皆様風邪にはご注意を。
私はもうひきかけました。
渡り歩いた地で
『インフィニット・ストラトス』、通称『IS』。
とある一人の天才が生み出した、宇宙進出を目的としたパワードスーツ。
ISの前にはあらゆる兵器が霞んで見えるほどの戦闘力を有し、歩兵はもちろん、戦車や戦闘機、挙句には戦艦であろうと敵わない。
かつて、世界中の軍事コンピューターがハッキングを受け、日本の東京に約2千発のミサイルが発射されるという事件が起きた。
それをたった一機のISが全て撃墜。ISの強大さを知らしめたこの事件を後に『白騎士事件』と呼ばれた。
これを機に、ISは新世代の兵器として世の中に認識されていく。
製作者の思いとは裏腹に・・・。
だが、そのISにも欠点があった。
それは女性にしか反応せず、使用できないという点だった。
その結果、世間にはISが使える女性の方が地位が上、いわゆる『女尊男卑』の考えが広まっていく。
八月中旬、季節は夏真っ盛り。
蝉の声をバックに聞きながら、俺はとある場所へ向っていた。
目指すは我が幼馴染み、織斑一夏の家。
俺の住んでいるアパートからそう遠くはないが、今日は三十八度をという暑さ。いやむしろ熱さ。熱気で周囲がぼやけている。あれ?熱中症間近じゃね?
とりあえず適度に水分補給をしながら織斑家に向う。
途中、何度も通行人に振り向かれた。
なぜなら俺の見た目と言えば、身長182cm、体重87kg、着痩せするほうだが今はシャツ一枚のため筋肉が隠しきれていない。
さらに右眼に着けた眼帯。これが一番目を引くのだろう。
これはとある事情から一年前から着けている。
しかもシャツといったら黒地に背中に金の龍を刺繍しており、ズボンも同様の趣向が凝らしてある。
どう見ても堅気には見えないだろうが、俺の知ったことではない。慣れている人間はそのままスルーするし、慣れない奴は距離をとるか、
「おいごらぁ!なんだそのナリはよう!」
こんな風にからんでくるチンピラだ。
数は、五人か。
「なにシカトぶっこいてんだよ、ぶっ殺すぞ、おぅ!
「俺がどんな格好してようが関係ねぇだろ。てめぇらこそどけ。」
こちとら暑さにイラついてんだ。これ以上何かあったら爆発しかねん。
俺の言葉に一瞬の静寂が流れる。
その静寂を破ったのはチンピラどものリーダー格と思われる男の蹴りだった。
爪先を俺の脇腹に突き刺す。
「~~~~っ!?いって~~~~~~!?!?」
足を押さえて蹲るチンピラ。その程度の蹴りで、俺の体はビクともしない。
伊達に鍛えているわけでもないし、『俺』はそもそも『普通』じゃない。
「もう終わりか?じゃあ今度は。」
こっちの番だぜ?
まず蹲っているリーダー格の頭を鷲掴み、顔面にヘッドバッドを決める。
その一撃でリーダー格は鼻血を出して失神してしまった。
うろたえる残りのチンピラの内一人にとりあえず踵落しをお見舞いすると頭から湯気を出して糸が切れたように倒れこんでしまった。
似たような要領で他二人の腹にケンカキックをお見舞いする。
三度、四度の気絶。最近のチンピラは鍛え方が足りん。
『あの世界』で生きてきた俺にとって、この程度蟻を踏み潰すより簡単だ。
残りの一人に目を向けると、震えながらナイフを取り出し俺に向けている。
「お、おらぁ!こ、これでどうよ!い、今なら泣いて謝れば許してやるぜ!?」
あ~あ、完全に腰が引けちゃって。可哀相に、ならないけどね。
誰に喧嘩を売ったかを良く教えておかないといけないよな。
俺はチンピラの握る手を軽く蹴り上げ、ナイフを落とさせる。
それを拾い、ナイフに噛み付き、軽く力を入れる。
バキッ!という音がしたと思ったら、ナイフのブレード部分がぽっきりと折れていた。
柄を支点にして、顎で折ったのだ。
チンピラはしばらく呆然としていたが、やがてドサリと尻餅を突くと失禁してしまった。
「調子こくのは勝手だがよ、喧嘩売る相手を選べよな。」
チンピラーズをそのままに、俺は目的の場所へと向った。
思えば俺は『前世』から喧嘩三昧だった。
