伝説になんてなれないけれど。   作:puc119

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基本は3つ。4つはたまに

 

 

 俺が人間だった時代、それこそハンターなんて数え切れないほどの人数がいたんじゃないかと思っている。

 それだけの数のハンターがいたんだ。そんなハンターたちが使う武器だってたくさんある。大剣や双剣などの切断武器。ハンマーや狩猟笛といった打撃武器。そして、ヘビィボウガンや弓などの遠距離武器など色々な種類があった。

 それだけの種類があるんだ。そりゃあハンターの戦い方なんていくらでもある。けれども、そんなハンターの戦い方だって基本的な動きは同じだったはず。

 例えば、俺の使っていた大剣は相手の隙を見て最大まで溜めた一発をぶち込み続ける。そんな戦い方が基本だった。そして、そんな基本的な動作っていうのは、武器種ごとにほとんど決まっていたはずなんだ。

 基本的な動き。いわゆるテンプレ。それは、過去のハンターたちが積み重ねてきた経験を基にした、より効率的に戦う方法。

 

 けれども、そのことに例外もあった。

 普通のハンターとは全く違うような戦い方をするハンターたちが確かにいた。

 

 狩技と呼ばれる特殊な動きを多用しながら戦うストライカースタイル。

 モンスターを踏みつけ跳躍し、空中での戦いを得意としたエリアルスタイル。

 敢えてモンスターからの攻撃を誘い、それを回避やガードすることでカウンターのような立ち回りをするブシドースタイル。

 なんだかよく分からんが、めっちゃタルを振るスタイル。

 そして、一定の攻撃や回避をすることで、爆発的に自分自身を強化するブレイヴスタイル。

 

 俺たち普通のハンターの戦い方はギルドスタイルと呼ばれていたが、そんな特殊な動きで戦うハンターたちがいたんだ。

 しかしながら、その特殊な動きができるハンターは少なく、またやろうと思ってできるものでもない。こればっかりは生まれ持っての才能があるかどうかってだけ。

 

 そして、どうやらこの少女――シャルルリエはそんな特殊な戦い方のひとつである、ブレイヴスタイルだったらしい。

 全武器に共通するブレイヴスタイルの特徴だが、とにかく納刀が遅い。また、基本的な動作もできないものがある。大剣でいうとソレが溜め斬りに当たった。

 

 一見、ブレイヴスタイルはデメリットしかないスタイルに感じる。納刀が遅く、溜め斬りのできない大剣なんて本当に火力が出ないのだしな。

 けれども、その遅い納刀中は相手の攻撃をイナし、回避することができるんだ。さらに、一定量攻撃をし続けることでブレイヴ状態へと変わる。そのブレイヴ状態がヤバい……とは聞いているが、どんなものなのやら。

 

 今までのシャルを見ている限り、ヒントなぞいくらでもあった。それでも俺が此処まで気づくことができなかったのは……まぁ、俺がブレイヴスタイルのハンターを見たことがなかったからだろう。

 十数年ほどはハンターをやっていたが、ブレイヴスタイルで戦うハンターを直接見たことは一度もなかった。噂で聞いたことがあるだけで、本当は存在しないんじゃないかって思っていたくらいなんだ。エリアルスタイルやブシドースタイルのハンターはそれこそ、嫌になるくらい見てきたんだがなぁ……

 

 

 

 

「よーし……なんかテンション上がってきたっ!」

 

 ロアルのローリング攻撃を見事にイナしてから叫んだシャル。

 しっかりと納刀も完了し、さらに、その身体から青白いオーラのようなものが吹き出した。

 たぶんだが、これがブレイヴ状態ってやつなのだろう。俺も実際に見るのはこれが初めてだ。

 

 力の解放により右腕から青い光を放ち、ブレイヴ状態となったことでオーラを纏う少女。その姿はやたらとカッコイイ。

 

 このロアルドロスと戦い始めてもうどれくらいの時間が経ったのかも分からない。けれども――そろそろ反撃開始といこうか。

 

 まぁ、とはいえ、ブレイヴ状態で何ができるのか俺には分からん。この状態なら強いとは思うんだが……

 

 俺がブレイヴスタイルに対してそんな状態だったため、シャルにできるアドバイスもない。そうだというのに、シャルは迷うことなく、ローリング攻撃を終えたロアルへ向かって俺をしっかりと掴んだ。握る手に力を込め身体を大きく捻ってから姿勢を下げる。そこから振り被るように構え――

 

 溜めた。

 

 それは普通の溜め斬りとは違う、強溜め斬りと呼ばれていた動作。しかし、普通は抜刀状態からその姿勢に移ることはできないはず。けれども、シャルはその強溜め斬りの動きをした。

 

「そのまま限界まで溜めろッ!」

 

 シャルの動作を見て、何かを考える前に叫んだ。この状況に頭が追いつかない。けれども、シャルのしている動作は俺の知っているものと同じ強溜め斬り。確かに、いきなりその動きをしたことには驚いたが、知っている動きだというのならできるアドバイスもある。

 

 溜め始めたことで、俺の身体が1回、2回と光を放ち輝いた。

 そんなシャルへ真っ直ぐと向くように振り向くロアルドロス。

 

 そして、3回目の光。

 

「いっけぇぇえええっ!!」

 

 そんなシャルの雄叫びとともに、ロアルドロスの顔面へ大剣最大の攻撃が直撃した。

 

 今までの溜めていない攻撃とは明らかに違う手応え。最大まで力の乗った渾身の一発。

 その攻撃はいくら大型種といえ、相手の命を叩き潰すのに十分なものだった。

 

