時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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長門に新たな技が……
しかし、二番艦によっては長門の見せ場を奪う場面が多々あったりするという


第99話 XF5Uフライングパンケーキと艦隊決戦

何もかも知らない……どうなっているの?」

 

「時雨……落ち着くのデース」

 

 呆然として空を凝視した時雨に金剛が声をかけた。金剛も三式弾で応戦しているが、円盤航空機はヒラヒラとかわされる始末だ

 

「時雨が知ってる未来は旧史デース」

 

「でも!」

 

時雨が抗議をあげようとしたが、駆け寄った長門が手で制した

 

「分かっている。だが、未来兵器を一網打尽にして破壊したのは時雨のお陰だ。後は……あいつだな」

 

長門は無線通信を行った

 

「赤城、加賀!被害報告!」

 

『攻撃隊壊滅!私も加賀さんも爆撃されて中破!発艦不能!』

 

「退避しろ!ここからは艦隊決戦で仕掛ける!」

 

 長門は遠くで嘲笑っている戦艦ル級改flagshipを睨んだ。操られ浦田結衣を守るように深海棲艦がいる。空母ヲ級もいるが、一隻だ。着弾観測は無理だが、戦える。問題は姫・鬼級3人の能力が未知数だ

 

「こんな艦隊戦を望んではいないが……奴を沈める!時雨の行いを無駄にするな!」

 

「ウオオォォー!」

 

 艦娘全てが突進した。遠距離攻撃しても無駄だ。かといって接近すると危ない。敵は48cm砲だ。しかし、相手は遠距離砲撃しない。当たらないと分かっている。だから、一発も発砲しない

 

それなら接近して攻撃するしかない!

 

 

 

「フン、ヤケになったか。航空攻撃でダメージを与え、私が損傷している隙に艦隊戦仕掛けるつもりだったのか。だが、私はそんな事はお見通しだ。全艦、攻撃しろ!」

 

 イージス仕様の軽巡ツ級と空母ヲ級。鬼姫である軽巡棲姫と軽巡棲鬼、そして駆逐棲姫はその場に残し、後は全て突撃を命じた

 

 試作段階とはいえ、未来兵器は無くなっている。駆逐軽巡重巡合わせて15体、戦艦ル級2体

 

使い捨てとはいえ、これでも十分の戦力だ

 

(そうだ……この兵器は強力。VT信管と円盤航空機である艦戦のF5Uフライングパンケーキ、そして改造版である戦闘爆撃機F6Aのフライング・フラップジャックは強力だ)

 

 浦田結衣は内心細く微笑んだ。近接信管は知ってるだろうが、この機体は艦娘も知らないだろう。いや、艦娘計画を実施した海軍大佐やその場に息子。そして、502部隊の連中も知らないはずだ

 

 航空自衛隊の一等空尉も知らないだろう。何しろ、この機体は計画のみで終わった機体なのだから

 

 

 

 第二次世界大戦……海戦の主役は、戦艦から航空機へと変わっていった。しかし、航空機には当然ながら滑走路が必要である。そのため、多くの航空機を搭載出来るのは飛行甲板を持つ空母などに限られた

 

 もし、空母以外の軍艦にも航空機を搭載出来たとしたら?日本軍は強風や瑞雲など水上戦闘機を採用したが、米軍はある航空機を開発していた。巡洋艦や戦艦などにも航空機を積み、滑走路のいらない航空機を

 

 その機体は、XF5U『フライングパンケーキ』である。アメリカの航空技師は、僅かな風で凧が高く舞い上がるのを参考にして創られたものだという。試作機であるV173では、60馬力のエンジンを2発という非力でにも拘わらず、高い性能を示して見せたという。特に離陸性能についてはたった6メートルで離陸が出来たという記録があった

 

 しかし、開発に難航し機体が完成した時には第二次世界大戦が終わっていた事。そして、航空機はジェット機に移りつつあったため、テスト飛行を行う事なく計画は中止された

 

 浦田結衣は、平行世界において、自分が艦載機積めないかと調べていた所、この機体に目をつけた

 

「戦艦に艦載機を乗せる?正気か?」

 

 時雨の夜戦で負傷した数日後、改装プランを見た兄は仰天した。円盤航空機を積むのを驚いたからだ

 

