そして質がさらに落ちました・・・。
「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりで良い感じですね!」
山田先生、正直あんまりおもしろくねぇよそのシャレ。
でもクラス中も盛り上がってるからいいか。結束力があるのは良いことじゃ。
ただ一人、この状況を楽しんでいない奴がいた。
もちろん、あの男だ。
「先生、質問です。」
一夏が挙手する。貴様に拒否権などないと言うのに。
「はい織斑くん。」
「俺は昨日の試合に負けたんですよ?しかも二連敗ですよ?なんで俺がクラス代表なんですか?」
まあもっともな質問だな。だがやはり、拒否権など与えぬ!
「それは―」
「それは!」
「俺と!」
「わたくしが!」
「「辞退したからだ(ですわ)!!」」
俺とセシリアが抜群のコンビネーションで立ち上がりそう告げた。
セシリアはいつもの腰に手を中てるポーズで決めている。俺はどこぞの巨大ロボの如く腕を組み、仁王立ち。
一夏は放心したように俺達を見ている。
「まあ、勝負はあなたの負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手だったのですから。それは仕方のないことですわ。」
俺に負けたことには触れないのな。
まあそこはセシリアのプライドだろう。
「それで、まあ、わたくしも大人げなく怒ったことを反省しまして。」
「こらセシリア。それだけじゃないだろ?」
「う!」
言わなきゃいけないことはちゃんと言わないと。
「そ、それと。クラスの皆さんに対して気を悪くする事を言って、申し訳ありませんでした。」
ペコリと頭を下げるセシリア。
うんうん。ちゃんと言えてお兄さんは嬉しいぞ。兄じゃないけど。
教室の中も一瞬ポカンとしていたが、なんだかほっこりした雰囲気になっている。
「んん!それで一夏さんにクラス代表を譲ることにしましたわ。やはりIS操縦には実戦が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いに事欠きませんもの。」
よしよし、一夏を名前で呼べたな。あいつに近づくためにはまずファーストネームで呼ぶことが大事だと教えておいたのだ。ま、それで本当に近づけるかはあの朴念神次第だが。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!なら二勝した旺牙はどうなるんだ!?勝ったとはいえ旺牙も操縦時間は変わらないはずだろう!?」
ほう。俺に矛先を向けてくるか。
「一夏、お前、守るために強くなりたいって言ったな。ならなおさら強敵たちとの実戦経験をつむことだ。お前はまだまだ弱い。だが、だからこそまだまだ上に行ける。そのための試練だと思っておけ。」
「いや、なんだか納得いかないんだけど。」
「それとも何か?俺やセシリアに吐いた啖呵は口だけだったのか?」
「う、それを言われると・・・。て言うか、旺牙は何時からセシリアを名前で呼んでるんだよ。」
今は関係ないだろう、と思ったが説明してやろう。
「俺とセシリアは『好敵手』と書いて『とも』と呼ぶ仲、友情で結ばれたのだ。」
「野蛮な風習と思っていましたが、悪くはありませんわね。」
ポカンとしてらっしゃるが一夏くん。今は君の問題なのだよ。
「そういうわけだ。何度も言うが強くなりたいなら経験を詰め。最低でも俺より強くなれるようにな。」
「なんだかいまいち納得いかないなあ・・・。」
納得いこうがいくまいがそれがお前の運命だ。諦めろ。
「そ、それでですわね。わたくしのように優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間がIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を遂げ」
バン!と机を叩く音が響く。立ち上がったのは箒だった。
「あいにくだが、一夏の教官は足りている。私が、直接頼まれたからな。」
やけに『私が』を強調する箒。その様子はやけに殺気立っている。
さあ始まりました、一夏争奪戦第一試合。
正直これが見たくてセシリアをけしかけた部分もある。
趣味が悪い?それが何か?モテない人間からすれば他人の修羅場は蜜の味なんだよ。リア充爆発しろとか思ってるんだよ。
「あら、あなたはISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何かご用かしら?。」
おおっと、セシリア選手の挑発だ!
「ら、ランクは関係ない!頼まれたのは私だ。い、一夏がどうしてもと懇願するからだ。」
絶対盛ってるよな、あの言動。
「え、箒ってランクCなのか・・・?」
「だ、だからランクは関係ないと言っている!」
そういえば俺のランクって幾つなんだろう?聞き忘れてた、というか聞き流してた。
なんて考えていると殺気を感じた。このプレッシャー、まさか!?
