それと、皆様誤字報告、ありがとうございます。自分じゃちゃんとやったつもりでも、どうしても出てきちゃうんですよね。
旺牙)セプク案件か?
作者)旺牙!?死んだはずじゃ?
旺牙)残念だったな、トリックだよ。
※誤字報告をしてくれる方々、本当に感謝しています
「凶獣の、志垣のバイタルサインの消失、だと?」
「・・・はい。こちらから何度も通信していますが、一度も返ってきません。」
普段の冷静な千冬も言葉を失い、現状を口にする真耶の目に涙が滲みだす。
データだけなので、目撃者がいない。正確には戦闘中行方不明『MIA』。だが、敵対していた存在がそもそも正体不明。もし、ISの絶対防御も効かない相手だったら。『志垣旺牙の死』を想像したふたりの血の気が引いていく。
だが、この場で唯一冷静な者がいた。
「失敗、か。だが織斑と篠ノ之の撤退を助けたことは、まあまあだったな。」
「・・・貴様、今、何といった?」
怒りのより、千冬の周囲にオーラが見えるほどだった。だが、その中に悲しみが混じっているのは、それを向けられている一樹にしかわからない。
「お前も聞いたんだろ。あいつのと俺の『前世』を、いままで何をしてきたかを。」
「ああ。そしてあいつがお前をどれだけ慕っていたかも理解している。・・・弟子が死んだかもしれんのだぞ。なぜ平然としていられる。」
「織斑が負傷したと聞いた時、お前は平静を装っていたな。」
「それと同じだと?」
「いや、別に。ただ、ふたりの殿を請け負ったのは評価してやっても―――」
パアンッ!!
乾いた音が部屋に木霊する。
「お前はいつもそうだ。昔から達観していて、まるで―――」
まるで機械のようだ。
「・・・そろそろ負傷者二名が戻ってくるぞ。迎えにいってやらんのか。」
その言葉に、千冬は部屋を出ていった。
「あ、あの。安東さん・・・。」
「どうしました、山田先生。」
「えっと、すいません。手が・・・。」
真耶が指摘した一樹の両手は、固く握りしめられていた。それこそ、爪が肉に食い込み、血が流れ出るほどに。
「別に、頬を叩かれたのが痛いだけです。山田先生は負傷者の治療ができるよう、準備をお願いします。」
「は、はい。」
現段階ではほぼ無関係者に近い一樹の言葉に、思わず真耶が動き出す。
部屋には一樹ただ一人。
(旺牙、お前はこのまま終わる男か?)
その胸中を知る者は、誰もいない。
◆ ◆ ◆
なんなんだ、この状況。IS学園の一年専用機持ちのみんなが、輝明学園の制服を着ている・・・。あ、結構似合ってる。じゃなくて!
「あー、安東先生。これはどういった状況で?」
「みんながせめてお前と同じくらい実戦で動けるようになりたいんで特訓してるっていっただろうが。何度も言わせんな。面倒くさい。」
あれ?そうか、そう、だったな・・・。
右眼は、ある。見える。
「すんません。ちょっと混乱してました。」
「何に混乱してるんだよ・・・。」
みんなクスクス笑ってる。やだ、帰りたい。だが一夏、テメエは殺す。
「んじゃ、もう一度みんなのクラスを確認しとこうか。」
「え、今さらか?」
「こういうのは何度も確認して、自分の役割をはっきりさせとくのが大事なんだよ。」
と、言うのは嘘で、俺が忘れてるだけだ。う!?安東先生にはバレてる!
「えっと、じゃあ箒から。」
「ああ、私は侍と魔剣使いだ。」
まあ、これは予想通りか。
「ふむ、次、セシリア。」
「わたくしは箒機士専門ですわ。」
ああ、たしか兵器の搭載武器に浮遊砲台ががあったな。
「次、鈴。」
「あたしは仙人と魔剣使いよ。槍型箒を宝貝にしてるわ。」
意外とパワフルだった。
「ふむふむ。次、シャルロット。」
「僕は聖職者一つだよ。魔法が下手だから、ちょっと恥ずかしいな。」
アハハと笑っているが君、そのパイルバンカーを振り回す気かね?
「えっと、ラウラは?」
「人造人間、強化人間だ。」
なんとも高火力。・・・あれ、なんだか胸が締め付けられる・・・。
「オホン、簪は?」
「電脳使いと魔術師。電子戦は任せて。」
まさにウィザード級のハッカー、いや、本当にウィザードなんだけどね。
「最後、一夏。」
「・・・。」
ん?どうした?
