作者)はい。
旺牙)どうしてこうなった。
作者)書きたいものを無理に詰め込んだ結果です。
旺牙)ハイクを詠め。カイシャクしてやる。
作者)何度でもよみがえるさ!
対『銀の福音』会議中に突然現れた束さん。作戦がある、っというより、紅椿をプッシュしたいだけにも見えるが・・・。
「根拠も無しに口出ししないよ。それよりも紅椿のスペックデータ見てみて!パッケージなんかなくても超高速起動ができるんだよ!」
束さんの言葉に応えるように数枚のディスプレイが織斑先生を囲むようにして現れる。
「紅椿の展開装甲を調整して、ほいほいほいっと。ホラ!これでスピードはばっちり!」
展開装甲・・・ってなんだ?
聞き慣れない言葉に俺や一夏が首をひねっていると、束さんが織斑先生の隣に立って説明を始めた。しかも、メインディスプレイも乗っ取ったらしく、さっきまで福音のスペックデータが映っていた画面は、もうすでに紅椿のスペックデータへと切り替わっている。
「説明しましょう~そうしましょう~。展開装甲というのはだね、この天才の束さんが作った第四世代型ISの装備なんだよー。」
え?ちょっ、なに?第四世代だと?本気か?
「はーい、ここで心優しい束さんの解説開始~。いっくんのためにね。へへん、嬉しいかい?まず第一世代というのは『ISの完成』を目標とした機体だね。次が、『後付武装による多様化』―――これが第二世代。そして第三世代が『操縦者のイメージ。インターフェイスを利用した特殊兵器の実装』。空間圧作用兵器にBT兵器、あとはAICとか色々だね。・・・で、第四世代というのが『パッケージ換装を必要としない万能機』という、現在絶賛机上の空論中のもの。はい、いっくん理解できました?先生は優秀な子が大好きです。
「は、はぁ・・・。え、いや、えーと・・・。」
一夏はまだ混乱している。そりゃそうだ。各国が優秀な技術者たちの粋を集めてやっと第三世代の試験機が完成した段階だ。それを飛び越えて第四だと?
「ちっちっちっ。束さんはそんじょそこらの天才じゃないんだよ。これくらいは三時のおやつ前なのさー。」
なんだその半端な時間。
「具体的には白式の《雪片弐型》に使用されてまーす。試しに私が突っ込んだ~。」
「「「え!?」」」
この言葉には、さすがに専用機持ち全員が驚いた。
あの機構が第四世代の代物なら、、それを扱う『白式』自体も第四世代型ということになる。
「それで、うまくいったのでなんとなんと紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてありまーす。システム最大稼働時にはスペックデータはさらに倍プッシュだ★」
「いやプッシュじゃないでしょう!?全身が雪片弐型と同じ?反則でしょそれ!?」
「うん、反則級の強さ。一言でいうと最強だね。」
俺の言葉をさらりと返す束さん。どうすんだよ。全員ぽかんとしてる。この人に不可能という言葉は無いのだろうか。織斑先生と安東先生まで溜息漏らしているじゃないか。
「ちなみに紅椿の展開装甲はより発展したタイプだから、攻撃・防御・機動と用途に応じて切り替えが可能。これぞ第四世代型の目標である即時万能対応機ってやつだね。にゃはは、私が早くも作っちゃったよ。ぶいぶぃ。」
もはや一同声が出ない。静寂が場を支配する。
「はにゃ?あれ?何でみんなお通夜みたいな顔してるの?誰か死んだの?変なの。」
ええ死にましたよ。世界中のIS関係者の血の努力が。
一機のISを作るのにどれくらいの資金、人材、時間が必要となるだろう。それでやっと第三世代型が一機開発される。
