なんだかまた気温の変動が激しいようで。
毎日何着て過ごせって言うんですかねえ?
最近血便が出ました(ボソッ
さて、やっとこさ授業が始まるようだ。
ぱんぱんと手を叩いて織斑先生がみんなの意識を切り替える。
「専用機持ちは織斑、志垣、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では七人グループで余りが数人出るか・・・。それで実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?では分かれろ。」
織斑先生が言い終わるや否や、一夏とシャルル、そして俺に一気にニクラス分の女子が詰め寄ってくる。
「織斑君、一緒にがんばろう!」
「わかんないところ教えて~。」
「デュノア君の操縦技術を見たいなあ。」
「ね、ね、私もいいよね?同じグループにいれて!」
「志垣君ISに詳しいもんね!いっぱい教えてよ。」
・・・・・・まあ何というか、予想通りかつそれ以上の繁盛ぶりで、二人が困惑している。
いや待て。何故俺にまでくる。需要は無いだろう。三人そろって棒立ちだよ。
その状況を見かねたのか、あるいは自らの浅慮に嫌気がさしたのか、あるいは両方か、織斑先生は面倒くさそうに額を指で押さえながら低い声で告げる。あれはキレる前だ。非常にヤバい状況に、俺たちはいる。
「この馬鹿者どもが・・・。出席番号順に一人ずつ各グループに入れ!順番はさっき言った通り。次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!」
それは拷問というのです先生。
だが鶴の一声というやつだろうか。それまでわらわらとアリのように群がっていた女子達は蜘蛛の子を散らすがごとく移動して、それぞれの専用機持ちは二分とかからず出来上がった。
「最初からそうしろ。馬鹿者どもが。」
ふうっとため息を漏らす織斑先生。それにバレないようにしながら、各班の女子はぼそぼそとおしゃべりをしていた。また怒られても知らんぞ。
「・・・やったぁ。織斑君と同じ班っ。名字のおかげねっ・・・。」
「・・・マッスル。志垣君のマッスルボディ・・・。」
「・・・うー、セシリアかぁ・・・。さっきボロ負けしてたし。はぁ・・・。」
「・・・凰さん、よろしくね。あとで織斑君と志垣君のお話聞かせてよっ・・・。」
「・・・デュノア君!わからないことがあったら何でも聞いてね!ちなみに私はフリーだよ!・・・」
「・・・・・・・・・」
なんか一瞬寒気が・・・。
ちなみに唯一おしゃべりがないのが例のドイツ転校生ラウラ・ボーデヴィッヒの班である。
張り詰めた雰囲気。人とのコミュニケーションを拒むオーラ。生徒たちへの軽視を込めた冷たい眼差し。さっきから一度も開くことのない口。あそこだけまるで南極のようだ。
ボーデヴィッヒ班も女子達が可哀想すぎる。あー、ほら、みんな俯いて顔色が悪くなってきてるじゃないか。
「ええと、いいですかーみなさん。これから訓練機を一班一体取りに来てください。数は『打鉄』が三機、『リヴァイヴ』が三機です。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー。」
おお、山田先生がちゃんと先生している。
「というわけで、みんなどっちがいい?」
「志賀君的にはどっちがおススメ?」
「俺が詳しいのは打鉄、扱いやすいのはリヴァイヴかな?」
「じゃあ打鉄でお願いしまーす。」
うんうん、みんな聞き分けが良くて助かるわー。
「ああっ、ずるい!」
「私も!」
「第一印象から決めてました!」
その声に一夏の方を見ると、なんだか女子達がお辞儀をして手を伸ばしている。
何やってんだあいつら・・・。
それと同じくシャルル班でも同じ現象が起きていた。
いや、ホント、ナニアレ?
「俺はやらないからな。」
「えー、ケチー。」
ケチじゃありません。
ほら見なさい。シャルル班の女子は早速織斑先生にお叱りを喰らっている。あれが羨ましいか?