「私は深海棲艦の艦載機は操れない。どうも、造りが違う。だが、水上機ではダメだ。フロートが邪魔なお蔭で空戦能力が落ちる。独自で捜した所、可能な機体を私は見つけた」

 

 結局、兄は了承しアメリカが完成しなかったF5U『フライングパンケーキ』の実用化に成功した。また、兄はF5Uの戦闘爆撃機である発展型を生んだ。その名称はF6A『フライング・フラップジャック』と名付けられた

 

 形は似ているが、大きく違っていた事は尾翼が垂直尾翼のみで、機首に1基のエンジンを配備し、そこには三枚の二重反転プロペラが配備されていた。戦闘爆撃機という訳である。艦攻である魚雷搭載は見送られた。流石にそこまでは出来なかった。しかし、補助用であるため別に重視する必要でもない。空母の発着艦能力を奪えばいいだけである。よって、航空魚雷搭載の艦載機仕様の案件は破棄した

 

『艦だった頃の世界』では、計画のみに終わった機体が、空を飛んでいる。艦娘は実用化出来なかった烈風を配備したが、浦田結衣も同じように機体を持っていた。性能も中々のものだ。まだ隠し玉はあるが、別に見せびらかす必要はない。万が一の事がある

 

 しかし、戦艦ル級は艦載機を持っていない……その場に常識が覆されてたのだから、艦娘側は大混乱したようだ

 

 空母組である艦娘も無力化に成功した。近接信管による対空砲弾と40mm機関砲、そして20mm機関砲で撃退した。近接信管は砲弾等が目標に命中しなくても、最接近時に起爆する事でダメージを与える事を目的とした信管である。当時はVT信管と呼ばれ、こちらも米軍が開発した対空砲火である。現在も近接信管は砲弾から対空ミサイルまで活用されている。海上自衛隊からのデータの中に単装速射砲用の近接信管弾を見つけた。流石に完全なコピーは出来ないが、現代兵器にはありふれた技術であるため浦田重工業の技術では容易な代物だ。しかも、太平洋戦争時の米軍が使っていたVT信管よりも性能が良い

 

 赤城と加賀が送り込んだ攻撃隊は、F5Uフライングパンケーキと近接信管と40mm機関砲による防空兵器によって三分の二も撃ち落す事に成功した。これで暫くの間は、空母艦娘による航空支援はして来ないだろう

 

 だが、艦娘もやられっぱなしではない。態勢を立て直すとこちらに向けて突撃してきた

 

「いいだろう。かかってこい!」

 

 

 

全ての艦娘と操られた深海棲艦の間で砲雷撃戦が行われた

 

 制空権が取れなかったため、零式偵察機が発艦出来ず弾着観測も出来ない。あの円盤航空機は今も上空を旋回している。恐らく、弾着観測に必要な水上機を撃墜するためらしい。しかし、長門も金剛も弾着観測なしで行うつもりだ。互いの距離は近い。光学照準でもやっていけるだろう

 

「照準良し……てっー!」

 

「全砲門!Fire!」

 

 長門、金剛の艤装から火を吹き、重巡である鳥海も軽巡の天龍と川内も砲戦に入った。吹雪や不知火も高速を活かして砲雷撃戦に入る

 

当然、敵も撃ち返してきた。数は深海棲艦の方が多いが、意外にも艦娘の方が善戦していた。何しろ、深海棲艦である戦艦が浦田結衣のを除いて2隻しかいなかった。不知火と時雨が放った魚雷が命中。難なく撃沈する事に成功した。もう一隻の戦艦ル級には、長門が放った主砲が命中。中破に陥り、射撃能力が落ちてしまった。わざわざ沈める必要もない。これは殲滅戦ではない。鳥海や川内も善戦し、重巡リ級や軽巡ツ級相手を撃沈した。建造初日で善戦するのに時雨は舌を巻いたが、実は鳥海も川内も初実実戦ではない。ビル内で浦田結衣と戦っていた時が初実戦である

 

そのため、敗れ大破されても、出撃を強く要望したのだ。ある意味、報復だろう

 

 

 

「ホウ……中々ヤルナ。流石ハ大日本帝国海軍ノ艦船ダ。背水ノ陣トハコノ事カ」

 