それがこの瞬間、無意味なモノになってしまった。
悲劇を通り越し、もはや喜劇だ。
「―――束、言ったはずだぞ。やりすぎるな、と。」
「そうだっけ?えへへ、ついつい熱中しちゃったんだよ~。」
もう完全に俺たちは置いてけぼりだった。
「あ、でもほら、紅椿はまだ完全体じゃないし、そんな顔しないでよ、いっくん、おーくん。いっくんたちが暗いと束さんはイタズラしたくなっちゃうよん。」
すいません、嘆息しか出てきません・・・。
「まー、あれだね。今の話は紅椿のスペックをフルに引き出したら、って話だからね。でもまあ、今回の作戦をこなすくらいは夕食前だよ!」
どんな時間ですか・・・。
「それにしてもアレだね~。海で暴走っていうと、十年前の白騎士事件を思い出すね~。」
ニコニコとした顔で話し出す束さん。その横では、織斑先生が『しまった』という顔をし、安東先生は『あ~』と呻きながら天を仰いだ。
俺はつつつ~とさりげなく安東先生に近づく。
「先生はどこまで関わってるんで?」」
「武装とシステムの一部だ。お前はどこまで知ってる。」
「まあ大体は見当がつきますよ。あんなの作れるのは束さんくらいなもんだし、あの動きは空中といえど千冬さんのものでしたし。あと、前日に束さんが『ちょっと喧嘩売ってくる』って言ってましたし。」
先生は『あのバカ・・・。』と顔を覆ってしまった。
「まあいい。ところで旺牙。お前は束にどこまで話した?」
「あ~。俺が知ってる基礎は全部。」
「やけに詳しいはずだと思ったよ。」
そういえば、俺はなぜ束さんにファー・ジ・アースのことを話してしまったんだろう。あの時はなぜか話しておかなければならないと思ったんだ。
それを先生に話すと、また溜息を吐いた。幸せが逃げますよと言ったら、誰のせいだ言われた。やっぱり俺のせいかなあ。
「お前は今のISの在り方をどう思う?正直に言ってみろ。」
突然何を?と思ったが、真剣な顔つきで聞かれては答えなければいけない。
「正直反対です。ISは束さんの夢の結晶だ。それを兵器として、それも軍事利用するなんて、納得いかない。」
まあそのおかげで上級侵魔と戦えてるんですがね、と言うと『・・・そうか。』と短く呟いた。
話は終わりだとばかりに手で払われる。またつつーっと元の場所へ戻る。
「話を戻すぞ。・・・束、紅椿の調整にはどれくらいの時間がかかる?」
「お、織斑先生!?」
セシリアの驚愕の声が響く。専用機持ちの中でも高機動パッケージを持っているのが自分だけだったため、当然作戦に参加できるものと思っていたらしい。
「わ、わたくしのブルー・ティアーズなら必ず成功してみせますわ!」
「そのパッケージは量子変換してあるのか?」
「そ、それは・・・まだですが・・・。」
痛いところを突かれたのか、勢いを失って小声になってしまうセシリア。
物によるが、パッケージの量子変換には時間がかかる。『ストライク・ガンナー』もその類のものなのだろう。
それと入れ替わるかのように束さんが天真爛漫な笑顔で口を開いた。
「ちなみに紅椿の調整時間は七分あれば余裕だね★」
「まった。凶獣も同行させてほしい。」
安東先生が挙手し、俺の参加を薦める。いや、え?なぜに?
「なんだよ。紅椿と白式だけじゃ不満なのかよ。」
束さんの温度が一気に冷めていく。こんな時に喧嘩しないでいただきたい。
「『念のため』だ。いざという時盾があった方がいいだろう。それに、嫌な予感がするしな・・・。」
俺は盾かい。いや、不満はないが、凶獣にスピードを合わせてたら遅くならないか?