その光景を見たウチの班はザッと一列に並んだ。
ソレで良い。無駄に命を散らすことは無い。
バンッ!
「貴様は他の班を見過ぎだ馬鹿者。」
へーい。
「それじゃISの装着と起動、歩行をしてもらおうか。一人ずつしっかりやれば早く終わるぞー。」
ハーイといい返事が返ってくる。
最初の一人がテキパキと装着、起動をしてくれる。ああ、楽だ。
「えっと、歩行はっと・・・。」
「イメージとしては脚が長くなった感じかな。急ぐよりゆっくり身体に慣らして・・・そうそう、いい感じだ。」
そうだよ。真面目にしっかりやれば簡単なんだよ。基本中の基本なんだから。
「志垣君、笑ってる?」
「んー?そんなことないぞ。」
教えるのが簡単だからじゃないぞー。
「あー!織斑君の班ずるい!」
今度は何だよ・・・。俺に一夏をボコれと言っているのか?
向こうを見ると、立ったままISから降りてしまったらしく、次の女子が乗れなくなっていた。それを白式を装着した一夏が乗せてあげていた。
・・・視線を感じる。
「だから俺はやらないからな。」
「「「えー。」」」
はいはい不満の声の輪唱はしない。
真面目にやればすぐ終わるんだから。
その後も一人ずつ確実に作業を続ける。まだ慣れていない娘にはゆっくり教えながら。
できる限り優しく教えたから不満も出てこないようで嬉しい。
と思っていた時期が、僕にもありました。
「あ・・・。」
女子の一人が打鉄を立たせたまま降りてしまったのだ。
「ご、ごめんね志垣君・・・。」
「いや、いいよ。別にわざとやった訳じゃないんだし。問題は次だけど、俺の身長なら大抵は・・・。」
えっと、次は誰かな?
「旺牙君、次、私・・・。」
「ああ沙紀か。なら問題ないな。ちょっと失礼。」
「え?わ!フわわわわっ!?」
沙紀の両脇に手を入れて抱っこし(お姫様ではない)、打鉄に乗せた。
「「「なっ!?」」」
あ、流石にやりすぎたか。今のじゃセクハラだって言われてもおかしくないし、一夏より酷いかも。
まずいな。周囲の反応が怖い。
(((いいなぁ、抱っこ。)))
うん、視線が痛い。
ちょっとスキンシップ過剰気味だったろうか。でも俺の身長と腕力ならIS使わないほうが早いんだよな。
(旺牙君に抱っこされた。凄いドキドキした・・・。でも・・・。」
なんか沙紀の顔も赤くなってる。
いかんいかん。授業に集中しなければ。
「沙紀は起動までは普通にできるよな?なら歩くところから始めよう。」
「う、うん。」
「そう緊張すんな。ゆっくり動かせば意外と簡単だから。」
整備科だけど、結構筋が良いな。これならすぐに動かせるようになるな。
右、左、右、左とゆっくり、だがだんだん早く動くようになった。案外素質があるのかもしれない。
「志垣、ちょっといいか。」
「ん?どうしました、織斑先生。」
ある程度の人数が乗り終えたところで、先生からお声がかかった。
いったい何の用・・・はっ!