 浦田結衣は砲撃戦には参戦せず、遠くで眺めているだけだ。イージス仕様の軽巡ツ級は空母ヲ級と共に遠くに下がらせた。防空艦として使用するしかない。己自身は何とか出来るだろう。空母ヲ級は艦載機を発艦させ、執拗に艦娘の妨害を行った。また浦田結衣は姫・鬼を手下にした軽巡棲姫と軽巡棲鬼、そして駆逐棲姫に突撃するよう命じた

 

「ウ……ウウ……」

 

「抵抗スル力があるのか?だが、無駄だ」

 

 軽巡棲姫が頭を抱えながら結衣を睨んだ。姫でも抵抗力はあるらしい。しかし、結衣は再び頭を鷲掴みして突き放した。今度こそ抵抗が無くなった

 

「さあ、行け。精々、奴等ヲ沈メルノダナ」

 

 3つの鬼級はそのまま艦娘の艦隊に突進した。突然の攻撃に艦娘達は再び混乱した。鬼・姫を戦う事自体が初めてである。軽巡や駆逐艦であるにも拘わらず、攻撃や防御は下級の深海棲艦と比べものにならない。しかし、姫や鬼を前にしても怯まず戦うのは艦娘としてプライドが許さないのだろう

 

川内と鳥海が立ち塞がり、砲撃して注意を逸らした

 

「早く敵の所へ行ってください!」

 

「なッ?鳥海!?」

 

鳥海は長門と金剛を先に行くよう促した事に長門は驚く

 

「あの化け物を倒すには、修復が追いつかない程の攻撃を与えるしかありません!心臓がダメなら脳を攻撃するんです!」

 

「でも、効果あるか分からない」

 

 時雨は迫り来る駆逐イ級を砲撃で追い払いながら叫んだ。何しろ、敵のボス……浦田結衣である戦艦ル級改flagshipを倒した艦娘がいないのだ。今まで傷を付けた者は、己自身である時雨と龍田のみである。前者は夜襲、後者は自爆攻撃だったが

 

「でも、やってみる価値はあるネ」

 

金剛も思う所があった。ビル内で戦った霧島から詳細な戦闘データをしっかりと受け取ったのだから

 

「ここは私達が!貴方達が弾薬と体力をここで使う訳には行きません!」

 

 鳥海は叫んだ。軽巡である川内と駆逐艦である吹雪達は残り少ない深海棲艦を相手していた。ノーマルである戦艦ル級は素早く撃沈したため、戦艦娘がいる訳にも行かない。重巡リ級は鳥海が相手をし、駆逐イ級や軽巡ホ級などは川内や吹雪達が相手をしている。尤も、軽巡棲姫と軽巡棲鬼、そして駆逐棲姫も相手しないといけないため苦戦は免れないが

 

「すまない……行くぞ!」

 

 長門と金剛と天龍、そして時雨は深海棲艦の艦隊を突き抜けた。数は少なく、攻撃を躱すのは容易だった。駆逐棲姫が襲って来たが、金剛が35.6cm主砲を斉射。近距離であるため、全弾命中した。流石に撃沈出来ないが、ダメージは受けたに違いない。と言うのも、怯んでその場を離れたため戦果確認する余裕もなかった

 

 

 

 艦隊を抜けた先には異様な軽巡ツ級と空母ヲ級、そして戦艦ル級改flagshipである浦田結衣がいた。異様な軽巡ツ級……時雨は知っている。イージス艦仕様のものだ

 

「チッ……あの鬼……現代兵器を捨てるよう命じたお蔭で火力が弱い」

 

 試作段階であったとは言え、レーダーシステムや火器管制やミサイルなどはほとんど海に捨てられてしまった。南方棲戦鬼が命じたのだが、その判断は正しい。浦田重工業は崩壊しているため、整備や補給は出来ないだろう。例え出来たとしても、再現は難しい。南方棲戦鬼が忌み嫌っている事もあるが

 

「浦田結衣……個人的には貴様を知らん。だが、貴様は私達の仲間に手を出して傷つけた」

 

 長門は睨んだ。既に主砲の照準も合わせている。距離も遠くなくため、いつでも撃てる。しかし長門の怒りを浦田結衣は、臆しないどころか、そよ風のように受け流していた

 