「凶獣のスラスターリミッターを解除する。そうすれば今の紅椿に追いつける。」
安東先生は粛々と告げる。織斑先生と束さんは思案顔。てっきり反対されると予想してたんだけどな、主に束さんから。
「そのリミッター解除はどれくらいで終わる。」
「三、いや二分くれ。凶獣の稼働データと合わせる。」
「・・・よし。では本作戦では織斑・志垣・篠ノ之の三名による目標の追跡及び撃墜を目的とする。作戦開始は三十分後。各員、ただちに準備にかかれ。」
ぱん、と織斑先生が手を叩く。それを皮切りに教師陣はバックアップに必要な機材の設営をはじめた。
「旺牙、早くしろ。リミッター解除以外にもやることは色々あるんだ。」
「了解です。」
再び凶獣を纏った俺に、ケーブル刺される。
今までリミッターなんて振り切ってきたと思っていた。だが、さらに上があるのか。紅椿ほどじゃないが、こいつも化け物だな。
「リミッター解除後は、お前でも未知の領域だ。意識を持っていかれるなよ。」
「はい。」
「それと、俺の勘だが、また奴らが現れる。気を引き締めて行け。」
「・・・はい。」
また覇王軍か。奴ら、やけにIS学園に固執しているが、なにが目的なんだ。
「エネルギーも問題なし、っと。後はお前らで作戦会議でもしてこい。」
「ありがとうございます。」
俺の準備は整った。さて、一夏たちは。
「ああもうっ、どうして皆さんわたくしの邪魔をしますの!?」
セシリアがキレてた。あのさぁ・・・、もっとこう、緊張感とかさぁ・・・。その場は一応一夏が治めたが、なんだかなあ。
「ともかく、アレね。今回の作戦上、一夏の零落白夜が鍵なんだから、瞬時加速は使うんじゃないわよ。あれ、エネルギー消耗激しいから。」
「防御面は旺牙に一任した方がいいね。その分を白式の攻撃に回せるから。」
「任されよう。」
大丈夫だ。『昔の仕事』をこなせばいい。それだけだ。
「旺牙・・・。」
「ん?どうした簪。」
「なにか、なにか嫌な予感がする・・・。気を付けて。」
「・・・大丈夫だ。パパっと終わらせるさ、一夏が。」
「だー!そういう緊張するようなこと言うなよ!」
そのあとはみんなが揃っての作戦会議になった。
大丈夫。必ず成功する。もしふたりに危機が迫っても、必ず守ってみせる。
時刻は十一時半。
七月の空はこれでもかとばかりに晴れ渡り、容赦のない陽光が降り注いでいる。
砂浜で俺たちは三角形に立ち、目を合わせてうなずいた。
「来い、白式。」
「行くぞ、紅椿。」
「凶獣。」
三人がISを身に纏う。それと同時にPICによる浮遊感、パワーアシストによる力の充満感とで全身の感覚が変化した。
「じゃあ、箒。よろしく頼む。」
「本来なら女の上に男が乗るなど私のプライドが許さないが、今回だけは特別だぞ。」
「な~にがプライドだ。嬉しそうにしやがって。」
「なにか言ったか。」
「い~えなにも。」
作戦の性質上、移動のすべてを箒に任せるので、白式が紅椿に乗る形になる。凶獣は移動だけでかなりのエネルギーを食うので、完全に盾役に徹する。いざという時防御兵装が使用できなくては俺がいる意味がない。
だが、安東先生の懸念はあくまで覇王軍。奴らが出てきた時、対処するのが俺の真の役目だ。
「それにしても、たまたま私たちがいたことが幸いしたな。私と一夏が力を合わせればできないことなどない。そうだろう?」
俺を忘れないで?
