これも全て皆様のおかげです。
これからも頑張ってまいります。
とにかく完走はしたいので、皆様、生暖かい目で見てやってください。
「くっ、貴様!」
やべ、詫びの一発として拳を喰らおうとしたらつい受け止めてしまった。どうしよう。
掌に微妙な振動が残っているから相当鍛えこんでるな。っていやいや、そういうことじゃなくってね。
うーん。何かこの場を収めるナイスな一言がないものか。
仕方ない。飛ばすぜ、賺した言葉を。
「悪いな。あんまりなんでガードさせてもらった。」
何煽ってんの俺~~~!?
どう考えても『この喧嘩買います』って感じじゃん?
今はどう考えても騒ぎを起こす場面じゃないんだぞ!?
ここは、そうだよ。まず拳を離そう。
そして穏やかにこう言うのだ。
「さっさと席に着きな。HRが終われないじゃないか。」
だ・か・ら・さーーーー!
馬鹿なの俺!?死ぬの!?死んだ方がいいの!?相手はガチでそう思ってそうだなぁ、俯いて肩なんか震わせて。
マジでキレる5秒前。略してMK5。
いや、あの、どうしよう、怒らせるような台詞しか湧いてこない。
ボスけて。
「ラウラ、いいから席に着け。」
「・・・了解です、教官。」
織斑先生の言葉にすら間が開いた、だと・・・。俺ヤバくね?
「あー・・・ゴホンゴホン!ではHRを終える。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」
ぱんぱんと手を叩いて織斑先生が行動を促す。助かった。本当に助かった。だが本当の戦いはこれからだ。
なにせ、このまま教室にいると女子と一緒に着替えなくてはならなくなる。女性に興味がないわけではないが、このままでは変態だ。
なので俺たちは急いで教室から移動しなくてはいけない。んんと、確か今日は第二アリーナ更衣室が空いているはずだ。
「おい織斑、志垣。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう。」
ですよね。しっかし同じ男子、か。何かまだ違和感があるんだよな。
「君たちが織斑君と志垣君?初めまして。僕は」
「ああ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから。」
「挨拶は落ち着いてからな。」
説明すると同時に行動に移す。
シャルルは一夏に任せ、急いで教室から出た。
「とりあえず男子は空いてる更衣室で着替え。これから実習のたびにこの移動だから、早めに慣れてくれ。」
「う、うん・・・。」
なぜ落ち着きをなくす。なぜ赤くなる。まさか男色の気が!?んなわけないか。
とりあえず階段を下って一階へ。速度は決して落とせない。なぜなら。
「ああっ!転校生発見!」
「しかも織斑君と志垣君も一緒!」
くっ!HRが終わったか。早速各学年各クラスから情報先取のための尖兵が駆け出してきている。その波にのまれたが最後、質問攻めでもみくちゃにされた挙句授業に遅刻、鬼教官の特別カリキュラムが待っている。それだけは避けなければならない。
「いたっ!こっちよ!」
「者ども出会え出会えい!」
俺たちの中に上様も黄門様もいないぞ!?
「織斑君たちのこと黒髪もいいけど、金髪っていうのもいいわね。」
「しかも瞳はエメラルド!」
「きゃああっ!見て見て!ふたり!手!手繋いでる!」
「日本に生まれて良かった!ありがとうお母さん!今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!」
こら、親を大切にしなさい。天罰が下るぞよ。
ほぼ全員が暴走状態か・・・。仕方ない。
「一夏!シャルル!後は頼んだ!」
全力以上、リミッターを解除して脚を動かす。友たちを置き去りにして俺は走り出す。 イケメンふたりの方に蝶は集ると思ったからだ。
「ああっ!卑怯だ!」
「卑怯もラッキョウもあるものかぁ!?」
この裏切り者ぉぉぉっ!と聞こえた気がしたが、気にしない。悪いな親友。俺はこのまま更衣室へ光の速さでダッシュだー!
