IS×NW~世界を渡りし者~《更新停止》   作:戒炎

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は、鼻が、目が大変なことに!
どうしてこの季節はこうなるんだ!!


賑やかな夜

 時刻は現在夜の七時半。大広間三つを繋げた大宴会場でIS学園一年生は夕食を取っていた。

 

「うめぇなあ、おい。昼も夜も刺身とはすげえよ。」

「そだねー。なんか接待でも受けてるみたい。」

「萌、それは言い過ぎじゃ・・・。でもほんとに美味しい。」

 

 右隣に沙紀、左隣に萌。浴衣の女の子二人に囲まれてのご馳走。俺にとっては間違いなく接待だよ。どっかの偉い人になった気分だ。

 だが四組の方から寂しそうなオーラが漂ってくる。うん、ごめんな簪、こればっかりはクラスの問題だから。

 しかし左右が浴衣なら全員浴衣。どうやらこの旅館の決まりらしい。『お食事中は浴衣着用』だとよ。汚れるのを回避するため禁止するもんじゃないのか?まあ、決まりなら別にいいけど。

 ずらりと並んだ一学年の生徒は座敷なので当然正座。これこそお約束である。そして一人一人に膳が置かれている。

 メニューは刺身と小鍋、それに山菜の和え物が二種類。それに赤だし味噌汁とお新香。

 これだけ聞けば普通だが、その中身が、特に刺身が違う。刺身がカワハギなのだ!しかもキモつき。マジかよ。

 噛むと独特の歯ごたえと、クセのない味が舌を楽しませる。キモも、臭みや苦みなどはなくまさに酔いしれる。最近では高級魚だというが、どこで仕入れているのだろう。と言うか、間違いなく高校生が簡単に食べられる代物じゃない。

 

「わさびも本わさかぁ。こんな贅沢いいのかな?」

「明日は丸一日授業、訓練、データ取りだから、今のうちに精を着けておけってことじゃないかな。」

「なるほど。」

 

 データ採取か・・・。凶獣って俺のウィザードとしての動作を再現してるから、武装の少なさから意外にデータ量が多いんだよなぁ。

 ただ、侵魔と戦う、っとういうか月門が開いたときは自動的にリミッターが解除されて気功、超能力が普通に使えるようになっている。これは確実に対侵魔を想定された仕組みだ。束さんが仕込んでおいた、それともオカジマ技研が『理解していて』作ったのか。

 今日は無視してしまったが、今度束さんからアプローチがあったら聞いてみよう。

 

「旺牙君、どうしたの?」

 

 沙紀が顔を覗き込んでくる。食事前に風呂に入っていたせいか、ほんのり赤みがセクシー、じゃなくて。

 

「いやなに。何だかんで萌も泳げるようになったなって思ってさ。」

「マジで五十メートルは泳げるようになりました・・・、びっくりです。」

 

 もともと運動神経は良かったようだ。浮き方を少し教えたらすぐに上達したよ。

 

「先生がよかったからだね。羨ましい・・・。」

「いやいや!案外スパルタだったんだからね!?」

 

 そうかな?足が着かなくなったところで急に手を離せば誰でも必死になるだろう?

 

「あああーっ!セシリアずるい!何してるのよ!」

「織斑君に食べさせてもらってる!卑怯者!」

「ズルイ!インチキ!イカサマ!」

 

 また一夏か!今回はセシリアも同罪か!

 ここは誰かがビシッと言わなくてわ。

 

「おま」

「お前たちは静かに食事することができんのか。」

 

 おおう、覇〇色の覇気でも発動したのか、場が凍り付いた。失神しなかっただけましか。

 

「お、織斑先生・・・。」

「どうにも体力があり余ってるようだな。よかろう。それでは今から砂浜をランニングしてこい。距離は・・・そうだな。五十キロもあれば十分だろう。」

「いえいえいえ!とんでもないです。とんでもないです!大人しく食事をします!」

 

 バタバタと各自の席に戻っていく。それを確認してから、織斑先生は一夏を見た。

 

「織斑、あまり騒動を起こすな。鎮めるのが面倒だ。」

「わ、わかりました。」

 

 それで、嵐は収まった。

 

「織斑君ってさぁ、イケメンだけどトラブルメーカーだよね。」

「巻き込まれ体質でもあるのかな。」

 

 昔っからそうなんです、あいつ。

 

 

 

 

 

「ふ~、さっぱりした。」

「俺は少しのぼせたようだ・・・。」

 

