しかし私は謝らない!!
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『ヴォーダン・オージェ』。疑似ハイパーセンサーとも呼ぶべきそれは、脳への視覚信号伝達の爆発的な速度向上と、超高速戦闘状況下における動体反射の強化を目的とした、肉眼へのナノマシン移植処理のことを指す。そしてまた、その処理を施した目のことを『境界の瞳』と呼ぶ。
危険性はまったくない。理論の上では、不適合も起きない、はず、だった。
しかし、この処理によって私の左目は金色へと変質し、常に稼働状態のままカットできない制御不能へと陥った。
この『事故』によって私は部隊の中でもIS訓練において後れを取ることとなる。
部隊のトップからの転落。出生の闇から更なる闇へ。ぶつけられる嘲笑、侮蔑。そして『出来損ない』の烙印。
そんな中、教官・・・織斑千冬と出会い、世界が変わり、光が見えた。
「ここ最近の成績は振るわないようだが、なに心配するな。一ヶ月で部隊内最強の地位へと戻れるだろう。なにせ、私が教えるのだからな。」
その言葉に偽りはなかった。特別私だけに訓練を課したということはなかったが、あの人の教えを忠実に実行するだけで、私はIS専門へと変わった部隊の中で再び最強の座に君臨した。
自分を侮蔑した隊員たちのことも、もう気にならない。
何よりも、どんな感情よりも、あの人に憧れた。
その強さ、凛々しさ、堂々ぶりに焦がれた。
いつか聞いたことがある。
「どうしてそこまでつよいのですか?どうすれば強くなれますか?」
その時、ああその時だ。鬼のような厳しさを持つ教官が、わずかに優しい笑みを浮かべた。
「私には弟が二人いる。」
「弟・・・ですか。」
「一人は正確には幼馴染みなんだがな。あいつらを見ていると、わかるときがある。強さとはどういうものなのか、その先に何があるのかをな。生意気にも一人はそれに達し始めているがな。」
「・・・よくわかりません。」
「今はそれでいいさ。いつか日本に来ることがあるなら会ってみるといい。・・・ああ、だが一つ忠告しておくぞ。あいつに」
優しい笑み、あたたかな顔、それを見るたび、心が黒く染まっていくのが分かる。
貴女はそんな顔をしてはいけない。凛々しく、強く、堂々とした姿に私は憧れたのだ。
教官にそんな顔させる、織斑一夏。志垣旺牙。許せない。そbんな風に教官を変えてしまう存在が許せない。
そんな男に負けるのか?そんな男に守られるか?
(力が、欲しい。)
ドクン・・・と、私の奥底で何かがうごめく。
そして、そいつは言った。
『願うか・・・?汝、自らの変革を望むか・・・?より強い力を欲するか・・・?』
言うまでもない。力があるのなら、それを得られるのなら、私など、空っぽの私など、何から何までくれてやる!
だから、力を・・・比類無き最強を、唯一無二の絶対を、私によこせ!
Damage Level・・・D
Mind Condition・・・Uplift
Certification・・・Clear.
《Valkyrie Trace System》・・・・・・boot.
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「うわあああああっ!!!!」
だあ吃驚した!なんだなんだ?!
ゾクッ!という気配と共に言い知れぬ悪寒が走り、振り向こうとした瞬間顔面を思い切り殴られ、巻き込まれたシャルルと共に一夏にキャッチしてもらう。
「一体何が・・・。!?」
「なっ!?」
「ウッソだろおい・・・。」
呆然とする俺たちの目の前で、シュヴァルツェア・レーゲンが変化していった。
確かISがその形状を変化させるのは、『初期操縦者適応』と『形態移行』のふたつのはずだ。
ピー・・・ピー・・・ピー・・・
ISの秘匿回線に連絡が入る。
「おーくんおーくんおーくん!!」
あーもううるさい
「束さん、今緊急事態なんすよ。」
「その緊急事態についてなんだよ!ドイツの連中、シュヴァルツェア・レーゲンに『VTシステム』を組み込んでたんだ!」
「VTシステム?」
ようは過去の操縦者たちデータを組み込んで詰め込み、最強のISを目指すもの、というのが俺の頭の限界だ。だがそんなことをしたら中身のボーデヴィッヒが。
「それに、空を見て!」
「空・・・って、まさか!」
天空には大きく輝く赤い月が昇っていた。
「送ってくれた侵魔のデータを解析してみたけど、あのIS、憑かれてるみたい。」
「・・・マジすか。」
とうとう人や物に憑りつきやがったか。
「ドイツの方は協力者が行ったから大丈夫。おーくんはこの場をなんとか切り抜けて!。」
あーもう!どうなっても知らんぞ!!
