これちょっと関係ナインですけど、最近足に力入れると右親指の爪が剥がれそうな感触になるんですわ。
あと、今回はチョイ短めです。
あれから簪を説得しようと色々考えた。が!
「ねー、しおー。何か良い作戦見つかった?」
「あ?ねえよんなモン。プランBみたいなもんだ。」
「プランBって何?」
俺もよく知らん。とにかく考えなんて無い!
何度も当たって砕けても、その都度再生して繰り返す!俺はゾンビよりタフだぜ!
その1
「簪~ISの整備手伝おうか~?」
「帰って。」
失敗
その2
「簪~、今日のおやつ持って来たぞ~。」
「いらない。」
失敗(傷ついた)
その3
「簪~。」
「お帰りはあちら。」
(言うまでも無く)失敗
流石の鋼のメンタルを持つ俺でも砕けそうだ。まだ三回しか当たってないけど。
しかし傷つくな。お帰りはあちらって・・・。あいつ結構余裕あるだろう。
だがこの志垣旺牙。この程度では沈まんさ!
今日も今日とて整備室に入り浸ってやる。
しかしふと思う。これが俺ではなく『先生』だったらどうだっただろう。
・・・いや、神経を逆撫でして無理矢理話に持っていくだろうな。そういうの得意な人だったし。俺には無理だ。あの人ほど口は上手くない。
俺は俺のやり方でやらせてもらう。
「よう簪。」
「・・・何の用?」
今日はそのまま帰れコースにはならなかった。まず第一歩だな。
しかしISに向っている簪は別人のように鬼気迫っているな。部屋でアニメ談義している時と大違いだ。
「別に。今日はちょっかい出したりしねぇよ。ただ見てるだけならいいだろ?」
「・・・勝手にすればいい。」
こちらに一瞥もしないで作業に没頭する簪を見て、ふと思った。
大分疲れが溜まってきているようだ。本来なら力ずくでも止めた方がいいんだろうが、その選択は誤りな気がする。そんなことをすれば俺と彼女が築き上げてきた信頼関係が一気に崩壊する。それは避けたい。
どうしようか考えていると、簪の方から話を振ってきた。
「今日は何も言わないんだね。」
「ん?ああ、ちょっかい出さないって言ったばかりだからな。」
「そう・・・。」
再び沈黙が場を支配する。
しかしああは言ったものの、この沈黙には耐えられん。
やっぱりちょっと踏み込んでみるか。
「簪は一人で打鉄弐式を完成させようってんだろ?なんでまたそんな無茶を?」
しばらく作業音が続く。そして。
「認めてもらいたいから。」
「ん?」
「無能じゃないって、認めてもらいたいから。」
無能じゃない?俺はてっきり倉持技研や一夏へのあてつけかと思ってたけど。
こいつはまた根の深そうな問題だな。
「誰かがお前を無能だと、そう言ったのか?」
簪はコクリと首を縦に振る。
おいおい、それはお兄さん放っておけない案件だな。
「誰が?」
「・・・お姉ちゃん。」
あの人か・・・。
「お姉ちゃんが『楯無』を襲名した時に言われた。『貴女は無能でいなさい』って。」
微かに簪の体が震えている。それは悲しさからくるものか、悔しさからくるものか。
しかし何気に重大な話だぞ。
更識先輩の名前、本名じゃなくて襲名式だったのか。道理で勇ましい名前だと。
だが先輩。実の妹に対して『無能でいろ』は無いだろう。俺だったら怒り爆発で家族の縁切ってるかも知れんな。
ということはまさか、簪は更識先輩を見返すために一人でISを?
十分凄い事だと思うんだけどな。今だってコンソール弄る指が見えん。
更識先輩も一人で組み上げたらしいけど、あの人は別ベクトルで凄まじいからな。
束さん?あの人は超人だろ?天災ヤ人だろ?
「んで?どの辺りが上手くいかないんだっけ?」
「・・・荷電粒子砲の春雷とマルチロックオンシステムのミサイルポッドの山嵐。」
荷電粒子砲にミサイルポッドか。
春雷は、フルパワーの伏竜のデータが生かせるかな。
マルチロックオンシステムのミサイルなら確か『兵器』に良いのが・・・。
「なあ簪、やっぱり俺にも手伝わせてもらえないか?」
「!?・・・何で?」
「俺の『技術』じゃ無理でも、『知識』なら貸せそうなんだ。それを使えばぐっと完成に近づくはずなんだ。」
「要らない。弐式は、私一人で作り上げる。」
こりゃ意地になってるな。・・・神経を逆撫でるってどうやるんだろう?
