Fate/ Ke Mo No Friends   作:どたばた

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フレンズさんはこんな事を言わない!
サーヴァントはこんなこと思わない!

というそこのあなた。

「たーのしー」の精神で何卒お許し下さい…

あと一話も少しだけ手直ししました。


ふゆきのたたかい

その日、聖杯戦争の真っ只中のある日、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの城に幻想種の獣が訪れた。その幻想種はいきなり扉を叩くと同時に

 

“ここには強い戦士がいるのだろう!”

“是非1手仕合たい!”

 

と喚いている。

 

もちろん聖杯戦争であれば故に、アインツベルンの主従共々警戒しこの獣を撃退するのであるが、どうもこの獣は敵意というものが無い。見るもの全て殺してやろうとか、討滅してやろうとか、そういう気配がまったくないのだ。こちらの毒気を抜かれてしまうのも無理はない。

 

もとより魔術の世では珍しい幻想種ではあるのだが、イリヤスフィールは人語を解する獣を珍しく思うと同時にひどく面倒だと思う。今は戦いの真っ最中である。我が下僕である英霊をくだらん力試しなどに使っている暇は一切無い。話をして楽しく語らうだけならばまだ許せるものの、やはり眼前の獣は折れる気は無い。どうしても、どうしてもと頼み込んでくる。そして少女は歳にも似つかない大人の対応をしてしまう。

 

“今はまだ昼”

“戦いは夜行うものなので、また夜に来てほしい”

 

獣は不思議とそれを聞き分ける。そうか夜行性か、いやすまなんだ、と去っていった。イリヤスフィールは従者に強めに幻惑の魔術を城周辺にかけておくようにと命じる。

 

しかしその夜、アインツベルンの城をまた獣が叩く。獣は夜になったから参じたと云う。イリヤスフィールは、まだ術が弱かったか、よくたどり着けたなと思うが、おおかた感のいい幻想種であれば可能なのであろう。

来てしまったからには仕方がない。面倒ではあるが引き下がらないのであれば仕方がない。怪我をすることになるか、それともつい殺してしまうか、どうなるかは知らないが下僕の英霊に相手をさせるとしよう。

 

狂戦士よ、獣を追い出しなさい、とだけ告げる。

 

さてアインツベルンの城にいるのはもちろんヘラジカである。単純に彼女は戦いを求める。しかし彼女は勝ち負けは気にしない。共に拳を合わせ語らうことが好きなのだ。その思いが暴走してしまうことは否めないが、少なくとも人間が意味する敵意という思考は無い。

 

ヘラジカの前には主の命によって視界した一体の狂戦士。

人から見ればまるで山を思わせる岩のような大巨人。

ギリシャ神話に於ける最強最大の戦士。

打ち立てた武勇は数れず、星の名を与えられた真の大英雄、ヘラクレスである。

 

この狂戦士は幻想種をよく見抜いていた。だから油断した、油断せざる負えなかったのである。

我が主に手を出すわけでもなし、害になるような獣ではない。むしろこの狂戦士の主に対する思いならば油断というものをしなければならないのだ。

 

ヘラジカはいきよいよく飛び出し狂戦士の足にしがみつく。とはいえここから何ができるというのか、未だ善悪定かならぬ幼い主の前で、敵でもない獣の血を撒き散らし、その目を汚すことはない。イリヤスフィールも戦いを見てはいるが、興味があるというわけでは無い。むしろ早く終われと思っているだろう。

 

 

 

だからその時、足元のヘラジカはこうぼそりとつぶやくのだ。

 

“君は見かけによらず”

“少し重いな”

 

 

 

第一、二次聖杯戦争が行われた頃、1847年にドイツの生物学者クリスティアン・ベルクマンが提唱した“ベルクマンの法則”という物がある。端的に言ってしまえば、寒ければ寒いほどその地に住む恒温動物は大型化するというものである。

この星が与えた厳しい寒さという試練を耐え抜くために獣たちが経た生物の進化だ。

 

相対する狂戦士。

 

北の大地が生み出したヘラジカにとってみれば

 

北の大地では見慣れた体躯で

 

北の大地にはもっと巨大な獣もいることだし

 

北の大地だとそれほど珍しくもない。

 

だから、狂戦士の体も、浮く。

 

