時が経つのは早いですね
「時雨!おい、時雨!」
提督の呼び掛けと揺すりで時雨は眼が覚めた。気絶した間、移動したのだろう。ワームホールがあった部屋とは違う。机や椅子が沢山あることから会議室のようだ。あちこち身体が痛いのは、倒れたからだろう
「時雨、大丈夫ですか?」
「不知火、大丈夫だから」
「なら、何で涙を流しているのですか?」
不知火に指摘され、咄嗟に頬に手を当てた。不知火の言った通り、涙を流していた
「僕は、どれくらい気を失っていたの?」
「精々、5分という所だ。502の奴等は、下で博士と合流出来た。資源もあるから大丈夫だろう」
しかし、提督の言葉に時雨は内心焦った。先ほど見たものが、夢かどうかは分からない。だが、あの空間で見せたビジョンや未来の提督と対話した事は鮮明に覚えている。夢にしてはリアルだ
もし、あのビジョンが本当なら……恐らく、霧島は苦戦している。このままだと……
「な、何で心臓を刺したのに死なないんだ?」
結衣を刀で刺した天龍は、戸惑いを感じた。戦艦ル級改flagshipの変身を解いているので、浦田結衣は人間と変わらないはずだ。艦娘も艤装を外せば、人と変わらない。怪我もするし、流血もする。しかし、刺された結衣は死なない。それどころか、項垂れていた頭がゆっくりと上がった。その顔は、ぞっとするほどに歪んだ笑みを浮かべている
「甘いな。頭ヲ狙ウベキダッタナ」
周りに拘束され、天龍の刀に刺された浦田結衣は、艤装を強制的に展開した。急に力が回復したのか、拘束していた霧島と鳥海、そして川内は焦り始めた
「く、抑えきれない!」
霧島は至近距離から砲撃しようとしたが、それよりも早く全ての主砲がこちらに向いた
「死ネ、アノ時ノヨウニ!」
戦艦ル級改flagshipの主砲全てが火を吹いた。近距離であるため、躱しようがない。48cm砲の主砲弾を諸に食らった霧島は、大破し吹っ飛ばされた。片腕が自由になった結衣は、身体に刺さっていた天龍の刀を簡単にへし折った。鳥海と川内は危険と判断して拘束していた腕を離して距離を取ったが、川内は応戦しよう呆然として立ちすくむ天龍の前に躍り出る。しかし、14cm砲を向けるよりも早く、首を掴まれてしまった
「虫ケラガ!」
戦艦ル級改flagshipは窓に向けて川内を野球ボールのように投げた。ここは3階である。窓ガラスは割れ、川内は割れたガラスと共に落下したのだ。高くはないため死ぬ危険性は無いが、艦娘と言えども無事では済まない
「な、何で生きているんだ?」
天龍の声はかすれていた。信じられなかった。人間に変身した時が弱点だと思っていたが
「アア、確カニ補給ヲ断ッタノハイイ。ダガ、掃除スベキダッタナ!」
戦艦ル級改flagshipは床を指さした。散らばっていた資源が散乱している
「まさか、足から補給を!」
「貴様等ト違ッテ、瞬時ニ修理修復ハ出来ル。言ッタダロウ。ザコダトナ」
気を取り直した天龍と鳥海は応戦したが、相手を撃退出来ない。何しろ、20.3cm主砲と14cm主砲の砲弾を直撃させても、相手はケロリとしている
「コノ私ニ敵ウトデモ思ッタカ?」
戦艦ル級改flagshipは撃ち続ける鳥海と天龍に急接近した。戦艦にも拘わらず、素早い。鳥海は間一髪躱したが、天龍は捕まえられてしまった
「離せ!」
喉を捕まえられ、咳き込む天龍は抵抗した。だが、相手が片手に何かを持ち、その何かを胸に当てられた時に天龍は愕然とした
