旺牙)自分で調べろ。
作者)そういえば何年海に行ってないんだろう?
旺牙)もう何年も行ってないな。
さて、水着に着替えたわけだが、やっぱり全身ぴっちりの競泳用水着は目立つだろうか。
でもこうしないともっと目立つことになるわけで。そっちのほうが面倒なわけで。しょうがないからこいつを着なければいけないのだ。いつかこの傷を消す日が来るのだろうか。
しっかし慣れてないせいか着るのに時間かかるな。
「あれ?旺牙まだ着替えてなかったのか?」
「今終わったばかりだよ。そっちはどうだった。」
「ははは・・・、何であの人あんなにパワフルなんだろうな。」
それは束さんだからの一言で済む。
「それにしても、その水着・・・。」
「ああ、一応見えない方がいいかと思って。」
「・・・すまん。俺のせいで・・・。」
一夏が顔を俯かせる。まったく、俺の周りの人間は。
「ばーか。俺が選んで、ちょっとミスっただけだ。お前のせいじゃない。」
「でもよぅ。」
「いいから、兄ちゃんの言うこと聞け。」
「誰が兄ちゃんだよ。同い年だろ。」
「箒にも言ったが、俺の方が先に産まれた。よって俺が兄貴分。」
「子供か!」
そうそう、これぐらいでいいんだよ、俺たちは。
軽口叩き合って、たまに喧嘩して、絆を深めていけばいい。
「一夏。」
「ん?なんだ。」
「なんのアニメだったかな。『自分一人でデカくなった気でいる奴は、デカくなる資格はない』って言葉が有ってな。」
「ああ。」
「ダチや千冬さんたちに苦労かけてここまで来たんだ。まだ俺たちガキだけど、恩を返せるような大人になろうぜ。」
「そんなの当たり前だろ。俺は今までかけてきた苦労分、千冬姉に恩を返すんだ。ってか何でいきなりそんなこと言うんだ?」
さあ、俺にも分からん。何だか言っておかなきゃいけないと思っただけだ。
「さて、海に繰り出すぞ!」
「おう!今日はとことん遊ぶか!」
海が俺たちを呼んでいる!
「あ、織斑君と志垣君だ!」
「う、うそっ!わ、私の水着変じゃないよね!?大丈夫だよね!?」
「わ、わ~。体かっこい~。鍛えてるね~。」
「志垣君何で競泳用?それでも分かるマッスルボディ(ゴクリ)。」
「ふたりとも~、あとでビーチバレーしようよ~。」
「おー、時間があればいいぜ。」
更衣室から浜辺に出てすぐ、ちょうど隣の更衣室から出てきた女子数人と出会う。しかしIS学園の生徒ってレベル高いな。そんな可愛いい子たちが露出度の高い水着を着ている。これは気合いを入れて抑えなくてはいけない。沈まれ我が息子よ。
さて、砂浜に向けて一歩を踏み出す。七月の太陽も熱いが、それによって熱された砂が容赦なく足の裏を焼く。
「あちちちっ。」
隣で早速その洗礼を受けた一夏がいる。まあこれも海の醍醐味で懐かしいものだからな。
「旺牙は熱くないのかよ。」
「心頭滅却すれば火もまた涼し、何事も鍛錬だ。」
「修行僧かよ・・・。」
さて熱い足裏を我慢しながら、波打ち際へ向かう。ビーチはすでに多くの女子生徒が溢れていて、肌を焼いている子もいればビーチバレーをしている子、さっそく泳いでいる子など様々だ。着ている水着も色とりどりで、浜辺を美しく染め上げている。
「よっ、と・・・。」
「さて・・・。」
一夏と俺は準備運動をはじめる。久しぶりの海だ。足がつって溺れては大変だ。先ずは屈伸から~、一、二、三、四。
「い、ち、か~~~~っ!」
何者かが一夏に飛びついた。まあ、こんな事するのは一人しかいないんだがな。
「あんたら真面目ねぇ。一生懸命体操しちゃって。ほらほら、終わったんなら泳ぐわよ。」
鈴が一夏に飛び乗っている。そういえば小学校の頃も中学校の頃も、鈴は水着になると一夏に飛びついていたっけかな。猫みたいなやつだ。
「こらこら、お前もちゃんと準備運動しろって。溺れてもしらねえぞ。」
「あたしが溺れたことなんかないわよ。前世は人魚ね、たぶん。」
そうこう言いながら、一夏の身体をしゅるりと駆け上がって肩車の体勢になる。この子ったらまったく。前世は猫か猿、はたまた蛇か。
「おー高い高い。遠くまで見えていいわ。旺牙ほどじゃないけど、ちょっとした監視塔になれるわね、一夏。」
「監視員じゃなくて監視塔かよ!」
「いいじゃん。人の役に立つじゃん。」
「誰が乗るんだよ・・・。」
「んー・・・あたし?」
にへへっ、と笑ってみせる鈴。二人とも、漫才はいいが俺を置いていくな。
なんて考えていると、背中がもぞもぞしている。え、何?ちょっと怖い。
「えへへ~、登頂成功~。」
「お前か本音。」
正体は本音だった。無言で背中にへばりつかれるのは結構な恐怖体験なのでやめていただきたい。というかいつの間にか俺が本音を肩車する体勢になっている。
本音の水着は・・・、これ水着なのか?肩に乗っているからよく分からないが、彼女が顔を覗き込んできた時には何かの耳が見えたし、俺の肌に触っている部分は明らかに肌ではない感触が。
「お~!たかいたか~い。さすがしお~。」
「そりゃどーも。デカいのが取り柄なもんで。」
しかしその、なんというか。当たってるのよ、頭に。
ちょ、待てよ!この子こんなに着痩せするタイプだったのか!?