「よう親友。遅かったな。」
「久しぶりにお前を殴りたいと思ったよ。」
ハハハ、お前の拳じゃ逆に砕けちまうぞ。
「ふたりは仲が良いの?」
「まあ、そうだな。」
「俺と一夏は物心つく前からの仲だな。」
「へぇ。あ、相談。僕のことはシャルルでいいよ。さっきもそう言ってたし。僕も旺牙って呼ぶから。」
「おう。改めてよろしく、シャルル。」
「って、もう時間ヤバい!」
一夏が急いで着替える。ボタンも一気に外し、その辺りに上着を放る。ちなみに俺はすでに着替え終わっている。
「わあっ!?」
「?」
何だ今の反応。
「荷物でも忘れたのか?って、なんで着替えないんだ?早く着替えないと遅れるぞ。シャルルは知らないかも知らないかもしれないが、うちの担任はそりゃあ時間にうるさい人で」
「う、うんっ?き、着替えるよ?でも、その、あっち向いてて・・・ね?」
「?なんでだ?」
「一夏。」
一夏を制する。
「人間見られたくないモノのひとつやふたつあるもんだ。」
「あー・・・、そうか。悪かったなシャルル。」
「い、いや、こっちこそごめんね。」
とりあえず二人を待っているとシャルルが速攻で着替え終えた。
え?いや、速くね?
「シャルル、着替えるの早いな。」
「そ、そうかな?」
ところでさっきから俺に対してどもってない?ちょっと傷付く・・・。
「くそ、どうしても引っ掛かる。」
「お前の『ワルサー』でも引っ掛かるんだ。俺の『パンツァーファウスト』なんかなかなかのもんだぞ。」
「おいおい旺牙。誰が『ワルサー』だって?」
いいから早く着替えろよ。
「ワルサー///パンツァーファウスト///」
おや?シャルルの様子がおかしいぞ?
「シャルルは・・・、『リベレーター』かな。」
「?リベレーター?」
「・・・分からないならそれでいい。」
それが演技であっても無くてもな・・・。
「それにしてもそのスーツ、着やすそうだな。どこのやつ?」
「あ、うん。デュノア社製のオリジナルだよ。ベースはファランクスだけど、ほとんどフルオーダー品。」
「となると、俺と似たようなもんか。」
俺のもオカザキ技研のオリジナルだし。
「ん?デュノア?デュノアってどこかで聞いたような・・・。」
「うん。僕の家だよ。父がね社長をしてるんだ。一応フランスで一番大きいIS関係の企業だと思う。」
ああ、何処かで聞いたことがあると思ったらあそこか。道理で・・・。
「へえ!じゃあシャルルって社長の息子なのか。道理でなあ。」
「うん?道理でって?」
「いや、なんつうか気品っていうか、いいところの育ち!って感じがするじゃん。納得したわ。」
「いいところ・・・ね。」
ふうむ。シャルルが視線を外してしまった。
御曹司となると、俺の勘違いの可能性もあるな。
しかし、雰囲気が暗くなってしまった。よし。
ガシッ!一夏の頭をキャッチ。
「なあ、早くいこうよう(メキメキ」
「イデデデデデデッ!」
「ちょっ、旺牙!?一夏の頭から鳴っちゃいけない音が!?」
「大丈夫。こいつ頑丈だから。」
ブランと浮いた足でゲシゲシ蹴られる。痛くはないんだが鬱陶しい。
「離せこの馬鹿!」
「ハハハこやつめ。」
そろそろ放してやるか。時間も勿体ない。
「いって~。気をつけろよシャルル。こいつ男友達には容赦ないから。」
「大丈夫だこんな事よっぽどの事がないとやらん。」
「いや!今やってたよな!?」
あーあー、聞こえませーん。
「ぷ、ふふ。ふたりとも仲が良いね。」
「何言ってんだよ。」
「え?」
「シャルルも、もう友達だろう。
「え・・・?」
相変わらず素で熱い言葉飛ばしやがる。
それに比べて、俺は・・・。
「よし。そろそろ行くか。我らが担任に角が生えてしまったら大変だ。」
「ああ。」
「うん。」
うん。なんか青春群像劇みたいだ。
「遅い!」
すでに角は生えていた。痛くないのに脳が揺れるって気持ち悪いんだよな。その出席簿は実は鉄で出来てんじゃないか?