 豪華な食後に温泉。なんとも贅沢極まりない。だが油断しすぎて湯に当たり過ぎてのぼせるとは、俺も修業が足らんようだ。部屋で水でも飲もう、そうしよう。

 部屋に戻ってみると誰もいない。先生はまだ温泉だろうか、っと、ちょうど帰ってきた。

 

「ん?二人だけか?女の一人も連れ込まんとは詰まらんやつらだ。」

「何を言っとるんだあなたは。」

「だから・・・はあ、もういいよ。それは。」

 

 大体ここは『織斑先生』の部屋な訳で、いかがわしいことを目的にそんなことをしようなら命がいくつあっても足りない。今更だがウィザードにダメージを与えることが出来る『イノセント』は『イノセント』じゃないと思う。

 

「なあ、千冬姉。」

 

 ごすっ。鋭いチョップが一夏を襲う。しかしスゴイ音だ・・・。

 

「織斑先生と呼べ。」

「まあ、それはいいじゃん。身内だけだし、風呂上がりだし、久しぶりに―――」

 

 

 

    ◆

 

 

 ところ変わってセシリア嬢、息も浴衣も乱れているが、色っぽさがまるで出ていない。一戦交えてきた戦士のような状態だ。

 

「うっ、うっ・・・ひどい目に遭いましたわ・・・。」

 

 それもこれも勝負下着と持ち込んだ香水のせいなのだが。

 

(でも、これでやっと!!)

 

 夕食の時誘われた一夏の部屋へと行ける!そう思うと、今までの疲れもダメージも吹き飛んだ。乱れた服装も、わずか十数秒で元に戻る。

 

(の、喉の調子も整えておきませんと。ん、んっ。)

 

 浮かれているのが歩調にも表れている。今にもスキップをしそうな足取りは、だんだんと早足になって目的の場所へと向かった。

 ところが。

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

 部屋の前、その入り口に張り付いている女子が二名。

 

「鈴さん?それに箒さんまで。一体そこで何を―――」

「シッ!!」

 

 鈴が言うなりセシリアの口を塞ぐ。

 状況がわからずにもがいていると、ふちドアの向こうから声が聞こえた。

 

『千冬姉、久しぶりだからちょっと緊張してる?』

『そんな訳あるか、馬鹿者。―――んっ!す、少しは加減をしろ・・・。』

『はいはい。んじゃあ、ここは・・・と。』

『くあっ!そ、そこは・・・やめっ、つぅっ!!』

『すぐに良くなるって。だいぶ溜まってたみたいだし、ね。』

『あぁぁっ!』

『おーおー、相変わらずテクニシャンだな一夏。』

 

 ・・・・・・。

 

「こ、こ、これは、一体、何ですの・・・?」

 

 ひくひくと口元を震わせ、引きつった笑みを浮かべながらそう尋ねるセシリア。しかし、返ってきたのはただただ沈黙だけだった。

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

 鈴も箒も、ずーんと沈んだ表情をしている。その様子はまるでお通夜さながらだった。

 

『じゃあ次は。」

『一夏、少し待て。』

『ああ、子猫が三匹いるみたいだ。』

 

 三人の声が途切れる。あれ?と思ってドアにぴったりと耳を寄せた三人が―――。

 バンッ!!

 

「「「へぶっ!!」」」

 

 

 

 

    ◆

 

 千冬さんがドアを開けると、およそ女子が出してはいけない声が聞こえた。

 やっぱり聞き耳立ててやがったな。

 

「何をしているか、馬鹿者どもが。」

「は、はは・・・。」

「こ、こんばんは、織斑先生・・・。」

「さ・・・さようなら、織斑先生っ!!」

 

 子猫じゃなくて兎だったのかな?三人は脱兎の如く逃走開始。しかし、大魔王からは逃げられない。すぐに捕まった。鈴と箒は首根っこを取られ、セシリアは浴衣の裾を踏まれて捕獲作業終了。もう一度言う。大魔王からは逃げられない。あれ、このひとイノセントだよな?

