時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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サンマ漁、終わりましたね。後は秋イベに備えます
それはそうと、アーケード版ではMI作戦が発動。空母棲姫が初めて出てきました

ブラウザ版で幾度と戦っていたので驚きはしませんが、気になるのが1つ……空母棲姫ってあんなにセクシーだったっけ?本格的なエロゲーかな?散々、イベントで痛い目に会ってきましたが……
『空母おばさん』と呼んですみません


第95話 奇襲

上から何かが落ちてきた。それは霧島だ。いや、それだけではない

 

 天龍、鳥海、古鷹がガラスを突き破って落ちてくる。ガラスの破片が降ってきたことにより、駆逐艦娘と502部隊は避難した

 

しかし、金剛は違った。何しろ、自分の妹が落ちて来たのだから。金剛は、落ちて来る霧島を降ってくるガラスを回避しながらキャッチした。摩耶も川内も同様だ

 

 

 

 普通の人では出来ない芸当を艦娘は、やってのけた。ビルの三階あたりから落ちて来た艦娘が無事で、それを受け止めた人も平然としているのか?人の潜在能力が十パーセントだけじゃなくて百パーセントでも無理であるはずなのに、提督を始めその場にいた者は誰もツッコまなかった。見慣れていた、としか言いようがない

 

「霧島、どうしたのデース!」

 

金剛は霧島の姿を見て絶叫し駆け寄った。霧島は酷い姿だ。艤装は徹底的に破壊され、彼女は怪我をしている。意識は朦朧としており、死んだかと思ったほどだ

 

……普通の人なら死んでいるはずだが

 

「霧島、答えてるのデース!何が――」

 

「お姉様……本当に……」

 

 霧島は、うっすらと眼を開け、自分の長女であることを確認した。横に成りながらも金剛のの方へ頭を向けた事から、目はやられていないようだ

 

「金剛……お姉様……」

 

 自分の姉を見つめる霧島。この世界に召喚されても、また金剛に会えたのだから。しかし、霧島は何かを見たのだろう。物凄い形相で金剛に警告した

 

「お姉さま、危ない!上!」

 

 金剛は上から何かが落ちてくるのを感じていた。それがただ事ではないと分かると、霧島を抱えると猛スピードでその場から逃げ出した

 

 金剛と霧島が移動した直後、二人がいた場所に何かが落ちてきた。まるで、戦艦の主砲弾が着弾したかのような物凄い衝撃音と共に砂煙を撒き散らす

 

「な、何だ!」

 

長門は狼狽したが、時雨はわかっていた。何かが落ちてきたのかを

 

「気をつけて!」

 

時雨は艤装を構えると共に叫んだ

 

「アイツだ!僕達を酷い目に合わしたのは!」

 

「……冗談だろ」

 

 長門は感じ取ったのか、声が上ずっている。いや、長門だけではない。凄まじい殺気を感じ武蔵と赤城と加賀。摩耶も顔を強ばらせ、臨戦態勢に入った

 

「あきつ丸、まるゆ。お前ら陸軍は博士と提督を連れて避難しろ」

 

「しかし――」

 

「避難しろ!揚陸艦がいても無駄だ!アイツはヤバい!本能で感じるんだ!」

 

 摩耶は叫んだ。軍曹も将校も武器は構えているものの、部下達も含めて避難している。本当に不味いらしい

 

「駆逐艦はいいが、あたしの後ろに隠れていろよ!」

 

「でも!」

 

吹雪は訴えた。他の駆逐艦娘も同じだ。こんな殺気を出してる相手にどうしろと?

