その代わり中身が伴わない。解せぬ。
まぁそれはともかく、もう少しでNW成分も多くなってくると思いますんで、今しばらくお付き合いください。
「というわけでっ!織斑くんクラス代表決定おめでとう!」
「おめでとう~!」
ぱんぱーんとクラッカーが乱射される。その勢いはまるでお誕生会の如しだ。
皆が思い思いに飲み物が入ったコップを持ち、楽しそうに談笑している。
そんな中でなにやら複雑そうな顔をし、暗いオーラを纏った人物がおった。
今日の主役、我らが織斑一夏くんだ。
なんだなんだ。もっと喜びやがれ。全員お前の為に祝ってやってやってるんだぞ。
壁にもデカデカと『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と掲げてある。ちなみに執筆は俺。
耳を澄ましてみろ。周囲から祝いの言葉が。
「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねぇ。」
「ほんとほんと。」
「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて。」
「ほんとほんと。」
あ、ないですね。
とうか俺の記憶が間違っていなければ、さっきから相槌を打っている生徒は二組ではなかったかな?
どう見ても一組の人数以上の人間がここ、寮の食堂に集まっている気がする。
・・・足りるかなぁ?
「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君と志垣旺牙君に特別インタビューをしに来ました~!」
オーと一同盛り上がる。え、何?俺も巻き込まれてるの?
正直、新聞部とかマスコミって苦手なんだよなぁ。
「あ、私は二年の黛薫子。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺。」
これはこれはご丁寧に。
にしてもテンションの高いお嬢さんだ。
「ではまず、ずばり織斑君!クラス代表になった感想を、どうぞ!」
ボイスレコーダーを片手に、まるで童女のような輝く瞳で一夏に詰め寄る黛先輩。
悪いけど、こいつの意志でなったわけじゃないんだよね。
「まあ、なんといか、がんばります。」
「えー。もっといいコメントちょうだいよ~。俺に触るとヤケドするぜ、とか!」
古いっす、先輩。
「自分、不器用ですから。」
「うわ、前時代的!」
なんだと。日本が誇る名作の名言なんだぞ。先輩も一度見てみるが良い。
それと一夏、お前がその台詞を言うのには渋さが足りん。
「まあいいや。適当に捏造しておくから。」
それで良いのか情報発信機関!だからマスコミは苦手なんだ!
「それじゃあ次に志垣君!どうして織斑君にクラス代表を譲ったの?」
「ん~。あえて言うなら『一夏に強くなってもらいたかったから』ですかね。代表になれば嫌でも実力者と戦う機会が増えるでしょうし、早速対抗戦もありますから、実戦を積んで欲しいんですよ。コイツの決意のためにも。」
「お!なにやら意味ありげな言い方!それはどういう意味かな?」
「それは男同士の秘密です。」
口に指でバッテンしてこれ以上の発言をしないようにする。親友を売るようなマネは極力避けたい。極力ね。
「それはそれで興味があるわね。でもまあいっか。次に、全校生徒に何かメッセージをどうぞ!」
スケールでかくない?全校生徒相手って。けど、ここで一発言っておくか。
「俺の見た目や、男がISに乗れる事が気に食わない奴は少なからず居るだろう。そんな奴らは陰口叩いてないで真っ向から喧嘩売ってこい。全部言い値で買わせて貰うぜ!」
腕を組み、胸を張りながら宣言する。
少し調子に乗りすぎかとも思ったが、ここでビシッと言っておかないと。
「お~、外見同様ワイルドだねえ。これなら捏造の必要は無いかな。」
だから捏造は止めなさい。
「ところでその右目、ほんとに見えないの?」
「見えませんよ。内側見てみます?気分悪くなるでしょうけど。」
「・・・ごめんね、ちょっと調子に乗りすぎた。」
真摯に謝ってくれた。どうやら彼女は良心的らしい。捏造とか言ってるけど。言ってるけど。
俺は気にしていないことを告げるともう一度謝った後、再び笑顔になった。
うむ、この人には笑顔が似合うようだ。
「ああ、セシリアちゃんもコメントちょうだい。」
「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですわね。」
嘘を言うな、と思わず苦笑してしまう。近くに寄っていたし、心なしか気合いが入っている。
その後、長くなりそうなセシリアのコメントがカットされたり、一夏に惚れたなんだの話になっててんやわんや。
俺に対しては『敬意を持つべき好敵手かつ友人ですわ』と冷静に言われた。
まあ、うん。俺もセシリアに対してそういう感情は無いけどさ。いざ言われると複雑な気分だよ。
「とりあえず三人並んでね。写真撮るから。」
「えっ?」
セシリア・・・、声が弾んでるの隠せてないぞ。
「注目の専用機持ちだからねー。スリーショットもらうよ。あ、握手とかしてるといいかもね。」
「そ、そうですか・・・。そう、ですわね。」
お前、俺がいること忘れてるだろ?
「あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」
「そりゃもちろん。」
「でしたら今すぐ着替えて」
「時間かかるからダメ。はい、さっさと並ぶ。」
先輩は俺達の手を引いて、そのまま握手まで持っていく。
「・・・・・・。」
「?なんだよ?」
「べ、別に何でもありませんわ。」
一夏を見てモジモジしているセシリア。青春っていいねぇ。中身三十のおっさんには眩しいよ。
「・・・・・・。」
「・・・なんだよ箒。」
「何でもない。」
こっちはこっちで面倒臭い青春送ってんな。・・・爆発しないかな、この朴念仁。
「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は~?」
「え?」
「74.375。」
「お、正解ー。」
なんちゅう問を出すんだこの人。数学習っておいて良かった・・・。
パシャッっとデジカメのシャッターが切られる。・・・おおう。
「なんで全員入ってるんだ?」
一夏の疑問はもっとも。恐るべき行動力でもって、一組の全メンバーが撮影の瞬間俺達の周りに集結していた。ちなみに箒は少し離れた位置にいたのだが、シャッターが切られる瞬間俺が一夏の隣に引っ張っておいた。真っ赤になって足を踏まれたが痛くも痒くもないぜ。
「あ、あなたたちねえっ!」
「まーまーまー。」
「セシリアだけ抜け駆けはないでしょー。」
「クラスの思い出になっていいじゃん。」
「ねー。」
楽しそうに笑い合うクラスメイト達と、苦虫を噛み潰したような顔のセシリア。
修羅場のように見えるが、これも学生の思い出の一枚の風景。
俺が掴み損ねた、大切な、掛け替えのない場所。
今度こそ掴んでみせる。護ってみせる。
そのためなら、俺はどんな事だって出来るだろう・・・。
さて。ここらでいいだろう。俺は両手をパンッと鳴らし、注目を集める。
「さぁさぁ宴もたけなわ!そろそろデザートの時間にしようと思わんかね。」
みんな目をパチクリさせた後、ワーと歓声を上げた。
うむうむ、良い反応だ。それでこそ「作った」甲斐がある。
流石は国際学園の食堂。材料も器具も完璧だった。
俺は一度キッチンに入り、最後の仕上げを行ってから台車に乗ったそれらを持ってくる。
まずはイチゴのパンプディング。多少材料費はかかったが、オカジマ技研からの給料と言う名のデータ代で賄えた。こいつは俺の自信作だ。
続いて、パンプディングが足りなかった時の為に作っておいたプリン。プディングとプリンで若干被ってしまった感があるが、まあ気にしないだろう。
「すごーい!おいしそー!」
「志垣くん気遣い上手!」
「へへっ。そう言ってもらえると作った甲斐があるってもんだ。」
「「「えっ?」」」
一瞬食堂の空気が止まる。
まあそうだろう。俺とスイーツを並べて誰が=の数式を弾き出すものか。俺が事情を知らない人間ならまず疑う。
「おお!旺牙、わざわざ作ってくれたのか!?」
「まあな。たまには洋菓子にも手を着けないと腕が鈍っちまうからな。さ、好きに食え。」
「うおぉ、食う!食うぞ!」
好きに食えと言ったが慌てるんじゃない。
一人分にパンプディングを取り分け皿に載せてやる。
しかしこう美味そうな反応を返してくれると嬉しいな。野郎相手でも。
いまだ固まっている女子達に対しても促す。
「ほら。早く食わないと一夏が全部食っちまうぞ。」
流石に全て平らげる事は無かろうがな。
彼女達は恐る恐ると言った感じで各々口に入れる。
「「「・・・美味しいーーーー!!」」」
いよし!今回も成功だぜ!
