自分も早くNW要素を出したいですが、それをお待ちの方々、今しばらくご勘弁を。
ラウラ・ボーデヴィッヒ。転校初日、一夏に平手打ち、俺にはグーパンを放ってきた小柄な少女。
だがその容姿に惑わされてはいけない。こう対峙していると冷気と殺気を纏っているのがよく分かる。
お、目が合った。うお!?殺気が増した。
しかし何故だろう。こいつに対しては、売ってきた喧嘩を買おうとは思えない。いつもなら拳が飛んできた瞬間蹴り飛ばしているところなのに。うーん。分からん。
「おい。」
ISの開放回線で声が飛んでくる。そんなに遠くから声を出さずに、もっと近づいてくればいいだろう。恥ずかしがり屋かな?
「・・・なんだよ。」
何でお前が喧嘩腰なんだよ一夏!まあいい感情を持ってはいないのは分かるけど。
一夏が返事をすると、言葉を続けながらボーデヴィッヒがふわりと飛翔してきた。
「貴様らも専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え。」
お?バトルマニアかな?いいぞもっとやれ。・・・ん?『貴様ら』って俺も?
えー、俺も巻き込まないでくれよー。こういう喧嘩は好きじゃないんだぜ。
「イヤだ。理由がねえよ。」
「貴様らにはなくても私にはある。」
・・・ああ。そういうことか。ドイツ、織斑先生、もとい千冬さんと来て思いつくのは一つしかない。第二回IS世界大会『モンド・グロッソ』の決勝戦でのことだ。
俺と一夏にとって思い出したくない記憶、そして消せない、消してはいけない傷。
決勝戦前、ほんの少し会場から出た俺と一夏は黒服の連中に拉致されそうになった。今時、しかも真昼間から漫画みたいな黒服かよと思ったものの、状況は悪い。
連中の狙いは一夏だったようなので、俺が囮になって一夏を逃がすことにした。
作戦自体は成功。黒服連中は全員俺に引っ掛かった。どうやったかは、当時必死だったのでよく覚えていない。
後は俺が逃げるだけになったその時、バンッという音が響いた。
そして、俺の右眼は・・・。
その後は俺が代わりに拉致された。何故か。どうせ本命を逃した腹いせだろう。
身体を切り裂かれ、熱された棒を押し付けられ、・・・まあ色々されたなあ。ホモがいなくて良かったくらいか?
黒服・・・、ああもう『謎の組織』でいいや。謎の組織の連中が俺を置いて消えてしばらくして、轟音とともに壁が崩れ、光が差し込んでくる中、現れたのはISを装備した千冬さんだった。
俺の拘束を解き、千冬さんは何かを叫んでいたようだが、その声が届くことなく、意識は途切れてしまった。
もちろん決勝戦は千冬さんの不戦敗となり、大会二連覇は果たせなかった。誰しもが千冬さんの優勝を確信していただけに、決勝戦棄権ということは大きな騒動を呼んだ。
俺の誘拐事件に関しては世間的には一切公表されなかったが、一夏の証言、そして事件発生時に独自の情報網から俺の監禁場所に関する情報を入手していたドイツ軍関係者は全容を大体把握している。そして千冬さんはそのドイツ軍からの情報によって俺を助けたという『借り』があったため、大会終了後に一年ちょいドイツ軍IS部隊で教官をしていた。
それから少し足取りがわからなくなり、いきなりの現役引退、そして現在のIS学園教師という仕事に就いている。
「貴様らがいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様らを、貴様らの存在を認めない。」
だとさ。千冬さんの強さに惚れ込んでる、というより心酔、信奉しているようだ。だから、千冬さんの経歴に傷を付けた俺たちが憎い、と。まあ気持ちはわからんでもない。俺にとっても、心酔していた人がいたから。
そして今世でも、あれは死んでも死にきれんミスだった。俺がもっと上手くやれば、油断しなければあんなことにはならなかったはず。
だが、それはそれ。これはこれ。俺たちが戦う理由にならない。というかボーデヴィッヒと喧嘩しようという気がしてこない。
「また今度な。」
「ふん。ならば、戦わざるを得ないようにしてやる!」
一夏が言うが早いか、ボーデヴィッヒはその漆黒のISを戦闘状態へシフトさせる。刹那、左肩に装備された大型の実弾砲、おそらくレールガン、が火を噴いた。
「ちょっ!」
マジで撃ちやがった!
ゴガキンッ!
