むしゃむしゃしてやった。反芻はしている。
「俺は反対だな。」
関係者たちの視線が俺に集まった。
止まっていたような時間が動き出す。
蘭の顔が驚愕から泣きそうな顔に変わってきた。ヤバい。それと同時に厳さんの方角から物凄い殺気のようなものが向けられる。これは別の意味でヤバい。
「あ~、ちょっと待って。そういう意味じゃない。邪魔でもないし、素質が無いなんて言ってない。むしろA判定なんて可能性の塊だ。」
そこのところは勘違いしてほしくない。
「じゃあなんで反対なんですか?」
今度は不貞腐れたような声を出す。
多分こういう感情豊かな所が、どこか鈴に似てる気がする。やはり同族嫌悪か。
「ISは間違ってもファッションじゃない。銃や剣を振り回す、立派な兵器だ。」
本当はそんな言い方したくないんだけどな。束さんのためにも。
「扱いを間違えれば自分だけじゃない、誰かを傷つける。ファッション感覚じゃいつか取り返しのつかない事になる可能性がある。」
「旺牙、それは。」
「黙ってろ一夏。これは蘭の為だ。」
少しは厳しめのことを言っておかないとな。
「実際、最近にも俺や一夏が危険な目に合ってる。命懸けだった。」
「そんな!そんなことニュースじゃ一言も。」
「公にしない理由は俺も知らん。だが事実だ。」
トルトゥーラやテレモートのことは黙っておいた方が良いだろう。
「蘭は俺や一夏にとって可愛い妹分だし、五反田家にとっては大事な家族だ。それが消えないような傷を負ったら、冗談じゃ済まねぇんだよ、いろいろと。」
事故なら悔いが残るし、誰かにやられたんなら俺たちが正気でいられるだろうか。
「だから、IS学園を受験したいっていうなら、覚悟と自覚を持ってほしい。自分は兵器に手を出すんだって。考える時間はまだ一年近くあるんだからよ。」
蘭が俯いてしまっている。泣くなよ、泣かないでくれよ。蘭目当ての客や厳さんを敵に回すのは嫌だぞ。
若干厳さんからの圧力が和らいだ気がするが。
「・・・分かりました。あと一年、もう一度よく考えてみます。」
うん。良い娘だ。近くに座っていたら頭を撫でたいところだ。
「まあ考え抜いた末それでもIS学園を受験したかったら文句は無い。蘭なら合格できるだろう。そうすれば先輩として一夏が丁寧に教えてくれるだろう。」
「ふえあえうおえあえ!?」
「ああ、協力するよ。」
「い、一夏しゃんっ!?」
おーおー、急にラブコメ臭がしてきおったわい。焚きつけたのは俺だけど。
それに気づかない一夏も一夏だな。
「や、約束しましたよ!?絶対、絶対ですからね!」
「お、おう。」
「いやいやちょっと待てよ!何勝手に進路決めてるんだよ!なあ母さん!」
「あら、いいじゃない別に。一夏くん、旺牙くん、蘭のことよろしくね。」
「「あ、はい。」」
俺もなのか。まあいいだろう。
五反田食堂の自称看板娘、五反田蓮さん。実年齢は不詳にして秘密。曰く『二八から歳をとってないの。』だそうだ。魔法の存在を知っている身としては冗談に聞こえない。まあ実際美人だから良いだろう。
「はい、じゃねえよ!」
煩いなあ、弾の奴。一発絞めるか。
「ああもう、親父はいねえし!いいのか、じーちゃん!」
「蘭が自分で、真剣に考えてからにするって言うんだ。俺たちの口が挟める問題じゃねえ。」
「いやだって」
「なんだ弾、お前文句があるのか?」
「・・・ないです。」
厳さんに逆らえないのは分かってるんだから、無駄に気力と体力使わなければいいのに。
俺は、敵わないと思った相手には様子を見るよ。誰彼構わず喧嘩吹っ掛けてた頃に死ぬほどの恐怖を味わったからな。ああこれ『前世』の話ね。
『こっち』だと、今のところ千冬さんと厳さんぐらいかな。束さんは意外と握力、腕力で制圧できる。あまり効果ないけど。
「では、そういうことで。ごちそうさまでした。」
いつの間にか完食していた蘭は合掌して席を立つ。もちろん自分が使った食器は自分で片付ける。どこか良いとこのお嬢さんのようだ。
