IS×NW~世界を渡りし者~《更新停止》   作:戒炎

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今回は自分で決めた禁を破ります・・・。

アンゼロットに喋らせます!回想だけど。また、シリアスシーンのため「誰テメエ」状態になりかねませんが、ご容赦ください。

あ、あと今回作中残酷なシーン等が含まれます。それと旺牙のキャラが一部崩壊します。ご注意ください。


『過去』、「まだやるかい」

 夢を見ていた。昔、それも『前世』の夢だ。

 思い出したくも無い、だが『魂』に刻んでおかなければならない記憶。

 俺が『凶獣』と呼ばれるようになった、あの事件。

 

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「カルト教団の殲滅、だと?」

 ここは次元の狭間に存在するアンゼロット城。そこで一人のウィザードが声を上げた。

「はい。最近勢力を増してきている、ウィザード至上主義の教団です。『ヒトは全てウィザードに至るべし。至らぬものには価値は無い』とまで掲げています。」

 銀色の髪の美少女、アンゼロットは答えた。

 彼女は『ファー・ジ・アース』の守護者。その外見に見合わぬ年齢と、無限の力を持つ絶対的な強者だ。だが、彼女自身が動く事はない。彼女はあくまで守護者。見守る者であり、統括する者なのだから。

 そんな彼女の前に、多くのウィザードが召喚されていた。理由は先程の通り、任務だ。

 アンゼロットはこうして何かある度、ウィザードに任務を与え世界を護ってきている。今回もその一件だ。

 だがいつもと違うのは。

「おいおい。俺達に『同胞殺し』をやれってのかよ!」

「しかも何だよ!教団内にはイノセントまでいるじゃないか!」

 そう、相手は同じ人間なのだという事。これに召喚されたウィザード達は拒絶反応を起こしている。

 アンゼロットの直属部隊『ロンギヌス』のメンバー達すら、仮面の裏で難色を示しているほどだ。

 侵魔相手ならいくらでも相手をする猛者達だが、同じ人間とは争いたくない。それは自然な考えだったが、状況がそれを許してくれなかった。

 

「彼らは強大な力を持つ教祖を中心に活動しています。が、教祖一人を消せば良いという訳ではありません。同じ思想を掲げるウィザードが必ず現れるでしょう。ならば、全てを『無』にしなければなりません。また、彼らはイノセントに世界の真実を教え、それを公表しようとさえしています。このままでは、世界結界にも影響があるでしょう。拘束や封印は許可できません。必ずや殲滅するのです。」

 

「なんだってそんなに重い処分なんだよ!奴らがアンタになにかしたのか!?」

「いえ。ですが彼らは既に魔王の力を借りてまで自分達の理想を叶えようとしています。手段は、選んでいられないのです。」

「だからって、子供まで殺す事は無いだろう!」

 喧々囂々、アンゼロット城謁見の間には怒声が響き渡っていた。

 当時の俺は中学三年。人殺しをするのは抵抗があった。なにより、一線を越えそうで、怖かった。

「それでは皆さん。これからする私の質問に、『はい』か『YES』で」

「ふざけるな!俺は降りさせてもらう!」「俺も!」「あたしも!」

 多くの、と言うよりほとんどのウィザードが拒否する。アンゼロットの問にここまで反対が起きたのは初めてではないだろうか。

 いい加減イラついていたのであろう、彼女が手を挙げようとすると、静かな声が場に響いた。

「やりたくない奴は去れ。ここから先は覚悟のある奴だけで良い。」

 それは『先生』の声だった。俺をある意味救い、導いてくれた恩人。

 その『先生』が、良く通る、けれど冷たい声で捲くし立てる。

「ギャーギャー言ってる暇は無え。これもある意味世界の危機だ。それを放って逃げるウィザードに用は無い。やる気のある奴だけで十分だ。俺を含め、五、六人見繕ってくれればそれで事足りる。あとは邪魔だ。とっとと帰れ。」

 その言葉に、様子を見ていたのであろう、数名のウィザードが手を挙げ、参加の意を示す。その中には俺とそう歳の変わらない奴どころか、明らかに小学生までいたのには驚かされた。そして。

「旺牙。お前も参加しろ。」

 俺に拒否権は、無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃああああぁあぁあぁっ!!」

 槍使いの一突きが一人のウィザードの心臓を貫く。絶命を確認後、続けざまにそいつは別の教団員の首を刎ねた。

 血飛沫が舞う。その中を、少年が小太刀を二刀流に構えて駆け抜けてゆく。

「腕が!俺の腕があああぁぁぁ!!」

「あ、あぁ・・・。内臓が、零れる・・・。」

 それこそ舞うように一人一人を仕留めていく。

 ある魔術師も、大地を隆起させそこに敵を飲み込んでいく。

「あああああああああっ!!」

「た、助け、ぎやあああああっ!」

 教団内には血と臓物、死体が溢れている。

 同じ人間の、だ。

 俺に対し、イノセントと思わしき青年が刀を振り上げて襲い掛かる。だが、イノセントの攻撃はウィザードに対して無意味。俺の体に触れる直前で月衣によって阻まれる。

 その青年の胴体を蹴り込む。何の抵抗も無く、彼の胴体は弾けて無くなった。

 この感覚をよく覚えておけと『先生』は言っていた。盲目的に彼を信仰しているわけではないが、その言葉を心に刻み込む。こみ上げる吐き気は気力で抑える。

 

