既に七~八割説得されてます。
いつもの如く駆け足です。
早く次のバトル書きたいんや・・・
堪忍や・・・
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あれから毎日旺牙は私の様子を見に来てくれた。
時にはただ雑談に、時には武装のアドバイスに。
不思議と「鬱陶しい」とは感じていなかった。
私の些細な愚痴に、しっかりと耳を傾けてくれた。
イラついていた時は差し入れを持って来てくれた。
旺牙は優しい。特に何もしていなくても、そこにいてくれるだけで安心できる。
今まで甘えるのが苦手、というか避けていた私が、彼に対しては多少甘える事ができた。それは部屋でも同じだった。
アニメを見ていると、邪魔にならないか心配だったけど、旺牙は「自分も好きだから」と言って一緒に見てくれた。私の実況や解説もニコニコと聴いてくれた。
温かい。旺牙といると心が温かかくなる。
何時のころか忘れていた、本音にも見せなくなっていた自然体の自分でいられる。
でも、やっぱり心配になる。
彼は無理をして私に付き合ってくれているんじゃないかと。
自分を偽らない人だとは、今までの生活で分かっている。
それでも、こんな私に合わせているのは疲れるんじゃないか。そう思ってしまう。
今日も私は整備室に向う。
彼が来ないかと浮かれながら。
もう愛想を尽かしてしまったのかと不安に思いながら。
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今日も俺は整備室に向う。
打鉄弐式ももう完成に近い。だが、武装データや稼働域の問題が改善されないのだ。
理論上は構築されているが、俺の腕ではそれを再現できない。簪の卓越したプログラミング技術でも、それを再現できない。
仕方なく彼女の相談相手になっているが、それだけで役に立てているか解らん。
頭を捻っていると定位置に簪はいた。
「よう、調子はどうだ?」
「あんまり。」
苦笑交じりの顔で対応される。最初の方に比べればものすごい進歩だ。
前は顔を見るなり「帰って」だったもんな。
ディスプレイに何かを打ち込んでいく簪。
その速度と正確性は、もう上級生の位にまで達しているのではないだろうか。
それでも完成しないという、ISという機械の難しさよ。
「しかし簪もよくここまで一人で組み上げたよな。」
「独りじゃない。」
「?」
「途中から旺牙が手伝ってくれたから。」
嬉しいこと言ってくれるじゃないの。今一人だったらお兄さん泣いてるよ。
まあ手伝ったと言っても変な口出ししたり、工具持ってきたりしたぐらいだけどな。
でも、二人でもそろそろ限界かなあ。
簪も、そろそろ本音に手伝ってもらおうかって言っていたし。
・・・よし。善は急げだ。
「簪、作業進めててくれ。ちょっと出てくる。」
さっそく本音を捕まえにいこう。
廊下を歩いている所に出くわし、本音に事情を説明。あっさり仲間に引き込めた。流石は幼馴染み。話がわかる。
「それにしてもしおーは凄いよね。」
「ん?何がだ?」
ダボダボの制服の袖を振り回しながら言う。
「だって皆が言っても聞かなかったかんちゃんを動かしちゃったんだもん。どんなことしたの~?」
後半少し嫉妬入ってたな。ん~、そうだなあ。
「何もしなかった、かな。」
「何も?」
「そ。ただ傍にいて見てただけだよ。特別な事はしてない。ちょっと雑談したくらいだな。」
実際それ以外していないのだから何も言えない。
「・・・それが凄い事なんだけどな~。」
「ん?何か言ったか?」
「何も~。それじゃ早く行こう。」
「かんちゃん。助っ人に来たよ~。」
「あ、本音。・・・うん。ちょうど頼もうと思ってたところ。」
(かんちゃんの顔が穏やかになってる!?しおー、恐ろしい子!?)
なにやら失礼な電波を受信した気がしたが、思い過ごしだろう。
「よし!三人寄らば何とやらだ!さっさと仕上げちまおう!」
「お~。」
「お、おー・・・。」
こうして、簪、俺、本音の三人での作業が開始した。
が、駄目!春雷と夢現(ゆめうつつ)のデータは揃った。だが山嵐と装甲部分で躓く!現実ですっ!これが現実っ!