「あ……ああ……」
「オ前ノ刀ダ。痛カッタゾ」
「あああぁぁ!」
天龍は激痛で悲鳴を上げた。いや、刺された痛みで悲鳴を上げたからではない。初めて相手の力に恐怖した。仲間に理不尽な暴力をされたのを見て復讐や怒りで一杯だった天龍は、今では恐怖に支配されていた
「逃ゲルノカ。時雨モ同ジヨウニ床ヲ這ッテデモ逃ゲテイタゾ」
床に震えるながら這っている天龍に蹴りを入れる。何度も何度も。恐怖と苦痛で悶える天龍
「大破シテ殺スノハ簡単ダ。ダガ、ソレデハ私ノ気ガ収マラン!」
戦艦ル級改flagshipは何度も天龍に蹴りを入れる。天龍は体を丸め身を守ったが、暴力の前ではそんなのは無意味だった。艤装は不吉な音を立ててひしゃげ、身体を蹴られた跡は痣と血が出ている
「止めて……」
大破して倒れながらも天龍が受けている理不尽な暴力に、霧島は怒った。鳥海が何処へ行ったか分からない。逃げたのか、何か策があって撤退したのかは知らない。しかし、霧島は鳥海を責めたり、批判したりしない。目の前の強敵を前に十分戦っているのだから
「その足を退けろ、悪魔!」
霧島は吠えながら、奇跡的に無傷であった一門の主砲を発射しようとした。が、霧島は引き金を引く直前、相手を見失った。何処へ行ったのか?
「流石、戦艦同士ノ砲撃戦ヲ経験シタダケアルナ。根性ハ認メテヤル」
いつの間に近くに居たのか、すぐ横に戦艦ル級改flagshipが立っていた。主砲を向けようとしたが、戦艦ル級改flagshipは霧島の砲身を掴むとゴムのように曲げてしまった。これでは主砲が撃てない。霧島は立ち上がろうとしたが、それより先に喉を掴まれてしまった
「貴様等ハ過去ニ負ケルタ世界カラ来タ存在ダ」
霧島を高々と掲げる戦艦ル級改flagship
「貴様ノオ蔭デ対策や経験が得られた。感謝する」
霧島はようやく分かった。コイツ、戦いながら学習している!中途半端な戦力では、倒せない!しかし、それを伝える手段がない。艤装に内蔵されていた通信機器は破壊された
霧島は、その後の事は覚えていない。強力なキックを食らったため意識が飛んだのだ
「鳥海は隠れてイルナ。マア、ドウデモイイ。仲間ヲ見捨テルナンテ大シタ腰抜ケダヨ」
戦艦ル級改flagshipは、床に倒れ意識が朦朧としている天龍を踏みつけた
「弱イナ。マア、負ケタ事ガアルノダカラ、大シタ事デモ無カロウ」
貨物用エレベーターで地上に出た502部隊と吹雪達。あきつ丸の陸戦隊の妖精達が先導している。敵は居ない。だが、隣接する街からは、あちこちで煙が上がっている
「状況はどうなっているんですか!?」
「……苦戦している。奴等、イージス艦と呼ばれる最新鋭兵器から遠距離攻撃している」
吹雪の問いに将校は苦々しく答えた。元帥と連絡したのだろう。何とか追い詰めようとしているが、敵の抵抗が手強い。初めて外に出た艦娘達。本当に内戦が行われている
「とにかく、離れないと」
「おーい!こっちだ!」
軍曹が指示を出そうとしていた時、誰かがこちらに声を掛けるものがいた
あきつ丸と502部隊の隊員は慌てて戦闘態勢を取ったが、近寄る人影を確認すると全員、銃を降ろした
「明石と大佐、本当にきたんですか?」
「仕方ないじゃろう。息子の頼みで強力な艦娘を建造するよう言われてな」
実は時雨が気絶している中、提督は自分の父親に強力な艦娘を召喚できるよう頼んだ。大型建造可能な建造ユニットに改装する事。不完全であるため、完全にしないといけない