 

 土煙が晴れ皆の視界に入ったのは、深海棲艦である戦艦ル級改flagship……いや、面影はあるものの艤装が従来のと違う。戦艦娘のような艤装に近い。しかし、黒く塗り立てられており、禍々しいものである。戦艦ル級改flagshipの特徴ともいる外見はあるものの、もはや別物だ

 

「チッ……モウ少シデ踏ミ潰セタノニ」

 

「てっー!」

 

長門は反射的に号令を下した。戦艦の本能として攻撃を銘じた。空から降ってきたのは、人間でも深海棲艦でもない

 

悪魔そのものだ

 

 しかし、砲弾は悪魔を捉えず虚しく地面を抉るだけだ。悪魔は、咄嗟にジャンプしたのだ。人間……いや、艦娘でも無理だろう

 

高く飛び、摩耶の前に着地するとニヤリと笑った

 

「よくも鳥海を!」

 

 20.3cm主砲を乱射したが、悪魔はケロリとしている。重巡の主砲は、戦艦の装甲に命中しても虚しく弾かれるだけである

 

 摩耶は何が起こったか分からなかった。バットで殴られたような衝撃を感じると同時に飛ばされたのだ

 

 吹雪と漣、電も攻撃を加えたが、駆逐艦の主砲は豆鉄砲だ。効くわけがない。金剛と長門は攻撃を続行したが、相手の動きに眼を見張った

 

「は、早い!」

 

「ワタシと同じ高速戦艦!」

 

 金剛は愕然とした。地上だからなのか、速くて動きを捉えられない。どうみても人間離れしている!地上だから出来る芸当なのか?

 

 悪魔は立ち塞がる艦娘に次々と殴り飛ばしたり砲撃したりながら、確実にある人物に向かっていった。それは……

 

「不味い!」

 

 提督の方へ確実に向かっている。提督を殺す気だ。回りにいた艦娘は必死になって食い止めようとしたが、中々当たらない。提督も逃げながら64式自動小銃で攻撃しているが、相手はかすり傷すら追わせない

 

「司令、逃げ――」

 

「邪魔ダ!」

 

  不知火は提督の前に立ち塞がったが、戦艦ル級改flagshipは不知火を蹴飛ばした。時雨も動いたが、間に合わない!

 

 だが、覚悟を決めた提督の前に誰かが立ち塞がり、戦艦ル級改flagshipの進撃を食い止めた

 

それは――

 

「武蔵!」

 

「早く逃げろ!こいつは私が!」

 

武蔵は戦艦ル級改flagshipを押さえつけながら、提督に警告した

 

「ホウ……中々ノパワーダ」

 

「武蔵の力は伊達ではないぜ」

 

武蔵は不敵の笑みを浮かべたが、内心では戸惑いと恐怖を覚えた

 

 初めて見る強敵。『艦だった頃の世界』で味わった悔しさや無念さなどは全て吹っ飛んだ

 

 戦艦ル級改flagshipの両腕を押さえて提督の殺害を止めていた。武蔵を無視して、砲を提督に向けようとするが、提督は既に時雨達と共に避難していて狙えない。他の艦娘も武蔵を援護しようとするが、距離が近すぎて攻撃出来ない

 

「オ前、本当に武蔵か?」

 

「そうだ!」

 

 不気味に笑う戦艦ル級改flagshipに武蔵は答えた。敵を止めたのはいい。しかし、相手は全くといっていいほど、嘲笑っている。余裕があるようにも見える。博士や提督から敵について聞かされたが、武蔵自身も半信半疑だ。人が化け物になって艦娘を過剰に攻撃している、なんて誰が信じようか?

 

 だが、目の前の敵を見て、武蔵も信じざるを得なかった。深海棲艦の怨念じみた声が、人間の声にかわったからだ。普通ならあり得ないはずだ

 

「随分と必死になって私を食い止めているが――この程度か?」

 

「っ!なっ!」

 

 武蔵は驚愕した。捕らえた敵の両腕のこれまで以上の力が加わったからだ。戦艦の、特に大和型戦艦の馬力は凄まじい。擬人化したお陰でそこまで強さはないが、それでも通常の人の腕力よりもある

 

武蔵は焦った。力負けしている

 

「捕まえる事が出来ないからご自慢の主砲で殺そうってか?」

 

「なっ!ぐあぁぁ!」

 

 武蔵は46cm主砲を戦艦ル級改flagshipに向けたが、敵に見抜かれ、発射するよりも早く、敵は頭突きをした

 

威力も半端なく、頭突きを食らった武蔵は、吹っ飛ばされたのだ

 