 

「盗み聞きとは感心しないが、ちょうどいい。入っていけ。」

「「「えっ?」」」

 

 お前ら仲良いな。さっきから声が被ってばっかりだ。

 

「ああ、そうだ。他の三人―――ボーデヴィッヒとデュノア、更識も呼んでこい。」

「は、はいっ!」

 

 首を解放された鈴と箒は駆け足で三人を呼びに行く。何もそこまで走らんでも。

 同じく浴衣を離してもらったセシリアは、ずれた胸元を正しながら部屋へと入った。

 

「おお、セシリア。遅かったじゃないか。じゃあはじめようぜ。」

 

 ぽんぽんとベッドを叩いてセシリアを呼ぶ一夏。それに対し、急に顔を真っ赤にさせるセシリア。

 

「え、あの、織斑先生に旺牙さんもいらっしゃいますし、その・・・。」

「?別にいいじゃないか。俺も体が温まってるし、早くはじめよう。」

「い、いえ、でも、こういうのは、その、雰囲気・・・。」

「・・・・・・?」

 

 あーこれはあれだ、勘違いしてやがるな。主に十八禁な方向に。

 セシリアはまず千冬さんを見る。が、『構わん、やれ』と無言で告げていた。

 次に俺を見てくるが、両手をあげて我関せずのポーズをとる。

 おいおい、こっちにまで胸の鼓動が聞こえてきそうなくらい赤くなりおって。そのままセシリアは、覚悟を決めた、という風にベッドに『仰向き』で横たわる。

 

「・・・・・・。」

 

 沈黙が場を支配する。『事実』を知っている俺から見れば、セシリアは何かの生贄に見えてきた。

 

「セシリア、うつぶせじゃないとできないぞ。」

「え?え?う、うつぶせで・・・しますの?」

「うん。」

「そ、そうですか・・・。」

 

 あ、やばい、笑いが込み上げてきた。セシリアの脳内はピンクと混乱で良い感じにぐるぐるしているんだろうな。いや、さすがに失礼だろう。ここは我慢だ。

 

「じゃあ、はじめるぞー。」

「はっ、はいっ!」

「ん、しょっ・・・。」

 

 ギュウウウゥゥゥ~~~~ッ。

 

「!?いたたっ、いたっ!い、い、いいっ一夏さん!?な、な、なにをして―――あううぅっ!」

「何って、指圧。」

「し・・・あつ・・・?」

「そう、腰の。」

「腰の・・・。」

 

 あ、ヤバい、くつくつと笑いが漏れ始めた。

 

「え、ええと、一夏さん。部屋に誘ったのは、もしかしてこの・・・。」

「おう。マッサージをサービスしようと思ってな。セシリアって班部屋だろ?それじゃ落ち着かないだろうから、この部屋に呼んだんだ。」

 

 ・・・・・・。

 どこかでカァ、とカラスが鳴いた。俺は耐えられずに大爆笑した。セシリアに睨まれた。悪い悪い。

 

「ぶ、無様です・・・わたくし・・・。」

「う?ど、どうした。そんなに痛かった?」

「ええ、とても・・・致命的なまでに・・・。」

「そ、そりゃ悪かった。すまん。優しくする。」

「もう何でもいいです・・・。」

 

 真っ暗なオーラを纏い、ため息を漏らすセシリア。いかん、魂まで一緒に出かかってるぞ。そこまでショックだったか。

 しかし、マッサージが進むにつれ慣れてきた、というか快感が勝ってきたようだ。力が抜けてポヤン、とした顔になってきた。

 俺も何度か一夏の指圧を受けたことがあるが、あれは凄かった。こっている部分を的確に捉え、ほぐしていく。最初は痛みが勝るが、ほぐされていくうちに気持ちよくなってきて、眠気がやってくる。指圧だけでなく、色々なパターンでマッサージしてくる。

 一夏曰く「良いマッサージは眠くなるもんだよ。そのまま寝ると最高。不思議と疲れが取れる」とのこと。おそらく千冬さんの為に必死で勉強したんだろう。自分がしてあげられることは何かって。

 ん?千冬さん、セシリアの尻になにを?

 

 ムニュッ!!

 

「おー、マセガキめ。」

 

 何してんのこの人!?千冬さんが、遠慮無くセシリアの尻を握っている。しかもその顔はイタズラが成功した顔で、けれどタチが悪いことに子供っぽさのかけらもない。ニヤリ、と豹の笑み。

 

「しかし、歳不相応の下着だな。そのうえ黒か。」

「え・・・きゃあああっ!?」

 

 えー、そのー、あれですわ。『勝負下着』ってやつですかい。これには俺も視線を逸らさずにいられない。だってむっちゃエロいもん。

 ほら、一夏も真っ赤になってる。

 

「せっ、せっ、先生!離してください!」

 

 その抗議の声に、千冬さんはあっさりどいた。

 