それを『あの人』に諭され、鍛えられ、共に戦い。
そして『あの人』の為に戦い、死んだ・・・はずだった。
気がつけば俺は赤ん坊としてこの世界に産まれ、今に至る。
今の俺に両親はいない。俺が十歳の頃に事故で亡くなった。
悲しくないと言えば嘘になるが前世、『ファー・ジ・アース』でも両親はいなかったので、不思議と受け入れることが出来た。なんとも可愛げの無いガキだと、自分でも思う。
文字通り第二の人生を謳歌中だが、何故か『ウィザード』の力はそのままだった。
流石に『世界結界』に関する『月匣
それを初めて知った日には我が目を疑ったね。
本来『転生者』は『主八世界』のどこかに生まれ変わるはずだが、この転生は何かが変だと思う。
さて、物思いに耽っていたらいつの間にか織斑家に到着していた。
チャイムを押して留守かどうか確かめる。と言ってもこの時間に来る事は伝えてあるのだが。
・・・返事が無い。まさか主夫気質のアイツに限って寝ているという事はありえん。
もう一度チャイムを押す。
・・・へんじがない、おれさまさみしい。
「はーい。お、来たのか旺牙。」
「遅ぇんだよ出てくんのが!」
「理不尽すぎねぇ!?」
この爽やか系イケメン君が俺こと『志垣旺牙』の幼馴染み。
織斑一夏。通称フラグ魔王。又は朴念神。
落とした女の数は百を超えた時点で数えるのを辞めた。
大抵の女子はコイツに惚れる。それこそ誘蛾灯に群がる虫の如く。
だがこの男の真骨頂はそこではない。
コイツは自分がモテていることなど、否、自分に女性が興味を持っているとまるで感じていない。
ストレートに「付き合ってください!」と言えば、
「ああ、いいぜ。買い物ぐらい。」
と言い、「好きです!」と直球を投げられれば、
「俺も好きだぜ!友達だろ!」
と特大アーチホームランで返す始末。
何人の女子がこの男に泣かされてきたか。
それでも人気が衰えないのが不思議で仕方が無い。
ま、そんな事俺には関係ないことだ。
他の男連中にとっては血涙ものだろうがな。
「いつまでも玄関で立ち話ってわけにもいかないだろ。上がれよ。」
「ほんじゃお邪魔しますよっと。」
勝手知ったる他人の家、遠慮なく上がらせてもらうことにする。
昼飯を食い、俺達はリビングで寛いでいた。
この織斑一夏という男、家事スキルも主夫の名を欲しいままにしている。
炊事、洗濯、掃除とほぼこなせる万能人間だ。
これで女心が理解できれば完璧超人なのだが・・・。
いや、理解してしまっては人として、男として駄目な方向に行く可能性も否めないか。
料理に関しては、俺も趣味の範囲で手を出すが、他は少々苦手である。
一夏本人は「いつか料理で旺牙を唸らせてやる!」と息巻いていたが、そこだけは譲れねぇ。
なにせ俺から料理を取ったら、後は喧嘩しか残らない。
どうでも良いようだが良くない。何度も言うが男には譲りたくない事の一つや二つがあるんだ。
「帰ったぞ、一夏。む、旺牙も来ていたのか。」
やることも無くボーっとしていると、玄関から声が聞こえてくる。
それ反応し、一夏がどこか嬉しそうに声の主を出迎えに行く。
「お帰り千冬姉。」
織斑千冬。苗字の通り、織斑一夏の姉である。
大層な美人さんであり、切れ長の目は凛々しさの象徴。出来るキャリアウーマンのお手本のような容姿だ。
そしてISの世界大会『モンドグロッソ』の初代チャンピオン。通称『ブリュンヒルデ』。本人はあまり気に入っていないようではある。
さらに言えばISを使わない剣術、体術も相当の物。いや相当なんて言葉では言い表せないくらい強い。
『地上最強』なんて渾名されるほどだ。
俺自身も常人より遥かに強いと自負しているが、この人と『もう一人』にはまだまだ勝てそうにない。
「お邪魔してます、千冬さん。」
「こら。」
軽く頭を小突かれる。
「そんな他人行儀な挨拶をするなといつも言っているだろう。」
「ヘヘ、そうでしたね。『おかえりなさい』。」
「それでいい。」
薄く笑い、先程よりも優しく頭を小突いてくる。
そう、織斑兄妹にとって、俺は家族同然の扱いを受けていた。