狂戦士の足が抱えられ上げ、宙に浮いたと同時に幼子のごとく尻もちをつく。

砂埃が舞い上がるわけでもなく衝撃波が出るわけもなく “どしん” と尻もちをつくのだ。

 

“まずは1勝だな”

 

とヘラジカは云う。イリヤスフィールに向かって満面の笑みで告げるのだ。

そして、一息おいてイリヤスフィールは答える。負け惜しみと言われるかも知れない。

彼女も彼も、試練というものをへてこの冬木の地にたっているだけに言わなければいけない。

それ故に、その言葉にはだんだんと熱を帯びる。

ヘラジカの気にでも当てられてしまったのであろうか。

 

何故か段々と楽しくなってくる。

 

だから彼女もまた動物なのだ。

 

ホムンクルスと言うような訳の分からないものではない。

 

勝ちたいというその精神が

 

戦いを諦めないというその本能は

 

まさしく動物である。

 

今のは油断していただけ。

本当はもっと強いんだから。

世界で一番つよいのは彼なんだから。

私たちはあなたよりきっと強い。

次からもうあなたは勝つことができない。

 

その言葉に明確な熱をもたせて、魂に力を込めて少女は吠えるのだ。

 

“ヘラクレス!頑張って!”

 

 

 

*************************************************************

 

 

 

 

場所は変わり冬木の大橋。青の英霊と一体の幻想種は相対していた。

一体は先日衛宮家を強襲した英霊、クー・フーリンである。もう一体はジャガーだ。

 

2人は話す。ジャガーにしてみれば友を襲われるわけには行かない。青の英霊としてみれば、かなりの不本意であはるがジャガーの友を亡き者にしなければならない。なので話はいつまでたっても平行線のままである。

 

ジャガーは答える。

 

“腹が減っているわけでもなし”

“縄張り争いをするわけでもない”

“争う訳が解らない”

 

命のやり取りは生きるためだけの事。常をもって大地との戦い、肉食獣との戦いであるとするヘラジカとは異なる考え。南の獣のそれもまた真理である。

青の英霊も一理あるとは思う。戦いを追い求めるその身ではあっても、弱き者の命を進んで奪うような意味なき戦いなどごめん被るところ。しかし悲しいことに望まぬ主の命がある。聖杯戦争という型枠の中の彼にとってはどうしようもないのだ。

 

ここでジャガーは名案をだす。

 

“君は速い”

“私も速い”

“ならお互い速さで競おう”

 

半神半人の大英雄クー・フーリンにとってまさに運命の日である。

いやはや、ならばそうしようと。

そして1人口の中でつぶやくのだ。それは今日だったか、と。

 

戦人である彼は、そもそも武人である。では武人とは武を極めんとする者である。原点に帰ればまさにその通り。戦いを求める思い。それは願いであると同時に、過程でもあり手段でもある。

 

我が師、スカサハから伝授されし槍の道。

 

おそらくその到達点の一角を、今日この時に踏破できるかもしれないのだ。

 

それは速さ。

 

術や技でもなく、ただ速ければよい。単純であるが故に到達困難な頂き。

柳洞寺山門に住まう英霊は、その速さの頂きを超えるためだけに宝具を生み出している。

 

ジャガーという獣。

その名の由来は南アメリカインディアンの“ヤガー”という語源に遡る。

 

その意味は “一突きで殺す者”。

 

眼前の獣の速さは知っている。剣林弾雨をくぐり抜け、一部のすきを見つけ勝利するような相手ではない。ただ一撃、たった一撃で全ての決着がつく相手である。一の槍、ニの槍なぞ存在しない究極の戦い。

 

面白い、まさに面白い。今日とは思わなかったがこれも戦いを望む身。都合ができた時など待つほうがおかしいのだ。獣とはまさにその体現。

 

嬉しさのあまり口が滑り、青の英霊はつい口走ってしまう。

 

“向かい合う身、何を持って速さの決着とする?”