「何これ!?販売品みたい、ううんそれより美味しい!」
「柔らかくて甘い!」
「こっちのプリンもカラメルが良い味してる!」
まあカラメルシロップは市販の物に手を加えただけなんですけどね。
それでも喜んでくれて予は満足じゃ。
「これ本当に志垣くんが作ったの?」
「おう。料理は趣味でな、洋の東西に拘わらず一通り作れるぞ。」
「まじでぇ・・・。」
そこまで意外ですか。まあそうでしょうね。この見た目ですから。
「ちなみにそこでがっついてる一夏も料理は出来るぞ。いやアイツの場合料理以外も出来る主夫だからな。俺もそこまでの域には達していない。」
「まぁじでぇ・・・。」
「男子達に女子力で負けてる・・・。」
「・・・でも美味しいからいいや。」
いいのですかい。
「ふむ。話題の男子二人は料理が得意、特に野獣は大の得意、と。」
黛先輩聞こえてます。俺陰で野獣って呼ばれてるんですね?今度呼んだ人間教えてもらいますよ?
と。あの野郎ちょっとがっつきすぎだ。
「おい一夏。口の周りに飛ばしすぎだ。えっと、ハンカチっと。」
「ん。悪い旺牙。てか自分で拭けるって。」
まったくこいつは。普段年寄り臭いのにたまに子供っぽくなりやがる。
なんてやり取りをしていると、黄色い歓声が上がる。
ん?何が起きた・・・って、あ。しまった。
「織斑くんの凛々しい顔に点いたクリームを」
「強面の志垣くんが優しく拭き取ってあげる」
『尊い!』
「ちょっと、今の絵撮れた!?」
「へっへっへっ。しっかり撮影済みですぜ!」
「こっちは光景を録画してあるわ!後で加工可能よ!」
あ~あ、餌を与えちまった。
てか俺と一夏で需要はあるのか?
あと箒とセシリア。視線で俺を殺そうとするのは止めてくれ。怖い。
「まだ騒いでいたのか馬鹿者共。」
「皆さーん。そろそろお開きの時間ですよ。」
織斑先生に山田先生、ナイスタイミングだ。
「先生方もどうぞ。俺が作ったものでよかったら。」
ここぞとばかりに場の空気を変えようと二人にプリンを差し出す。
「ほう。志垣の菓子は久しぶりだな。」
「へぇ。志垣くんお菓子作りも出来るんですか。美味しそうですね。」
献上したプリンを、二人はさっそく口に持っていく。
織斑先生、千冬さんには何度か作ったことがあったから抵抗が無いのは分かるが、山田先生、こんな眼帯強面が作ったってことに疑問は無いんですかい。
「うむ。こっちの精進も怠ってはいないようだな。あとは普段の片付けが出来れば完璧なのだが・・・。」
千冬さんにだけは言われたくない・・・!?い、今寒気が!?また人の心を読んだな!
「本当に美味しいですねぇ。こんなに美味しいなら毎日食べたいでsヒウっ!?」
お、何だか凄い殺気が山田先生に向って飛んでいったぞ。
その後大体十時頃まで騒いでパーティーはお開きとなった。
いやいや、皆パワーが有り余ってますなぁ。これは明日以降の授業が過酷になってもおかしくないですぜ。
俺は俺で、最後のパンプディングを持って自室に帰ってきていた。
簪はまだ起きている。というか、アニメのディスクをぶっ続けで見ていた。俺もアニメは好きだけど、ここまでのめり込んでいるとは。・・・凄い乙女だ。
・・・なんだ今のフレーズ。突然頭に浮かんだぞ。
「簪、差し入れ、持って来たぞ。残りで悪いけど。」
「ううん。いつもありがとう。」
簪には時々菓子の味見役を頼んでる。それとアニメの話で盛り上がる所為か、最初より距離が近づいてきた気がする。別にナンパするわけじゃないけど、簪みたいな静かな女の子と仲良くなるのは悪い気はしない。
「なんだか最近、旺牙に餌付けされてる気がする。」
「ソンナコトナイヨ?」
まだ警戒モードみたいだけどね。
今回のパンプディングですが、本来はフランスパンを使うようですが旺牙は直前にカリカリに焼いたパンを使用しています。
詳しい方、突っ込みたい事があると思いますが私は調べながら書いてる身なので、生温かい目で見逃してくれるととっても嬉しいです(小並感。