「ふっふーん、どうだ、このやろー!」

 

 最大まで溜めた攻撃に爆発も乗ったことで、ロアルの顔面はそりゃあもう酷いことに。それがブレイヴスタイルのおかげなのか、この大剣の力のおかげかはまだ分からない。けれども、この戦いで得たものは本当に大きい。

 こりゃあ、また教えなきゃいけないことが増えたな。俺だってブレイヴスタイルに関しての知識はほとんどない。色々と試しながらやっていくとしよう。

 ま、そんなことだって後で考えれば良いこと。今ばかりはこのモンスターを無事討伐できたことを喜ぶべきだろうよ。

 

「……はぁ、疲れた」

「お疲れ様シャル。よくやったぞ」

 

 群れを形成し、大量のルドルスを引き連れることの多いロアルが単体でいてくれたこと。鬱陶しい水弾攻撃をしてこなかったこと。水辺から離れた陸上で戦えたこと。そもそも、そのロアル自身の強さがどれだけ高く見積もっても上位レベルだったこと、などなどと運が良かったことには違いない。

 それでも、ほぼ初めてとなる大型種を相手にアレだけの動きができ、さらに討伐までしたんだ。それは十分すぎる結果。そのことは素直に褒めてあげることだろう。

 

「あっ、剥ぎ取りしなきゃだ。んー……ねぇ、ししょー、コイツって美味しいの?」

 

 知らんがな。ロアルを食べた話とかも聞いたことがない。

 てか、え? なに? もしかしてコイツを食べるつもりなのか? そりゃあ倒し、命のやり取りを終えたのだし、その相手をちゃんと食べてやるってのは大切なことかもしれんが……いや、コイツを食べるのは止めておいた方が良いと思うぞ。コイツの亜種なんて毒を持っているのだし。

 

「あー、食べるのは止めておけ。その代わりに素材をもらっておけば良いだろうさ」

「そっかー、美味しくないのかー……うん、じゃあそうする」

 

 今までの暮らしが要因なんだろうが、基本的にシャルは美味しく食べられるか、そうではないか、で物を分けるらしい。

 この世界に美味しいものはたくさんあるんだ。わざわざ味も分からない物を食べる必要はないだろう。

 な~んて思ってしまうのも俺が恵まれていたって証拠なのかねぇ。

 

 俺の言葉を受け、シャルはロアルドロスの解体を始めたが、ロアルの肉や内蔵などには手を出さなかった。ロアルを倒したのだし、できれば狂走エキスがほしいところだ。ただ、残念なことに今はその狂走エキスを入れておくものがない。空きビンでも持っていれば良かったんだがなぁ。

 結果的にシャルが手に入れたのは、水獣の爪と鱗。そして、海綿質の皮をいくつかとなった。ただ、せっかく手に入れた素材も今は利用することができない。爪や鱗くらいならまだ良いが、海綿質の皮は大きいし邪魔になりそうだ。水分が抜ければもう少し運びやすくなったりするだろうか。

 

 って、ああそうだ。大切なことを忘れていた。

 

「おい、シャル」

「んー? どうしたの?」

 

 海綿質の皮が気に入ったのか、ペシペシと叩いているシャルへ声をかける。

 まぁ、その皮って弾力性もあり手触りが良いもんな。俺も嫌いじゃないぞ。

 

「持っていく素材は3つだけだ」

「えー、なんでさ」

 

 正直、こればっかりは俺もよく分かっていない。でも、ダメ。剥ぎ取った素材は3つだけ。たまになら4つだったり、大型種なんかはもっと持っていっても許すが、基本は3つなんだ。

 前回のケルビの時のように生きるために必要だったら仕方無い。しかし、今回は違う。別にロアルの素材は生きるために必要ってわけじゃないんだ。倒した礼儀として剥ぎ取るのは良いとして、その素材は3つまで。

 

「……前も言ったがハンターってのはな、自分のことばかりじゃなく、この世界――自然のことを考えてやらなきゃいけない。だから、素材を取りすぎるのはダメだ。最低限の素材だけもらい後は自然に還すのが礼儀なんだよ」

「そうなんだ……うん、わかった。じゃあ鱗と爪と皮のひとつずつにする」

 

 ……今、とっさに考えたものだったが、シャルちゃんったら納得してしまった。騙しているつもりはないのだが、なんだろう……罪悪感でヤバい。

 あと、ちょっとこの子、素直すぎやしませんか? もう少し他人を疑っても良いと思う。悪い人に騙されやしないかお兄さんは心配です。まぁ、基本的には俺がついているわけだし、その辺りのことは俺がフォローすれば良いんだけどさ。

 

 さてさて、どうにかしてロアルドロスも倒すことができたんだ。確かに、手に入れることのできた素材は少ない。しかし、この戦いで得たものはずっとずっと多いはず。そうだというのなら、それだけで十分だろう。

 

 それじゃ、また旅を続けるとしましょうか。

 

「ねぇ、ししょー」

「うん? どした?」

 

 何処か遠くの方を見ながら、まるで呟くように小さな言葉を落としたシャルルリエ。

 

 

「ここって……どこ?」

 

 

 シャルに言われてから慌てて辺りの様子を確認。

 ロアルドロスとの戦闘のため、シャルが水浴びをしたあの川からはかなり……てか、もう川が見えないくらい離れてしまった。しかも、川から離れるのに必死だったせいで、どっちから俺たちが来たのかも覚えていない。

 

「あー、何処だろうな。ここ……」

 

 旅を始めて5日目にして迷子。道のりは長い。

 

 

 

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