「ああ、そうだな。でも箒、先生たちも言っていたけどこれは訓練じゃないんだ。実戦では何が起きるかわからない。十分に注意をして―――」
「無論、わかっているさ。ふふ、どうした?怖いのか?」
「そうじゃねえって。あのな、箒―――」
「ははっ、心配するな。お前はちゃんと私が運んでいる。大船に乗ったつもりでいればいいさ。」
「・・・・・・。」
不味いな。努力なく力を手に入れた人間の典型的パターンにはまっている。自分の力が絶対だ、って状況だ。戦闘面でも、精神面でも調子に乗ってる。こういう時は真摯に説くか、それ以上の力でねじ伏せて上には上があるということを刻み込まないといけない。俺のように。だが、今はその両方の時間すらない。
『織斑、篠ノ之、志垣、聞こえるか?』
ISのオープン・チャンネルから織斑先生の声が聞こえる。俺たちはうなずいて返事をした。
『今回の作戦の要は一撃必殺だ。短時間での決着を心がけろ。」
「了解。」
「織斑先生、私は状況に応じて一夏のサポートをすればよろしいですか?」
『そうだな。だが、無理はするな。お前はその専用機を使いはじめてからの実戦経験は皆無だ。突然、なにかしらの問題が出るとも限らない。』
「わかりました。できる範囲で支援をします。」
表面上は冷静だが、どこか浮足立っている。これはかなり心配だな。
『旺牙。』
「はい。」
プライベート・チャンネルが届く。安東先生だ。
『予感は当たったみたいだ。月匣が張られている。しかも福音を中心としてな。上級侵魔がいることが確定した。注意しろ。』
「―――了解。」
さて、これでさらにこの任務が難しくなった。
それでも、三人揃って帰還させるのが仕事というのは変わらない。
チャンネルがオープンに切り替わり、織斑先生が号令をかけた。
『では、はじめ!』
―――作戦、開始。
俺と箒は一気に上空三百メートルまで飛翔した。
嘘だろ!?こっちはリミッター解除済みで、紅椿は白式という重り付なんだぞ!それが、ついていくので精いっぱいだのか!マジでとんでもないスペックだ。
さらに上昇は続き、あっという間に目標高度五百メートルに達した。この間、数秒しか経っていない。
「暫時衛星リンク確立・・・情報照合完了。目標の現在位置を確認。―――一夏、一気に行くぞ!遅れるなよ、旺牙!」
「お、おう!」
「承知!」
月匣が張られているのに、内部の福音を捉えることができた。これは間違いなく、誘いだ。
わかっていても飛び込むのは嫌だが、仕方あるまい。
「!旺牙!空が!」
「紅い月、だと?」
「戸惑うな!このまま突っ込むぞ!」
スピードを落とさず、福音の居場所を目指す。どうせ敵もそこにいる。
「見えたぞ、一夏!」
「!!」
ハイパーセンサーの視覚情報が自分の感覚のように目標を映し出す。
『銀の福音』はその名にふさわしく全身が銀色に輝いていた。
だが、俺にとってはそれ以上の『敵』が、福音の近くに侍っていた。
「トルトゥーラーーーーーッ!!」
「ホーホッホッホ!お久しぶりですね、ウィザード。」
二メートルを超える痩せ細った魔導師然とした侵魔、トルトゥーラ。よりにもよって奴が!
「奴は、クラス対抗戦の時の!」
「ホッホッホッ。覚えが良くて大変結構。改めまして、わたしが『賢きトルトゥーラ』。覇王軍最高の頭脳の持ち主にて魔導の使い手です。」
トルトゥーラは恭しく頭を下げる。まあ、心の中じゃあ俺たちを嘲笑っているのは確実だがな。
「一夏、箒。作戦変更だ。俺が奴の相手をする。お前たちは福音の相手を。」
「お、おい。大丈夫なのか?」
「今回の任務を忘れるな。とりあえず福音を止めることだ。おまけの奴のことは気にするな。」
「だが・・・。」
「『目的』を間違えるな!」
「「!?」」
「なあに、俺が壁になるのは想定済みだろ。それに俺は、一度奴に勝っている。」
気楽に言ったが、トルトゥーラの本気はクラス対抗戦の時とは別と思っている。抑える時間はそう長くないだろう。それに、奴が素直に俺とタイマンはるとは思えない。
だが、それでも、俺たちはみんなで帰るんだ。
「・・・すまない、旺牙!」
「福音を倒したら、直ぐに戻る!」
ふたりには福音を任せ、俺はトルトゥーラに対し構える。
その瞬間、『一夏』に対してノーモーションで魔法を放った。
俺はその射線上に入り防御する。
「早速背中を狙うたぁ、相変わらず性根が腐ってんな。」
「ええ。わたしは愚弟とは違いますから。」
姑息な真似を・・・。だが、これは予想以上に辛いぞ。
ふたりを狙われたら、すぐさま援護しなくてはならない。その上で、トルトゥーラを倒さなければならない。両方やらなくちゃなんとやら、なんの漫画だったっけ?
