でもなんとか軌道には乗せられると思います。だってこの作品は主に旺牙の視点で描かれますから。
以上、今回の言い訳でした。
パーティーの夜、何故か懐かしい夢を見た。箒が転校したその後の事だ。
だがどういうわけか内容をよく覚えていない。おぼろげだった。
それが原因か、朝稽古にも身が入らず、朝食も遅れてしまった。
「だ、大丈夫、旺牙。調子悪いの?」
「うんにゃ。ただの寝不足だから気にするな。」
簪からも心配される始末。こりゃいかんな。ファー・ジ・アースじゃ夢は吉兆の象徴だったからな。誰かが夢を見るとそれが世界の終わりの始まりだったという事案は山ほどある。
今回も、というか俺もそうならなくちゃ良いが。
「じゃ、また寮でな。」
「うん。また後で。」
そう言って簪と別れる。当初よりも大分話しやすくなってきた感じがする。やはり餌付けの効果か・・・。
と、いかんいかん。もう時間ギリギリだったんだ。早く教室に行かないと出席簿アタックが待っている。
ん?教室の前が騒がしいぞ。
「その情報、古いよ。」
ふとそんな声が聞こえた。なんだか、すごい聞いたことのある声だ。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから。」
腕を組み、片膝を立ててドアにもたれているあの小柄で長いツインテールな少女は。
「鈴・・・?お前、鈴か?」
一夏の口から確かめるような声がする。
「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ。」
ふっと小さく笑みを漏らす。ツインテールが軽く左右に揺れた。俺はそっと彼女の後ろに回りこんだ。
「何格好付けてるんだ?すげえ似合わないぞ。」
「んな・・・!?なんてこと言うのよ、アンタは「よいしょ」ふにゃっ!?」
首根っこを猫掴みに持ち上げる。この軽さ、暴れ具合。ふむ。
「間違いなく鈴だな。持ちやすさが何も変わっていない。」
「ちょ、何よ!?誰よ!?離しなさいってば!離せー!」
煩いので離してやった(コマンドー感)。尻餅を突くことなく、鈴は見事に着地してみせる。
こいつ、前世は猫なんじゃないだろうか。今もフーッっと唸ってるし。
「誰よ!私は一夏と話して・・・って旺牙!?」
「よう、久しぶりだな鈴。」
相変わらず掴みやすい奴だったぜ。
「よう、じゃ無いわよ!アンタはいつも人を猫扱いしないと気が済まないわけ!?」
「おう。」
「よーし上等じゃない表出ろ。」
鈴の額に血管が浮き出ている。臨戦態勢だ。
鈴だけに『臨戦態勢』・・・うわ、寒っ!
まあ取り合えず落ち着いてもらおう。俺が原因だけど。
早くしないとあの人が・・・。もう手遅れか。
「おい。」
「なによ!?」
バシンッ!織斑先生の出席簿アタック。効果は抜群だ!この技の恐ろしい所は威力、命中率共に高いのに連射が効くところだ。
「もうSHRの時間だ。教室に戻れ。」
「ち、千冬さん・・・。」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ。」
「す、すみません・・・。」
すごすごとドアからどく鈴。
うん。気持ちは分かる。反論しても無駄だし、ダメージが増すだけだからな。
「またあとで来るからね!逃げないでよ、一夏!」
俺は無視ですか?まあそれはそれでいいですけど。
「さっさと戻れ。」
「は、はいっ!」
鬼教官の一睨みを受け、猛ダッシュで二組へと駆けていく鈴。
結局何しに来たんだ?宣戦布告とか言ってたけど。
本当はそれを理由に一夏に会いに着ただけだったりしてな。
「っていうかアイツ、IS操縦者だったのか。初めて知った。旺牙は?そういうことには詳しそうだけど。」
「いや、俺も初めて知った。代表候補生なら顔と名前も覚えてる自信があったんだけどな。」
ふとそんな会話をする。それがトリガーだった。
「・・・一夏、今のは誰だ?知り合いか?えらく親しそうだったな?」
「い、一夏さん!?あの子とはどういう関係で」
そのほか、クラスメイトからの質問集中砲火を喰らう一夏。俺はいそいそと自席へと・・・。
「志垣くんも親しそうだったよね、萌。」
「うん。ここはちゃんと聞き出さないとね、沙紀。」
立花に嶋田ぁっ!何俺を巻き込んじゃってんの!?
「しお~、あの子誰~?」
あぁ、本音、お前もか。そんな事をしていると大変な目に・・・。
バシンバシンバシンバシン!