一夏が物心つく前に、二人は両親から捨てられていた。理由は、同じくガキだった俺には分からない。
その後、古くから親交があったうちの両親が二人を引き取ろうと言う話があがったが、千冬さんがそれを突っぱねた。
後になって聞いたが当時の千冬さんは大人というものが信じられなかったらしい。
それなら援助だけでも、と言う話になり途中までは何とかうまくやってこれた。
だが途中で俺の両親が事故死。遺産のみが残された。
もしもの時の為に、と両親がもう一つ親交があった『篠ノ之家』に遺産が託された。
その篠ノ之家も、今は大変な状況なのだが、今は割愛する。
とにかく、俺は小学生時代をこの織斑家で育ち、中学進学を機にアパートで一人暮らしをしている。
理由は、何時までも甘えるわけにはいかないからだ。
家族と言ってくれる二人。だからこそ、これ以上の迷惑はかけられないのだ。
アパートに引っ越す事を決めた時、思い切り怒られたっけ。
『家族が一緒に暮らす事を、迷惑だと思うな!』だったっけ。
あの時は嬉しかった。殴られた頭の痛みが気にならないほど涙が出そうになった。
でももう決まった事だと言葉の応酬の末、千冬さんが折れた。
それでも、家が離れても、二人は俺を家族だと言ってくれている。
ちくしょう、泣かせてくれるぜ・・・。
「それで旺牙、私に何か話がしたいという顔だな。」
「なぜばれたし。」
「お前は顔に出やすい。それが分からないほど、伊達に一緒にはいない。」
何でもお見通しってか。本当に頭が下がらぁ。
「実は・・・。」
「中学を出たら働きたい、か?」
どんだけばれてるのよ!?
「本当なのか旺牙!?」
「ああ、まぁな。希望先も決まってる。ていうかもう挨拶もしてきた。」
小さいが機械の修理工場にコネがある。先方も中卒でも構わないって言ってくれた。
「はぁ・・・。一夏にも言ったが、学費の心配は無い。二人分払えるくらいの甲斐性は私にもあるつもりだ。そもそもお前には小父さん達の遺産が残っているだろう。なぜそんなに急ごうとする。」
「別に。ただ高校でやりたいことが無いだけだ。なのに行くのは金も時間も無駄だろ。」
「学校でしか学べない事も多い。経験は多いほうが良いに越した事はないぞ。」
真剣な眼で俺に語りかけてくる千冬さん。だが、その声にいつもの力強さは感じられなかった。
これは、半分諦めている声だ。
「悪いけど、もう決めたんだ。親父達の遺産もいつ無くなるか分からない。それに機械弄りには前から興味はあったんだ。一石二鳥だと思わねぇか?」
「しかしだな・・・。」
「やりたいことが見つかったんだ。『家族』としてここは認めてくれよ。」
多少汚いが、ここまで来たらなりふり構っていられない。
「駄目だ千冬姉。こうなったら旺牙は梃子でも動かないよ。」
一夏から援護射撃が入る。揺れている今の千冬さんにはグッドだ。
「・・・分かった。就職については何も言わん。ただし、私もそこに挨拶に行くぞ。」
良し!
「ありがとう、千冬さん。」
俺も力が抜けたのか、顔に力が入らない。強面の笑顔なんて怖いだけだろ。
「い、いや。家族の事だ。会議をするのは当たり前の事だ。(旺牙め、今の笑顔は不意打ちだろう\\\)
なにやら顔を紅くしていらっしゃるが、風邪でもひいているのだろうか?夏風邪には気をつけたほうが良い。
「そうか、旺牙は就職か。先を越されたな。」
「俺は一足先に行ってるからよ。お前は藍越学園で存分にToLoveってろ。」
「なんの話!?」
こうして、俺のこの世界での身の振り方は決まった。
この世界には『ウィザード』も『エミュレイター』もいない。
第二の人生、楽しませてもらおうかね。
そう考えていた時期が、俺にもありました。
あれから季節は廻って半年。受験シーズン。
あの馬鹿がやらかしてくれた。
織斑一夏が、男でありながら『初めて』ISを起動させるというとんでも事件を起こしてしまったのだった。
さわりとはいえ両作品の魅力が伝えられない・・・。
完全見切り発車です。
大丈夫かな?なんとかなるさ(自棄)