いかん、煩悩退散、煩悩退散。色即是空、空即是色。COOLになれ、俺!
鈴とセシリアによる一夏の取り合いでも見て落ち着け。てか何やってんだよあいつら・・・。
クイッ、クイッ。
ん?何だ?
「「じーーー・・・。」」
簪と沙紀が左右の腕を引いて俺の顔を凝視している。やめろ、そんな捨てられた子犬のような瞳で見ないでくれ。何だか悪いことしてる気分だ。
「・・・本音、降りてくれ。二人追加だ。」
「んふふ~、しょうがないな~しおーは。」
なにやら不気味に笑いながら、しゅるしゅると俺から降りてくる。
「えっと、旺牙・・・。」
「旺牙君・・・。」
はあ、全く、この子は。
「少しだけだぞ。」
二人の顔がパァッと輝いた気がした。
しかし、沙紀は大人しめの白ワンピース&パレオ。意外なのは簪。レゾナンスでは見なかったが、水色のモノキニ、前面は覆われているが、背中が、その、結構大胆ですね。
「ほれ、まずは簪。」
「う、うん。」
屈んで簪が昇りやすくする。
・・・何やってんだ俺。十六にもなって同い年の女子を肩車してる。はたから見たらセクハラだぞ。しかも俺のサイズがデカいせいで、女子高生を攫っていくような図になってる。犯罪者か。
「高い・・・。これが旺牙の視点なんだ・・・。」
「どうですかい、お嬢さん。」
「うん・・・。なんだか嬉しい。」
「なにが?」
「旺牙の見てる景色が見えたから。」
なんだろうな、少し照れる。
「ほ、ほら、順番だ。次は沙紀。」
「うん。」
簪がストンと降りる。やはり代表候補生、何だかんだで運動神経は悪くないらしい。
「どうだった?」
「うん。なんだか凄かった。」
語彙が地獄に行っとるぞ二人とも。
ほれ、さっさと乗りなさい。
「ふわぁ・・・。」
「どうだ沙紀。楽しいか?」
「うん・・・。凄い。」
お父さんごっこしたつもりなのにスルーされた。無念。まあ、二人とも喜んでくれたようで良かった。
「あー!お、織斑君と志垣君が肩車してる!」
「ええっ!いいなぁっ、いいな~!」
「きっと交代制よ!」
「そして早い者勝ちよ!」
しまった!流石に見つかったか!
この人数を肩車してたら俺のプライベートタイムがなくなってしまう。というか我慢していたが、これ以上女子と触れ合うと色々ヤバい!主に俺の理性が!
「さ、沙紀!悪いがもう降りてくれないか?」
「わ、わかった!?」
沙紀が降りた瞬間、女子たちが怒涛のように押し寄せてきた。
押さないでください!押さないでください!
本日は閉園しました!本日は閉園しました!
♢ ♢ ♢
「どうだったかんちゃん?」
「も、もう本音!・・・まあ、楽しかったよ。」
「素直におなり~。」
主従コンビがじゃれているのと同じように、同室親友コンビも。
「よかったじゃ~ん沙紀。これで一歩前進だよ、意識してもらえたかもよ。」
「うん。えへへ・・・。」
今まで奥手だった親友が、己の恋心に若干積極的になったことは、嶋田萌にとって喜ばしい事、そのはずだった。
その想い人と触れ合えたことで笑顔になっている彼女を見ていると、少し、ほんの少しだけ心がチクリと痛むのは気のせいだと思い込むことで、この場を終えた。
♢ ♢ ♢
ふー、とりあえず人は撒けたな。
あ、そうだ(唐突)。
「萌、泳ぐ練習、しなくていいのか?」
「ええっ!ああ、そう言えばそんなことも言ってたような気が・・・。」
ん?萌にしては歯切れが悪いな。
「調子悪いのか?だったら休憩してからにするか?」
「ん~、そういう事じゃなくて。」
いったいどうしたんだ?萌のを見ても頭に『?』が浮かんでるだけだ。
もしかして海水からして怖いのか?