「さっさと席に着け馬鹿者共が。」
鬼が静かに怒ってらっしゃるよ?
今にして思い出せば、今朝の夢は鈴がまだ日本にいた頃の夢だった気がする。
懐かしい夢だと思う反面、何か不吉な予感がする。ウィザードの勘というやつか、ウィザードが夢を見ると碌なことがないというか。
だが何故こんな時期に編入してきたのか。それもわざわざ中国から。あいつ自身はISに対して興味は無かったはずなのに。
まさか一夏に会いに?いや、いくら人よりアクティブな少女と言えどそこまでするか・・・と、否定できないのが凰鈴音という少女の恐ろしい所だ。
約一年という短い期間でISについて学び、まさかの代表候補生にまで登りつめてしまったというのか。なんという才能と努力。
ばしん!という音が響いた。箒が出席簿の餌食になっていた。
どうせさっきのことでイラついていたのだろう。
ばしん!と再び出席簿の音が響く。セシリアが蹲っていた。お前もか。恋する乙女達は大変だな。
俺はというと、それを横目で見つつ、昔(前世)で友人から教えてもらった簡単な占星術を試してみる。今後の吉凶を見たい。
結果は、凶兆・・・。この占いではそこまでしか分からなかった。意外と役に立たない(失礼)。
だがなにか嫌な事が起きると言うことはなんとなく理解した。少し注意しておくか。
「志垣。」
「だが何に注意しろと?四六時中あいつの傍にいろと?それこそ輝明学園じゃあるまいし・・・。」
ばしーん!
大して痛くないが、音が酷い。あの出席簿は何で出来ているんだ?
「お前のせいだ!」
「あなたのせいですわ!」
「なんでだよ・・・。」
「いや一夏、多分お前も関係していることだよ・・・。」
「あの、そんなにしみじみ言われても納得できないんだけど。」
そう言われてもなあ。間違いなく一夏がらみの悩みで注意されたんだろうし。
「まあ、話ならメシ食いながら聞くから。とりあえず学食行こうぜ。」
「む・・・。ま、まあお前がそう言うのなら、いいだろう。」
「そ、そうですわね。行って差し上げないこともなくってよ。」
チョロすぎるよお二人さん。まあ俺も付いていくけどね。
この四名にまたクラスの女子達が数名くっついてきて、プチ行列状態で学食に向う。もはや昼の風物詩となった光景だ。
券売機の前で、今日の昼飯に迷う。国際的なIS学園の学食は、各国出身の生徒をも唸らせるほど味が良い。俺もこっそり師事しているくらいだ。だがこの領域にはまだ達していない。いつか味を盗んでやろう。
んで、今日は肉をたっぷり食いたい気分になったので生姜焼き定食(特盛)を購入。
一夏は無難に日替わりランチ。箒はきつねうどん、セシリアは洋食ランチ。一夏はともかく、二人はいつもそれだな。飽きないのだろうか。せっかく美味いメシが揃っているのだから、もっと試してみれば良いのに。
「待ってたわよ、一夏!」
どーん、と俺たちの前に立ちふさがったのは件の転入生、凰鈴音。俺たち幼馴染みからの通称は鈴。
しかし一年程経っているがまるで変わらんなこいつ。主に見た目が。
「まあ、とりあえずそこどいてくれ。食券出せないし、普通に通行の邪魔だぞ。」
「う、うるさいわね。わかってるわよ。」
その手には既にお盆を持っていて、ラーメンが鎮座していた。
「のびるぞ。」
「わ、わかってるわよ!大体、アンタを待ってたんでしょうが!なんで早く来ないのよ!」
なんとも理不尽な言い草である。
それと鈴さんや。俺は無視ですかい?少し寂しいぞ?
とりあえず食券を『お姉様方』に出し、白飯も特盛にしてもらいました。
「それにしても久しぶりだな。ちょうど丸一年ぶりになるのか。元気にしてたか?」
「げ、元気にしてたわよ。アンタ達こそ、たまには怪我病気しなさいよ。」
「どういう希望だよそりゃ・・・。」
「あ、良かった。俺忘れられてなかった。」
「アンタを忘れられる人間はそういないわよ・・・。」
どういう意味だそれは。
「あー、ゴホンゴホン!」
「ンンンッ!一夏さん?注文の品、出来てましてよ?」
置いてけぼりを食らった乙女達のジェラシーも募りつつある。
というかあれだな、一夏が絡むと俺って影が薄くなるのかな?