「ふん。そんな顔をしなくても、最初は貴方を塵としてあげますよ。あの時の屈辱、十倍、いや百倍にして返してくれる!本命はその後です。」
「・・・へっ。そうかい。お前も案外『小さいな』。」
「・・・・・・せめて一瞬で消し去って差し上げようかと思いましたが、どうやら嬲り殺しがご希望のようで!」
相変わらず煽り耐性ゼロかよ。よく軍師なんて名乗ってられるな。
「さあ、これが受けられますか!」
放たれたはヴォーティカルカノン。防御に構えるが・・・。
「う、ぐおっ。」
受け止めた奴の魔法は、以前よりパワーアップしていた。
いや違う。以前のトルトゥーラが本気じゃなかったんだ。
これは耐えきるのは難しいかもしれない。一夏たちにはああ言ったが、ここで倒せるものなら倒しておきたい。専用機全員でかかっても、みんなを守りながらの戦闘はちとキツイ。
「やはり耐えますか。では、こんなのは如何です?」
トルトゥーラの眼前に、赤い球体が現れた。なんだ、その不気味な球は。
「地獄のフルコースを堪能なさい!」
!これは、避けた方が良さそうだが、いかん!間に合わない!
「ううおおおおおおーっ!?」
赤い球体の中で、見える。『地獄』が。
針の山、血の池、飢餓、灼熱。洋の東西を問わず様々な地獄の光景を見せられる。
そして、それに苦しむ俺の姿も。
「どうです?痛いでしょう?苦しいでしょう?貴方なら確実に落ちる場所。今のうちに堪能しておきなさい。」
確かに痛い。確かに苦しい。だが。
「それがどうした。」
球体を弾き飛ばすように、龍を爆発させた。少し疲れたが、ダメージはゼロだ。
「こちとらウィザードとして何度も修羅場くぐってんだ。こんな精神攻撃に惑わされるほど軟じゃねえ。」
「ふむ・・・。気合で打ち消すとは、当てが外れましたね。ですが、あちらはどうなっているんでしょうね?」
あちら?まさか、福音になにか仕掛けてあるのか!?
「一夏!?」
「うおおおっ!!」
一夏が瞬時加速と零落白夜の両方を行い、福音の光弾をかき消した。なぜだ!?そんなことをしたらエネルギーが!
「何をしている!?せっかくのチャンスに―――」
「船がいるんだ!海上は先生たちが封鎖したはずなのに―――ああくそっ、密漁船か!」
こんな時に!いや、待て。本来月匣は結界だ。イノセントが入ってこれるはずがない。入ってこれるのは、『ルーラー』が招き入れた場合・・・、まさか!?
「おやおや、不思議なことがあるんですねえ。ホッホッホ。」
「この、下衆がっ!」
こいつ、一夏なら犯罪者だろうと守ると見越して!
案の定、《雪片弐型》の光が消え、展開装甲が閉じる。エネルギー切れ。この作戦は、失敗だ。
「馬鹿者!犯罪者などをかばって・・・、そんなやつらは―――!」
「箒!!」
「ッ―――!?」
「箒、そんな―――そんな寂しいことは言うな。言うなよ。力を手にしたら、弱いヤツのことが見えなくなるなんて・・・どうしたんだよ、箒。らしくない。全然らしくないぜ。」
「わ、私、は・・・。」
明らかな動揺をそのに浮かべ、それを隠すかのように手で覆う。その時に落としたが空中で光の粒子へと消えたのを見て、俺は驚愕した。
(具現維持限界・・・!やばい―――!!)
ふたりの元へ行こうにもトルトゥーラの魔法が襲い来る。
「おやおやどこへ行くんです?寂しいじゃありませんか。」
「こ、の・・・、邪魔だーーーっ!!」
邪魔だ!邪魔だっ!邪魔だっっ!!
早くしないとふたりが!