「お前、俺が覚醒した時大笑いしただろ・・・。」
「ん~?そうだったかな?」
「白々しいな!しょうがねえな。」
「早く言えって。」
「・・・魔剣使いと、勇者。」
・・・プッ。
「ああ、また笑った!だから言うの嫌なんだよ、自分から勇者なんて言うの!」
「い、いや一夏。勇者というのは大事だぞ!対侵魔の決戦存在なんだからな!」
「そして儚く散りやすいのも勇者だ。」
ひゅ~っと冷たい風が吹く。あれ、今夏だよな。それとも月匣内だからかな?
この人は、確かによくある事だけど、今言うことかい。
俺は確かにこの人を尊敬している。男惚れしていると言ってもいい(ホモじゃないよ)。
ただこの場を読まない性格を何とかしてほしい。
いや、そうじゃない。わかってて、あえて言葉を選んでこの空気にしている。
教師とは思えないイイ性格だ。
「よし、各自散開して独自訓練開始。わからないことは旺牙に訊け。そいつにはウィザードの特性を叩き込んである。」
「「「は、は~い。」」」
妙な空気のまま、訓練開始。
「ねえ旺牙。」
「ん?早速何かな簪。」
正直魔法はヒールとキュアしか使えないぞ。
「あの空気に入っていけない・・・。」
「あの空気?」
簪が指さすと、そこでは一夏争奪戦が行われていた。
まったくあいつらは・・・、散開しろって言われただろうが。
それを先生は見ない。いや、見たしどういう状況かも知っていて止めない。
実戦で痛い目を見ればいいと思ってるんだろうな。俺も最初はだった。
でも、流石に止めないと一夏が可哀想か。
「よーしお前ら。じゃれつくのはそれぐらいにして、いい加減訓練に入れや。」
「お、旺牙~。」
「お前も情けない声を出すな、見っともない。」
何もしてないのにボロボロだな。
「「「「「一夏は(私(わたくし(あたし(僕(私)))))が鍛えるんだ。」」」」」
ハハハ、一夏大人気だなあ。
「おーし今からビリヤードの時間だ。お前らボールな。キューが無いから蹴るぞ。」
「「「「「すいませんでした!」」」」」
まったく、こいつらは。一夏がからむと暴走するんだから。
「お前たちはあれか?餌を前にして『待て』もできないのか。」
「しょうがないよちーちゃん。みんないっくんのことが大好きなんだから。」
この声は、千冬さんと束さんか。
「いや、千冬姉、俺被害者だから。」
スパアンッ!
「織斑先生だ、馬鹿者。」
「り、理不尽だ・・・。」
千冬さん、何でこんな時まで出席簿持ってるんだろう。
「さーさーみんな。束さんの武装点検の時間だよ。はい、並んで並んでー。」
「姉さん。私の剣はまだ大丈夫そうですが。」
「なーにを仰る。刃は打ち合えば打ち合うほどすり減ってくものだよ。だからほらほら。」
「そうですか。そういうことなら、お願いします。」
「らじゃー♪にしし♪」
束さんも笑顔で全員の装備を点検している。箒との姉妹仲も相変わらず、いや、何だこの違和感は。いつもの光景じゃないか。見慣れてるはずじゃないか。なのに・・・。
「相変わらず熱心だな、あんたら。」
およ?この月匣内いに客人とは珍しい。というか先生が月匣に招き入れるのが珍しい。
「柊蓮司と赤羽か。」
「やっほー。」
「なんで俺だけフルネームなんだよ!?」
若くして何度も世界の危機を救ってきた柊蓮司さん、一時的とはいえ世界の守護者代行を任されていた赤羽くれはさん。どちらも年齢の割にはその名を知らないほどのメジャーなウィザードだ。ちなみに、ふたりは付き合っているという噂があるが、本当なのだろうか?いいなぁ、巫女服彼女。
ギュウッ!