「やれやれ。教師の前で淫行を期待するなよ、十五歳。」

「い、い、いっ、インコっ・・・!?」

「冗談だ。―――おい、聞き耳を立ててる五人。そろそろ入ってこい。」

 

 ぎくっぎくっぎくっぎくっぎくっ。

 

「「「「「・・・・・・。」」」」」

 

 わずかな沈黙の後、ドアがゆっくり開いた。

 箒、鈴、簪、シャルロット、ラウラが姿を現す。全員が浴衣姿である。

 

「一夏、マッサージはもういいだろう。ほれ、全員好きなところに座れ。」

 

 ちょいちょいと千冬さんに手招きをされて、五人はおずおずと、静かに部屋に入る。そして各人が好きな場所にと座った。

 

「ふー。さすがにふたり連続ですると汗かくな。」

「手を抜かないからだ。すこしは要領よくやればいい。」

「いや、そりゃせっかく時間を割いてくれてる相手に失礼だって。」

「愚直だな。」

「先生、生真面目なだけですよこいつは。」

「どうだかな。」

 

 楽しそうに会話する俺たちを見て、全員がようやく状況を飲み込めたようだ。今しがたのセシリア、さっきの千冬さんの声も、マッサージをしていただけだということに。

 

「は、はは・・・はぁ。」

「ま、まあ、あたしはわかってたけどね。」

 

 ずるりと脱力する箒と、妙な強がりを見せる鈴。

 

「「「・・・・・・。」」」

 

 そしておそらく『具体的な』な想像をしていたのだろうシャルロットとラウラ、簪。お前ら明日からむっつりスケベの称号がつくからな。

 

「まあ、お前はもう一度風呂にでも行ってこい。部屋を汗臭くされては困る。」

「ん。そうする。」

「志垣。お前も―――」

「へい、ここは男が残らないほうがよさそうですな。」

 

 俺と一夏はタオルと着替えを持って部屋を出る。

 さて、今度はのぼせないよう調整するか。

 

 

 

 

 

    ◆

 

 

 一夏に「くつろいでってくれ」と言われたが、女子六人、座ったまま固まってしまっている。

 

「おいおい、葬式か通夜か?いつものバカ騒ぎはした。」

「い、いえ、その・・・。」

「お、織斑先生とこうして話すのは、ええと・・・。」

「は、はじめてですし・・・。」

「まったく、しょうがないな。私が飲み物を奢ってやろう。篠ノ之、何がいい?」

 

 いきなり名前を呼ばれて、箒はびくっと肩をすくませる。言葉がすぐに出てこずに、困ってしまった。

 そうこうしていると千冬は旅館の備え付けの冷蔵庫を開け、中から清涼飲料水を六人分取りだしていく。

 

「ほれ。適当に選べ。他のがいいやつは各人で交換しろ。」

 

 各々が自分の趣味の飲み物を取る。

 

「い、いただきます。」

 

 全員同じ言葉を口にして、次に飲み物を口にする。

 女子の喉がごくりと動いたのを見て、千冬はニヤリと笑った。

 

「飲んだな?」

「は、はい?」

「そ、そりゃ、飲みましたけど・・・。」

「な、何か入っていましたの!?」

「失礼なことを言うなバカめ。なに、ちょっとした口封じだ。」

 

 そう言って千冬が新たに冷蔵庫から取り出したのは、あの星のマークがキラリと光る缶ビールだった。

 プシュッ!と景気のいい音を立てて飛沫と泡が飛び出す。それを唇で受け取って、これまた景気よくゴクゴクと喉を鳴らした。

 

「・・・・・・。」

 

 全員が唖然としている中、千冬は上機嫌な様子でベッドにかける。

 

「ふむ。いつもなら一夏たちにつまみでも作らせるところなんだが・・・それは我慢するか。」

 

 あの規則と規律に正しく、違反者には即制裁の『織斑先生』と目の前の人物とが一致せず、女子全員がまたしてもぽかんとしている。特にラウラは、さっきから何度も何度もまばたきをして、目の前の光景が信じられないかのようだった。

 

「おかしな顔をするなよ。私だって人間だ。酒くらいは飲むさ。それとも、私は作業オイルを飲む物体に見えるか?」

「い、いえ、そういうわけでは・・・。」

「ないですけど・・・。」

「でもその、今は・・・。」

「えっと、その・・・。」

「仕事中なんじゃ・・・?」

 