「えーと……貴方が創造主さん?」
「そうじゃ」
「マッドサイエンティストには見えないわね。司令官の話だとイカれた中年の男って言われたけど」
「……全くあいつめ」
叢雲の反応に博士は呆れた。誰が、吹聴したのかすぐに分かった
「浦田重工業は建造したかったらしい。お蔭で資源を丸々頂いた」
軍曹はぎっしりと詰まった資源を見せられた明石は驚愕した。こんな量を賄える浦田重工業が羨ましい
「だけど、どんな敵なのですか?司令官さんから聞かされましたが、電は想像がつかないのです」
電の言っている事は正しい。未来の世界を知っている者は、時雨しか知らない。未来の記録は、未来の提督自身が書いたため、昔の本人は兎も角、他の人だと中々伝わりにくい
「そうじゃ、ワシも奴を見たが――」
戦艦ル級改flagshipの存在は不明。元人間らしいが、博士自身も未だに信じられない事だった
しかし言いかけた時、何かが割れる音がしたかと思うと空から何かが降ってきた。ガラスの破片から逃げるために一同は避難した。何かが鈍い音を立てて落下したが、その何かを見て一同は驚愕した
「川内さん!」
川内はボロボロだった。左足は不自然な方向に曲がり、艤装も破壊されている。吹雪と五月雨は駆け寄り、気絶している川内を担いだ
「う……嘘でしょ……」
「……霧島さん達は……どうなったのですか?」
龍譲がやられ、提督が送り込んだ内の1人がやられた。そう言えば、何も言ってこない。無線にも応じない
「大佐、急ぎましょう。状況は不味いです」
「ああ……この歳になって過酷な労働は勘弁したい」
気を失っている川内の容態を見た明石は、早速作業に掛かった。中々、好転にならない。このままだと、倒せるかどうか不安になってくる
「明石、龍譲を見てくれ」
「でも、私の能力では小破までしか……」
「解毒方法くらい出来るじゃろう!早く毒を出してやらねば!」
忙しそうに作業を開始する明石と博士に、漣と電も手伝う。川内の惨状を見れば
だが、好転には中々転じてくれない
時雨達は、外に出るため急いでいた。一階まで急いで降りたのだ
「提督……戦艦ル級改flagshipを倒せると思う?」
「やらなきゃダメだろ?」
「あいつは強い。でも、勝てそうにない」
姫級を倒せるくらい強い。奇襲は無理だろう。後は、集中的に攻撃するしかない。だが、相手は1人ではないはずだ
「お前が寝てる間、親父に頼んで建造を頼んだ。空母2と戦艦3。ランダムだが、それくらいあれば倒せるだろう」
これだけの戦力なら、倒せるだろう。只の戦艦なら……
「提督、油断しないで。相手は……」
「わかっている。しかし、相手の能力は未知数だ。霧島達のの威力偵察の結果を待つしかない」
だが、提督は知らない。霧島達は、全滅している事に。追い詰めたものの、無線連絡する間もなく、一方的にやられた事に
浦田社長は、貨物船へ乗るために急いでいた。しかし、やはり動きたく無いのだろう。日本を捨てるための力と時間が圧倒的に足りない
「クソ、あの時雨とかいう艦娘のせいで全てが狂った。疫病神か、あいつは」
たかが1人の小娘によって、己の野望と計画を滅茶苦茶にした。空自の幹部が提供した設計図をもとにEMP兵器を作り上げて近代兵器を屑鉄にする始末だ
今まで築き上げたものが崩れ去っている。ワームホールの部屋に残した作業員からの連絡は来ていない。無線にも応えない。爆発音が聞こえたが、何か関係があるのだろうか?