「まだだ、この程度!」

 

「貴様が出る幕ではない」

 

 戦艦ル級改flagshipは、注射器の束を取り出すと全て武蔵に投げた。不知火は慌てて武蔵を庇おうとしたが、武蔵は不知火を突き飛ばした。敵の攻撃を受け止める気だ。武蔵の身体に注射器が刺さる

 

「一人で攻撃を受けて他人を守るとは流石だ」

 

「黙れ、貴様……よくも……!」

 

 注射器は勿論、フグ毒が入った毒液である。それを10本受け止めたのだ。生命体である以上、何かしら影響を受けるのは必須だ

 

「こんな毒攻撃、蚊に刺されたような物だ!」

 

 毒がまわる前に攻撃しようとする魂胆だろう。今度こそ主砲で攻撃しようしたが、相手は嘲笑った

 

「お前を相手してやってもいいが、やることがあるんでな。陸奥の爆沈事件知ってるか?」

 

「なっ!発射中止!直ち――」

 

武蔵は敵が何をしたか分かった。先ほどの力比べに何か細工したのか!?

 

 武蔵は慌てて艤装を解除しようとしたが、間に合わない。46cm主砲の1つが大爆発を起こした。戦艦の弱点は、他の艦艇と同様に火薬庫引火である。特に内部の爆発は危険である。原因不明とはいえ、陸奥は第三砲搭の爆発で撃沈するほどである

 

内部爆発により、武蔵は戦闘不能に陥った

 

「私の艤装は変形自在だ。ロボットアームのようにな。艤装に入り、小細工するのは容易な事よ。フン、決戦兵器も牙を抜けば後がないものだ」

 

 戦艦ル級改flagshipは爆発により大破され横たわる武蔵を嘲笑ったが、すぐに移動を開始した。41cm砲弾と35.6cm砲弾が襲い、九九式艦爆がこちらに殺到している

 

「カッカするな。やること済ませたら、お前らも海に沈める」

 

 煙幕を大量に張って視界を奪う浦田結衣。金剛も赤城も長門も必死に攻撃したが、煙で何も見えないため攻撃出来ない

 

煙が晴れた頃には、結衣はいない。結衣は既に海に出ている

 

「追撃するな!くそ!あの野郎……」

 

「武蔵、しっかりしろ!」

 

提督は怒りに満ち、長門は武蔵に駆け寄った。明石も博士も愕然とした

 

 唯一、対抗出来るとされる戦艦が、たった今倒された。しかも、敵は嘲笑うかのように簡単に倒したのだ

 

 

 

「まさか!」

 

「武蔵さん……そんな!」

 

戦艦ル級改flagshipが去った直ぐに明石と博士は駆け寄った。だが、武蔵は地面に横たわりぐったりしている

 

 艤装内部からの大爆発と毒攻撃を食らったのだ。普通なら死んでもおかしくはない。追撃したい所だが、あいつはこちらの戦力にダメージを負わせたのだ

 

「鳥海、おい!」

 

「天龍さんが……誰か手を貸して!」

 

「本当に元は人間なのか?」

 

「あれが例の戦艦ル級改flagship……何も出来なかった」

 

負傷している艦娘を診る者と見たことも無い熾烈な攻撃を目の当たりにして呆然とする人が多かった

 

「赤城さん、艦載機を使って追いましょう!」

 

「待って下さい。提督の話が本当なら無暗に追撃してはいけなせん」

 

 加賀は弓を引いて発艦準備に入ろうとしたが、赤城に止められた。空母組も悔しいのだろう。何も出来なかったのだから。まだ、艦載機の準備がまだ出来ておらず、戦艦ル級改flagshipが現れても、回避する事で精一杯だったからだ。飛行甲板と弓がダメになったら、艦載機は飛ばせないし、仮に出来たとしても数が少なすぎる。擬人化しても、空母の欠点は解消されていない

 

 

 

「そんな……」

 

 皆が混乱している中、時雨は呆然とした。艦娘は増強し、未来において仲間を死に追いやった浦田重工業の息の根を止めた。浦田社長は死んだため、再建は無理だろう

 