「いってぇ!?」
「旺牙、変なこと考えてた。」
するどい。
俺の横っ腹がつままれているうちに、先生と先輩方の会話は続く。
「これでいい。訓練で上手くいかない者は実戦で使い物にならない。今はそれを見極める。」
「おいおい、それは厳しくはねえか?」
「訓練ができるだけマシだ。お前もそうだったろう、『下がる男』。本当に卒業できたんだろうな。」
「なんで信じないんだよ!ああ卒業できたよ、誰も信じないけど!そっちこそ海外留学出来て良かったな、『二十歳の高校二年生』!」
・・・・・・
「消し飛ばす。」
「ぶった切る!」
「ふたりとも、『目糞鼻糞を笑う』って知ってる?」
「「どういう意味だ!?」」
「えっとね~。」
「「いや、意味は知ってるよ!?」」
「はわっ!?」
楽しそうだなあ。
こういう光景を見てると、いまだに侵魔と戦ってるなんてことが夢のようだ。
ん?夢?・・・夢か。
あれ、何だ?あそこだけ暗い?
目を凝らすと、一匹の紫の獣が俺を見ていた。
闇の中でもはっきりわかるほど紫電を纏った獣。
鋭い爪牙、こちらを見透かすような厳しい視線。だが、何故だろう。恐ろしさは感じない。
「カカカッ。そりゃそうだ。そいつは『凶獣』。お前の『相棒』なんだからな。」
「誰だ!?」
俺の背後五メートルほどだろうか?岩に腰掛け、ボロボロになった衣服を纏い、『右眼に眼帯をした男』が。
それだけじゃない。輪郭、鼻筋、口元、体格。全てが『俺』に酷似していた。違いは、残った左目が真っ赤に染まっていることか。
「おま、えは・・・?」
「カカ、そりゃ、『お前』だよ。」
は?俺?こいつは何を言っているんだ。
くっ!?なんだ!いきなり頭が!?
「旺牙!?大丈夫?」
「ぐっ、まあ、何とか・・・。」
「おいおい、ひでえじゃねえか。あいつと一緒に、迎えに来てやったのに。」
『俺』は獣を指さし、告げる。
獣は『俺』を見つめたまま唸りを上げる。その後、視線を俺に移すと、慈愛の籠った瞳を見せる。
獣。『凶獣』。『凶獣』は俺の二つ名。あれ?それだけだったか?
もう一つ、大事な名前だった気がする。
「旺牙、戻ろう。ここはなんだか怖い・・・。」
「簪・・・。」
簪は、少し震えながら俺の制服の裾を引っ張る。
だが、俺は・・・。
「なんだ?まだ『夢』を見たりないってか?ならこれはどうだ?」
『俺』が指を鳴らす。すると、空間に穴が開き、そこから何かが映し出される。
◆ ◆ ◆
「くそ、おい!旺牙はどこにいる!」
「ホッホッホ。さあ?もうお亡くなりになっているのではないでしょうか?」
「旺牙を!旺牙を帰して!!」
「いいですよ。いいですよその憎悪!さあ、慚愧と憎悪を抱いて死んでいきなさい!」
「く、この!」
「だめですわ鈴さん!あなたは福音の操縦者を守らなくては!」
◆ ◆ ◆
みんなが、侵魔と戦ってる?でも、みんなはここに・・・。
それにあの機械はなんだ?箒機士の兵器・・・とは違う。あれはたしか・・・。
「「IS」」
俺と『オレ』の声が重なった。
「カカカ、ようやくお目覚めか?俺よぉ?」
夢、夢か。いつもと変わらない、いや、束さんがみんなと、箒と仲良くしてるのが、俺の希望ってわけか。
「気づいちゃったんだね・・・。」
「ああ、悪いな、簪。俺はここにはいられない。」
「カカ、嬢ちゃん。オレもこいつが起きてくれないとよくないんでね。」
何者なんだ、こいつは。ドッペルゲンガー、でもなさそうだが。
「旺牙。」
「安東、先生。」
「行くんだな。」
「はい。俺にはまだ、寝ている暇はないみたいです。」
「そうか。」
気が付くと、みんなが俺の前に集まっていた。トルトゥーラの見せている夢だが、俺に害する存在ではないらしい。
俺はみんなに背を向けて歩き出す。途中で『凶獣』と『俺』が俺に溶け込んでいく。
『カカカ、死ぬんじゃねえぞ?お前はオレが食うんだからな。』
『グルルルルッ!』
そう吠えるなよ相棒。自分自身に怯えていられるか。何を企んでいようと、何もさせないさ。
「旺牙!」
一夏が叫ぶ。
「外の俺たちを頼む!それと、死ぬなよ!」
さっき福音の攻撃で死にかけてたのはどこの誰だよ。ったく。
片腕を上げ、それに応える。最早言葉も不要だった。
◆ ◆ ◆
「くっ、あいつの攻撃、盾だけじゃ防ぎきれない!」
「攻撃も、以前一緒にいた山羊頭には通用しましたのに!」
「ホッホッホッ。わたしをあのような雑魚と同じだと思わないでください。ほら、まだまだいきますよ。」
トルトゥーラの魔法が専用機持ちたちに放たれる。それは強力であり、彼女たちのシールドエネルギーを確実に削っていった。
(くそ、さきほどの『絢爛舞踏』がまた使えれば、皆を回復できるというのに!)
