チート能力持ちのありきたりな冒険   作:ぎが

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はい、かなーーり時間が空いてしまいました。ぎがです。
初詣行きましたか?私は行かなかったです。
いつから私はお年玉あげる側になったのか。
遅いですが、みてくれる人がいるので頑張ります。


23話 決戦前日

スウたちは、一度ギルドのルームへ戻り、話をしていた。

 

「みんなに話があるんだ。」

 

「な、なんでしょうか?」

 

「もったいぶらないで早く言いなさいよ」

 

皆、待たされたこともあって気になっているようだ。

 

「クエストの依頼がきたんだ。敵はかなり強いみたいだ。」

 

「本当ですか!?できたばかりのチームなのにすごいです!」

 

ルナが嬉しそうに話す。

 

「いや、事はそう悠長じゃないんだ。頼んできたのはこのギルド最強の冒険者なんだ。」

 

「最強の...ってもしかしてガギアーノアルベルト!?生きた伝説の槍使い!?」

 

ランが目を丸くして驚いている

 

「無理よ無理!あいつに倒せないやつを私たちが倒せるわけがない!」

 

「いや、僕はこのクエスト受けようと思ってる。理由があるんだ。」

 

「理由...?」

 

「敵はおそらく異世界人。他の世界から来た人間なんだ。」

 

一瞬皆ピタッととまり、そしてルナが口をひらく。

 

「い、異世界人...ですか?さすがにそれは...信じられないというかなんというか...」

 

ルナは苦笑いをしながら言う。

 

「ああ、みんなぶっ飛んだ話だと思うだろう。だがこの話には根拠があるんだ。」

 

「根拠?つまり敵が異世界から来たって言う証拠?」

 

「ああ。その根拠は...」

 

「僕も異世界から来たからなんだ。」

 

またの静寂。シン、としてしまう空間に、なんとも言えない嫌な感じがする。

 

「僕は元々、別の世界の住人だったんだ。色々あって今はこっちの世界で生きてくことになった。」

 

「それって...転生...?転生魔法なんてそれこそ神の領域よ...」

 

ランが震えながら言う。

 

「魔法かどうかはわからないが、僕は間違いなく違う世界で生きていたし、これから向かう敵もおそらく僕と同じなんだ。」

 

「わ、私はそれでもスウさんはスウさんだと思います...!」

 

「私もです。スウ様が行くと言うならついて行きます。スウ様が元々どのようなお方であっても、信じています。」

 

「みんな...」

 

嬉しさで涙がこみ上げる。今思えば、知っているものなど何もないこの地で生活して来たことはスウにとってストレスになっていたのだろう。

 

だが、仲間が信じてくれている、という安心感はスウの背中を押してくれている気がした。

 

「ありがとう、みんな!おねがいだ。僕と一緒に冒険しよう。」

 

「あたしにどーんと任せなさいな!」

 

「私も、力になれるよ!」

 

5人の心が通じた、と思った。

 

「ああ、僕もみんなを信じてる。行こう。そして、救ってやるんだ。」

 

そう、救う。間違えてしまったそいつを。僕かもしれなかったその存在を。

 

「救って、やらなくちゃ」

 

五人は、その日は準備に徹することにした。

 

「冒険に行くのは明日だ。みんな、必要なものは今日のうちに揃えよう。」

 

「それがいいですね。私、アイテム買ってきます。」

 

「なら、ついて行くよ。僕も買うものあるし。」

 

五人はそれぞれ別れ、必要なものを揃えに行った。

 

スウとルナは、ギルド近くの冒険者用の店へ足を運ぶ。

 

「やあ、らっしゃい!おや、デートかい?安くしとくぜ!」

 

気の良さそうなおっさんが、楽しそうに話す。

 

「ああ、デートは明日なんだ。その準備をしようと思ってね。この子に合う、この店で最高の鎧をくれ。値段は問わないよ。」

 

そう言うと、店主はスッと真顔になる。

 

「兄さんも人が悪い。任せてくれ、その為の冒険者用品店さ。」

 

「す、スウさん?私、自分の鎧くらい自分で買いますよ?」

 

ルナは少し戸惑っているようだ。

 

「いや、妥協はできない。いくらかかってもいいからいい鎧にしないと。万が一があってからじゃ遅いんだ。」

 

スウのいつになく真剣な表情に、ルナは押し黙る。

 

「兄さん、お嬢ちゃん、こっちへ。サイズを合わせよう。」

 

二人は、奥の工房へと足を運ぶ。

 