「この人数だ。向こうに空いてるテーブルがあるから席取っとくよ。」
ここは一時避難だ。皆が来るまで一呼吸入れよう。
と思ったが、案外早く鈴を含めた全員が揃った。
「鈴、いつ日本に帰ってきたんだ?おばさん元気か?いつ代表候補生になったんだ?」
「質問ばっかりしないでよ。アンタ達こそ、なにIS使ってるのよ。ニュースで見たときびっくりしたじゃない。」
「落ち着いて喋れ二人とも。飯食ってんだぞ。」
なんだか懐かしいな。久しぶりにこの面子で話すの。
俺も話したいことは色々あるが、今はそれどころじゃないだろう。
「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが。」
「そうですわ!一夏さん、まさかこちらの方と付き合ってらっしゃるの!?」
すごいストレートだなセシリア。
「べ、べべ、別にあたしは付き合ってる訳じゃ・・・。」
「そうだぞ。なんでそんな話になるんだ。ただの幼馴染みだよ。」
「・・・・・・。」
「?何睨んでるんだ?」
「なんでもないわよっ!」
だめだこいつ。早く何とかしないと・・・。
「幼馴染み・・・?」
箒が怪訝そうな声で聞き返す。しょうがないので補足しておこう。
「箒が転校したのが小四の終わり。小五に上がってから鈴が入れ替わるように転校してきたんだよ。それで中二の終わりに国に帰ったんだ。」
「そうそう。そういえば二人は面識が無かったんだよな。で、こっちが箒。ほら、前に話したろ?小学校からの幼馴染みで、俺の通ってた剣術道場の娘。」
「ふうん、そうなんだ。」
鈴がじろじろと箒を見る。箒も負けじと鈴を見返してた。
「初めまして。これからよろしくね。」
「ああ。こちらこそ。」
表面上は穏やかな挨拶だが、隠し切れない火花がバチバチと舞っていた。すでに戦いは始まっているらしい。ゴングが鳴った幻聴が聞こえたよ。
「ンンンッ!わたくしの存在を忘れてもらってはこまりますわ。中国代表候補生、凰鈴音さん?」
「・・・誰?」
「なっ!?わ、わたくしはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!?まさかご存じないの?」
「うん。あたし他の国とか興味ないし。」
「な、な、なっ・・・!?」
鈴の言葉に顔を真っ赤にしておられるセシリア。プライドを大分傷つけられたのだろう。
「い、い、言っておきますけど、わたくしあなたのような方には負けませんわ!」
「そ。でも戦ったらあたしが勝つよ。悪いけど強いもん。」
挑発とも確信ともとれる言葉。相変わらずだと思った。
鈴のいう事にはいつも確かな自信があるのだ。その強気には、嫌味がまるで無い。それが事実と言わんばかりに真っ直ぐなのだ。
まあ、だからこそそれに反論する人間もいるわけで。
「・・・・・・。」
「い、言ってくれますわね・・・。」
それでも怒りを露にしない分、箒とセシリアは評価できる。不機嫌度は上がったようだがな。
入学当時のセシリアならここで色々捲くし立てていただろう。
「一夏、アンタ、クラス代表なんだって?」
「おう。成り行きでな。」
「ふーん・・・。」
どんぶりを持ってスープを飲む鈴。ヤダ、この娘男前すぎ・・・。」
「あ、あのさぁ。ISの操縦、見てあげてもいいけど?」
一転、モジモジとして一夏を見る。ははぁ。訓練にかこつけて一夏に近づこうという魂胆か。
普段はっきりした性格のくせに、一夏絡みになるとたまにしおらしいんだからな。
あーもういいや。俺蚊帳の外だし。飯食っちまおう。
「志垣くん良いの?志垣くん抜きで幼馴染み達が話進めてるよ?」
「いいんだよ、俺なんて端から眼中に無いんだから・・・。」
流石にちょっといじけるぞ。
「まあまあ。アタシのデザート一口あげるから元気出して。」
うぅ、立花は優しいなあ。
「あ、沙紀抜け駆け・・・。」
ん?嶋田何か言ったか?
色々騒々しかったが、結局箒とセシリアの操縦訓練が優先されることになったらしい。
今日の俺、本当に空気・・・。
今回はサブキャラ紹介・・・といっても名前と簡単な見た目だけですが。
いつかちゃんと紹介できたら良いな。
二人はルームメイトです。
立花沙紀(たちばな さき)・・・ショートカットの垂れ目。152cm。整備科専攻。
嶋田萌(しまだ もえ)・・・サイドテールの釣り目。160cm。整備科専攻。
今回オリジナル要素がほとんどありませんでしたが、次回以降はもっとオリジナル要素を入れていきたいなあという希望があります。