「セクハラはしてませんよっ!?」
「何の話だ。」
鉄拳も出席簿も飛んでこないところをみると、別にそういうことではないらしい。
「ボーデヴィッヒの班が遅れている。サポートしてやれ。」
そう言われて件の班を見る。
うわぁ・・・、お通夜か葬式かっての。
空気が重い。そして暗い。
俺ですら近づくのを躊躇われるくらい。
そこに飛び込めってかい、先生も酷なことを仰る。
まあ一番気の毒なのはボーデヴィッヒ班の子たちか。
しょうがない。助け舟を出しますか。幸いうちの班は完璧とは言わずもしっかり動かせるし理解も出来てるから、少しの間離れても大丈夫だろう。
「了解です。んじゃみんな、しばらく離れるからよろしくな。」
はーい!と元気よく返事が返ってくる。うん、これくらい元気なのが良いんだよ。
さて、あの空間に飛び込むのか。気が重い、でもあそこの班を放ってはおけないからな。
「おーい、手伝いに来たぞ。」
俺の言葉に対する反応は二つ。
一つはバリバリの殺気。一名から射殺すような死線、もとい視線を放っている。
それ以外からは来た!救世主来た!これで勝つる!みたいな輝く目で見つめられた。あ、俺の気のせいか。
やっぱり一名ほどうざったそうに俺を見ている。あ、顔逸らした。顔も見たくないってか。
「はーい、じゃあみんな出席番号順に並んでくれ。何人かが他の子に教えられるところまでやるから。」
織斑先生よろしく、手をパンパンと叩いて動きを促す。
もちろん、遅れたら出席簿が落ちてくると小声で囁いて、って先生がこっち向いた!まさか聞こえたのか!?
何人かに搭乗、起動、歩行、コンソールを教え、少し遠くから見つめていた。
さっきまで暗かった反動か、みんな真面目に明るく授業をを受けている。
さて・・・。
「おい。敬愛する織斑教官の授業だぞ。真面目にやれよ。」
「・・・。」
だんまりですか、そうですか。
俺には聞かせる声すら無いってかい。
「自分だけ強ければいいってか?教官の教えは浸透しなかったみたいだな。」
わざと煽る言葉を選ぶ。
すると腹部に衝撃が走った。痛くはない。
下を向くと伸びのある見事なストレートが腹に突き刺さっていた。
「貴様に・・・。」
流石に織斑先生の前で大声は出せないようで、ゆっくりと小声で口を開いた。
「貴様に、何が分かる・・・。」
「・・・解からねえよ。お前が何も言わないんじゃな。」
「貴様に掛ける言葉は無い。」
「なら授業に戻るぞ。早くしないとその教官殿に罰を受ける。」
そう言って拳を離し、実習中の子たちのところへ戻る。
背中に突き刺さる殺気を受け止めながら。
「・・・私は貴様を許せない。」
「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行うので、各人格納庫では判別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散!」
時間ギリギリになって、なんとか全員が起動テスト終えた我ら一組二組合同班は、格納庫にISを移してから再びグラウンドへ。本当に時間いっぱいだったので、少しでも遅れれば地獄の鬼も逃げ出す鬼教官に何と言われるか。
まあそういうわけで肩で息をしている俺たちに、織斑先生は連絡事項を伝えると山田先生と一緒にさっさと引き上げてしまった。
「鬼教官(ボソ)」
グリンッ!と首を回してこっちを向いた。怖っ!ホラー映画かよ。
しかし良い運動をした。訓練機には動力なんぞついていない。人力で運ぶしかない。力仕事は男の仕事、という、若干女尊男卑の風潮があり、当然俺と一夏がメインで運ぶこととなる。元々女子に力仕事をさせる気は無かったので、丁度いい鍛錬と思うことにした。
ただ、シャルルの班は「デュノア君にそんなことさせられない!」と体育会系女子が訓練機を運んでいた。・・・シャルル・デュノア。魔性の男よ。
「生きてるか一夏。着替えに行くぞ。」
「ああ、そうだな。シャルルも行こうぜ。俺たちはまたアリーナの更衣室まで行かないといけないしよ。」
「え、ええっと・・・機体の微調整をしていくから、先に行って着替えててよ。時間がかかるかもしれないから、待ってなくていいからね。」
「ん?いや、別に待ってても平気だぞ?俺は待つのには慣れ」
「い、いいからいいから!僕が平気じゃないから!ね?先に教室に戻っててね?」
「お、おう。わかった。」
「・・・。」
たかが着替えでそこまで拒否するか。
ただ恥ずかしいだけなのか、それとも何かあるのか。
クラスメイトを疑いたくない。でもシャルル。
俺の目には、どうしてもお前が疑わしく見えちまうんだよ。