 しかし、浦田結衣は降伏を選ばない。まだ戦う気だ。提督が考えた深海棲艦を使った予備作戦。浦田社長は兎も角、深海棲艦となってしまった相手に通用するのか疑問を持った

 

その予想は、残念ながら的中してしまった。敵は必至だ

 

「時雨、おい!」

 

「うわっ」

 

 唖然として立ち尽くしている所に提督の声と共に肩を叩かれ、つい驚きの声を上げた 

 

「何をぼうっとしている。……早く怪我人を運ぶぞ」

 

時雨も急いで提督の後についていった。長門も金剛も追撃よりも仲間を気にしていた

 

「装備と戦略を見直して奴を倒すぞ」

 

「だが、奴が東京湾を出たら追えなくなるぞ!」

 

 長門は倒れている武蔵に目をやりながら、指摘した。あんな化け物をこの世に放つ訳にはいかない

 

「分かっている。しかし奴は、深海棲艦のボスと戦うだろう」

 

結衣の目的は一つ。報復だ

 

 

 

 

 

 東京湾の浦賀水道には二人の深海棲艦のボスがいた。装甲空母鬼と軽巡棲姫が停泊していた。装甲空母鬼は南方棲戦鬼の援護のために艦載機を送り込んでいたが、今はその必要がないため、護衛にしてる軽巡棲姫と話していた

 

 戦いの最中に呑気に話すのは普通ならあり得ない。しかし、港湾棲姫を捕らえた人間の組織による抵抗は弱まったため、こちらも余裕が出来たのだ

 

「フフフ……南方棲戦鬼ニナッテイルワネ。相当、怒ッテイルワ」

 

「戦艦棲姫ハ?」

 

 朗らかに話しかける装甲空母鬼だが、軽巡棲姫の反応は短絡的なものだ。というより、真面目であるため中々気楽にならない

 

「既ニ建物ノ中ニ入ッテイルワ。港湾棲姫ノ救助ニ成功シタラシイ」

 

 戦艦棲姫と北方棲姫は、南方棲鬼が暴れている隙に、浦田重工業の地下研究施設に入った。そこは、時雨が最初に連れていかれ、戦艦ル級改flagshipと出会った場所である。相手も抵抗はしてるものの、浦田重工業の崩壊は避けられない。よって、苦戦することはないだろう

 

「全ク、私達ノ部下達ヲ我ガ物ニシヨウダナンテ」

 

「シカシ、ドウヤッテ洗脳サセタノカ気ニナリマス」

 

 一同は戦艦棲姫から今までの出来事を聞いていた。が、やはり信じられなかった。人間が深海棲艦ノニ力を取り込み、下級の深海棲艦を操るなんて誰が信じようか?姫や鬼級なら分かるが

 

「人間ハ調子ニ乗ルト……ン?アレハ?」

 

 軽巡棲姫はあるものを見て、話を中断した。戦艦ル級改flagshipが来ている。一人でこちらに向かうのはおかしい

 

「戦艦棲姫ガ言ッテイタ奴カ?」

 

「デモ、普通ノ戦艦ル級改flagshipデスヨ?」

 

 確かに普通の戦艦ル級だ。両腕に巨大な艤装を持って近づいてくる。戦艦棲姫が言っていた異質とは違う

 

「ドウシタ?何ガアッタ?」

 

「戦艦棲姫ガ救援要請ガアリマシタ」

 

戦艦ル級改flagshipは答えたが、軽巡棲姫は違和感を覚えた

 

 確かに戦艦ル級改flagshipだ。しかし……なぜ、砲搭が大きく見えるのは錯覚なのだろうか?戦艦ル級なら沢山見てきた。間違える訳がない。誰かが装備を変えたなんて聞いていない

 

まさか……

 

「止マレ!ソノ主砲ハ何ダ!?」

 

「……コレハ……貴様ヲ沈めるためだ!」

 

 戦艦ル級改flagshipの艤装が瞬く間に変化した。両手に持っていた艤装は変形し、身体に纏うように装着している。そして、こちらに向けて瞬時に砲を向けると全門発砲したのだ

