幻想地霊鏡〜Underground Fantasia 作:枝豆。
「お前のような中層吸血鬼に、誰が従うものか」
「ならば、無理矢理従わせるまでよ!」
ーレミリア・スカーレット,レイ・ルシフェル
彼らはまさに幻想の王と呼ぶにふさわしい存在だった。
「ルシフェル、あぶなっ・・・・・・!」
私はそう叫んだ。だが、心配は杞憂に終わった。ルシフェル目掛けて飛んでいった槍は、ルシフェルによって受け止められていたのだ。
「へえ、こんな私のことを心配してくれるとは。いやはや、嬉しいねえ」
「あ、ありがとうございます。それよりも、追っ手ってまさか・・・・・・」
暗闇から姿を現したのは、吸血鬼とそのメイド達だった。
「ああ、その通り。紅魔館の吸血鬼共だ。弱いくせに鬱陶しい、いわゆる雑魚だ」
「誰が雑魚だって?」
ルシフェルの罵倒にその吸血鬼、レミリア・スカーレットは少ししかめた顔で答えた。
「ドラクル、ハルトマン、ケーニヒ・・・・・・、それに比べてスカーレットは序列じゃ中間層ではないか。全く話にならん。だが、あの時より成長していることは認めてやろう」
ルシフェルがまるで挑発しているような口調でレミリアのことを評価すると、案の定その通りでレミリアは激昂した。
「随分と上から目線じゃない。ただの悪魔ならやり様はいくらでもあるのよ?あなた如きに・・・・・・」
「お、お嬢様・・・・・・」
話の最中で、隣にいた従者、十六夜咲夜が割って入ってきた。
「何?咲夜。あなたの小言なら聞きたくないわよ?」
「あの・・・・・・、失礼を申し上げますが、あまり挑発しない方が・・・・・・」
「ははは!私が負けるはずが・・・・・・」
レミリアがぱっと振り向くと、周りの魔族達は戦闘態勢に入っていて、彼はすでに邪悪なオーラを流していた。そのオーラは、心を読んでいなくても勝手に入ってくるようだった。
「気が変わった。レミリア・スカーレット、貴様を骨身の髄まで服従させてくれるわ!」
そう言ってルシフェルはレミリアに突進していった。
「そんな単純な攻撃じゃ、私は倒せないわよ!“神槍〜スピアザグングニル”」
レミリアによって放たれた槍は、ルシフェル目掛けて飛んでいった。
「これで、奴は死んだだろう・・・・・・」
レミリアはそう思っていた。だが、その予想は外れた。
「いつから俺が前にいると錯覚していた?」
「なっ・・・・・・!?」
彼はレミリアの後ろに立っていた。
「終わりだ。“魔符〜ヴァニッシングエルス”」
「っ・・・・・・!」
彼がレミリアから離れたその時、周りにいた人達が一斉に後ろに下がった。
「な、何でしょうかさとり様?」
お空がこの状況に不安になって、私に聞いてきた。
「私にも分からないわ。私はこの人達の心は読めないから何とも言えないけど、危険な気はするわ。現に黒いオーラはあの人から出ているから、出来るだけ離れた方がいいわ」
「分かりましたー」
そうして私達は離れた。すると私達が離れた事を確認した彼は、剣を高々と掲げた。
「この闇の力は光をも飲み込む闇。魔族をも飲み込む闇に貴様は耐えられるか?」
彼がそう言った瞬間、闇が彼を覆い、更に周囲に広がっていった。
「!?咲夜、全速力で逃げるわよ!この闇はやばい!」
「え、あ、はい!」
レミリアが咲夜との会話が終えると、逃げようとしたら、目の前に彼の姿が現れた。
「言っただろう?逃しはしないと」
悲鳴を上げる暇も与えない素早い剣の振りで、レミリアの首を斬った。
「お嬢様!」
「咲夜・・・・・・、フランと美鈴と他のメイド達を連れて、出来るだけ遠くに逃げなさい。一刻も早く紅魔館を離れるのよ・・・・・・」
「終わりだ」
レミリアが話を終えたところで、彼はレミリアを蹴落とし、レミリアは闇の中へと消えた。