「お~、頭がくらくらする。」
「旺牙君、大丈夫?」
「おう沙紀か。もう慣れたよ。」
「でもすごい音が・・・。」
大丈夫さ。むしろ思いっきり叩いてくれた方が耐えやすい。手加減された方が変に揺れて余計気持ち悪い。月衣で防御されてるのも楽じゃねえや。
バシーンッ!
どこかの誰かがやらかしたな。
「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する。
「はい!」
一組と二組の合同練習なので人数はいつもの倍。気合のこもった返事が木霊する。元気なのは良いことだ。
「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。―凰!オルコット!」
「な、なぜわたくしまで!?」
そうか、さっきやらかしたのはあいつらか。何があったか知らんが諦めろ二人とも。織斑先生に理屈で勝つのはほぼ無理だ。そのくせこっちを折るときは理屈と物理を併用してくるから質が悪い。頭の回るジャイ〇ンみたいだ。
「専用気持ちはすぐに始められるからだ。いいから前に出ろ。」
理屈は通っているが若干暴論だ。だが千冬キングダムに三権分立は通用しない。
うん?先生が今二人に小声で何か言ったな。この距離だと流石に聞こえない。
「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」
「まあ、実力の違いを見せるいい機会よね!専用気持ちの!」
あー、なるほど。何となくわかった。
「ふたりともどうしちゃったんだろう?」
「頭に人参をぶら下げられたお馬さん状態なんだよ。やっすい手に引っ掛かって・・・。」
友人として恥ずかしくなるよ、おいおい。
「えっと?」
「つまり一夏にいいところを見せるチャンスとでも言われたんだろうな。」
「ああ、なるほど。」
馬じゃなくて猪になりかけてるが、大丈夫かな。
(私も旺牙君をダシにされたら頑張れるかも。)
「ん?どうした沙紀?」
「な、何でもない!何でもないからね!」
お、おう。どうした急に?
「それで、相手はどちらに?わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが。」
「ふふん。こっちの台詞。返り討ちよ。」
「慌てるなバカども。対戦相手は―」
キィィィン・・・。
何だ?この空気を切り裂く音は。
鳥か?飛行機か?
いや!ISだ!
なんて馬鹿なこと考えてる場合か!
上を見ると一機のISがこちらに突っ込んでくる!
「ああああーっ!ど、どいてください~っ!」
そしてそのまま一夏にダイレクトアタック!
なんとか白式を展開し、受け止めた後、数メートル吹っ飛ばされゴロゴロと転がっていった。
まあ、何というか、空から降ってきたのはまさかの山田先生だった。
確かに、実力を隠してそうとは思ったけど、本当に山田先生がふたりの相手を?
しかしなんだ、山田先生、その、立派なモノをお持ちで・・・。俺は巨・貧の差別意識は無いけど、これはこれは・・・。
ミシリッ!
ングっ!?首が誰かに絞められている!
「むーっ!むーーっ!」
な、なぜ沙紀が俺の首を。
あ、あの、絞まってる!むしろ極まってる!
あ、なんか気持ちよくなってきた・・・。
「ほらほら沙紀。アンタの身長じゃ目まで届かないんだから。放してあげな。」
「むー・・・。」
た、助かった・・・。すまん萌。
決め技は月衣越しでも効くのか。なんだか綺麗な花畑と河が見えた。
レーザー音が鳴ると、さっきまで一夏の頭があった所に穴が開いていた。
「ホホホホホ・・・。残念です。外してしまいましたわ・・・。」
うわぁ・・・。セシリアの奴完全にキレてるわ。
その後、ガシーンと何かが組み合わさる音が聞こえた。そちらを見ると甲龍が双天牙月を連結し、投擲モーションに入っていた。
「うおおおっ!?」
マジかよ、首狙いやがった。斬れることはないだろうが、トラウマになるぞ。
一撃目は間一髪かわしたようだが、鈴はすでに二投目に入っている。
怒りで我を忘れてるな!