 

「コイツガ……グァ!」

 

 装甲空母鬼も予期出来なかった。戦艦棲姫から特徴を聞かされた。しかし、まさか本物の戦艦ル級改flagshipに化けて来るとは思わなかった。そのため、察知できなかった。襲撃も想定していなかったため、偵察機すら上げていない。人間の兵器では、自分達は傷付けられない。そのため、慢心してしまったのだ

 

 だが、そう簡単にやられる訳にはいかない。装甲空母鬼は、空母であると同時に砲撃能力まで備えている

 

 大破したため艦載機を飛ばす能力は失われたが、抵抗する力は残っている。砲は火を吹いたが、戦艦相手には火力不足だ

 

「何カシタカ?」

 

「クッ!」

 

 装甲空母鬼は再び攻撃しようとしたが、それよりも早く相手の主砲が火を吹いた。48cm主砲をまともに食らったため装甲空母鬼は撃沈してしまった

 

「……ッ!」

 

「ホウ……距離ヲ取ッテ策ヲ考エテイルノカ?イイダロウ。精々、頑張ッテ。コレデ奴ヲ倒セル」

 

 軽巡棲姫は距離を取り戦闘態勢を取ったが、相手は嘲笑った後、東京湾の湾内に向かった。軽巡棲姫は直ぐに軽巡棲鬼達と連絡を取った。1人で戦うのは無謀だ。かと言って、部下達を連れて行くとあいつに操る可能性がある。戦艦棲姫の言っている事は正しかった

 

 そして、戦艦ル級改flagshipが湾内に向かっている理由は 分かる。南方棲戦鬼と戦うためだ。支援艦隊を倒してから本体を潰す作戦らしい。連絡はしたが、軽巡棲姫は不安を隠せなかった

 

 

 

 南方棲戦鬼は、軽巡棲姫からの連絡を受け取ると、地上への攻撃を止めた。そして、殺気と威圧感を感じ取ったた。深海棲艦に似た殺気だが、何か混ざったような感じだ

 

 こちらに向かって来ているのは、戦艦ル級改flagship……いや、人型である外見だけだ。艤装は徹底的に改造されているようだ。それに、普通の改flagshipなら片目に水色の炎を灯しているが、何故か赤いのだ

 

「貴様……何者ダ?」

 

「私ノ兄ノ敵討チダ。ヨクモ破壊シテクレタナ」

 

戦艦ル級改flagshipの言葉を聞いた南方棲戦鬼は、直ぐに見破った

 

コイツ……戦艦棲姫が言っていた例の……

 

「貴様ハ、私ヲ怒ラセタタメダ!」

 

 南方棲戦鬼は、部下の深海棲艦に攻撃するよう命じた。戦艦ル級と重巡リ級、そして軽巡ツ級が殺到したが、浦田結衣である戦艦ル級改flagshipは戦うどころか、手を制しただけの仕草をしただけだ

 

 次の瞬間、戦艦ル級改flagshipに殺到していた深海棲艦達は動きを辞めた。南方棲戦鬼以外を除く深海棲艦は、ビデオ映像を止めたかのように微動だにしていない。空母ヲ級が放った艦載機は、上空を旋回しているだけで攻撃して来ない

 

「馬鹿ナ!ナゼ、コンナ事ガ出来ル!?」

 

 南方棲戦鬼は驚愕した。完全に深海棲艦を操っている!広範囲ではないだろうが、確実に操っている。重巡リ級達の目は、何か蒼い光を発している

 

「オ前達ノ能力ヲ研究して鍛えたからだ。今では、こうして意のままに操る事が出来る。歯向かうことも無いし、命令に忠実。中々のものよ」

 

「貴様、鬼・姫級の能力ヲ悪用スルトハ!本当ニ人間ナノカ!?」

 

 南方棲戦鬼は信じられなかった。確かにテレパシーを使って深海棲艦を指揮したり、仲間とのコミュニケーションを取ったりしている。しかし、まさかここまで悪用するとは思わなかったのだ。普通の人間なら無理だろう。人間の機械でもここまで出来ないはずだ!