「・・・こんな密集空間でいきなり戦闘を始めようとするなんて、ドイツの人はずいぶん沸点が低いんだね。ビールだけでなく頭もホットなのかな?」
「貴様・・・。」
横合いから割り込んできたシャルルがシールドで実弾を弾き、同時に右腕に六一口径アサルトカノン《ガルム》を展開してボーデヴィッヒに向ける。
「フランスの第二世代型ごときで私の前に立ちふさがるとはな。」
「未だに量産化の目処が立たないドイツの第三世代型よりは動けるだろうからね。」
互いに涼しい顔をした睨み合いが続く。
俺が驚かされたのは、シャルルの武装展開、変更の速さだ。
通常一~二秒かかる量子構成をほとんど一瞬で、それも照準を合わせるのと同時に行っていた。
確かあれは、高速切替。事前に武装の呼び出しをせずに戦闘と同時進行で武装を呼び出す、機能というよりも操縦者の操る高等技術だ。なるほど、あれがあるからこそ大容量の拡張領域を使いこなせるのだろう。
戦闘状況に合わせて最適な武器を使用でき、同時に弾薬の供給も高速で可能ということだ。つまり、持久戦に圧倒的なアドバンテージを持っている。そしてそして相手の装備を見てから自分の装備を変更できるという強みがある。
・・・う~ん。どう戦おうか考えてしまった。って、そんな場合じゃないな。
「はいはいそれまで。こんな所で殺気を放つな。シャルルも落ち着け。」
「旺牙・・・。」
「・・・。」
ボーデヴィッヒは目だけでも俺を殺そうとしている。怖くはないが、ちょい鬱陶しい。
「私としては、今すぐ貴様を八つ裂きにしたいぐらいなのだがな。」
「それは失礼。俺は大往生する気満々だから。」
うわー、下がる気ねえなおい。
『そこの生徒!何をやっている!学年とクラス、出席番号を言え!』
突然アリーナにスピーカーからの声が響く。騒ぎを聞きつけてやってきた担当の教師だろう。正直、もっと早く来てほしかった。
「・・・ふん。今日は引こう。」
何度も横やりを入れられて興が削がれたのか、ボーデヴィッヒはあっさりと戦闘態勢を解除してアリーナゲートへと去っていく。俺への殺気もそのままに。向こうではおそらく教師が怒り心頭で待っていることだろうが、あいつの性格からして無視してしまうだろう。先生ドンマイ。
「一夏、大丈夫?」
「あ、ああ。助かったよ。」
「旺牙も、何かあったときに備えてくれてたよね。」
「良く気付いたな、気配は殺してたつもりだったんだがな。」
数秒前までの鋭い眼差しはもうない。感情のオンとオフが素早くできる人間は心理的にも強いと聞いたことがあるが、そのタイプなのだろうか。流石代表候補生といったところか。
「きょうはもうあがろっか。四時を過ぎたし、どのみちもうアリーナの閉館時間だしね。」
「おう。そうだな。あ、銃サンキュ。色々と参考になった。」
「それなら良かった。」
にっこりと微笑む。貴公子のような小動物のような、とにかく人好きのする笑顔だ。だが、腑に落ちない点が。
「えっと・・・じゃあ、先に着替えて戻ってて。」
そうこれだ。シャルルはIS実習後の着替えを俺と一夏とすることをかたくなに拒んでいる。一緒に着替えたがらない。というか実際一度も実習後着替えをしたことがない。実習前の着替えも転校初日のあれ一回きりで、以後は前もってISスーツを着ていたり、俺たちより早く行って着替え終わっていたりだ。
見せくないもの、例えば大きな傷でもあるのか。いや、そんな気配は感じなかった。
何かを隠している。俺だけの考えだが、何かありそうだ。シャルル・デュノアは、黒か白か。それを見極めなくては、一夏に危害が加わる可能性がある。それだけは避けなくては。
なんて考えてたら一夏が動き出した。
「たまには一緒に着替えようぜ。」
「い、イヤ。」
「つれないことを言うなよ。」
「つれないっていうか、どうして一夏は僕と着替えたいの?」
「というかどうしてシャルルは俺たちと着替えたがらないんだ?」
俺を巻き込むな俺を。
「どうしてって・・・その、は、恥ずかしいから・・・。」
赤面するなよ。俺まで一瞬ドキッとしたぞ。
「むっ。」
「・・・どうしました、簪さん?」
「別に。」
ならなぜそっぽを向くのかね。
「慣れれば大丈夫。さあ、一緒に着替えようぜ。」
「いや、えっと、えーと・・・。」
一夏、その言い方はアウトだ。お腐れ様方の良い餌になってしまう。そしてやはりというか、俺まで巻き込まれるんだ。
この前一冊の薄い本を拾ったが、その内容が・・・。ちなみにその本は完全に消滅させた。
「なあ、シャル」
「まあまあ本人が遠慮してんだ、先に着替えてようぜ。」
「そうそう。しつこいと友達無くすわよ。」
「ぐえぇっ!」
俺と鈴で一夏の首根っこを掴み連行した。
「こ、コホン!・・・どうしても誰かと着替えたいのでしたら、そうですわね。気が進みませんが仕方がありません。わ、わたくしが一緒に着替えて差し上げ」
「こっちも着替えに行くぞ。セシリア、早く来い。」
「ほ、箒さん!首根っこを掴むのはやめ、わ、わかりました!すぐ行きましょう!ええ!ちゃんと女子更衣室で着替えますから!」
箒も随分と力が有るようで。セシリアがもし平均体重(日本)だった場合、片手で引っ張るのにはかなりの力が必要なはず。
・・・そっと一夏の首根っこから手を放す。
ズルズルズルズル・・・。
「何よ?」
「・・・イヤ、別に?」
俺の周りの女子は体力が有り余っているようで。まさか簪も!?見た目に反して代表候補生だからな、鍛えてるかもしれん。・・・言動には気を付けよう。・・・ああISのサポートかな?