「私は艦隊決戦を望んでいたが、こんな決戦は望んでいない」

 

「お前の都合で艦隊決戦が決まるとでも思っていたのか?自分の都合がいい事象が起きてくれるという幻想を抱くなんてバカがやることよ」

 

浦田結衣は嘲笑った。尤も、これは結衣の方が正しい。敵が相手の都合に合わせて戦わせてくれるものではない

 

 人間というものは、自分の都合のいい希望を抱くものである。特に軍人はその傾向が強い。『艦だった頃の世界』でも大本営や陸海軍上層部は自分達の都合で決戦と称して構えていたが、米軍から見ればどうでも良かったのである。大本営の思惑なぞ構わず勝手に動き回り(当たり前だが)、戦況を引っ掻き回した。大和や武蔵がノコノコ出てきても、米軍は戦艦で迎え撃たずに空母の艦載機を繰り出して沈めたのだ

 

米軍ですら、そこまでお人好しではないのだ。当然、他の敵も同様である

 

「Hey、浦田!私の実力を見せてやるねー!だから、ここで沈んでくださーい!」

 

金剛は全砲門を向けたが、相手は嘲笑うだけだ

 

「図に乗るなよ?たかが虫けらが。私は世界の頂点。新しい未来を切り開く超人となった。旧軍の兵器ごときの戯れ言に付き合ってられるか?」

 

 浦田結衣は、主砲1発だけ発射した。試射だろう。金剛と長門の目の前に着弾したが、巨大な水柱は発生し、長門も金剛も手で覆いながら降りかかる海水を防いだ

 

「何て威力だ。時雨や霧島の言う通り大和型戦艦よりも威力がある」

 

 長門は呆気にとられていた。聞いてはいたが、ここまで威力があると臆してしまう。長門が持つ砲塔は41cm主砲だ。威力も射程も違う

 

攻撃防御がこちらよりも上だ。だから、奇襲の際に武蔵を無力化したのか!

 

「貴様を倒して私は強化する。来い、英国かぶれに役立たずの戦艦共。スクラップにしてやる」

 

 浦田結衣の宣言に長門も金剛も身構えた。ここまで言われてはこちらも黙ってはいない

 

「お前……血も涙もないのかよ?」

 

天龍は声を震わし顔を真っ赤にして言った。怒りで平常心を保てないのだろう

 

「天龍、お前は害虫であるススメバチやゴキブリに涙を流した事はあるのか?」

 

「「「ッ!!」」」

 

 この言葉を聞いた3人は怒りの頂点に達した。この人は、本当に悪魔だ!この世に存在してはならない者だ!

 

「死んでも文句はないよね!?」

 

 時雨も3人と同様で怒りに満ちていたが、意外と冷静だった。魚雷発射管から魚雷を放とうとした時、誰かが手を制して発射しないよう命じた。時雨は誰が制したのか、分かった。金剛だった

 

「金剛さん!?」

 

「私達がやるネ」

 

「心配するな。私達は『艦だった頃の世界』では艦隊決戦も出来なかった。ここで出来るなら手加減なしで挑める!」

 

 長門と金剛は敵である戦艦ル級改flagshipに向けて突進した。砲撃戦に持ち込むためである。有効射程距離に入っているが、やはり近づいた方がいい。命中率も威力も上がるからである

 

「音を上げさせてやるネ!」

 

 金剛は右へ、長門は左へ回りながら敵に砲搭を全て向ける。流れ弾に気を付けているため、互いに斜線を気にしている。二人とも初実戦だが、実力はある。『艦だった頃の世界』での厳しい訓練や多忙な作戦参加の成果だろう

 

「撃ちます!Fireー!」

 

「全主砲、斉射!て――ッ!!」

 

 金剛の35.6cm主砲が、長門の41cm主砲が火を吹き、砲声が辺りを轟かせた。余りの大きさに時雨は、耳を塞ぐ形となった。久々に戦艦の砲声を聞いたような気がする。今までは恐ろしいジェット機やミサイルだけだったので、ある意味懐かしかったかも知れない

 

 浦田結衣がいた場所には多数の水柱が立ち、爆発音が響き渡った。至近弾でもダメージは追うはずだ

 

「やった!命中した!」

 