「座れ、馬鹿共。」
立ち上がっていた俺、セシリア、箒にバアン!と出席簿アタックを見舞う織斑先生。
だが今回は前回までと違った。
大して痛くないのだ。手加減された様子が無いのは音で分かる。
なのにダメージが無い。二人は痛みで着席し、悶絶しているというのに。
不思議だったが、二発目が怖いので大人しく席に着く。
「お前たちのランクなどゴミだ。私からしたらどれも平等にひよっこだ。まだ殻も破れていない段階で優劣を付けようとするな。」
世界最強に言われちゃ誰も文句は言えないな。
「先生、志垣くんのランクは幾つですか?」
一人の女子が挙手する。
いやいや、それは今関係ないんでない?
「志垣のランクはSだ。訓練機とはいえ私と引き分けたのだからな。それでもひよっこの一羽に過ぎんがな。」
へー、俺ってランクSだったのかあ。びっくりだ。
・・・いや、そうじゃないよ。教室がざわついてるじゃないか!
どうしてくれるんですかこの空気!
バシンバシンと出席簿を使って姉弟コミュニケーション取ってないでさあ!何とかしてくれよ!
「クラス代表は織斑一夏。異論は無いな。」
はーいとクラス全員一丸となって返事をした。良かった。そっちに興味が移ったようだ。
それにしてもランクSか・・・。
あの人が聞いたら「査定基準が甘すぎる」とか言ってとんでもない量の訓練を課してくるんだろうな。
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、志垣。試しに飛んでみせろ。」
四月も下旬、遅咲きの桜の花びらも舞い散った頃、俺達は鬼教官、もとい織斑先生の指導を受けていた。
実際スパルタであった。サツバツ!
まあこれくらいきっちりやらなければ、いつか大怪我をしかけないからな。
「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ。」
おっと急かされた。集中集中っと。
ISは一度フィッティングすると操縦者のアクセサリーの形をとって身体に装着される。
セシリアは左耳のイヤーカフス。俺は右手首のシルバーチェーン。一夏は右腕のガントレット。
ガントレットってアクセサリーなのか?かなり邪魔になりそうだが。
それを言うと凶獣の待機状態もジャラジャラしていて結構邪魔だ。あれか?獣は鎖に繋がれてろって皮肉か?
今度良いように改造してみるか・・・。できるもんなら。
それはそうと、ISを展開するために意識を研ぎ澄ませる。
どこか月衣から物を取り出すのに似ている気がした。
(出番だ、凶獣。)
念じる刹那、チェーンから全身に薄い膜が覆っていくイメージが湧く。約0、5秒の展開時間。俺の体から光の粒子が溢れ、それが再集結していくのが解る。
紫の姿。刺々しい外殻。顔面をも覆う全身装甲。凶獣が形成されていく。
ふわりと身体が軽くなる。センサーの類は良好。世界が広がった気分になる。
周りを見ると、どうやら白式とブルー・ティアーズも無事展開されたようだ。
「よし、飛べ。」
その言葉に、俺とセシリアはほぼ同時に上昇した。
だが素のスピードが違う。グングンと離されてしまう。
が、問題は白式だ。スペック上は凶獣やブルー・ティアーズの速度を上回っているのに、なかなか追いついてこない。俺がセシリアに追いついてから、ようやく追いついてきたほどだ。
「一夏、お前この前の試合の方がスピードが出てたぞ。」
「そう言われても、あの時は無我夢中だったし、感覚がつかめないんだよな。」
俺の苦言に一夏はそう答える。
急上昇、急下降は昨日習ったばかりだが、基本の応用ではある。要は、一夏がまだ基本を習得できていないだけなのだが、一朝一夕で身につくようなものでもないだろう。
俺は前世で飛行魔法の訓練を受けていたから何となく感覚がつかめるが、『目の前に角錐を展開させるイメージ』など、素人には難しい。
「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ。」
「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。何で浮いてるんだ、これ。」
「説明しても構いませんが、長いですわよ?反重力翼と流動波干渉の話になりますもの。」
「・・・旺牙、理解できるか?」
「無茶言うな。」
まだ半分も理解出来ちゃいないよ。
「わかった。説明はいいや。」