 敵の抵抗力が少なくなってきた。おそらく大方のウィザードを駆逐したのだろう。

 それでもイノセントの抵抗が止まらない。

 何故だろう。俺達ウィザードは、彼らを守るためにいるんじゃないのか。彼らは『日常』じゃないのか。

 これではまるで、獣の殺し合い、いや蹂躙だ。

 背中に衝撃が走る。何かが月衣に阻まれたらしい。

 振り返ると、十にも満たない少年が俺を憎悪の眼差しで睨みつけていた。こんな子供、しかもイノセントにまで拳銃を持たせ、戦わせていたのか・・・。

「この・・・悪魔め!」

 少年は何度も銃を撃つ。訓練されたのだろう、反動を良く逃がしている。

 だが、それでも俺には通じない。銃撃音が虚しく響く。

「悪魔と、呼びたきゃ呼べよ。」

 少年の頭に向って蹴りを放つ。当然、彼の頭部は砕け散った。

 脳漿が飛び散る。大量の血が俺に降りかかる。

 俺は心を殺す事にした。一匹の『獣』になるために。

 

 教団内に張った結界に俺達以外の人がいなくなった時、地下からズズンッという音が響き、周囲が揺れた。

 地下へと続く階段から、『先生』が上がってくる。

「頭目が逃げようとしてたんでな。だが、今ので全部終わりだ。」

 こうして、近代ウィザード史に決して残してはならない、されど忘れてはいけない事件が終結した。

 俺はその功績から、アンゼロット直々に二つ名を頂戴した。

『猛る紫煙の凶獣』。ここに、凶獣志垣旺牙が誕生した。

 

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 目を覚ます。嫌な汗が吹き出ていた。

 本当に嫌な夢だった。だが、忘れてはいけない。

 俺が何をしたのかを。俺の拳と脚は、既に血みどろなのだと。

 だからこそ、今度こそ護りたい。この日常を。

 もう片方のベッドを見る。そこには簪が静かに寝息を立てて眠っていた。

 それに救われながら、ジャージに着替え日課の修練に出かける。まだ心にしこりを残したまま。

 

 

 

 

 今日一日は散々だった。夢のことが頭に残っていて、織斑先生の一撃を何度もお見舞いされた。だから痛みは無いけど脳が揺れて気持ち悪くなるんだよ。

 極めつけは掌で顎を掠めるように叩かれた。こうすると、簡単に言うと脳がシェイクされるのだ。意識を保ってはいられなくなる。間違っても教師が生徒にやる体罰では無い。格闘家のやり取りだ。

 一夏たちからも心配されてしまった。

 曰く、ボーっとしている。

 曰く、怖い顔をしている時がある。らしい。

 そうならないよう気をつけていたつもりだが、まだまだ俺も甘い。

 こんな所を『先生』に見られたら・・・、止めよう、死ぬ想像は良くない。

 今日は少しみんなと距離を取ろう。なんとなくその方がいい気がした。

 第一アリーナの使用申請許可を取り、凶獣を展開する。とりあえずアリーナを周回する。ん?右腕のスラスターの調子が悪いかな?今度見ておかないと。

「あれよ、噂の一年生って。」

 ん?誰だ?

 止まってセンサーを研ぎ澄ませると、三人の女子が俺を見ていた。

「専用機持ちなんて、生意気なのよ。」

「私達二年生だって持ってないのに。」

「そもそもなんでISの世界に男が入ってくるのよ。」

 ははぁ。なるほど。後輩の俺が専用機を持っているのが気に食わないと。

 というかはなっから男を下に見ている連中のようですな。

 そうですかそうですか。

 ほっとこ。めんどくせ。勝手に言わせておけばいいねん、ああいうのは。

「それにもう一人の男、千冬様の弟のくせに全然強くないみたいじゃない。」

 む?

「ほんと。千冬様の顔に泥塗ってばっかりで。」

 ・・・おい。

「ほんとよね。なんであんなのが良いのかしら。ちょっと顔が良いだけじゃない。」

「あの男なんてまるで野蛮な賊みたいな眼帯着けてさ。見た目も厳ついし。」

「それに負けたあのイギリスの代表候補生も大した事無さそうよね、いつも威張りくさっててさ。生意気。」

「生意気と言えばあの転入してきた中国の代表候補生よ。生意気の塊じゃない。」

 

「ほんと、全員親の顔が見てみたいってやつよね。」

 

 アハハと笑う馬鹿三人。

 ほほ~う。

「あの、先輩方。」

「ん?なによ・・・げ。」

 げっとは失礼な。そんな事より。

「いつかの新聞部の記事、読みませんでした?」

「な、なにがよ。」

 たじろぐ三人。だがもう遅い。

「喧嘩ならいつでも買うって言ってんだよ。」

 お兄さん激怒中よ?