て遊んでる場合じゃない。さらに二日を要しても、作業は遅々と進まなかった。
あと少し。本当にあと少しなんだ。
なら、手段は選んでいられない。たしかあの人も整備科だったはずだ。
「お願いします!手を貸してください!」
俺は二年生の廊下で件の人物、黛先輩に頭を下げていた。
「ちょ、ちょっと待って!?どうしたの突然!?」
先輩はかなり困惑した様子だった。まあ廊下でいきなりこんな大男に懇願されては何が何だか解らないだろう。
俺は事の経緯を説明した。それで先輩の伝手を頼りたいと。
俺が勝手に進めていることだ。簪に拒否されるかもしれない。
それでも、彼女の今までの頑張りを無にはしたくなかった。気がつけば俺も必死になっていたのかもしれない。
「とりあえず顔を上げて志垣くん。」
先輩に促され、顔を上げる。目は先輩の顔をしっかり見つめたままで。
「そんな顔されると断りづらいなあ。そもそも志垣くんはその子のために何をしてあげたいの?」
「なにもできません!」
「は?」
「だから!何とか出来そうな人に頼んでるんです!」
「・・・キミ、結構無茶苦茶言ってるよ?」
「友達のためなら、無茶も何もかも貫くし、苦いもんも飲み干します。」
ここでプライドなんかいらない。そんなもの溝に捨ててしまえ。
今は打鉄弐式を完成させることが大事なんだ。
なにより、簪に「人の和」を教えたい。
一人では出来ない事でも、五人、六人、それ以上ならきっと出来るって。
「はあ、落ち着いてると見たらこの熱血ぶり。なかなか掴めないねキミも。」
「それって・・・?」
「うーん。明日には何人かに声掛けてみるわ。」
「!?ありがとうございます!」
「ただし!今度取材させてね。出来れば織斑くんもいっしょに。」
一夏は、約束できませんが俺の事ならなんでも!
あ、いや。何でもは不味いな。ウィザード関係の事とか。
とにかく、これで強力な味方はゲットできた。
明日以降、忙しくなりそうだ。
「え?先輩方が来るの?」
案の定、簪は戸惑っていた。そりゃそうだ。いきなり部外者がどんと増えればな。
「簪。お前は良くやったよ。一人でISをここまで組み上げた。でもさ、人間限界ってもんがあるんだよ。」
「限界、私の、限界・・・。」
「でもその限界を知ることは悪い事じゃない。自分に何が出来るのか、何処までやれるのかを知っている奴は、確実に強くなる。それに、悪いもんじゃないぜ。人の手を借りるのは。」
「でも・・・。」
簪はまだ俯いている。
「それに前にも言っただろ?『一人の人間には何も出来ない。だが、四、五人集まれば世界だって救える』って。人が集まるってのは、時として無限の力が生まれるんだ。」
だからさ、受け入れてみろよ。
簡単さ、一緒にやりましょうって言えば良いんだ。
さあ踏み出そうぜ簪。
「あ、志垣くん。精鋭を連れてきたよ。」
「へー、少人数でここまでISをねえ。すごいじゃない。」
そこには黛先輩を筆頭に六人の生徒が来ていた。それぞれがフレーム、武装のスペシャリストだそうだ。
一気に三倍に膨れ上がったチーム。あとは、それを簪が受け入れるだけだ。
「あの、その・・・。」
・・・駄目か?
「よろしく、お願いします・・・。」
よし!よく言えた!
「いいのいいの。こっちも専用機を弄れるなんて良い経験なんだから。」
「さて、それじゃあちゃっちゃと取り掛かりますか。」
俺達が作業に入ろうとしたその時。
「あ、あの!私達も参加して良いですか!?」
嶋田と立花が立っていた。髪をタオルで結んでやる気満々だった。
「私たちはいいよ。猫の手も借りたいくらいだから。あとはクライアント次第だけど。」
「うん、お願い、します。」
若干たどたどしかったが簪は受け入れた。
俺の言葉、少しでも解ってくれていたなら嬉しい。
「志垣くん、スパナ持ってきて!」
「はい!」
「こっちはオイル差し!」
「了解!」
「ドリンク一丁!」
「喜んで!」
待て、最後おかしくなかったか?
まあ変な要望もありつつ、俺は馬車馬のように働いた。実際に手を動かしている人たちの方が大変だと知っているから。
ただ、どうしても山嵐のマルチ・ロック・オンシステムで躓くらしい。
そこで俺の知っている箒機士専用マジックブルームの武装『マジックミサイルランチャー』と『ミサイルコンテナ』の基礎技術を提示してみた。
それが大受け。『マジックミサイルランチャー』の誘導性と『コンテナミサイル』の多弾性が山嵐に上手くマッチしたらしい。
俺と簪だけじゃ上手くいかなかったのに、これが上級生の力か。
ドリンクが無くなったので補充に行くと、更識先輩と布仏先輩がいた。
「あの意固地だった簪ちゃんの心をああも簡単に開くなんて、正直妬けちゃうわ。」
「簡単じゃありませんでしたし、意固地になってたのは先輩のせいだって聞きましたよ。」
うぐっと言葉に詰まる先輩。それだけのことを言ったのだから自業自得だ。
「あとは稼動データよね。」
「ええ。そればかりはゼロからですからね。」
「これ、使ってもらえるかしら。」
そう言って何かのデータを差し出してくる更識先輩。
これは、先輩の専用機の稼動データ?