「簪、俺はお前の力になりたい。本音だってそうだ。そうやって憔悴していくお前を見たくない。俺達なら、微力でも力になれるはずなんだ。」
「・・・。」
「お前は良くやった。ここまで独りでやってきたんだ。だから、もう誰かを頼っても。」
「もうやめて!弐式は私が完成させるの!私一人で!じゃないと、また無能に戻っちゃう・・・。」
初めて声を荒げる簪。
だが、感情の蓋はこじ開けた。簪の痛みと引き換えに。
ああ、やっぱり俺には似合いませんよ、『先生』。
「・・・簪、俺の『師匠』にあたる人が言っていた。『一人の人間には何も出来ない。だが、四、五人集まれば世界だって救える』って。誰かを頼る事が恥にはならないとも。今が頼り時なんじゃないのか?」
「・・・帰って。」
今はもう無理か。
「じゃあ、俺は鍛錬してから部屋に戻るよ。後でな。」
その言葉に、返答は無かった。
鍛錬を終え、部屋に戻ると簪は既に眠っていた。
次の日、今度は差し入れを持って整備室へ向う。
相変わらず一人で弐式を弄っている。
「よっ。」
「・・・帰って。」
「そう言うなって。今日は自信作を持ってきたんだ。」
バケットからマドレーヌを差し出す。簪は数秒睨めっこしていたが、一つ手に取り小さい口で噛り付いた。
「甘い・・・。」
「中にマーマレードを練りこんである。疲れてる時には甘いものが良いだろ?」
「それ、迷信だよ?」
「マジでっ!?」
俺本気で信じてたのに。
打ちひしがれていると、クスリという声がした。
簪が、笑っていた。
「やっと笑ってくれたな。」
「!?え、その!?」
「いいんだ。女の子は笑ってるほうが断然良い。」
赤くなってしまった。何故だろう。
「て、手伝いなら要らない!?」
「今日はその話じゃないよ。ただ差し入れと、世間話だ。」
よっこらしょと、俺はその場に座り込んだ。
簪も珍しく手を止め、俺の隣に座る。
ちょっとした静寂が二人の間に流れた。
「ねえ旺牙。昨日、というかよく話に出てくる『先生』や『師匠』って誰?」
「ああ、ちなみに同一人物な。『先生』か。そうだなぁ。厳しい人だったな。」
自分にも他人にも。それでいて解り難い優しさを出すから余計に混乱させられる人だった。『先生』の知り合いは、昔はもっと人間味のある奴だったって言ってたけどな。
厳しいだけじゃなく、優しいだけじゃなく。生きる術を教えてくれた人だった。
俺が中学時代馬鹿やってたのを止めて更生させてくれたのも『先生』だった。あ、これは全部『前世』での話なんだが。
『前世』の部分をぼかして話すと、簪はしっかり聞いてくれた。
「今の旺牙がいるのは、きっとその人のお陰なんだね。」
「・・・ああ、そうだな。」
しみじみ頷く。きっとそうだ。俺の人格形成には、きっと『先生』が大きく関わっている。こんな事を言うと、『人のせいにするな』と怒られそうだが。」
「私は・・・、置いていかれたくなかった。」
簪がぽつぽつと語り始めた。
昔から優秀な姉と比較されてきた。どんなに姉が先に進もうと、必死についていった。
だから、無能でいろと言われたことがショックだった。
「簪は、更識先輩が嫌いか?」
「そんなことないっ!」
強い口調で反論される。
うん、なら大丈夫だ。この姉妹は、互いを思い合っている。
それが、少しずれているだけだ。まだ補修できる段階にある。それが分かっただけで今日はめっけもんだ。
「その思い、きっと届くよ。簪は強くて優しい娘だから。」
ポンと頭を撫でる。
するとどうでしょう。簪さんの顔が真っ赤になってしまいました。
え、なに?俺何かした・・・って、この手か!?
「わ、悪い!その、ちょうど良い場所に頭があったから。」
「う、ううん!大丈夫っ!嫌じゃなかったし(ボソっ。」
ん?今何か言ったか?
「それじゃ、今日はこれでお暇するわ。根詰めすぎるなよ。」
「うん。」
去り際に見た彼女の顔は、少し微笑んでいた。
「で、盗み聞きとはお人が悪いですよ、先輩。」
「あらら。やっぱり気付かれてたのね。」
俺が整備室を出ると、物陰から二人の女生徒が現れた。
一人は言わずもがな、更識楯無先輩だが、もう一人はだれだ?
「お初にお目にかかります。私は、生徒会会計の布仏虚と申します。妹がいつもお世話になっております。」
妹?布仏?ま、まさか・・・。
「貴女、本音の、お姉さん?」
「はい。」
マイガッ!いや確かに顔立ちに面影はあるけどさ!雰囲気違いすぎだろ!?
この出来る女然とした凛とした雰囲気はよう、あののほほんとした性格と噛み合わないって絶対!ハッ、まさか・・・。
「あの、布仏姉妹の仲って・・・。」
「はい。いたって良好ですが何か?」
良かった!ここはなんとも無かった!
これ以上問題事抱えるのはゴメンだよ!
「ちょっと何よ。まるで私には問題があるように聞こえるじゃない。」
扇子には『名誉毀損』と出ているが、自分の胸に聞いて見て欲しい。
話は大体簪から聞きましたよ。
「そう、簪ちゃんが・・・。」
「何があってあそこまで言ったんですか。普通はトラウマもんですよ。」
「・・・あの子に危害が及ぶのを避けたかったからよ。」
・・・それだけ?
「それだけって、あなたねえ!」
「だったら簪もひっくるめて護れるくらい強くなれば良いだろう、アンタが。」
「!?」
「それに簪もアンタに護られてるだけじゃない。もっと強くなれる娘だ。肩を並べるのは無理でも、少し後ろを歩く権利があっても良いんじゃないのか?」
「それは・・・。」
「俺にアンタらの深い事情は解らない。でもよ、家族なんだ。ギスギスしてるのは、嫌だろ?」
俺の言葉に、あの時は強気だった更識先輩は下を向いてしまった。
やはりこの人の弱点は簪だ。それも特大の。
だからこそ、弱いままじゃいけないと、俺は思う。
「志垣くん。あまり会長を責めないでください。会長にも思うところがあるのですから。」
「わかってますよ。ただ、外部から強く言う人間ってのは必要でしょう?」
それじゃ俺はこの辺で。日課の鍛錬がありますからね。
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「ねえ、虚ちゃん。」
「なんでしょう、お嬢様。」
「本当に、彼に簪ちゃんを任せて大丈夫かしら?」
「・・・大丈夫かと、思われます。」
三歩後ろに立つ幼馴染みにそう言われる。
「更識家に仕える身として、観察眼は心得ておりますゆえ。」
ふふっ、そう。
「信じてみるのも良いかもしれないわね、もう一度。」
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