IS×NW~世界を渡りし者~《更新停止》   作:戒炎

29 / 88
突如乱入してきた覇王軍四天王テレモート。
立ち向かうのは歴戦のウィザード(の転生者)、志垣旺牙。
負けるな旺牙!世界の平和は君の手に委ねられた!

今回!凶獣、敗北!デュエルスタンバイ!

・・・やっぱあの次回予告は最強のネタバレだよなぁ。


凶獣、敗北

 

 空が、世界が紅く染まっていく。天空には紅い月が昇っている。

「布仏先輩、本音!二人を安全な場所へ!もう戦う余力なんかないだろう!」

 突然のテレモートの乱入に対し、俺は非戦闘員の布仏姉妹に指示を出す。

 幸いまだ奴は攻撃を仕掛けてくる様子もない。

「しおーはどうするの!?」

「俺はこいつをぶちのめす!」

 凶獣を展開し、俺は構えた。

 それでもまだテレモートは構えようともしない。

 余裕か、それとも・・・。

「早くしろ!巻き込まれたいか!」

 俺の怒声に、四人がようやくピットへ戻ろうとする。

「旺牙!無理しないで!」

 僅かに振り向くだけでその声に応える。

「旺牙!俺達も!」

「駄目だ!お前たちはアリーナに人が入ってこないようにしてろ!何が起こるかわからない!」

「でも!」

「いいから、今は言う通りにしろ!どのみちお前たちじゃこいつに干渉できない!」

 いや違う。ISなら侵魔に攻撃が通る。

 だが、相手はネームド級。もしもがあり得る。

 それに奴の纏う覇気は、トルトゥーラ以上の物を感じる。

 間違いなく、強敵だ。皆を巻き込むわけにはいかない。

「・・・くそ!旺牙!やばくなったらすぐに助けに来るからな!」

 侵魔の強大さを肌で覚えていた一夏がすぐに判断してくれた。

 これで良い。これで、全力で戦える。

 

 

 アリーナに人がいなくなると、テレモートはようやくハンマーを構えた。

「待っててくれたのかい。優しいこって。」

「元より俺の狙いは貴様のみ。他の者に興味は無い。」

「それでいなくなるまで待つとか、立派な騎士道精神だな。」

「ふん。純粋な闘争を邪魔されたくないだけだ。」

 そこで会話が切れる。

 二人の間に、一陣の風が吹いたような気がした。

 刹那、両者が弾ける様に間合いを詰めた。

「ぜあぁぁぁぁぁっ!!」

「ぶるあぁぁぁぁっ!!」

 俺の蹴りが、テレモートのハンマーがぶつかり合い、破裂音を上げる。

 互いにあまりの威力に距離が開く。

 奴のハンマー、インパクトの瞬間ブーストしやがった。

 ただのハンマーじゃない。『錬金術』で造られた特殊な得物か。

 それに奴の重厚な鎧。多分に魔力を感じる。『魔鎧』ってことか。

 戦い以外出来なそうな見た目のわりに、意外とインテリなのかもな。

「ふうぅぅぅぅ・・・。今の一撃、中々に良い。腕が痺れたわ。」

「ありがとよ。こっちもまだ脚がビリビリしてるぜ。」

 互いの初手は互角。だが今ので分かったことがある。

 こいつ、おそらく俺より強い。

 こいつが俺の考えてるような『武人』なら、まだ上の攻撃があるはずだ。

 対して、俺は攻撃力が心許ない。

 攻守揃った相手には中々厳しい。

「次だ。うるあぁぁぁぁぁっ!!」

 ちぃ!少しは考えさせろってんだ!

「《一閃》!」

 再び爆発音が場に響く。

 この馬鹿力!なんて攻撃力だ!