だが、俺のあがきは空しく、白式は紅椿と福音が放った光弾の間に入り、そして―――
「ぐああああっ!!」
すでに白式のエネルギーはわずかだった。そんな状態であの斉射を受けたら、最悪―――
一夏は海へと落ちる中、箒を抱きしめる。せめて衝撃を緩和しようと庇ったのだろう。
大きな水音と共に、ふたりは海に落ちていった。
「あ、ああ、ああああっ・・・。」
俺の、俺のせいだ。俺がトルトゥーラなんか無視して、ふたりの援護にまわっていれば・・・。
「ああなんということでしょう!どこかの誰かさんがしっかりしていれば、こんなことには!」
仮面の下で、奴が笑う。こいつさえ、こいつさえいなければ。
「貴様ーーーーーーっ!!」
全身の血液が沸騰しそうになる。
だが、キレる直前、声が聞こえた。
「・・ちかぁ。いちかぁ。一夏!」
「箒!お前は無事なのか!?」
「旺牙・・・。一夏が、私を庇って・・・。」
「お前はまだ飛べるか?」
「え?あ、ああ。
「よし!ならお前は一夏を連れて全力で戻れ!」
「ま、待て!お前は・・・。」
「殿ってやつだ。お前らが安全圏に逃げるまで、こいつらを抑える。」
「だ、だが・・・。」
「いいから行け!今の一夏はお前じゃなきゃ助けられない!お前らふたりを守り切る自信もない!とにかく逃げるんだ!」
「・・・ッ!」
残り少ないだろうエネルギーを使い、のろのろと旅館のへと向かう紅椿。
「させませんよ。」
「それこそさせねえよ。」
トルトゥーラの魔法が放たれそうになった時、その腕を天に向けて蹴り上げる。
「福音は動かさないのか?」
「忌々しいことですが、結界のようなものが張られていましてね。『動かせない』んですよ。まあ、こんな玩具に頼らなくとも、貴方方を抹殺するには充分。」
結界?いったいなんだ?アメリカやイスラエルにそんなことが出来る人間がいるのか?
「しかし、貴方といつまでも戦うのはいささか面倒です。ですので・・・。」
今度は青い球体を作り始める。そしてそれを。
「キィエエエエッ!」
投げつけてきた。こいつ、意外と芸が無いのか?簡単に避けられる。
「かかりましたね!」
躱した球体が、ぐるりと方向を変えて俺に向かってくる。ミスった!追尾式か!だが、受け切ってみせる。
ブオン!という音と共に、俺を飲み込む球体。
(なん、なんだこれ。出れない。くそ、意識、が・・・。)
◇
「旺牙、何をしている。」
「うわったっ、たっ、とっ?」
目が開いたら、そこには安東先生のドアップ顔が。あー、びっくりした。
あれ?俺、さっきまで侵魔と戦ってた、ような。
「もう全員の準備ができてる。一番ウィザード歴が長いお前がそんなんでどうする。」
準備?いったい何の?
「今日こそは負けないぜ、旺牙。」
「何を言っている。連敗続きのくせに。」
「まあ、旺牙さんがわたくしたちの中で突出しているのはわかりますわ。」
「でも、もっとこう、あたしたちも出来るんだってとこ見せたいわよね。」
「うん。いつまでも旺牙ばっかりに頼ってるのも情けないしね。」
「嫁と相棒とチームを組むのは私だ。異論は―――」
「ラウラ、ちゃっかり旺牙を取らないで。」
みんな、みんながなぜここに?というか、
「ここは、どこだ?」
その瞬間、安東先生の踵落としが俺を襲う。
「寝ぼけてんじゃねえぞ。ここは輝明学園秋葉原校の地下特訓場、というか俺の月匣の中だ。」
輝明学園、だと・・・?
◇
「ホッホッホッ!なにが見えました?そこは貴方の安住の地!悪夢も、地獄も通じぬなら、これはどうでしょうか?やすらぎの夢に、消えておしまいなさい!」
◆ ◆ ◆
「え・・・?」
「どうした、山田先生。」
「凶獣、バイタルサイン、消滅、しました・・・。」
「なん・・・だと・・・?」
「・・・・・・。」
ただでさえ駄文なのに長くてすいませんでした。
それと福音戦ですが・・・、大幅カット、または全カットになりそうです。旺牙の描写を考えて書くとヒロインズの戦いや一夏の復活が入らなくなりそうなので、あらかじめ伝えておきます。ご了承ください。
言い遅れましたが、トルトゥーラの最後の技は某装甲悪鬼からいただきました。わかった人は何人いるかな?