「お嬢様ぁぁぁぁぁぁ!くっ!おのれぇぇぇぇぇ!」
咲夜はレミリアの命令に背き、仲間を引き連れて向かっていった。
「お前らだけは逃がしてやろうと思ったが・・・・・・、気が変わった。全力でお前らを壊す。全員、武器を構え突き進め!」
彼が周りの仲間にそう告げると、其の者達は一気に前へ前へと向かっていた。
「十六夜咲夜!お前は今何の為に戦っている!」
「お嬢様の仇討ちだ!」
「その心意気、卑しくも良し!ならば倒してみせろ!その復讐心、我にぶつけてみよ!」
まるで、相手を挑発するような口調で彼は咲夜に言った。私はその時、割って入るのは滑稽だと思ったが、案の定、割って入る必要はなかったようだ。そう、一撃、たった一回の振りで咲夜はその場に崩れ去ったのだ。
「口程でもなかったな。十六夜、致命傷は外してある。今すぐ紅魔館に戻って、ちゃんと準備してこい。・・・・・・不公平な戦いは嫌いなものでな」
「・・・・・・へえ、随分と優しいのね。悪魔のくせに」
「・・・・・・その辺の悪魔と一緒にするな。私は昔は・・・・・・、いや、何でもない」
彼は、すごく意味深長な発言をしようとしたが、あやふやにし、手に持っていた剣を納めた。
「十六夜・・・・・・いや、咲夜。お前達の出方次第では、レミリアを戻してやらんこともないぞ?無論、どうするかはお前達次第だがな」
彼のその提案に、敵は勿論仲間もそれに猛反対した。
「眼前にある敵はうち滅ぼすべきです!」
「目の前にいるのは、お嬢様を殺した張本人ですよ!?ためらうことなどありません!」
それぞれの仲間の言葉に、二人は「黙れ!」と叱責した。その威圧感のある言葉に、ものを言っていた奴らは肩を竦め黙った。静かになったのを確認した咲夜は、再び喋り出した。
「・・・・・・本当にお嬢様を戻してくれるのですか?」
「ああ、悪魔は嘘をつかないからな」
「・・・・・・では、今をもってこれより、あなた様に忠誠を誓います」
「よく言った。よし、レミリアを戻してやろう」
彼はそう言って、何やら呪文を唱え始めた。暫くして、咲夜の眼に映ったのはいつも慕っていた方の姿だった。
「お嬢様!」
「あら、咲夜。幾分振りね。あなたも死んだのかしら?」
「寝言は寝てから言ってください。ここはれっきとした地霊殿です」
咲夜がレミリアに真実を告げると、きょとんとした瞳で咲夜を見た。
「地霊殿?私は死んだはずじゃ?」
「私がルシフェルにお嬢様を生き返らすよう頼みました。“紅魔館勢力全員ルシフェルの軍の傘下に入る”という条件でですが」
咲夜は紅魔館の者達にとってはあまりにもショッキングなことをレミリアに知らせた。案の定、レミリアは狼狽え、回りの物を壊しながら、咲夜に怒鳴り散らした。
「咲夜!どうして敵に紅魔館を売った!明確が理由がなければ、今ここで」
そう言って、レミリアはグングニルを取り出し、咲夜の喉元に突き付けた。
「殺すわよ」
咲夜は唾を飲み、喉元を鳴らした。まさに緊張の極地。下手なことを言えば、主であるレミリアのグングニルによって貫かれるだろう。そのことが分かっていた咲夜は、「申し訳ありません、お嬢様。ですが、お嬢様をお助けするため、紅魔館をお守りするためにこのような過ちを冒しました。貫かれる覚悟は出来ております」と、咲夜は言葉巧みにレミリアを諭した。
「そ、そうなの?なら分かったわ、咲夜がそこまでするならそうなのね。でも、従ったはいいものの、私達はこれからどうすればいいのかしら?」
レミリアは純粋無垢な質問を咲夜に返した。咲夜はたじろいたものの、「彼の方は、黙って私に従っていればいいんだ。と、仰っていましたわ」と、瀟洒とは名ばかりではない様に、澄んだ顔で冷静に答えた。
「黙って従えって・・・・・・、私を誰だと思っているのかしら?」