「あら、それは残念ですわ。」
そう言ってセシリアは微笑む。そこには嫌味も皮肉も無く、ただ単純に楽しんでいる笑顔があった。
あの日以来、クラスメイトとも上手くやっている彼女は、確かに変わった。日々を楽しんでいるように感じられる。
実際楽しいのだろう。気を張り続けた日々から多少なりとも解放され、一学生として過ごす事ができているのだから。
そして何より、一夏の存在が大きい。彼女にとって、初めての『恋』なのだろうから。
あれ以来、なにかと一夏のコーチを買って出ようとしている。彼女なりのアピールだろう。純粋に一夏に強くなってほしいと言うのもあるのだろうが。
「一夏さん、よろしければまた放課後に指導してさしあげますわ。そのときはふたりきりで」
「一夏っ!いつまでそんなところにいる!早く降りてこい!」
ここにもいたよ、恋する乙女が。
いやはやまったく、俺は誰の応援をすればいいんだろうね。青春真っ盛りの少女たちよ。
それと山田先生。生徒にインカムを奪われたぐらいであたふたしないでください。教師の威厳が。
「織斑、オルコット、志垣、急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ。」
「了解です。では一夏さん、旺牙さん、お先に。」
そのまま急下降を始めるセシリア。その姿がぐんぐん小さくなっていき、完全停止も成功した様子だった。
「うまいもんだなぁ。」
「感心してる場合かよ。じゃあ一夏、次は地上でな。」
セシリアに続き、急下降を始める。
近づく地表。出来るだけギリギリまで加速して・・・、ココだ!
逆噴射で地上すれすれに。
「二十センチ。制止が早すぎだ。次はもっとギリギリまで粘れ。」
「はい。」
おしい。もう少しで完璧だったのにな。やっぱりなんだかんだで慣れていないのだろう。もっと精進せねば。
そしてオチ担当。文字通り落ちやがった。
勢いそのままに、停止せず、グラウンドにクレーターを作り上げた。
それを心配するセシリアと、対抗する箒の姿が。
おお、二人の間に火花が見えるよ。
それを力技で押しのける織斑先生も流石だが。
さらに武装を展開しろと言われて実行、雪片弐型を展開するも「遅い」と一蹴。一夏にとっては踏んだり蹴ったりな結果になった。
「志垣、お前の武装は・・・。すでに固定されているのだったな。」
俺の『伏竜』はIS展開時から両腕に装着済みなので、個別に展開する必要が無かった。故に俺は武装展開訓練からはぶられた。解せぬ。
次にセシリアのスターライトmkⅢだが、さすが代表候補生。瞬時に展開して見せた。が。
「お前は何処に向かって撃つ気だ。横ではなく、正面に向って展開しろ。」
「オー、ワタシ友達!撃タナイ撃タナイ!」
真横にいた俺に銃口が向けられていた。
「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるのに必要な」
「直せ。いいな。」
「・・・はい。」
おー怖い、代表候補生を一睨みだよ。
「何か考えたか?」
「滅相もございません。」
俺、この人が人間かどうか怪しく思えてきたよ。
「セシリア、近接武装を展開しろ。」
「え、あ、は、はい。」
急に話を振られて若干うろたえるセシリア。
右手を前に出し、意識を集中している。
が、粒子はなかなか形にならない。
「まだか。」
「くっ。ああ、もう!《インターセプター》!」
武装名を口にし、ようやく剣が顕現する。
だがたしか、この方法は初心者用の展開法だったはず。
セシリアは近接戦闘が苦手なようだ。
「何秒かかっている。お前は実戦でも敵に待ってもらうつもりか。」
「じ、実戦では近接の間合いに入らせません!ですから、問題ありませんわ!」
「ほう。織斑と志垣との対戦で初心者に簡単に懐を許していたようにみえたが?」
「あ、あれは、その・・・。」
あー、そんな言い方されると・・・。
セシリアは俺達をキッと睨みつけてくる。ほら飛び火してきた。
刹那、送られてくるプライベート・チャンネル。
『あなた方のせいですわよ!』
まじでなんでだよ。
「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ。」
さて、仕方ない。
「さっさと終わらせるぞ、一夏。」
「お、旺牙~。」
泣きつくな、気色悪い。
ちょいと駆け足ですいません。
早くエミュレーター出したいんや・・・。