彼女を娶るにはまず朴念神以上でなければならんのか。お気の毒に。
俺も食後のお茶を飲んでいると一夏と弾がひそひそと話していた。
やれ彼女を作れだのなんだのと。もう放っておいてやれよ。挙句鈴のことになると声が大きくなってきて、なんか手が付けられなくなってきた。
「大体、お前いつ女に興味が湧くんだよ。アレか?モテスリム気取りか?ふざけんなよ、この野郎!」
「何できれてるんだよ。」
「きれてねえよ!」
お前は〇州力か。
その時、物凄い殺気を感じた。思わず構えを取ってしまったほどだ。
「お兄。」
えー、蘭さん?その気温まで下げる殺気はどこで覚えたのかな?
「お、おおおお、おう。ななななんだ?」
弾が震えている。そりゃ『コレ』をぶつけられちゃあね。
・・・目をそらせばよかった。でなければ、『修羅』を見ずにすんだのに。
『余 計 ナ コ ト ヲ ス ル ナ』
「で、では私はこれで。」
殺気を消し蘭はそそくさと去っていった。
いやあ、あれは並大抵の人間が出せるレベルじゃねえ。怖い怖い。
というか俺もとい一夏の周りの少女、女性たちは皆おっかないぁ。見る分には楽しいが。
しかし厳さん、このカボチャの煮物、冷めかけでも美味いです。マジでレシピ教えてください。なんでもしますから。
「・・・んで・・・えが・・・」
ん?弾が何か呟いている。
「何でお前ばっかりモテるんだ!?ええい、この顔か!?この顔がモテスリムか!?スリム分はやるからモテ分をよこせ!」
こいつはいったい何を言っているんだ?
「旺牙だってそうだ!お前が進学しないってことで裏で泣いてた女子結構いたんだぞ!お前はあれか!?スポーツマン的な人気か!?『頼りになる』的人気かあ!?」
完全に暴走している。
中学後半なんて俺は腫れ物扱いだったじゃないか。普通に接してくれた女子もその『頼りになる』存在止まりだっただろうが。
「ああもう、このモテロマンどもがああぁ!!」
何だよモテロマンって。
「うるせえぞ弾!」
「はいっ。すみませんでしたっ。」
調教は骨の髄、脳の奥まで浸透しているようだ。調教師(厳さん)の言うことに脊髄反射レベルで対応している。
「一夏、あとで勝負しろ。」
「いいけどよ。なにで?」
「エアホッケー。」
!?馬鹿な!未だ一勝もしておらず、十連敗を喫しているものを選ぶとは。引けない勝負と覚悟・・・て訳じゃないな、とにかく怒りをぶつけたいのだろう。
「一夏ぁ、俺は先に帰ってていいか?」
「何言ってんだ旺牙!お前とはパンチングマシーンで勝負だ!」
ええ~・・・。俺、確実に勝敗が決まってる勝負はあんまりやりたくないのになぁ。
はあ~。疲れた。精神的に。
しかし手を抜いたとは言え七七四㎏はやりすぎたか。ギャラリーが集まってしまった。
だが、IS学園に戻ってきたいいモノの、部屋割り変更のことを思い出す。
なぜ一夏は一人部屋になって。
「旺牙、お帰り。」
俺は相変わらず簪と同室なのでしょうか。
いやね、別に嫌なわけじゃないよ。簪はいい子だし、トラブルも無い。
ただやっぱり、なぜ俺が一夏と同室ではないのかと思ってしまうのだよ。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。」
まあ生徒会側も教師陣も、何か考えがあってのことだろう。考えなしにいまだに男女同室にしているとは思えない。
「よし。簪、今日は学食で食うか?色々買ってきたけど。」
「あ、うん。それじゃあ、旺牙の料理、食べたいな。」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないの。任しとき。」
「♪」
牛挽肉と玉葱・・・、ハンバーグにでもするか。スープはコンソメ。ああ言っといて簡単なものになってしまうか。どうしよう、チーズinにするかな?