箒は自らを叱咤したが、無理もない。紅椿は今日起動したばかりであり、あれほどの単一仕様も偶然発動したなもの、まだ勝手がわからないのは当然である。
「旺牙を、返して!旺牙を返せぇ!!」
普段の、どこか気の弱い性格の簪が必死に、鬼のごとき連撃を放つ。だがそれすらも防がれ、かわされてしまう。
「ホホホッ。いいですよ。その表情、その攻撃。憎悪にまみれつつ、無駄にしかならないものを見るのはなんて楽しいのでしょうねぇ。」
「うわあああーーっ!!」
打鉄弐式の『山嵐』が全弾発射される。トルトゥーラは動かず魔法で薙ぎ払う。
「しかし、いささか飽いてきました。そろそろ終わりにしましょう。まずは、貴女から。」
「え?」
トルトゥーラが魔法タイプの侵魔とは思えない速度で簪の眼前に迫り、その細首を握り潰さんとする。
「「「簪!」」」
「う、か、はぁ・・・。」
「わたしが魔法だけのかトンボだとお思いで?貴方方を縊り殺すことぐらい簡単なんですよ?それにしても、貴女はついていませんねぇ。貴女の想い人はおそらく地獄逝き。貴女はきっと天国へ逝けますよ。貴女は心優しいようですからねえ。だからこそ残念です。あの世で再会することが出来ないなんてねぇ。」
楽しそうに嗤うトルトゥーラは、外道であり下衆である。皆の怒りを込めた攻撃も、片手で止められてしまう。
「では、さようなら。」
(旺牙・・・ごめん・・・。)
ピシッ
「むっ?」
どこかから、何かがひび割れる音が聞こえる。それはこの空域、正確には戦場のど真ん中から。
ピキッ、パキッ、パリッ
「何です!?この音は!?・・・は!まさか!?」
バアーーーーンッ!!
「でぃりやーーーーーー!!」
「くわーーーーー!?」
空間がガラスのように粉々になった瞬間、『紫』の影がトルトゥーラに飛びかかった。
その『紫』はトルトゥーラを蹴り飛ばし、捕らえられていた打鉄弐式を受け止める。
「けほっ、けほっ。あ、あれ?私・・・。」
「よく頑張ったな、簪。もう大丈夫だ。」
頭部に角、獣のような爪牙、紫の体色。腰からは機械的な尻尾が生えているが、その姿に皆は見覚えがあった。
「みんなもよく踏ん張ってくれた。安心しろ。俺の復活だ。」
その声、もう聞けないと思っていた。
「お、お、」
「旺牙ーーーっ!!」
「あいよ。」
侵魔を狩る者の復活である。
◆ ◆ ◆
「みんな、心配かけたな。もう大丈夫だ。」
「大丈夫だ、じゃねえよ!俺は、俺たちはあいつの言葉を信じちまったんだぞ。」
「そうだ!お前が死んだと聞かされた時の気持ちがお前にわかるか!」
「全くですわ!本当に、心配をかけて・・・。」
「この、馬鹿!ホントに馬鹿よ!」
「ハハ、なんだか、力が抜けちゃった・・・。」
「私は信じていたぞ。相棒が死ぬはずないとな。」
「うえ、ぐす、おうが~。」
おおう、みんなからおしかりを受けちまったい。まあ、帰還を許してくれたのもいるけど。
てか簪さん、抱き着いてくるのは嬉しいけど、涙と鼻水が・・・。いや、黙っておこう。
「てか一夏、白式がちょっと変わってないか?」
「ああ、二次移行『白式・雪羅』だ。お前の凶獣も、ちょっと変わってないか?」
「ああ。簪、ちょっと離れてくれ。」
まだぐずついてる簪を離し、凶獣のエネルギーを解放する。
すると、全身を紫電が纏う。
「俺も二次移行『凶獣・紫電』だ。」
より凶暴性を増した姿を見せつけるように体を動かす。
「ゲホア!?」
しまった。一言も発しないから忘れていた。
だが、トルトゥーラは肩で息をし、苦しそうにしている。
「ほう、お前にとってあの術を破られるってのはそれほど反動が大きいってことかい。」
「な、なぜだ!?なぜ目覚めた!?術は完全に決まったはず!貴様は夢から逃れられないはず!」