 

「だが、お前もテレパシーを出している。自分がボスであると。確かにコイツらは自分達のボスには攻撃なんてしない。本能でな。つまりお前を倒せば、こいつらの艦隊を再び手に出来るし、私は貴様よりも強いという事が証明されるという訳だ」

 

 ここまで聞かされては南方棲戦鬼は黙っていない。囚われた仲間を救い、それを実行した人間達に攻撃をするはずだが、予想外の異様な兵器に南方棲戦鬼は怒り狂った。深海棲艦が人間如きに舐められる……そんな事はあってはならないはずだ!

 

「貴様は鬼級か……始末してくれる」

 

 バカデカイ主砲が向けられても南方棲戦鬼は怯まなかった。こちらには、戦艦の主砲の他に魚雷攻撃や航空攻撃まで出来る

 

つまり、多種多様な攻撃が可能なのだ

 

「人間風情ガ生意気ナ……イイダロウ。身ノ程ヲ教エテヤル」

 

 南方棲戦鬼と戦艦ル級改flagshipの間でにらみ合いが起こったが、直ぐに砲撃戦が発生した。巨弾が飛び交う中、南方棲戦鬼は魚雷と艦載機を繰り出した

 

有利になると確信したが、数分後、驚愕する事に成る

 

 

 

 提督と博士、そして艦娘達が集まっているところは大混乱していた。なにしろ、たった短時間で揃えた戦力にダメージを与えたのだから

 

「クソ、あの野郎……よくも龍田を!」

 

「鳥海……しっかりしろ!何があった!」

 

「霧島……無理をしてはいけませーん」

 

 浦田重工業が崩壊しているのは明白であるため、502部隊がビルに入り、残っている艦娘の捜索に当たった

 

屋内の戦闘であったため、戦いの場所は直ぐに見つかったが、発見された艦娘で無傷の者は居なかった

 

特に大淀は、浦田結衣による拷問のため、意識不明の重体だ

 

「大淀さん……」

 

 徹底的にやったのだろう。既に高速修復材や入居で治らない程まで痛め付けられた

 

一歩間違えれば、死んでいたかも知れない

 

「僕の時は直ぐに治ったのに」

 

「それを見越して痛め付けた可能性はあるわ。時雨ちゃんの場合、拷問されても治った……だから、手加減なしでやったのよ。情報を吐き出すためもあったかもしれない」

 

全身包帯に巻かれ、ぐったりとする大淀を診ながら、明石は静かに首を降った

 

ここまで非道な事をする者は早々居ない

 

一方、武蔵の容態も酷かった。何しろ、ふぐ毒注入と艤装内部による火薬庫引火のダブルパンチを食らったのだ。流石の武蔵もこれには堪えた

 

「攻撃を受ける事には……慣れたはず……そのはず……だった……」

 

「もう喋るな。奴は武蔵を知っておった可能性がある。手を焼くと感じて、あのような攻撃をしたのじゃろう」

 

 ふぐ毒によって麻痺になり、更に艤装の爆発によって大破してしまった武蔵を博士が診ていた

 

 修理しようにも手元の資源が尽きてしまう。奪った資源は豊富だが、無限ではない。武蔵と大淀、そして古鷹は残念ながら戦力外として見るしかない。駆逐艦娘も48cm主砲弾を食らって一撃で大破させられた。漣と五月雨は、大破してぐったりしている。死ななかったのが奇跡だ。いや、艤装を付けていなければあの世だっただろう。特に、古鷹は悲惨だった。鳥海によると、自分達をビルの外へ投げる前に麻痺し倒れている古鷹を徹底的に痛めつけたのだ。行動出来ないように両足を潰し、更には古鷹の艤装の砲という砲を破壊したのだ。明石が見たが、修復出来ないほどまで破壊されており、スクラップにするしかないと言われた

 

「提督、どうしよう?」

 

「奴は深海棲艦であるボスと戦うはずだ。動ける者だけでいい。奴を倒すぞ」

 

目の前で切り札が無くなっても提督はやる気だ

 