それついては心配いらないぞ。俺はライフセーバー並みに動ける自信がある!
ん?沖の方で何かが・・・!
「みんなすまん!すぐ戻ってくる!」
みんなにそう言って、波打ち際まで走る。
そこにはちょうど鈴を背負った一夏がいた。
「二人とも大丈夫か!?」
「おう、なんとかな。」
「も、もういいってば。ここまでついたら後は自分で歩けるからっ。」
鈴は一夏の背でもぞもぞしている。
「まったく、心配かけるなよ。一夏が助けに行かなかったらどうなってたことか。」
「・・・ゴメン。」
「おいおい、旺牙にはずいぶん素直だな。」
「うっさい。」
大事に至らなかったから良かったがな。
はあ、まあ本人が一番こたえてるみたいだから俺からの説教は無しにしておくか。
休んでくると言って別館の方に歩いて行った。足下もしっかりしているから大丈夫だろう。頬に赤みが差していたのは一夏が原因だな、間違いない。
さて戻ろうかとした時。
「あ、一夏と旺牙。ここにいたんだ。」
ふと、声がしたので振り向くと、そこにはシャルロットと、ええと?
「「なんだそのバスタオルおばけは。」」
声がかぶった。それほど奇天烈な存在がいた。バスタオル数枚で全身を頭の上から膝下まで覆い隠している。新手の妖怪だろうか。
「ほら、出てきなってば。大丈夫だから。」
「だ、だ、大丈夫かどうかは私が決める・・・。」
「旺牙もいるよ。」
「あ、相棒もいるのか・・・。」
お?この声、ラウラか?ていうかいちゃ悪いか。
しかしなんだこの状況。バスタオル巻きのラウラを、大丈夫と説得を続けるシャルロット。ますますカオスな場面になってきた。
そういえばこの二人、同室になったらしい。先月の一件ではお互い敵対したが、今はルームメイトとして良くやっているようだ。うん、いまだ人付き合いの苦手なラウラにとって、シャルロットような愛想のいい女子と一緒にいることは良い刺激になるだろう。
「うーん、ラウラが出てこないんなら僕も一夏と遊びに行こうかなぁ。」
「な、なに?」
「うん、そうしよ。一夏、行こっ。」
言うなり、シャルロットは一夏の手を取る。そのまましゅるっと腕を絡ませていくかぎり、彼女は意外と小悪魔属性があるのだろう。
「ま、待てっ。わ、私も行こう。」
「その格好のまんまで?」
「ええい、脱げばいいんだろう、脱げば!」
ばばばっとバスタオル数枚をかなぐり捨て、水着姿のラウラが陽光の下に現れる。
ほうっ・・・。
「わ、笑いたければ笑うがいい・・・!」
黒の水着、しかもレースをふんだんにあしらったもので、一見するとそれは大人の下着にも見える。さらにいつも飾り気のない伸ばしたままの髪は左右で一対のアップテールになっている。
シャルロットが手伝ったと言っていたが、水着にマッチしていて、非常にグッド。
「おかしなところなんてないよね、一夏?」
「お、おう。ちょっと驚いたけど、似合ってると思うぞ。」
「なっ・・・!」
「ほら、旺牙も。」
「一夏の後に言わせるかね?まぁ、かなり似合ってるぞ。」
「あ、相棒まで・・・。」
一夏に褒められたのがそんなに驚いたのか、一瞬たじろいだあとそのまま赤面した。はっはっは、タコか海老かな?
「しゃ、社交辞令ならいらん・・・。」
「いや、世辞じゃねえって。なあ、シャル?」
「うん。僕も可愛いって褒めてるのに全然んじてくれないんだよ。あ、ちなみにラウラも髪は僕がセットしたの。せっかくだからおしゃれしなきゃってね。」
「へえ、そうなのか。ん、シャルも水着似合ってるぞ。」
「う、うん、ありがと。」
こいつはまた息をするように女子を褒めよって。普通の男子じゃ照れちゃって中々できないんだぞ。
「あ、俺何人か待たせてるから。あとでな。」
「おう、また後で。」
「じゃあね。」
「うぅ・・・。」
一夏たちと別れ、簪たちのもとへ向かう。
しかし終始小動物みたいだったラウラは可愛かった。眼福眼福。
「旺牙、お帰り。どうしたの?」
「いや、もう解決した。大丈夫だよ。」
「そう。あ、みんなビーチバレーしに行っちゃったよ。私たちも行こう。」
「ああ、そうだな。」
ああ、しかし、俺のなんて情けない事か。女の子の水着一つ褒めてあげられないとは。
その、周りの女子のスタイルが良いせいか埋もれがちだが、簪もスタイル自体は悪くない。むしろバランスが取れていて俺の好み、って何考えとんじゃ!