「あの『狂人の息子』も気に食わん」
独り言のように呟いた。が、この呟きに答える者がいた
「浦田、世界を破壊するのは止めろ。世界はお前のものではない」
浦田社長は歩きを止めた。連れの部下も聞こえたのか、辺りを見渡す。薄暗い廊下には誰もいない
いや、誰かがいた。白い軍服を着こんでいる海軍士官が
「誰だ!?」
部下は武器を構えたが、相手は臆する事なく近づく。部下は銃を発砲したが、相手は倒れない。いや、当たっているが、すり抜けているようだ
もう1人の部下は、捕まえようと飛びかかるが、雲を掴むかのように捕らえられない
「な、幽霊なのか!」
護衛の警備員は困惑したが、浦田社長は動じない。普通の幽霊なら、トリックやらで喚き立てるだろう
しかし、浦田社長はその海軍士官の顔に見覚えがあった
「成る程、幽霊か。死んでも時空を超えて説教しに来たのか、『狂人の息子』!」
「そのあだ名で呼ばれたのは久し振りだ。浦田、お前は過ちを犯した」
「過ちだと?第二次世界大戦こそが全ての過ちだ!戦争は人を苦しめる!国は国民を道具のように扱う!神風特攻隊を見れば分かる事だ!」
神風特攻隊……これは一種の自爆攻撃である
なぜ、何故日本軍は対艦攻撃にレシプロ機による自爆攻撃を選んだのか?それは、米機動部隊に対して日本軍は有効な攻撃手段が無かったからである。熟練パイロットは次々と戦死し、兵器の性能の差は隔絶するばかりである
アメリカは次々と新型機が登場している中、日本軍は新型の艦上戦闘機を造れず、パイロットも技量未熟でとてもマトモに爆撃や雷撃はおろか、水平飛行すら困難な者ばかりという
そのため、考え着いた攻撃手段は自爆攻撃しかなかったのだ
とは言え、悪あがきにしかすぎず、初期の米軍は人命を顧みないという神風特攻隊にパニックに陥った事もあり、それなりの被害をもたらしたものの、対策が講じられ神風特攻でさえ有効ではなくなったという
「確かに神風特攻隊は悲惨だ。だからと言って艦娘を弾圧する理由にはならない。北上も伊58も人間魚雷である回天を嫌っている。経験したからだ。命を粗末に扱っても碌なものではないと」
「どこぞの差別主義と一緒にするな!奴等は軍国主義に生まれた兵器だ。思想も受け継いでいる!そんな奴等と仲良くする事態、間違いなのだ!」
「俺は長い事、艦娘と付き合ったが、そんな思想はない。少し偏見が強過ぎないか?」
浦田社長は未来の提督を睨んだ。時空を超え、対立していた
「対話による交渉や平和共存は可能だ。親父のように、柔軟な考えを持つべきだ」
「そんなのは無駄な努力だ。社会は食うか食われるかだ。深海棲艦の前に人々は争う始末だ。対話は何も成果を出さない。平行世界でも同じだ。お前に何が分かる?」
「俺が聞いた平行世界の話では、そうではなかった。アイオワは良い場所があると何度も言って来た」
アイオワは『艦だった頃の世界』の情勢を詳細に伝えた。未来の提督は聞いていたが、どれも驚くような内容だった
日本は豊かになり、人々は飢えに苦しまずに済んだ。娯楽やレジャーランドが沢山あり、家族は楽しんでいる。漫画やアニメなどは日本が優れていて面白いと言う
『でも、アメリカにもアメコミというのがあるわよ。アドミラルも楽しめると思う』
アイオワは慌てて言ったが、未来の提督は頷いていた。分かっていた。平行世界の日本は平和なのに……
「どうやら、見る所が違うようだ」
「そうだ。貴様はいい所しか見ていない。アイオワ……そうか。うっかりしていたよ。アイオワ級戦艦の存在を忘れていた。あの戦艦は第二次世界大戦で造られた戦艦だな。しかも米海軍だ」