 

 

 

 

「で、何?あなた一人でわたしたちと順々に戦うわけ?舐めてるにも程があるんだけど?」

「ははは、まさか。そんなこと言いませんよ。」

 だよねーと笑いあう三人。本当に馬鹿だなあ。

「アンタら三人いっぺんに相手してやるって言ってんだよ。総出でかかってきな。」

 空気が凍りつく。

 あれれ~、俺そんなに可笑しいこと言ったかな?

「あなた、それマジで言ってる?」

「マジもマジ。本気と書いてマジ。」

 三人が見る間に怒りの表情になっていくのが分かる。だって顔真っ赤なんだもの。

 俺自身は怖いくらいに冷静だと言うのに。

「いいじゃない・・・。自分で言ったこと、後悔しなさいよ!」

 三人が戦闘態勢に入る。安い挑発に乗るとは、さては成績悪いな。

 だが出血大サービスは終わらない。

「待った。」

「なによ。」

「ハンデだ。ちょうど良いのを思いついた。」

「ふん。今更ハンデなんて」

「両手を使わないでおいてやるよ。」

「・・・は?」

 空いた口が塞がらないリーダー格。そりゃそうだろう。

 圧倒的有利の状況でさらにハンデを与えられたのだから。

 まあ事実、俺にとって両手を使わないのはハンデにならないんだけどね。俺脚使いだし。

「この・・・!どこまでも馬鹿にして!」

 先に馬鹿にしたのはどっちだという言葉はあえて飲み込む。このまま怒らせておけばいい。

「じゃあ始めますよ。ブザーが無いので俺のカウントで。3、2、1、スタート。」

 同時にドンッ!という音がアリーナに響き渡る。

 単純に俺が三人組の一人を蹴り飛ばしただけだ。

 それだけでそいつはアリーナの外壁に突っ込み、気を失ってしまったようだ。

 うん。やはりまだまだ修練が足りん。この程度で一撃とはな。

「で、まだやるかい。」

 殺気を放ち、宙に浮いたまま睨みつける。

 その殺気を感じ取ったのだろう。ビクリと残る二人が身を竦ませる。

 だがそこは経験の差。ラファール・リヴァイヴに乗った一人が即座に距離を取り、反撃をしてくる。

 俺はセオリー通り、円の機動を描いたまま少しずつラファールに近づく。

 それに気付いたのか、弾幕がさらに濃くなる。だが、当たらない。凶獣の機動性に着いてこれないみたいだ。

 一瞬の隙を突き、一気に間合いを詰める。そして彼女の腹を思い切り蹴り上げた。

 上昇するラファール・リヴァイヴ。スラスターを吹かしそれに追いつき、今度は思い切り下に向かって踏み倒すように蹴る。そのまま二人目は地面に叩きつけられKO。失神してしまった。

「まだやるかい。」

 残る打鉄の先輩に声を掛ける。あえて殺気は抑えて。

「こ、この!やってやろうじゃないのよ!」

 打鉄のブレードを振りかざし、突撃してくる。

 だから、隙だらけなんだって。

 ブレードを蹴り飛ばし、膝蹴りを見舞う。それも一発ではなく五発。

「かはっ!」

 肺の中の空気を全て出し切り、苦悶の表情を浮かべる。

「まだやるかい。」

「く、この!」

 マシンガンを展開し、零距離から発砲してくる。

 だが効かない。その程度の武器じゃ、そしてその程度の精度じゃ、凶獣の装甲は抜けない。

「まだ、やるかい?」

「ひ、ひぃっ!?」

 今度は殺気を浴びせつつゆっくりと言い聞かせる。

 恐怖で顔が引き攣り、声が上ずる先輩。

 だがどうだっていい。これで終いだ。

「一閃。」

 横っ腹をぶち抜き、彼女は完全に気を失った。流石にそのまま墜落させるのは目覚めが悪いので、担いで地面まで下ろす。

 だが最後の一閃はやりすぎだったか。この程度の相手に技を使うまでも無かったな。

 ・・・大分イラついいているようだ。こんな事を考えるなんて。

 今日はもう止めにしよう。そう思い、凶獣の展開を解き、アリーナから去った。

 

 

 その晩、俺に言い渡されたのは上級生三人を私闘で叩きのめした事での反省文だった。

「旺牙、何したの?」

「いや、ちょっとイライラしててつい。」

「旺牙もそんなことあるんだ。」

「俺だって人間だよ、簪。虫の居所が悪い時もあるさ。」

 そう、俺は人間。

 いや、違うか。あの日決めたはずじゃないか。

 心を殺した『獣』になると。

 




『ロンギヌス』・・アンゼロットの直属部隊。彼女に絶対の忠誠を誓うエリート部隊のはずだが、プレイヤーでもない限りモブキャラなのでよくやられ役になる。男女共に制服と謎の仮面(舞踏会などの、目を隠すタイプ)を着用している。

『魔術師』・・その名のとおり、魔法を使うことに長けたウィザード。西洋魔術の生態が主。現在は己の魔術書や杖をマジックブルームと融合させている者もいる。


「まだやるかい」・・おふざけが過ぎました。自分でも反省しております。だって花山さん好きなんだもん。
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