しかし、現状レーゲンに起こっていることは異常だ。
末端部分や武装の変形などではない。一度ぐちゃぐちゃに溶かしてから再度作り直す粘土人形に見えた。
ハイパーセンサーでドイツ連中を見ると、顔を真っ青にして我先に逃げようとしていた。その行動が『自分たちが余計なことをしました』と言っているようなものだ。ちなみに、会話も丸聞こえだから記録してあるぜ。
俺が少し意識を外しているうちに、シュヴァルツェア・レーゲン似た何か。
黒い全身装甲のISに似ているが俺が知るものとはかけ離れた何か。
ボディラインはボーデヴィッヒのそれをそのまま表面化した少女のそれであり、最小限のアーマーに覆われ、目の箇所には装甲の下にあるラインアイ・センサーが赤い光を漏らしていた。
そしてその手にある武器。見間違うはずがない。あれは、
「「《雪片》・・・!」」
俺と一夏の声が重なる。織斑先生・・・千冬さんがかつて振るった刀。
似ているというレベルではない、まるで複写だ。
つまりボーデヴィッヒ。お前の思い描く『最強』とは、千冬さんのことか。
-ブォンッ!と風を切る音とともに、『黒』は俺の横を高速ですり抜けていき、一夏を攻撃した。
「ぐうっ!」
白式の《雪片弐型》が弾かれる。
居合いに見立てた刀を中腰に引いて構え、必殺の一閃。生身でも、ビデをでも何度も見た、千冬さんの太刀筋だった。そして敵は上段の構えへと移る。
縦一直線、落とすように鋭い斬撃が一夏を襲う。もう刀はない。やられる刹那、後方に思い切り下がる一夏。
一夏も千冬さんの戦法を知っていたから、かろうじて避けることができたのだろう。
だが、すでにシールドエネルギーが底をついていたのだろう、白式を纏っているにも関わらず、一夏の左腕からじわりと血が滲んでいた。
そして今の緊急回避が最後の力だったのだろう。白式は光とともに一夏から消えていった。
不味い!次は確実に殺られる!
「・・・・・・がどうした・・・」
何?
「それがどうしたああっ!」
馬鹿か一夏!生身で黒いISに突撃しやがった!
「うおおおおっ!!」
その拳が黒いISに触れる直前、俺の突進が間に合いISを突き飛ばした。
「馬鹿野郎!!死ぬ気か!」
「離せ旺牙!あいつ、ふざけやがって!旺牙も頭に来ないのかよ!」
昔、千冬さんの《剣技》を見せてもらったことがある。俺には剣の才能が無かったが、千冬さんにこう言われた。
『旺牙。守るというのは、倒すよりも力と心がいる。お前はもうわかっていると思うが、その拳を、その脚を正しく使えなければただの暴力となる。その力で、大事な人を、大事なモノを守るんだ。』
【志垣。お前には才能がある。人を傷つけるのではなく、護る才能が。俺についてこい。『正義の味方』にしてやろう。】
奇しくも千冬さんの言葉とあの人の声が重なったような気がした。
「どけよ、旺牙!邪魔するならお前も」
「頭を冷やせ、馬鹿野郎!」
ゴッ!という音とともに、一夏がうずくまる。あ、やべぇ、IS展開したままだった。まあ、大丈夫だろう。
「・・・どうだ、少しは落ち着いたか?」
「どうも・・・。でも、あいつ・・・あれは、千冬姉のデータだ。それは千冬姉のものだ。千冬姉だけのものなんだよ。それを・・・くそっ!」
黒いISはアリーナの中央から微動だにしない。武器や攻撃行動に反応する自動プラグラムのようだが、問題はあれに憑りついている侵魔だ。いつからだ?憑りついて長いのか?なぜ動かない。俺たちを観察しているのか?