浦田社長はようやく気がついた。未来の提督は、なぜ近代兵器を前にして屈しなかったのかを。タイムマシンだけではない
「いいか、お前がやろうとしてる事は集団虐殺だ。第二次世界大戦の参戦国を無差別に攻撃するのは――」
「そうだ。どうせ、血に飢えた国だ。死人が口を挟むな」
「お前も血に飢えている。分からないのか?社会はお前が思ってるような悪ではない」
未来の提督は説得しようとしたが、残念ながら浦田社長の部下の無線連絡を聞いている始末だ
「社長、爆発音が何なのか分かりました。どうやら、例の息子と艦娘がワームホールの部屋で破壊工作を行った模様です」
「そうか。だが、丁度いい。亡霊の前で奴等を殺す。言い合いはもう飽きた!来い!」
部下を引き連れて過去の提督と時雨の所へ向かう一同。浦田社長は、未来の提督が驚くような事をするだろうと思った。何かしら妨害したり、人間性を訴えたりするかと
だが、未来の提督は、そのような事は一切しない。寧ろ、淡々と話しているだけだ
「過去の俺や時雨を殺しても同じだ。時雨は……艦娘はお前の妹よりもずっと偉大だ。未来兵器が無くても大事な物を持っている。決着は彼等がやる。約束しよう」
予想外の返答に浦田社長は足を止めた。余りにも予想外過ぎた答えだ
「お前は幽霊の存在だが、幽霊に苦しみはあるのか?軍国主義やナチ公やアメ公、露助など艦娘と過去のお前を殺した後、その亡骸の上に新たな世界を建設してやる。世界大戦や冷戦という過ちを無くすにはそれしかない。お前は未来について考えた事があるのか?甘ったるい考えで?言っただろ、理想を語るだけでは何も解決出来ないと!」
「何もかも人や社会のせいにするよりも自分の正義をゴリ押しするやり方を考え直したらどうだ?それこそが人間の悪であって、戦争の根源的思想そのものだ。海外艦を受けれて接したが、彼女達はそんな考えも無かった」
未来の提督は知っていた。祖国を捨てて日本に亡命したウォースパイトやプリンツオイゲン。事情により日本で建造され祖国を知らないアイオワやサラトガ
彼女達は、そんな思想を持ってもいない。そして、守るために存在だ。特にウォースパイトもプリンツオイゲンも人と接した事はあるが、そこまで悪い印象はなく、逆に感謝されたという
「反艦娘団体もそうだが、お前も柔軟性がない。同じ場所で同じことを何度も言っている進歩のない人だ。全ての問題を解決する魔法使いなんて存在しない。苦難を乗り越え立派な人間になった者もいる。その可能性をお前は否定した。悪しか見ず、最悪のやり方で。例え、長い道のりでも無駄ではない」
未来の提督は一息つくと最後とばかり言った
「俺は人間の愚かさは知っている。確かに軍部も艦娘計画には興味を示してくれず、当初は最低限の事しか保障されなかった。深海棲艦を害獣駆除と考えている節があった。本当はそんな楽なものではないはずなのに。だが、人間にも素晴らしい所だってある。お前は過去の俺と時雨の所へ行くと死ぬ」
「いいだろう。どっちが正しいか。貴様は何も分かっていない。人生を無駄にしたな」
浦田社長は吐き捨てるように言うと、部下からの無線の指示に従って行く。警備員と浦田社長は時雨達の方へ向かったが、未来の提督は動かなかった
「人間は本当に何も学ばない生き物だ」
学生時代、自分は父親と喧嘩して家を出た。艦娘計画によって周りから叩かれ、自分にも批判対象となった。親父のせいと初めは思ったが、今は違う。正しかったのだ。せめて親父の夢を叶えるべく、艦娘計画を再稼働させ成功した。しかし、艦娘の建造に成功しても周りの反応は冷たいものだ。それどころか、深海棲艦はある者の野望によって世界を支配する軍隊と化する始末である