 時雨だけでなく、天龍も歓声を上げた。多数の水柱で敵の姿は見えないが、無傷ではないはずだ。結衣が戦ったボスである南方棲戦鬼は油断したに違いない

 

そう思っていた

 

 だが、その願望は幻だった。水柱から黒い塊が勢いよく飛び出し、金剛へ向かった。金剛は回避しようと動いたが、間に合わなかった

 

「「金剛(さん)!」」

 

 長門と時雨は叫んだが、金剛は首を掴まれ持ち上げられていた。金剛は振りほどこうとしたが、敵の力の方が上だ

 

「Shit!放すデース!」

 

「金剛……お前は巡洋戦艦……いや、装甲巡洋艦を発展型であるオンボロがこの私に歯向かうとは……随分と舐められたものだな!」

 

金剛はもがいていたが、内心では青ざめていた。金剛型戦艦の事を敵は知っている!

 

 元々、金剛型戦艦は高速戦艦ではない。装甲巡洋艦を大改装して戦艦となったのだ。本格的な戦艦相手ではとても分が悪い

 

「クソ!金剛を放せ!」

 

長門は突進する。砲撃すると金剛に当たってしまう。格闘戦で挑む長門

 

だが、相手は金剛をバスケットボールを投げるかのように長門に向けて投げた

 

 勢いと突然の出来事に長門は回避出来ず、そのまま衝突。長門は金剛を抱えるように倒れる

 

「サア、沈め」

 

浦田結衣は砲を向けようとしたが、何者かに遮られた。それは……

 

「君を東京湾から出すわけにはいかない!」

 

12.7cm連装砲B型改二から放たれた砲撃が戦艦ル級改flagshipに当たる。時雨もただ見ていた訳ではない

 

結衣は動きを止め、時雨を睨んだ

 

「時雨、廃工場でよくも攻撃してくれたな。だが、お前は駆逐艦だ。お前ごときの対策なぞ簡単に取れる」

 

 結衣は呆れるように冷たく言い放ったが、その間、金剛と長門が素早く立ち上がり砲撃態勢に入った

 

「てっー」

 

「Fire!」

 

 掛け声と共に砲声が轟いた。聞き慣れた35.6cm主砲と41cm主砲。そして、それよりも巨大な砲声が鳴り響き周りに水しぶきと爆風が時雨と駆けつけた天龍を襲った

 

 水しぶきで視界が悪く何も見えなかったが、すぐに収まり時雨達の目に映ったのは、中破し怪我をしてる金剛と片方の主砲がもぎ取られ険しい顔をしてる長門だ

 

一方、結衣は装甲に傷があったが、それだけだ

 

「私はH級戦艦をモデルにしてると同時に近代化改修した戦艦だ。お前達の力なぞ足元にも及ばん!」

 

「な、なんてパワーデース……」

 

「くそ、この長門が……ビック7が……道理で武蔵を無力化した訳だ」

 

 長門は歯を食い縛った。あの戦艦、こちらの攻撃をかわして、的確に当てている。照準装置が画期的なお陰だろう。これでは、勝負にならない

 

天龍も応戦し14cm砲を発射したが、装甲に弾くだけで効果がない

 

魚雷を撃ちたい所だが、ここで撃ってもかわされるだけだ

 

「邪魔は倒しておくが、お前達の相手をしてる訳にもいかない」

 

 浦田結衣はあるものを呼び寄せた。それは、川内と一騎討ちしていた軽巡棲姫が時雨と天龍の前に立ちふさがる

 

川内も後を追うように追跡したが、重巡リ級に阻まれてしまった

 

「あいつらを沈めろ。弾が勿体無いからなぁ」

 

「クソ、あの野郎!」

 

 天龍は吐き捨てるように叫んだが、相手は嘲笑うだけだ。今は突進して来る軽巡棲姫を何とかしないといけない

 

でないと、金剛と長門を助けに行けない

 

 

 

「ええっと……浮上が出来ないよ」

 

東京湾の海底に、まるゆは悩んでいた。軍曹によって海に放り投げ出される形で出撃となったが、今の自分は浮上できずにいた。いや、『艦だった頃の世界』でも珍しくない事だったため、気にはしていない。だが、いつまでも海底の散歩をしている訳にはいかない。泳いでいるのではない。海底を歩いているのである。東京湾であるからこそ出来る事である

 

水上で爆発音と砲声が聞こえてきている。艦娘達は、敵と交戦しているんだ!