 ラウラはぽかんと開いた口から何も言葉が出てこない。代わりに、ブラックのコーヒーをごくりと嚥下する。

 

「堅いことを言うな。それに、口止め料はもう払ったぞ。」

 

 そう言ってニヤリとする千冬は、全員の手元をざっと流し見る。そこでやっと女子一同が飲み物の意味に気づいて「あっ」と声を漏らした。

 

「さて、前座はこのくらいでいいだろう。そろそろ肝心の話をするか。」

 

 二本目のビールをラウラに言って取らせ、また景気のいい音を響かせて千冬が続ける。

 

「お前ら、あいつらのどこがいいんだ?」

 

 あいつら、言ってはいるが全員が、そして簪が誰を指しているのかわかっていた。一夏と旺牙、しかいない。

 

「わ、私は別に・・・以前より腕が落ちているのが腹立たしいだけですので。」

 

 と、ラムネを傾けながら箒。

 

「あたしは、腐れ縁なだけだし・・・。」

 

 スポーツドリンクのフチをなぞりながら、もごもごと言う鈴。

 

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりしてほしいだけです。」

 

 さっきの行動の反発か、ツンとした態度で答えるセシリア。

 

「ふむ、そうか。ではそう一夏に伝えておこう。」

 

 しれっとそんなことを言う千冬に、三人はぎょっとしてから一斉に詰め寄った。

 

「「「言わなくていいです!」」」

 

 その様子をはっはっはっと笑い声で一蹴して、千冬はまた缶ビールを傾ける。完全にこの場の支配者である。

 

「僕―――あの、私は・・・やさしいところ、です・・・。」

 

 ぽつりとそう言ったのはシャルロットで、声の小ささとは裏腹にそこには真摯な響きがあった。

 

「ほう。しかしなあ、あいつは誰にでもやさしいぞ。」

「そ、そうですね・・・。そこがちょっと、悔しいかなぁ。」

 

 あははと照れ笑いをしながら、熱くなった頬おwぱたぱたと扇ぐシャルロット。なんだかその様子がうらやましいのかくやしいのか、前述三名はじーっと押し黙ってシャルロットを見つめた。

 

「で、お前は?」

 

 さっきから一言も発していないラウラに、千冬が話を振る。どうもそれ自体は警戒していないようで、ラウラはびくっと身をすくませながらも言葉を紡ぎはじめた。

 

「つ、強いところが、でしょうか・・・。」

「いや弱いだろう。」

 

 にべもない。何でもないことのように言う千冬に、珍しくラウラは食ってかかった。

 

「つ、強いです。少なくとも、私よりも。」

 

 そうかねぇ・・・と言う千冬は、二本目のビールを空ける。

 

「それで更識。お前は旺牙をどう思ってる?」

 

 ついに来たか、と身構えていた簪が口を開く。

 

「え、えっと、いてほしい時に傍にいてくれるところ、です。」

「ほう・・・。」

 

 弱々しくあったが、簪としてははっきり答えた。

 

「隣にいてほしい時は隣に、前に居てほしい時は前に来てくれて、私にとってのヒーローなんです。」

「ヒーローか。あいつが聞いたら全力で否定しそうだな。それにあいつは求める人間がいればどこにでも行くぞ。一夏のようにな。」

「あはは、そうですね。」

 

 千冬は三本目のビールに手を伸ばす。

 

「まあ強いかヒーローかは別にしてだ。あいつらは役に立つぞ。家事も料理もなかなかだし、一夏はマッサージもうまい。」

 

 そうだろ、オルコット?と話を振られたセシリアは、赤い顔をして頷く。

 

「というわけで、付き合える女は得だな。どうだ、欲しいか?」

 

 え!?と全員が顔を上げる。それからおずおずと、ラウラが尋ねた。

 

「く、くれるんですか?」

「やるかバカ。」

 

 ええ~・・・と心の中で突っ込む女子一同。

 

「女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。自分を磨けよ、ガキども。」

 

 三本目のビールを口にする千冬は、実に楽しそうな表情でそう言った。

 

 

 

    ◆

 

 

「さて、あとどれくらい時間をつぶせばいいかな・・・。」

「何言ってんだ旺牙?」

 




そういえばこの単語を詳しく出していなかった気がするので解説します。

イノセント・・・魔法の力を持たない、いわゆる一般人。月衣を持たないため、ウィザードにダメージを与えることはできない(『無印』のルール上、十分の一になる)。
        
以上!
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