「HEY、提督ぅー。例の敵戦艦ですが、どーします?」

 

「どうするか、ではない。倒す以外はない」

 

 金剛の質問に提督は否定した。捕まえようとは考えていないらしい。元人間だったとしても

 

「こっちが躊躇すると、奴は調子に乗る。幸い、奴は東京湾にいる。倒すなら今しかない。外海に逃げてしまったら、追跡が出来なくなるぞ」

 

 提督の言っている事は正しい。浦田結衣は深海棲艦だ。よって、人間社会に居なくても生きて行ける。一方、こちらは資源に限りがある。潰すとしたら今しかない

 

「待ってくれ。未来は変わったはずだ。元凶である浦田重工業の会社が崩壊したんだ。1人で何が出来る?」

 

「いや、変わってはおらん。恐らくじゃが……変わらないどころか、最悪の方向へ向かっている可能性がある」

 

軍曹は指摘したが、意外にも返答したのは博士だった

 

「説明が難しくて省略するが……鳥海から連絡を受け『超人計画』を再度確認した。間違いない。浦田結衣は深海棲艦化したのではない。融合したのじゃ」

 

「「「「え?」」」」

 

博士の説明に提督と時雨、502部隊の隊員全員と艦娘達は唖然とした

 

融合?

 

「どういう意味です?ただの深海棲艦ではないのですか?」

 

「深海棲艦は高次元に生きる生命体だ。どんなに頑張ろうが、人間が深海棲艦に成れる訳がない。仮になったとしても、自我を失い深海棲艦として生きていく事になるじゃろう」

 

 博士の説明に将校の顔は嫌悪感を露わにしていた。深海棲艦になると、自我を失う。あまり良いものではなさそうである

 

「ちょっと待って!あいつは人間と深海棲艦に変身しながら戦ったよ。しかも、人間のように話して――」

 

「それじゃ。奴は深海棲艦になっているのに、完璧に自我を保っている。いや、下級の深海棲艦を支配しておった。浦田社長の高度な科学技術の影響だと思っておったが……いや……まさか……そんな」

 

博士は何か思いついたのだろう。説明がしどろもどろになってきた

 

「どうした?何か奴に心当たりが」

 

「いや、これは仮説だから根拠はない。しかし、これは確実じゃ。奴は……自分の意志で改装しておる。勝手に進化しておる!」

 

「「「「「はあ?」」」」」

 

艦娘達は素っ頓狂な声を上げた

 

「戦いながら改装って……何だ?艤装が強化するのか?」

 

「そうじゃ。深海棲艦は独特な方法で進歩しておる。勿論、実用化するまで時間は要する。じゃが、奴の兄は未来技術を知っておる。奴もバカでない限り、未来兵器を召喚するじゃろう」

 

「時が経てば強くなるって……化け物じゃないか!?」

 

 長門は愕然とした。つい先ほどまで例の戦艦ル級改flagshipの事を聞かされても、特に危機感を覚えていなかった。艦隊戦を仕掛ければ勝てると。相手は『艦だった頃の世界』のような米軍ではない。空母でもないため、自慢の41cm主砲を撃てば倒せるだろうと。だが、突然現れた浦田結衣。そして彼女が持つ主砲は己が持つ主砲よりもデカイ。そして、何よりも戦い方が多種多様だ

 

卑怯ではあるが、戦い慣れている!

 

「しかし、どうして未来は変わらないと分かるんだ?」

 

「残念じゃが、これは憶測しかない。スマン」

 

 はぐらかされた答えに軍曹は不満だったが、時間の無駄というばかりに肩をすくめた。なぜなら、質疑応答している間に帝国陸軍の部隊がやって来た。機甲師団だろう。3台の戦車がこちらに向けて進んでいるからだ

 

「オーイ!こっちだ!撃つなよ、味方だ!」

 

「分かっている!……全く、あいつら本当に生きていたのか!?」

 

軍曹の前に戦車が止まると、一人の兵士が現れた。階級からして戦車長らしい

 

「戦車第三師団が来てやったぞ。元帥の命令だ……お前ら無茶し過ぎるぞ」

 