「それにしてもいつも千冬さん千冬さんだな、このシスコンめ。」
「うっせ。それだけじゃねえよ。あんな、わけわかんねえ力に振り回されてるラウラも気に入らねえ。ISとラウラ、どっちも一発ぶっ叩いてやらねえと気がすまねえ。」
一夏は千冬さんから受けた教えに反する今のボーデヴィッヒが認められないのだろう。さっき叩いた頭にまた血が上っている。
『非常事態発令!トーナメントの全試合中止!状況をレベルDと認定、鎮圧のため教師部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難すること!繰り返す!』
「だそうだ。だから」
「だから、無理に危ない場所へ飛び込む必要はない、か?」
「・・・・・・。」
そう、それがベスト。白式の使えない一夏と、損傷の激しいリヴァイヴでは足手まといになりかねん。
「でもな旺牙。俺が『やらなきゃいけない』んじゃないんだよ。これは『俺がやりたいからやる』んだ。他の誰かがどうだとか、知るか。大体、ここで引いちまったらそれはもう俺じゃねえよ。織斑一夏じゃない。」
ったく。どこの傾奇者だよ。
「一夏、確かに俺はお前を止めてる。でも頭を冷やせって言ったのも一度きりだ。だけどそれ以降ない。」
「・・・どういうことだ?」
「・・・俺もとっくにキレてるんだよ!」
「旺牙・・・。」
「問題はエネルギーだ。アレがなくちゃお前はどうしようもない。」
「無いなら他から持ってくればいい。でしょ?一夏。」
「シャルル・・・。」
《盾殺し》を封じられた勢いから持ち直したシャルルがふわりと俺たちの元にやってくる。
「普通のISなら無理だけど、僕のリヴァイヴならコア・バイパスでエネルギーを移せると思う。白式が限界で凶獣の分は渡せないかもしれないけど・・・。」
「俺は構わん。十分エネルギーは残ってる。」
「ならシャルル、頼む!早速やってくれ!」
「けど!」
びしっとシャルルが一夏に指を指して言う。こいつがこんなに言葉を強くするとは思っていなかった。
「けど、約束して。絶対に負けないって。」
「もちろんだ。ここまで啖呵を切って飛び出すだ。負けたら男じゃねえよ。」
「じゃあ、負けたら明日から一夏は女子の制服で通ってね。」
「うっ・・・!い、いいぜ?なにせ負けないからな!」
「ははは。こりゃ厳しい戦いになりそうだな一夏。」
「旺牙だよ?」
「・・・止めてくれよ、想像しちゃったよ・・・。」
軽い(?)ジョークを交えた会話に緊張がいい意味でほぐれる。身体は熱く、心は冷徹にか。よし。
「アリーナ内に入れない!?フィールドの故障なの!?」
「何故だ!何故扉が開かん!?私は上院議員だぞ!?」
まさかと思っていたが、やはり月匣に空間が取り込まれていたか。なんなら余計に急がないとな。
「な、何が起こってるの!?」
「心配すんな。これを切り抜けたら何とかなる。今はエネルギーの供給を。」
「う、うん。じゃあ、はじめるよ。・・・リヴァイヴのコア・バイパスを開放。エネルギー流出を許可。-一夏、白式のモードを一極限定にして。それで零落白夜が使えるようなるはずだから。」
「おう、わかった。」
「俺は少しでも奴のエネルギーを削っておく。その間に済ませとけよ。」
「わかった。」
ああ、そうそう。こんな時にいいセリフがあった。
「足止めはするが、別にあれを倒してしまっても構わんのだろう?」
「なにフラグ点ててんだよ!」
いやー、一度は言ってみたかったんだ、これ。
「よし。いっちょやってみっか!」
あの黒、さっき見て見たが、百%千冬さんの動きを再現出来てはいないようだ。僅かな隙があった。じゃなかったらいくら千冬さんの動きを覚えていた一夏でも、とっくに真っ二つだ。
なら、真正面から行く!
俺が構えると同時に、奴が刀を中段で構え突撃してきた。だが。
「甘い!」
本物は手加減してももっと速かったぞ!