「私を雑魚だと豪語しておきながら、呆気なく首を刈られて、おまけにその私に復活させられた憐れな吸血鬼だと思っているが?」
彼が現れ、レミリアにそのことを言い、レミリアはがっくしとした。
「ぐうの音も出ないわ・・・・・・」
「まあ、そう落ち込むなよ。お前を数ある位の中でも、2番目にいい位を与えようじゃないか」
彼がそう提案すると、レミリアは飛び跳ねて喜んだ。
「私にいい位を与えてくれるのかしら?」
「ああ、身分相当の位を与えよう。“聖帝レミリア”殿?」
彼がレミリアのことを聖帝と呼ぶと、更に舞い上がり、彼女の喜びは有頂天と化した。
「まあ、聖帝と言うぐらいなら服装も変えようじゃないか。そこにいる執事みたいな奴の所に行くといい。彼はここのファッション担当で、ここのあらゆるものを作っている奴だ」
「ええ、分かったわ。ほら、咲夜と妖精メイドの何人か、来なさい。あなた達も衣装替えよ」
レミリアの突然の着替え宣言により、咲夜を含めた紅魔館一同は非常に困惑した。
「わ、私達もですか?少なくとも私は今の服で十分満足しているのですが」
「馬鹿ね、折角色々変えるんだから服装も変えて見栄を張りたいじゃない?旗も作るわよ。それに、もっと大きな城壁を築いて、村も作りたいわね。そう、湖と森の一部を囲うようなね」
レミリアがそう豪語すると、さすがの咲夜もたじろいだ。
「村をですか!?そうなれば、辺りの妖精達や妖怪を倒さないといけないと思うのですが・・・・・・」
咲夜がそう心配そうにレミリアに言うと、レミリアは、「これからよ、心配してくれてありがとうね。でも、心配は不要だわ。何だって、あなたが付いているんですもの」と彼女の心配を振り払うように言った。
「お、お嬢様・・・・・・」
「というわけで、あなた達に従うわ。早速だけど、命令を聞こうじゃない」
レミリアが彼に命令を促した。わざわざ自分から言わなくも・・・・・・。
「まあ、命令をするよりもまずはパーティーだ。紅魔館のメンバーを集めてこい。親睦会みたいな感じのをするからさ」
彼は親睦会という名の服従宣言式を行うと皆の前で言った。静観していた私はすかさず突っ込んだ。
「会場はここ?そんなに人数入らないわよ?第一紅魔の奴なんて、」「もちろんここだ。まあ、人数は何とかするさ。それと、今から紅魔の奴も家族だ。そんなことをいってはいけないぜ、地底の王女さん」
彼は私の発言に答えた後、頬に軽くキスをした。それをされた時、周りが一斉に歓声をあげていた。・・・・・・もの凄く恥ずかしい。そうじゃなくても、顔が赤面してるから、きっと私は恥ずかしいのだろう。だけど、ここまでしてくれたのは彼が初めてか。私はいつも恐れられ嫌われ、遂には地底にまで追いやられた。でも、彼は私に優しくし、キスまでしてくれた。・・・・・・彼とお付き合いがしたい。私はそう思うようになっていった。
「そうね・・・・・・、あなたの言う通りよね。分かったわ、あなたに従う」
「お?急に物分かりが良くなったな。何か悪いものでも食べたか?」
「食べてる暇なんかないわよ。それと、後で私の部屋まで来て。言いたいことがあるから」
私がそう言うと、「あ、ああ。分かった」と、少し驚いているようだった。
「絶対に忘れないでよ。・・・・・・真剣な話なんだから」
「分かったよ、絶対に忘れない」
私はそんな風に、彼と悪魔の契約を結んだ。それが追い追い大変なことになるとは、私は知る由もなかった。
二話「魔族闘争」いかがだったでしょうか?
まさに吸血鬼と悪魔、幻想の王と呼ぶにふさわしい存在ですね!
今回は地霊殿メンバーの存在感が薄めなので、地霊殿メンバー好きには申し訳なく思っています。次回は、地霊殿、地上メンバーが大勢出ます。
次回もお楽しみに!