「アカシックレコードで変化した未来を見て来た。だが、ほとんどは浦田重工業のような悪党が出て人類同士の争いしかしない。深海棲艦は太平洋を拠点として海域を奪われてもほったらかしだ」
浦田は第二次世界大戦を止めるために深海棲艦を使って世界を攻撃した。一方、ある未来も見た。偶然、戦艦ル級改flagshipである浦田結衣の存在を知った未来の自分は過去の浦田結衣の暗殺を艦娘に命じた。浦田重工業は深海棲艦を掌握出来ないし、元となる対深海棲艦兵器も完成しない。開発したとしても、そこまで強力なものではない。世界を攻撃する手段は失うだろう、と。しかし、事態は好転しない。人類は深海棲艦よりも艦娘に対する暴虐を選んだ。政府も軍も腐敗したり間違った方向に進んだりした結果、艦娘と人間との間で紛争が起こってしまった。日本政府や軍が弱体化している所を浦田重工業が、日本の実権を握ってしまったという結果を生んだ。こうなってしまっては浦田社長を暗殺しても意味がない。いや、浦田社長の代わりはいくらでもいる。会社そのものを倒す必要があるが、過去の自分達にそんな力はない。業績悪化させる経済力も無く、私設軍隊を相手にする戦力もない。艦娘が居たとしてもテロによる破壊活動しか出来ない。そこまで万能ではないからだ
その『IF』とも言える世界を未来の提督は見た
ふと、ビジョンで戦艦棲姫が浦田結衣に教えた言葉を思い出した
『私達は、違う種族よ?肌の色や民族くらいで、いがみ合う人間が、私達である深海棲艦と仲良く成れる訳ないじゃない』
情けないが、深海棲艦である戦艦棲姫は妥当な考えだっただろう。彼女達は、人間がどんな存在か理解したうえで、人と接する事を拒んだ
「そうだな。深海棲艦が来ている今、我々も進歩しないとな」
未来の提督は、呟いた。どうやら、浦田重工業を倒しても課題はあるらしい
Q,どうすれば日本は太平洋戦争を回避出来たのでしょうか?あの当時、太平洋戦争を考えると政治や戦略が無茶苦茶だったのが原因でしょうか?
A,(戦争回避は)難しいでしょう。無茶苦茶かどうかは、当時の考え方があるため簡単に説明出来ません
世に「~はこうすれば勝てた」とか、「私ならこうする」的なものは沢山あります
ただ、こういうのは後出しジャンケンと穴だらけの考察不足であるため、あまり参考にはなりません
こう言った事象の考察を行う時に重要なのは、誤った判断を行った人物達は、決して知能が低い馬鹿ではないはずです
何故、日本がろくな大戦略も持たず、勝ち目の無い太平洋戦争に突入したのかは、 一般に流布している「軍部の暴走」の一言で片付けられる単純な物ではありません。多数の要因が複雑に絡み合っている物ですから
根本問題をたどれば明治期の近代日本軍創設当初まで遡って考えなければ見えて来ないと思います
とても「あそことあそこをちょっと直せばOK」なんて単純な物では有りません
本作品の浦田重工業は強引な方法を選びました。深海棲艦が駆逐されても、人類同士の戦争が起こると予想していたからです。国は1人の考えのために動きませんから
未来の提督のように粘り強く交渉する必要がありますが、やはり応えますね。結局、喜ぶのは深海棲艦という事に……
時雨が引き受けたタイムスリップの任務。何気に危ない橋を渡っています。一歩間違えれば、別の恐ろしい世界が出来ていたかも知れません。未来の提督は、アカシックレコードで何を見たのか……
まあ、そこまで考えてしまうと時雨に負担が懸かってしまいます。こういうのは、艦娘ではなく、艦娘を指揮している提督が最適かも知れませんね