 

「浮上しないと!」

 

ジャンプして浮上しようとするが、中々上手く行かない。しかし、ここで諦める訳にはいかない!五回くらいジャンプしてようやく身体が浮くのを感じた

 

「やった!」

 

 まるゆは喜んだが、それも束の間。今度は深度調整が出来ない。このままだと、浮上してしまう。だが、そんなのはどうでもいい。今の自分は深度調整が出来ない。経験を積めば出来るだろうが、今は戦闘に参加しないといけない。隊長さんである軍曹に自分の活躍を見せつける時だ。とにかく、浮上が最優先だ

 

「ぷは!」

 

 海面に出たまるゆは素早く辺りを見渡した。場所は予定よりも外れたが、遠くで戦艦同士が戦っている。例の戦艦ル級改flagshipを知っているため、直ぐに目標を発見できた

 

「どうしよう……潜ろうにも体が浮いちゃう」

 

 浮上したのはいいが、今度は潜水出来ない事に気がついた。慌てたまるゆだが、今は戦場に向かうのが先だ。攻撃方法は後で考えよう

 

 よって、まるゆは『艦だった頃の世界』でやった事と同じように日の丸を掲げて水面を泳ぐ事にした。小さな旗を頭に付けただけだが、味方からの攻撃を防ぐためには必要な事だ。まるゆは浮上したまま戦場へゆっくりと航行していた

 

 

 

「何……アレ?」

 

 まるゆがいる地点よりも遠く離れた所に潜水新棲姫は、理解に苦しんだ。戦艦棲姫の命令によって偵察するために派遣されたのだが、前方にて突然、何者かが浮上して来たのだ。戦艦棲姫からの情報共有により艦娘である事には気付いたが、何か変だ

 

 身体が小さく、しかも何を考えているか?白昼堂々日の丸を掲げて浮上航行しているため、流石の潜水新棲姫も理解に追いつかなかった

 

「マサカ……敵ノ策略?ソレトモ『一族』ノ巧妙ナ作戦?」

 

 直ぐに沖合にいる潜水棲姫と無線連絡して状況を伝えたが、潜水棲姫も理解出来ない案件であるため答えに窮してしまった。人間の兵器である潜水艦でもこんな事はしない。しないはずだ

 

「攻撃スル?」

 

『待テ、罠カモ知レン。距離ヲ取リナガラ観察スルンダ』

 

 艦娘や浦田結衣という脅威がある以上、下手に手を出してはこちらの戦力が削れる。そのため、潜水新棲姫は遠くでまるゆを監視するだけにした。しかし、相手の足が遅いため現場にたどり着くのは予定よりも時間がかかってしまう

 

 ある程度、時間が過ぎても何も起こらないようなら、そのまま見逃そうと考えていた。今は裏切った戦艦ル級改flagshipを相手にしないといけないのに

 




登場した兵器詳細
・(X)F5U『フライングパンケーキ』
計画のみで終わった円盤翼を持った航空機。双発のエンジンを持つ。史実ではV173である試験機を開発、飛行に成功した。60馬力搭載にも拘わらず、高い性能を示して見せ、特に離陸性能についてはたった6mで離陸が出来た
その形状によりUFOとして誤認されたという逸話がある

2020年4月30日にてXF5Uは実装されました。これは私も驚きました!


・F6A『フライング・フラップジャック』
こちらは私が考えたオリジナル機体。円盤翼だが、二重反転プロペラを採用。千ポンド(500kg)の爆弾を搭載可能な戦闘爆撃機

・近接信管
電波を発信し目標の近接で作動する信管。太平洋戦争にて米軍はVT信管(マジックヒューズ)を開発し実用化させた
今でも近接信管は活躍している。対空砲弾からミサイルまであるのでありふれている
海上自衛隊でも76mm速射砲弾用の対空砲弾である05式近接信管を開発しています

近接信管と円盤航空機の正体が現れました。どちらも米軍が開発(片方は計画のみの機体)ですが、仕方ないでしょう
F5Uフライングパンケーキは戦艦少女Rにも登場したりしています。もしかすると、艦これにも実装するかも知れません
赤城が真っ先に手に取るかも
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