夢、か。そうだな。ちょいとばっかし楽しい夢だった。俺は、たったあれだけの幸せを求めていたんだ。
「でもな。あれは夢。ただの夢なんだよ。安息に浸る権利は、俺にはないんだよ。」
「ぬうう。この、死にぞこないがー!」
ヴォーティカルカノンが迫りくる。だが。
「阿呆が。」
単一仕様能力『獣王悪食』、作動
俺が右手を突き出すと、奴の魔法が掌に吸い込まれていく。今までは感情が昂った時しか発動しなかったが、今では自身の意思で使えるようになった。
「な!?ば、馬鹿な!?」
もう、いいだろう。終わらせよう。
「みんな、早速で悪いんだが、時間を三分、いや二分稼いでくれ。一撃で終わらせる。」
「さっきの単一仕様で守れないのか?」
「ああやって使うのは集中力が必要なんだ。だから・・・。」
「私たちが時間を稼げばいいんだね。」
「ふ、それぐらい、何のことは無い。」
「あたしにかかれば一人でも―――」
「鈴さんは福音の搭乗者を守ってくださいまし。」
「あ、あはは・・・。」
みんな・・・。
「すまん、みんなの命、俺に預けてくれ。」
「「「「「了解!」」」」」
俺の言葉に、鈴とシャルロット以外が散開する。シャルロットは俺たちの前で盾を構え、完全防御の構え。鈴は俺の後ろで福音の搭乗者を守る。
先陣を切ったのは白式と紅椿。二機で懐に飛び入り、息の合ったコンビネーションで斬撃の嵐を与える。
「この、餓鬼どもがあ!」
「言葉遣いが悪くなってるぜ。」
「それとも、それが本性か?」
「ほざけ!」
怒りを抑えられていない。奴もギリギリか。
魔力を溜め、上級魔法の構えを取る。だが、四発の砲撃がそれを阻む。レーゲンの砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』の二門のレールカノン『ブリッツ』、そして打鉄二式の『春雷』。
「好きには!」
「させない。」
「く、ならば、いでよ我が眷属たち!」
その言葉と共に、レッサーデーモンが十体ほど出現する。だが。
「わたくしをお忘れにならないでくださいまし!」
ブルー・ティアーズがBT兵器により、即座に悪魔どもの頭部を打ち抜いていく。一度対峙していることもあるが、今日のBTは機動、精度ともに冴えわたっていた。
「ぬうううう。奴さえ、奴さえ殺せれば・・・。」
トルトゥーラのヴォーティカルショットが飛んでくる。それを俺の眼前のラファールが難なく受け止める。
「ありがとよ、シャルロット!」
「僕がいる限り、ここから先に通させはしないよ!」
「いい加減になさい、この死にぞこないどもが!はぐわあああぁ!?」
トルトゥーラが炎を纏って苦しみだす。
「あたしだって、これぐらいの援護は出来るわよ!」
甲龍のパッケージ『崩山』の拡散衝撃砲が文字通り火を噴いた。
「殺す・・・、この痛みを全て返し、心を折り、肉体を蝕み、魂すら辱めてくれる・・・。」
「残念だが、そいつは無理な相談だ。」
みんなのお陰で、龍は完全に練れたからな。
「終わりにしようか、トルトゥーラ。」
「あ、ああ。ま、待て、待てーーーっ!」
『破を念じて、龍(りゅう)と成せ!』
「おおおお!竜王爆功撃!!」
龍のオーラ纏い、俺の最大の蹴りで穿つ。
「く、来るな!来るなあああっ!」
「ぜああああああっ!!」
そして。
ズバァンッッ!!
直撃したトルトゥーラの体は、中ほどから上半身と下半身に裂けた。
「キィエエエエアアアアア!?」
海に落ちながら、炎に身を焼かれ消滅していく。
その残骸まで消滅した時、空の紅い月は晴れ、夏の暑さが残る夕闇に包まれる。
だが、それは爽やかさすら感じ取れるものだった。
「終わった・・・。」
誰の声だったか、ポツリと呟く。
「ああ、終わったよ。今度こそ、な。」
やだ、柊とくれはの出番少なすぎ・・・。
自分にはこれが限界だったんじゃ~、許してくれ~。