「これがあればゼロからじゃなく、一端のISとして起動できるわ。それで一気に完成するはず。」
先輩は心から妹の事を思って言っているのだろう。
だが、これを受け取るのは少し違う気がした。
俺はデータをそっと先輩に返す。
「どうしたの?」
珍しくいらだたしげだ。
「先輩。これを受け取ったら、先輩と簪の差は開く一方だ。アイツが望んでいるのはそんなことじゃない。弟や妹は、一度は思うことがあるんですよ。」
ま、俺は一人っ子ですけどね。
「・・・よく解らないわ。」
「そりゃ先輩は『姉』ですから。前にいる人間には解りませんよ。」
じゃ、失礼しますと言ってその場を後にした。
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私は彼が立ち去った後、整備室をそっと覗いてみた。
そこには汗水流しながら、それでも一生懸命に、そして楽しそうに作業をする簪ちゃんの姿があった。
私の見たことの無い顔。いつも俯き、人を遠ざけていた姿はそこには無かった。
それを成し遂げたのが、出会ってまだ半年も経っていない男子だったのだ。
「なんか、嬉しいような、悔しいような・・・。」
「お嬢様・・・。」
志垣旺牙くん。きみは自分でも分かってないくらい凄い事をしたのよ・・・。
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そして、それから三日。
「「「出来たー!!」」」
ついに打鉄弐式は完成した。
ネックだった武装面も完璧。流石に魔法技術の部分は省いたが、マルチ・ロック・オンシステムも再現できた。
あとはこいつをゼロから育てていくだけだ。
「やー。疲れたね。」
「あ、甘い物ならありますよ。黛先輩には申し訳ないですけど、プリン。」
「おお、気が効いてるねぇ。」
「こ、これが噂の志垣くん特製プリン・・・。」
「「「え?志垣くんが作ったの!?」」」
なんて食堂はどんちゃん騒ぎが始まりそうだが、俺は簪を連れ出していた。
「どこにいくの?旺牙。」
「ひとつの決着、着けないといけないだろ?」
俺は一夏を整備室に呼び出していた。オマケに箒、セシリア、鈴もいた。何故?こいつらセットなの?
「なんだよ旺牙。最近全然訓練に付き合ってくれなかったじゃないか。」
「悪いな。大事な用があったんだ。ほら、簪。」
俺は後ろでビクついていた簪を一夏の前に押し出す。
「あれ?簪じゃない、どうしたの?」
「すまん鈴。今日は二人の問題なんだ。」
鈴が口を挟もうとするのを止める。そうしないと話が始まりそうに無かった。
「織斑一夏。私は貴方を殴る権利がある。」
その言葉に一夏と鈴は驚愕、箒とセシリアは怒りの表情を浮かべる。
いきなりそんな事を言われたのだ。そうもなろう。
簪は事の経緯を話した。白式の開発の為自分のISが開発中止になったこと。
簪が一人でそれを組み上げようとした事。
「やっぱり、俺のせい、なんだよな。」
一夏は何かを覚悟したように目を閉じる。
しかし、彼が待ち受けていた衝撃は何時まで経ってもやってこなかった。
「でも、旺牙に教えてもらった。一人で出来る事の限界。他人と交わる事の楽しさ。それは貴方への怒り以上の大切なモノ。だから、私は貴方を殴らない。その代わり。」
簪はおずおずと右手を差し出した。
「友達に、なろう、織斑くん。旺牙の親友がどんな人か、私も見てみたい。」
「あ、ああ。そういうことならいいぜ。改めまして、織斑一夏、一夏でいいよ。」
「私も、簪でいい。」
そして二人は硬い握手を交わした。
それで終われば良い話で済んだんだがなあ。
「な、なんなのだ今のは!?」
「納得がいきませんわ!?い、いきなりあんなこと言って握手なんて!?」
「アンタは旺牙派よね!?そうよねそう言いなさいよ!」
「へ、へ、へぇ~~~~!?」
「なあ、なんだあれ?」
「知るか馬鹿。」