「小僧!本気を出せ!このままではつまらんぞ!」

 別に手前を楽しませたいわけじゃねえんだが、仕方ない。

「《インカネーター》出力最大!」

 超能力で凶獣の能力をフルで出し切る。

 正直、これで追いつけなけりゃ俺の負けは確定だ。

「《バリアントウォール》!」

 続くテレモートの一撃を、全力を持って防ぐ。

 ゴンッ!という鈍い音がする。

「ほう・・・。」

 防げたのは僥倖。だが防御に全力を使っていたんじゃ奴は倒せない。

 攻防力、だっけ?攻撃と防御のバランス。それを考えなきゃならん。

 あっちは常時魔鎧着込んでてズルいぞこん畜生。

「《一閃・錬気蹴》!」

 反撃とばかりに奴の腹に『龍』を練りこんだ一撃をぶち込んでやった。

「グフッ!?」

 見事にめり込む。意外だったのは奴の魔鎧がそこまで硬くなかったことだ。

 どうやら重厚そうなのは見た目だけで、攻撃の動きを阻害しないよう軽く作られているようだ。

 おまけにこいつ、攻撃を防御しない。圧倒的な自身の攻撃力で敵を圧し潰すタイプだ。

 しかもお互い同時攻撃か、交互に攻撃を放つのを趣旨とした戦闘を好んでいる。

 これならまだ勝機はある!

「でりゃーーーーー!」

「つあーーーーーー!」

 炸裂音三度。俺の『右脚』と奴のハンマーがぶつかり合う。

 俺のダメージもあるが、奴にもダメージは入っているはずだ。

 そして悪いが、俺は手前の騎士道精神だか何だかに付き合う気はない!

「《伏竜》!」

 俺は両手を合わせ、左右のエネルギーを集中させて伏竜を放つ。

「グヌ、オォォォォォォーーーッ!」

 エネルギーの奔流を、それでも突き進んでくるテレモート。

「覇ぁぁぁーーー!全開だーーーーーーー!!」

 武装である《伏竜》に本来の龍を乗せた本来の伏竜を放つ。

「ぶあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 テレモートの姿は光の奔流の中に消えていった・・・。

 

 

「今のでくたばってくれたら楽なんだけどなぁ。」

 ポツリと呟く。

 当然そんな美味しい話は無く、砂塵の舞う中、何か重いものを振るう音がする。

 テレモートのハンマーが砂塵を吹き飛ばす。

 多少はダメージが有ったものの、まだまだ元気という感じだ。

 野郎、魔鎧着てなくても十分タフじゃねえか。

「面白い・・・。やはり面白いぞ貴様!」

 だから、褒められても嬉しかねえんだってばよ!

 それなら、こいつで一気に決める!

「錬気怒涛拳!」

「ヌッ!?」

 今までのような大技ではなく、細かく、速い連撃を叩き込む。

 目論見は、奴の態勢を崩すこと。

 そこに、今の俺の最高の技を叩き込む! 

 俺の速攻にたたらを踏むテレモート。

 今だ!

「破を念じて、刃と成せ・・・。」

 念を、龍を込めろ!

「念導龍錬刃ッ!!」

 全てを込めた右拳を奴の心臓に叩き込む!

「グオォォ!?」

 手応え・・・あった!

 ボキッ!

「え?」

 フルスキン越しに声が出る。

 見ると、俺の拳はテレモートに捕まり、握りつぶされていた。

 解放される拳。ISの指ごと、五指はあらぬ方向を向いていた。

「~~~~ッ!?」

 目で見てから初めて確認できた、声にならない痛み。

「くっ!《ヒール》!」

 間髪入れずに回復魔法で癒す。

 骨は治ったが、痛みは継続中だ。

 それよりも、心理的ダメージの方がデカい。

「フハハハ・・・。良かったぞ、今の一撃。」

 テレモートは恍惚の笑みを浮かべている。

「だがまだ足りん!足りんぞ!もっと大きな一撃を!俺に!死合っているという実感をくれ!」

 戦闘バカもここまでくると病気だねどうも。

 だがまずい。非常にまずい。

 今のが俺の切り札だったんだ。

 そいつで倒せなかったとなると、打つ手が・・・。

 いや、俺がここで弱気になってどうする。

 俺の後ろには、皆がいるんだぞ。

 なら。

「だったら!とことん付き合ってやらあ!!」

 

 

 何合、攻撃を交わしただろう。

 俺の息も大分上がってきた。シールドエネルギーも限界だ。

 対してテレモートはまだまだ余裕の顔をしていやがる。

 いや、奴の魔鎧には罅が入っているから、ダメージは大きいはずだ。

 大方、闘争に愉悦を感じているんだろう。

 トルトゥーラは変態サディストだったが、こいつもこいつで変態だ。なんだ?覇王軍ってのは変態の集団か?

