北上や阿武隈などの酸素魚雷による雷撃によって大破してしまった。如何に最新鋭のソナーやレーダーを装備し回避能力があるとしても、完全に回避する事は出来ない。雷撃や砲弾を食らった深海棲艦は1つ、また1つと撃沈された。意外な事に艦娘は善戦していたのだ

 

 

 

「ソンナハズハ……」

 

指揮していた戦艦ル級改flagshipは焦った。まさか押されているとは思わなかった。慢心したのか?確かに艦娘は正攻法では通用しないと分かると、姑息な真似で攻撃して来た。アイオワが最新鋭兵器の正体と対抗策を教えたに違いない。しかし、所詮はゲリラ戦法と悪あがきのようなものだったため、対抗手段を立てれば問題ない。しかし、ガチンコで砲雷撃戦をやったのは、これが初めてだ。今までは全て対艦・対空ミサイルだけで片付いたからである。最新鋭兵器はこんなにも脆いものなのか?艦娘は士気なぞ落ちていない。それどころか、熾烈に攻撃してくる。これは予想外だった

 

 戦艦ル級改flagshipの疑問も確かに当たっていた。実際にコンピュータという代物は、衝撃に弱くメンテや維持が大変である。戦いを有利に導いてくれる一方、赤ん坊のように大事に扱わないといけないというデメリットがある。特にイージスシステムというものは、ハイテクの塊だ。撃たれると、コンピュータ・システムが破壊されるか狂ってしまう。ジェット機もそうだ。確かに最強だが、手入れが異様にかかる。航空燃料も造るのに手間暇かかる専用の燃料(ジェット燃料)が必要があるため簡単に飛ばせる訳にもいかず、砲撃の衝撃で艦載機に搭載されているコンピュータがダメになる可能性もあるため、空母ヲ級改は沖合に待機させる羽目になった。砲雷撃戦に参加させるなんてもってのほかだ。砲撃を受けて空母ヲ級が無事でも、衝撃で戦闘機に搭載されているコンピュータがダメになって発艦出来ないという事もあり得るからだ

 

「ジェット機ヲ発艦サセロ!」

 

戦艦ル級改flagshipは執拗に追撃する日向や陸奥に砲弾をぶち込んで相手が怯んだ隙に、海域から素早く離れると、沖合に待機している空母ヲ級改に命じた。『新型兵器』が気にはなるが、このままだと負けてしまう

 

 

 

「あの空母を狙え!発艦準備してやがる!」

 

空母ヲ級改が発艦準備している事に気づいた摩耶は、艦娘全員に知らせた。今のところは、何とか善戦しているが、あの恐ろしいジェット機が吐き出されたら今度こそ全滅だ。しかし、空母ヲ級改がいる場所は遠く離れている。陸奥が持つ主砲41cm砲でも射程外だ。航空機も対空兵器で片っ端から撃墜されたので持っていない。主砲の射程距離まで近づかないと意味がない

 

神通と天龍が猛スピードで空母ヲ級改に向かうが、敵は既にカタパルトに艦載機を載せていた。艦載機からはジェットエンジンを唸らせ、発艦しようとしている

 

「間に合わない!」

 

誰かが発した。これで私達は終わりだ。空母ヲ級改はニヤリと不気味な笑いをした。もう……手遅れだったと思われた直後、無線から鋭い声が聞こえた

 

『神通、天龍!その空母ヲ級改から離れろ!』

 

二人は突然の命令に戸惑ったが、反転して引き返した。提督に何か策でもあるのか?それとも……

 

 




没シーン
軽巡ツ級(イージス)「主砲発射管制、マニュアルニ設定。対空戦闘、CIC指示ノ目標。トラックナンバー26――」
戦艦ル級改flagship「何ヲ訳ノ分カラナイ事ヲ言ッテイル!敵機ハ、モウ対空ミサイルの射程圏内ダロウ!」
軽巡ツ級(イージス)「エ?ソ、ソノ雰囲気ヲ――」
戦艦ル級改flagship「イラン!ドコゾノイージス艦ノ真似ハシナクテイイ!海戦ハ食ウカ食ワレルカダ!イージスシステム、全力発揮ダ!分カッタラ、サッサト撃チ落セ!」
軽巡ツ級(イージス)「ハ、ハイ!」
シースパロー、スタンダードミサイル発射→艦娘(瑞鶴、サラトガ)の艦載機全滅
戦艦ル級改flagship「対艦ミサイルモ全部撃テ!」
軽巡ツ級(イージス)「エエット?」
駆逐ナ級「兵器解説トカ、オ情ケデ砲戦デ挑ムシーンは…」
戦艦ル級改flagship「イラン!ト言ウカ、何ノ話ヲシテイルンダ!?無駄口叩カズニ、サッサト撃テ!」
ハープーン一斉発射→艦娘大被害 
戦艦ル級改flagship「ヨシ!突撃ダ!」
軽巡ツ級(イージス)、駆逐ナ級((マダ戦艦イルンデスケド……))


大被害を受けても意外と善戦している艦娘達
艦これのSSの中にはイージス艦であるオリジナル艦娘が出てきます。しかし、なぜか決まって兵器解説とジパングシーンと自己PRするための演習がほとんど……
イージス艦、敵との戦闘で全力発揮してくれません。この作品で登場するイージス艦は全力発揮です。残念ながら、深海棲艦ですが

発見次第、ミサイル発射して相手をボコボコにし、そして相手からの予想外の反撃を受け壮絶な最期を遂げる。これを華麗にやってくれるのが敵の役目です
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