「いつもの事です。緊急事態だったので」

 

「人質である少女を助けるために変電所を吹っ飛ばして街一帯を停電させた部隊が、言う事か?」

 

 戦車長の呆れに将校は、軽く受け流した。赤城さん達から、何の事?と言われた時、時雨ははっきりと答えられなかった。仕方ないとは言え、刑務所に捕まっていた自分を助けるために変電所を吹き飛ばしたのだ。そのため、街は数日間停電になったため、あまり良い感じではない

 

「浦田部隊はどうしました?」

 

「立て籠もったり、降伏したりで作戦は順調だ。ただ、こちらも被害を受けてな。バズーカとかいう奴にやられまくって今では、この有様」

 

 戦車長が言うには、もっと居たらしい。浦田重工業の反乱で出動したが、こちらよりも巨大な戦車と回転翼機で8割失ったらしい

 

 しかし、時雨達の電磁パルスと深海棲艦のボスの出現により、海岸沿い付近以外は展開しているらしい

 

「戦車が足りないから試作兵器を引っ張り出す始末だ。それを……おい、戦車の上に乗るな!」

 

 戦車長は、自分の背後に誰かが乗るのを感じたため、振り返った。乗っているのは、まるゆとあきつ丸である

 

「この戦車……一体、何なんなのでありますか!?見たことも無いです!乗っていいのでありますか!?」

 

「おい、コイツ誰だ!?」

 

 あきつ丸の興奮に戦車長は、指を指して聞いてきた。見知らぬ女が、勝手に戦車に乗り込もうとしている。しかも、何故か兵器に詳しく操縦士も困惑するばかりだ

 

「これ、 88mm砲でありますか!?日本の戦車はここまで進歩するとは!」

 

「なぜ、ここまで詳しい?」

 

 目を輝かすあきつ丸に戦車兵は、狼狽するばかりだ。スクール水着であるまるゆも乗りたいと言う始末である

 

「五式中戦車でありますか!!これが、『艦だった頃の世界』にあれば!試乗してもよろしいでありますか!?」

 

「少佐、何とか言ってください!」

 

 ねだるあきつ丸に操縦士は、助けを求める始末だ。あきつ丸が興奮しているため、落ち着くよう指導するのに時間を労したのは言うまでもない

 

「まるゆも乗りたい」

 

「その前に潜水艦だろ。潜れるのか?」

 

「まるゆは潜れます!」

 

「いや、腰を抜かして動けなかっただろうが?それどころか、あいつはお前を素通りしていたぞ」

 

 軍曹とまるゆも論争する始末だ。結衣は抵抗する艦娘を攻撃してダメージを与えていったが、何故か近くに居たまるゆには攻撃しなかった。……敵として認識していなかったかも知れないが

 

 陸軍のちょっとしたハプニングに時雨達は、放って置いて作戦を立てた。敵は戦艦なので、あきつ丸とまるゆは出撃させない方針だ。提督曰く、別の方法で運用するらしい

 

……まるゆが魚雷を撃てるなら出撃するしかない。なりふり構ってられないのは今もである

 

 




おまけ
提督「戦艦武蔵を無力化したのは、やはり武蔵の経歴か……」
時雨「どうして?」
提督「武蔵は熾烈な航空攻撃を受けても簡単に沈まなかったからな」

シブヤン海海戦で、武蔵は米軍機の攻撃を受けて艦隊から落伍。その後も波状攻撃を受け続ける
しかし、武蔵は簡単に沈まない。米軍も驚くばかりである

武蔵耐える!必死に耐える!

だが!…………沈んでしまった

提督「こんな感じだ」
武蔵「なぜカイジネタなんだ?」


武蔵……大破……
浦田結衣は(卑怯な手で)武蔵を攻撃して戦闘不能に追いやります
魚雷20本以上、爆弾17~44発命中、至近弾20発以上(諸説あり)食らっても9時間浮いた武蔵を、短時間で無力化
……まあ、火薬庫引火は危ないですから。陸奥も原因不明ではありますが、火薬庫爆発で沈みました

今度は長門を応援しなくては
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