「うるあぁぁぁぁぁっ!!」

 ちっ!少しは休ませろっての!

 やがるつも限界が近いはずなんだ!

 もう少し踏ん張ってくれよ、俺の体!

「てやぁぁぁぁぁっ!!」

 俺は右脚に渾身の力を込めて蹴り放つ。

 ふっと、脚から力が抜ける。正確には、スラスターと補助ブースターが止まった。

(ヤバい!こんな時に!)

 そして何度目だろう。炸裂音がした。

 砕けた。『凶獣の右脚装甲』が。

 それと同時に凶獣が、ISが解除された。

「グ、ガァァァァァ!!」

 今度は痛みで声が出た。

 ヒールは間に合った。だがやはり痛みはどうしようもない。

「ぬん!」

 すぐさま次の一撃が飛んできた。野郎矜持も何もかも吹っ飛んで戦いを楽しんでやがる。

 すぐにバリアントウォールを張る。

 だがハンマーの威力を殺しきれない。そのまま壁まで吹き飛ばされた。

 崩れたアリーナの壁を退かそうとして、左腕に力が入らないことに気付く。

 どうやらこっちも折れたらしい。けっ。痛みに慣れてきやがった。

「ヒー・・・ル。」

 声が上手く出せない。ヤバい。こりゃ相当ダメージを喰らった。

「・・・辞めだ。ISとやらが無い貴様と戦っても面白くない。」

 何だと、この野郎。

「まだ、ヒュー・・、終わって、ヒュー・・、ねえぞ・・。」

 口からは変な息が漏れている。

 だがまだ終わるわけにはいかない。

 あいつらが後ろにいるんだ。だから、だから。

「負けられねえんだよ・・・、手前なんかに・・・。」

「・・・その心意気や良し。だが戦えぬ体ではな。」

 そう言いながらテレモートは俺に近づく。そして。

「噴ッ!」

「ガハッ!」

 強烈なボディブローをお見舞いしてきた。

 その一撃で、粉砕まではいかなかっただろうが、あばらをやられ、俺の意識は飛んだ。

 すまない『先生』。俺、少し弱くなっちまったみたいだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こやつ、脚を壊していたか。」

 とんだ興ざめだ。テレモートは思う。

 自分の昂らせ、静めてくれるような漢と思いやってきた。

 実際に、彼は自分を昂らせてくれた。矜持を一瞬忘れるほどに。

 だが、なんという幕切れ。

 所詮ウィザードも、ISなる仮初の鎧を纏っていてはこの程度か。

 ここで止めを刺すも良し。だが・・・。

「ウオォォォォォッ!!」

 突如として響く怒声。

 テレモートは振り返る。

「旺牙から、離れろォ!」

 そこには白式を纏った一夏がいた。否、正確には雪片弐型を構え突撃してくる織斑一夏の姿が。

 テレモートにとっては取るに足らぬ相手。そう思っていた。

 ハンマーで雪片を受け止める。ただそれだけのはずだった。

 砕けたのは、テレモートのハンマー。

 彼は柄の部分だけが残った己の得物を見て驚愕する。

「もらった!」

 一夏は返す刀で雪片を振るう。

「甘いわ小僧!」

 しかし、テレモートは拳だけで白式を吹き飛ばす。

 一夏は白式の態勢を立て直し、今度は己が剣を正眼に構える。

 その姿を見て、テレモートは何かを確信した。

「フ、フハ、フハハハハハ!」

 侵魔は一人高らかに嗤う。

「良い土産話が出来た。此度はここで退散するとしよう。」

「待て!」

 テレモートの姿が徐々に薄くなる。

 嗤いは狂気を帯び始める。

「伝えておけ!決着は必ずつけると!そして白き小僧!貴様もまた運命の渦中にあるのだ!努々忘れるな!」

 その言葉を残し、侵魔は完全に姿を消し、天空の紅き月も消え去った。

「何だったんだ、あいつ・・・。」

 一夏はひとり呟く。だが、それより優先するべきことがあった。

「!誰か!担架だ!旺牙を保健室に連れていく!」

 今日この日、IS学園に衝撃が走った。

 二年生をも凌駕する噂の『獣』が、謎の乱入者に敗れ、重傷を負った。

 