雪片モドキを蹴り上げ、その速度を活かしたまま顔面に蹴りを入れる。侵魔に憑りつかれている以上、ある程度ダメージを与えないと憑依が剥がれない。今の状態で零落白夜を打ち込んでも、ボーデヴィッヒかレーゲンに侵魔が憑いたままだ。ある程度の痛みは我慢してくれよ!
「《一閃》!」
腹を思い切り蹴りつける。が、あまりダメージは無いようだ。VTシステムの恩恵か憑かれし者の強化か、どちらにせよ厄介だ。連打叩き込む!
「《錬気怒涛拳》!《一閃錬気蹴》!」
俺のもてる速さを全て叩き込む。
壁際まで追いつめられた奴に対し、俺は取って置きを叩きつける。
「《魔空龍円刃》【終式(ついしき)】!」
零距離での魔空龍円刃《零式》。こいつ食らって平気なISはいないはず!まあ、まだ切り札が残ってるんだがな。
奴の動きはかなり鈍った。これなら零落白夜の一太刀で倒せるはず。
さて、一夏たちは・・・。
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「完了。リヴァイヴのエネルギーは残量全部渡したよ。」
その言葉通り、シャルルの体からリヴァイヴが光の粒子となって消える。
それに合わせて、白式は再度俺の体に一極限定モードで再構成を始めた。
「やっぱり、武器と右腕だけで限界だね。」
「充分さ。」
白式は零落白夜を使用することを理解して、《雪片弐型》とそれを振るうための右腕装甲だけを具現化させた。
防御なし。当たれば即死、良くて重傷。けれど、一撃を食らわせるだけのお膳立てはしてくれた。後は—俺次第。
「い、一夏っ!」
「ほ、箒!何でここにって、確か出られないんだっけか。とにかく、安全な所へ。」
「死ぬな・・・。絶対に死ぬな!
「何を心配してるんだよ、バカ。」
「ばっ、バカとはなんだ!!私はお前が—」
「信じろ。」
「え?」
「俺を信じろよ、箒。心配も祈りも不必要だ。ただ、信じて待っていてくれ。必ず勝って帰ってくる。」
-もう、強さを見誤ることはない。力ではない強さを、俺は知っている。誰かを守るために強くあり続けた人を、誰よりも深く知っている。
ならば—ならば俺も、誰かのために強くありたいと、そう願う。
「じゃあ、行ってくる。」
「あ、ああ!勝ってこい、一夏!」
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「待たせたか、旺牙。」
「遅すぎて本当に俺が倒しちゃうところだったぜ。」
一夏が刀を構えると、奴も構えをとる。
俺は一歩引く。この決着は、一夏が着けなければならないと思ったからだ。俺は念のため、一夏を守れる場所に居よう。
一夏が向かう。黒いISも同時に駆ける。
黒いISが刀を振り下ろす。それは千冬さんがするのと同じ、速く鋭い袈裟斬り。けれど、そこには千冬さんの意思がない。ならばそれは。
「ただの真似事だ。」
ギンッ!腰から抜き放って横一閃、相手の刀を弾く。
そしてすぐさま頭上に構え、縦に真っ直ぐ相手を断ち切る。
かつて千冬さんに見せてもらった、一閃二断の構え。一足目に閃き、二手目に断つ。
「ぎ、ぎ・・・ガ・・・」
紫電が走り、黒いISが真っ二つに割れる。
どうやらボーデヴィッヒも救出できたようだ。
俺はというと、コソコソと逃げ出そうとした、幽霊みたいな侵魔を捕まえる。
『ギ、ギガギ!』
「逃がすと思ったかよ。」
それを握りつぶす。侵魔は悲鳴を上げる間もなく消滅した。
さて、これで大団円なら良いんだが・・・。
『アリーナ上空に強大なエネルギー反応!来ます!』
パリーーーン!ズドオオオオオオオオン!!
まったく、光子〇バリアーの如く煎餅並みに割れるな、ここのフィールドは!
せっかく誰の犠牲も無く厄介事が終わったっていうのに!
煙が晴れる。その中央に、甲冑と鉄槌で身を固めた偉丈夫。
「ここは常に祭りを催しているのか?」
「いつもいつもいいタイミングでやってくるんじゃねえよ!テレモート!!」
今度は俺の戦いが始まった。
旺牙、箒ちゃんの役割奪うの巻。
アンチではない!俺モッピーも嫌いじゃないし!!