というか、彼女たちはいつの間に名前で呼び合う仲になったのだろうか。最初は一夏をめぐって険悪な感じだったと思うんだが。何か協定でも結んだか、普通に友情が芽生えたか。
女の子って分かんねえ。
「じゃあ先行ってるぞ。」
「後でな。」
「あ、うん。」
シャルルにそれだけ言って、俺たちはゲートへと向かう。一夏も最近はISの操縦に慣れ、力をつけてきたようだし、俺もうかうかしていられないな。喧嘩じゃまあ負けないがな。
「しかしまあ、贅沢ッちゃあ贅沢だな。」
「俺は逆に落ち着かんよ。」
ガランとしたロッカールーム。ここが共学なら他に男子もいただろうが、生憎ほぼ女子校だ。男子が一緒に着替えるわけにはいかない。
こんな広い場所を独占しているっていうのが、なんか悪いような変な感じだ。
「はー、風呂に入りてえ・・・。」
「それこそ贅沢だ・・・。」
シャワーも悪くないんだが、やっぱり全身湯に浸かりたい。噂によると男子が増えたことで山田先生が大浴場のタイムテーブルを組み直してくれているらしい。先生様様です。
「旺牙、終わったか?」
「ん、終わったぞ。」
男の身支度なんて簡単なもんだ。一つ考えるうちにもう終わってしまった。
「あのー、織斑君と志垣君、デュノア君はいますかー?
「はい?えーと、織斑と志垣がいます。」
ドア越しに山田先生の声が聞こえる。噂をすれば何とやら、タイミングがドンピシャ。
「入っても大丈夫ですかー?まだ着替え中だったりしますー?」
そこまで遠くに呼びかけるように話さなくて大丈夫ですよ?
「ああいえ、大丈夫ですよ。着替えは済んでます。」
「そうですかー。それじゃあ失礼しますねー。」
バシュッとドアが開いて山田先生が入ってくる。
「デュノア君は一緒ではないんですか?今日は織斑君と実習しているって聞いてましたけど。」
「あ、まだアリーナの方にいます。もうピットまで戻ってきたかもしれませんけど、どうかしました?大事な話なら呼んできますけど。」
「ああ、いえ、そんなに大事な話でもないですから、織斑君から伝えておいてください。ええとですね、今月下旬から大浴場が使えるようになります。結局時間帯別にすると色々と問題が起きそうだったので、男子は週に二回の使用日を設けることにしました。」
「本当ですか!」
「おお!」
こいつは俺にとっても大事だ。これでやっと風呂に入れる。俺だって日本男児、体を伸ばして入れる風呂は大好きだ(体格的に伸び伸びできない場合が多かったが)。
一夏なんて山田先生の手を取って感謝している。
だがこの姿を織斑ハーレムに見られたらどうなるかな?(( ̄▽ ̄))
「・・・一夏?何してるの?」
ゾクゥッ!
なんだシャルルか・・・。驚かせやがって。
今の、織斑ハーレムの連中に似た何かを感じた。
一夏が色々と説明しているが、それでもなんだか不機嫌だ。・・・なぜそんな気配を放つ。お前も男だろう。
その後、一夏は白式の正式な登録に関する書類がどうので、みんな解散した。
「そろそろ夕飯の時間だぞ簪。」
「もう少し、もう少しでいいところだから・・・。」
ヒーロー物のディスクを見ながら答える簪。好きなのはわかるけど子供か!
「旺牙はこの中で誰が好き?」
「主人公のライバルだな。渋い立ち位置が魅力的だ。」
「男の子って主人公が好きなものだと思ってた。」
「色々経験すると好みも変わってくるものなんですよ簪さん。」
俺だって昔はヒーローに憧れたもんさ。でも、今の俺にはそんな資格はないから。
そんな時、一夏から秘匿回線が届いた。
『至急俺の部屋に来てくれ』か・・・。今度は何をやらかした?
「簪、俺ちょっと出てくるから、先に食堂で飯済ませとけ。」
「うん・・・。」
本当に聞こえてたのかな?
「来たぞ一夏。」
一夏たちの部屋まで来た俺はノックして普通に入ろうとした。
「早く入ってくれ!んで早く閉めてくれ!」
なんだその要望は。まあいい。従いましょう。
「で、今回はどんなトラブルだよ。一、夏・・・。」
部屋の中には、一夏と、シャルルに瓜二つの。
「や、、やあ。旺牙。」
「女、の子?」
一夏を見る。
「トラブルでもTol〇VEるでしたか・・・。」
「違うよ!?」