 

 

 

 

 

 ここはIS学園保健室。

 志垣旺牙はここのベッドに寝かされていた。

 意識がないため本来ならば病院などに運んだ方が良いのだが、『男性IS操縦者』の肩書がそれを許さない。その病院が、本当に信頼できるか判らないからだ。

 故に、学校で処置を施すしかない。幸いにも、IS学園は医療機器もそこらの病院より優れている。

 眠る旺牙。その傍らには、一人の少女が座っていた。

 更識簪。旺牙によって心を救われた少女。少なくとも、彼女はそう思っていた。

 初対面の時、ぶっきらぼうに挨拶してしまった非礼を、ちょっとした冗談で帳消しにしてくれた。

 いつも手料理やお菓子を作ってくれた。

 趣味のアニメ鑑賞に付き合って、場を盛り上げてくれた。

 打鉄弐式の完成を手伝ってくれた。そして人と人との繋がりの大切さを教えてくれた。

 そして、姉との確執を消し去る後押しをしてくれた。

 簪が笑顔になるときには、いつも旺牙が居てくれた。

 簪はずっと求めていた。自分を助けに来てくれるヒーローを。自分に笑顔をくれる存在を。

(早く戻ってきて・・・。私の、ヒーロー・・・。)

 凶獣は倒れたのか。魔を噛み砕く牙は折れたのか。

「・・・誰か呼んだか?」

 ゆっくりと、しかしはっきりと言葉を発する旺牙。

「!?お、旺牙!!」

 旺牙の覚醒に対し、その巨体に思わず抱き着く簪。

「簪・・・、流石に、痛ぇ・・・。」

 凶獣は、未だ倒れず。

 

 

 

 

 

 

 場を移して、何処かの空間。

 覇王軍の居城、と言ったところか。

「テレモート!貴方は何処まで愚かなのですか!敵を目の前にして逃げかえるなど!」

「猛るな兄者。俺は弱者を甚振る趣味は無いだけだ。それより、土産話がある。」

「あら、何かしら。あなたの口から話だなんて、明日は槍が降りそうね。」

「そうからかうな姉者。母上。朗報と凶報、同時にございます。」

「うむ、申してみよ。」

 上座に座る少女は先を促す。

「は。『あの時の少年』、やはり本物。『覇王を滅する者』で間違いないかと。」

 その言葉を聞き、場はさらに騒然となる。

「そんな・・・。お母様を討てる人なんて・・・。」

「テレモート!そこまで分かっていながら!」

「そうですよ!母上の御身に何かあったらどうするのですか!」

「弄るのに夢中で気付かなかった兄者に言われたくは無いな。」

「貴様!」

「フハハハハハ!」

 喧々囂々とする場に、少女の高らかな笑いが木霊する。

「そうか!我を討てる者か!確かに凶報!確かに朗報よ!ハハハハハハ!」

 少女は笑う。無邪気に、そして残酷に。

「そうでなくてはつまらん!志垣旺牙、そして『織斑一夏』!運命の子らよ!我に挑め!世界を救いたくば、我を止めて見せよ!」

 覇王。それは絶対的な勝者に贈られる称号である。

 覇王は揺るがない。己の身を揺るがす凶事さえ、彼女にとっては愉悦にすぎない。

 




久しぶりの解説コーナー


『錬金術師』・・科学と魔術、両方の面から世界の法則を紐解こうとするウィザードたち。
        ガジェットという特殊なマジックブルームを持つ者もいる。

『魔鎧使い』・・まがいつかいと読む。特殊な防具『魔鎧』を装備して戦う。以上。


少しの間忙しくなりそうなので連投です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。