「はっ!」
ドンッドンッ!
鋭い声と二発、火薬銃の音が響く。山田先生が双天牙月の軌道を変えたのだった。
両手でしっかりとマウントしているのは五十一口径アサルトライフル≪レッドバレット≫。アメリカ、クラウス社製実弾銃器で、その実用性と信頼性の高さから多くの国で正式採用されているメジャー・モデルである。
だがここで驚くべきは山田先生の姿だろう。倒れたままの体勢から上体だけを起こして射撃を行いあの命中精度だ。雰囲気も、あの小動物じみたものが抜け落ち、冷徹に落ち着き払っている。
きっと強いんだろうなぁと以前考えていたが、これほどとは。
一夏もセシリアも鈴も、他の女子も唖然としている。
「山田先生はああ見えて元代表候補生だからな。今くらいの射撃は造作もない。」
「む、昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし・・・。」
いや、昔の候補生って、織斑先生が現役だったころですやん・・・。世界最強の人間の後輩やん。そら強いわ。
「さて小娘どもいつまで惚けている。さっさとはじめるぞ。」
「え?あの、二対一で・・・?」
「いや、さすがにそれは・・・。」
「安心しろ。今のお前たちならすぐ負ける。」
おーおー、見事な挑発だこと。怖い怖い。
「では、はじめ!」
号令と同時にセシリアと鈴が飛翔する。それを目で一度確認してから、山田先生も空中へと躍り出た。
「手加減はしませんわ!」
「さっきのは本気じゃなかったしね!」
「い、行きます!」
声の覇気からすると、セシリアたちに分があると思われるが、さっきの一連の動きを見ればなぁ。どっちが勝つか予想できる。
「さて、今の間に・・・そうだな。ちょうどいい。デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみろ。」
「あっ、はい。」
空中での戦闘を見ながら、シャルルがしっかりとした声で説明をはじめる。
「山田先生が使用されているISはデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。第二世代開発最後期の機体ですが、そのスペックは初期第三世代型にも劣らないもので—」
シャルルが丁寧に説明してくれているが、俺の意識は空中での戦いに釘付けだった。いくら最後期とはいえ、量産期で専用機二機を圧倒しているのだ、山田先生は。
俺の喧嘩殺法とは違い、しっかりと洗礼された、お手本のような華麗な動き。
手合わせ、してみたいなぁ。
「装備によって格闘、射撃。防御といった全タイプに切り替えが可能で、参加サードパーティーが多いことでも知られています。」
「ああ、いったんそこまででいい。・・・終わるぞ。」
やべ、半分くらいしか聞いてなかった。すまんシャルル。
戦闘の方は山田先生の射撃がセシリアを誘導、鈴とぶつかったところでグレネードを投擲。爆発が起こって、煙の中からふたつの影が地面に落下した。
「くっ、うう・・・。まさかこのわたくしが・・・。」
「あ、アンタねぇ・・・何面白いように回避先読まれてんのよ・・・。」
「り、鈴さんこそ!無駄にばかすかと衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」
「こっちの台詞よなんですぐにを出すのよ!しかもエネルギー切れるの早いし!」
「ぐぐぐぐっ・・・!」
「ぎぎぎぎっ・・・!」
竜虎、というより犬猿の仲だなこりゃ。おーい、みっともないぞ。
ほれ、皆を見ろ。お前らの喧嘩を見てくすくす笑いが起きてるじゃないか。
「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように。」
織斑先生、さては山田先生の実力を見せてバカにされないようにしたな。
後輩思いのところがあるじゃないか。もっとはっきり言っても罰は当たらないのに。
おっとやべ、こっち見た。本当に心読めるんじゃないか、あの人。
さて、これからが授業本番だ。俺も気を引き締めていくか。