うおー、どこかに壁や柱はないか!?煩悩退散ー!
「どうしたの旺牙?」
「いや、ちょっと気合いを入れているだけだ。」
おまけに打鉄弐式や姉妹問題を克服してからじょじょに明るくなってきて、その・・・。
あー、もう!認めよう!俺は確かに簪を意識している。だが、これが恋なのかどうかはわからない。なんせ初めての感情なんだからな!俺今まで彼女いたことないし!
少しだけ歩くと何人かの女子に交じって一夏がビーチバレーに参加していた。短い別れだったな。
一夏、シャルロット、ラウラでチームが組まれている。さっきのメンツまんまやん。
相手の女子二名が手早くネットを広げる中、本音は砂の上にコートを書いていた。うわ、遅っ!
沙紀と萌は見学中。これ以上人が増えるとかえってチームの邪魔になりそうだかららしい。
試合はいきなりの櫛灘のジャンピングサーブから始まった。ふむ、良いサーブだ。
「任せて!」
シャルロットがカバーに入る。さすが優等生。スポーツもお手の物だ。
「って、わあっ!?」
見ていたら、シャルロットがボーっと立っていたラウラとぶつかっていた。何があった?
「だ、大丈夫か!?」
「いたたた・・・ラウラ、どうしたの?」
「か、かわ、可愛いと・・・言われると、私は・・・。うぅっ。」
一夏と目があうと、ボッっと顔を赤くするラウラ。そして、脱兎の如く逃げ出した。
そのまま別館まで駆けていく。まあそのなんだ。
また一夏か!
試合はそのまま二対三で続いたが、本音が完全にマイナス分になってしまっているため、実質二対二になっている。本音ェ・・・。
「お前らは参加しなくていいのか?」
「もうすぐお昼だからね。ちょっと時間が足りないかな。」
「私は見てるだけでも楽しいし。」
「私は、バレー自体苦手で。」
三者三葉の言葉が帰ってきた。てか沙紀、苦手なら最初から言いなさい。別の遊びもあっただろう。
「よし。じゃあ昼飯食って少し休んだら萌の水泳教室開始な。」
「うえっ!?ほんとにやるの?」
((じ―――・・・。))
だから二人ともその目は何を訴えてるの?
っと、ビーチバレー組も昼休みか。
「じゃあ、お昼に行こ。それと一夏って結局どこの部屋だったの?」
「あー、それ私も聞きたい!」
「私も私も!」
「わたしも~、冷たい床情報は共有しよ~。」
まだ言ってるのか本音。もちろんわざとだよな?
「えーと、織斑先生の部屋だぞ、旺牙も一緒に。」
それまでワクワクとした顔をした女子一同がぴしっと凍り付いた。まさかの展開に思考が止まったかのようだ。
「だからまあ、遊びに来るのは危険だな。」
「そ、そうね・・・。で、でも二人とは食事時間に会えるしね!」
「だね!わざわざ鬼の寝床に入らなくても」
「誰が鬼だ、誰が。」
ドン!と何か音が聞こえた。幻聴じゃないよな。一同、ギギギギ・・・と軋んだ動作で首を動かす。
「お、お、織斑先生・・・。」
「おう。」
まあ、なんて男らしい返事。
しっかしその、すげえな・・・。黒のビキニをこれでもかと身に纏い、スタイルのいい鍛えられた体を陽光に晒している。そこらのモデルも裸足で逃げ出すほどだろう。
普段のスーツ姿からは想像できない、いやさISスーツからも抑えられていた二子山が大事な部分を残して露出している。俺はどちらかと言うと控えめな方が好みだが、これは圧倒されるし、正直たまらないな。取り合えず。
パンパンッ!「ありがとうございます!」
「何をしているんだ貴様は。」
あ、さっきから簪と沙紀が無言で足を蹴ってくるんだ。痛くないけど、自分が駄目人間になってしまった気がする。そろそろやめてください。わりとマジで。
取り合えず飯にしよう。そうしよう。
そして織斑先生と別れた。これで山田先生までいたら理性が・・・。
「あらみなさん、これからお昼ですか?」
大玉メロンが二つ・・・。やべ、鼻血でそ・・・。
ああ蹴らないで、蹴らないで。マジで混沌としてきた。
(そういえば箒、別館で別れたっきりだけど、海に来なかったのか?)
今更ながら場面転換の方法を模索中です。どうすれば少ない文字数で収められるか。