「えっと、旺牙。手伝おうか?」
「お、じゃあ遠慮なくお願いしようかな。簪はコンソメスープを頼む。」
「うん。」
部屋のキッチンに凸凹コンビが並び立つ。ま、デカいのは俺の方なんですけどね。
仕込みをしながら、ちらりとカレンダーを見る。
学年別個人トーナメント。
文字通り学年別のIS対決トーナメント戦。これを一週間かけて行うもの。期間が長い理由は単純明快、全員強制参加だからだ。
一学年がおよそ百二十名。これをトーナメントで行うのだから規模も相当のなもの。一年は浅い訓練段階での先天的才能評価、二年はそこから訓練した状態での成長能力評価、三年はより具体的な実戦能力評価。
特に三年生の試合は大がかりで、IS関連の企業のスカウトマンはもちろんのこと、各国のお偉いさんが見に来ることもあるらしい。入りたくて入ったわけじゃないが、俺も結果は残したい。
腕に力も入る。
「ねえ旺牙。」
「ん?どうした?」
「タネが飛び散ってる・・・。」
・・・わぁお。
食後、キッチンを掃除して(もちろん俺が)軽く瞑想に入る。
龍(ロン)を練るのに基本の修練だ。
力や技だけじゃない、精神も鍛えなければならない。トーナメント、俺も勝ちに行きたい。そしてもちろん、対戦相手に簪が昇りつめてくることもありうるのだ。
「簪。」
「なに?」
「負けないからな。」
一瞬ポカンとしていた彼女だが、カレンダーを見て。
「私こそ。」
柔らかい笑顔で、それでも闘気を込めて答えた。
「それじゃあ、ちょっと走ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
ジャージに着替え、部屋を出る。
軽く走りながら考える。あの時のゴーレムとやらを暴走させたのは何者だったのだろう。
あの戦いには箝口令をしかれ、直接戦闘にかかわった俺に一夏、鈴にセシリアは誓約書まで書かされた。まあ、だれが作ったかは本人から聞かされたけど。
おそらく、暴走させたのは侵魔たちだろう。奴らは電子的にも憑依することが出来る。
そして奴らは手始めにゴーレムを投入し、ISの能力を確かめたというのが俺の考えだが、まだ穴がありすぎる。
能力を知りたいのならトルトゥーラが初めから出てくればいいはず。それを、まずは高みの見物とは考え、ることも出来なくはないんだよなあ、奴の性格上。身体を痛めつけてから心を蝕む。そんな奴だったからな。
だがそれなら、テレモートが介入するのがおかしい。仲間が倒されそうになったから出てきた、というなら、それこそ初めから一緒に出てくるべきだ。つまりあの段階では、俺たちの命を奪うつもりは無かった?
うーん。分からん。考えれば考えるほど思考の糸が絡まっていくのがわかる。
今はいい。今はまた奴らが襲撃してきたときのために更なる研鑽を。
なぜか分からんが予感がする。この学年別トーナメント、まともに終わらない。何かが起きる。
考えるより、勘を信じたほうが俺は上手くいく。いや、まあ外れてほしい勘だけどな。
何も起きませんように。そう念じながら走る。
それがフラグだと知らずに。
すいませんでしたあ!!
また今回も半分以上原作のなぞりになってしまいましたあ!!
これでも反省しているので許して下しあ(´;ω;`)