 

ジャガーは答える。

 

“もちろん先に触った方だ”

 

それはそうだと笑う。つまらないことを聞いたと。

しかし常人が聞けばそれは禅問答に近い。

 

相対する二体が突し触る。どちらが早く触れるか。

 

どちらも向かっていくのだからどちらも触る。先か後か、などあるのだろうか。

 

しかし超えた者、超える者にとってはその先は解るのだ。

 

さあ始めようと。お互いが構えをとる。相対する獣はネコ科動物特有の跳躍の構えを取る。

青の英霊も構えをとる。

摩耗した記憶の中、師スカサハからであったかすら覚えていない、初めて槍というものを持ったときと同じく中段の構え。

 

 

そして互いに時を合わせる。

 

青の英霊の視界から色が消え、白黒のみの世界が広がる。

 

音も聞こえなくなる。

 

手にした獲物の重さも消える。その名も忘れる。

 

宝具とはなんであったか。

 

そんな物はどうでもいい。いま手にしている獲物が木の槍、石の槍だろうとなんでもいい。

 

ただ相手より早く突けばいいだけだ。ただそれだけ。

 

その突きは、おおよそ人の塩基配列を持つ者の最高到達点。

人が神と交わり、誓いを立て、英霊となった暁の果に得られる速さだ。

 

 

 

*************************************************************

 

 

 

人類最古の王、英雄たちの王、ギルガメッシュは1人思う。

 

王とは何であるか。

 

かつて戦った王と呼ばれている男がいた。征服王と呼ばれていたと覚えている。臣下全ての思いを抱え東の地を目指していたらしい。我が強き男であると認めるに値する英霊であった。たしかこの現世においても忠臣を得ていたはず。

 

彼は王ではない。

 

真の王であれば何故征服などする必要があるのか?

全ては王の領地ではないのか?

 

 

かつて、そして今も戦う乙女がいる。過去をやり直そうと必死に足掻き、聖杯にしがみつく、哀れではあるが可憐な乙女である。ブリテンの王と言っていたか。

 

彼女は王ではない。

 

ブリテンの王とはこれいかに。ならば他の国の王もいるとでもいうのか?

 

 

もっと単純な話。王はただ1人いればよい。

 

 

 

古今東西、あまねく全ての財を手に入れた王は我ただ1人のみ。

雑種たちが喚こうがそれはあるのだから。

この地は全て我のもの。

雑種たちが喚こうがそれはそう決まっているのだから

 

 

だが先の2人をみて思う。面白くない、つまらないという思い。

 

ときが流れるに連れてこの地球と云う星は変わっていく。人間の営みは形を変え、新しい世が次々と生まれていく。ならば何故、こんなにも地は小さく色あせていくのか。人間が小さくしていくのか。人間がつまらなくしていくのか。形ある話ではなく、我の物であるのにだ、大地が、海が、天が狭くなっていく気がしてならないのだ。

 

征服王と呼ばれた男は夢半ばで倒れ、その生を終えたという。

 

地で王は我ただ1人のみ。

 

しかし何故か惜しいとも思ってしまうのだ。

 

だから戯れに眼前の獣に云ってしまう。

 

 

“領土も城も持たぬ獣が何を血迷う”

 

 

英雄王ギルガメッシュは1体の幻想種の獣と出会う。

 

それはライオン、獅子である。

 

獅子の幻想種といえどもたかが獣、王の財宝を無尽蔵に持つ英霊とは勝負にならぬと。

 

慢心である。

 

この慢心のおかげで、英雄王はこの地球という星、それそのものを思い出す。

 

 

獅子の乙女はその清く澄んだ声で、高らかに唄い、高らかに吠えるのだ。

 

 

“大地が我が領土”

“星の下が我が居城”

 

 

心地よい風がそよぐ。

古今において、我にここまで吠えた者はいたであろうか?

古の英雄英傑でさえ、我にここまで言い放った者ははいるか?

今の世ではもう見ることは出来ない、あのどこまでも続く広い大地を見渡しているよう。

 

そして空気が一変する。

 

この瞬間、極東に住まう全ての獣が震える。

 

まさしく真の狂獣が発する低き唸り声で、ライオンは英雄王に断罪の如く告げる。

 

 

“なればこそ、我が子らに”

“手を出すな”

 

 

そうだ、全ては強いものが王なのだ。大地は王のもの、その全ての生ける者は子。

 

大地は狭くなったのかもしれない。しかしそれは現世の人間が勝手にそうしているだけのこと。

 

ライオンは思わない。

 

我も今得心がいった。その点では獣を褒めてやってもいい。

 

だから決着をつけるとしよう。

 

どちらかがこの星の王なのだから。

 

 

 

 

 

 




このお話は短編小説です。

来週で完結ですのでおおめに見ていただけると。
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