「この鎧は、妖精の加護が宿っている。魔法への耐性もあるし、物理もしっかり耐えてくれる。なにより、布のように軽いんだ。」

 

「へぇ、すごいな。持ってみてもいいか?」

 

スウはその不思議な鎧に触ろうとする。

 

「ああ、いいぜ。ただ、持てるならな。」

 

そっと触れ、金属とは思えない柔らかな肌触りに感動しながら、その鎧を持ち上げようとする。

 

「んっ、ぐぐっ!!お、重い!?少しも動かないぞこれ!布のように軽いんじゃないのか!?」

 

その鎧は、とてつもなく重かった。まるでその空間に固定されているかのように微動だにせず、持ち上げるどころか動かすこともできなかったのである。

 

「その鎧はこの店で最高と言っていい。そんな鎧が今日まで売れ残ってる理由がそこにあるんだ。」

 

「その鎧には妖精の加護があるって言ったよな?その妖精は鎧の中で生きていて、自分の気に入ったやつにしか着れないんだ。特に男は全くダメだな。この鎧を運ぶ時はいつも嫁に運んでもらってるくらいだ。」

 

そんな鎧、買いたくても買えないだろう。着れない鎧などただの鉄塊に過ぎない。

 

「嬢ちゃん、着てみな。もし着れるようなら、この鎧はくれてやろう。元々そういう約束で譲り受けたものなんだよコレは。」

 

着れる人に譲る。その破格の条件でも売れ残り続けるということは、この鎧にいる妖精はとても望みがお高いと見える。

 

「は、はい...多分ダメなんでしょうけど...」

 

ルナは少し残念そうに鎧に手を伸ばす。

 

「まあ、これがダメでもうちにはいいものが揃ってる。その中から選んでくれれば....って、え?」

 

店主が素っ頓狂な声を出す。その目線の先には。

 

「る、ルナ!それ...!」

 

「えっと...これであってます?」

 

そこには、ルナが難なく鎧を着て、くるりと回って見せる姿があった。

 

「これ、本当に軽いです。大きさもピッタリですし、なによりすごい安心感。包まれているようです。」

 

「な...本当に着ちまうとは...がはは!嬢ちゃん!気に入ったぜ!その鎧をはくれてやる!それと...こいつもだ。」

 

店主は近くにあった古ぼけた大きな箱を取り出す。

 

「こいつはその鎧とセットで使う物だ。ただの剣のように見えるが、妖精の加護はこの剣まで伝わるようになってる。同じ材質で作られてるから当然軽いし切れ味は折り紙付きだぜ。」

 

「ほ、本当ですか!?でも、いいんでしょうか。こんなにいいものを頂いてしまって...」

 

ここまでいい鎧と剣だ。売ってしまえば、とてつもないお金になるだろう。

 

「いいんだよ。こいつらが嬢ちゃんを選んだんだ。可愛がってやってくれ。」

 

「よかったな、ルナ。これなら安心だ。」

 

ルナは心底嬉しそうにしている。店主の優しさに触れたことが、とても嬉しかったのだろう。

 

「はいっ!私、頑張ります!妖精さんも、よろしくおねがいします!」

 

ルナが冗談まじりにそう言った。すると。

 

鎧の胸の辺りの紋章が、淡い光を放ち、返事をするように点滅した。

 

「ほ、本当に生きているんですね...!一緒に頑張りましょう!」

 

紋章はより一層強い光になりルナの言葉に反応する。

 

その暖かさは工房を包み込む。

 

二人は店を後にし、3人と合流してギルドで寝る。

 

決戦は、明日である。

 

 

 

 

 




はい、後書きです。
妖精の鎧は胸におおきく紋章のついたものです。
兜はなく、上半身はゴツい金属でできています。
手首までを包み込んでいますが、手は剣を握りこむために鎧をはありません。
下半身は腰を守るために丸みを帯びた鎧がついていて、すねからしたをこれまたゴツい金属が覆っています。
剣の柄には鎧と同じ紋章がついており、ルナの元々持っていた剣より少し長いくらいの両刃剣です。
妖精が生きたまま住んでおり、気に入ったものにしかその鎧を着せることを許しません。
ちなみに、かつて暴君とまでよばれた冒険者が無理やり着込んだ際、鎧は拒絶反応を起こし、冒険者を押し潰してしまったことがあります。
それ以来妖精は男が嫌いになったらしく、男は動かすこともままなりません。
またどうぞ。つぎはバトルですよ。

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