IS×NW~世界を渡りし者~《更新停止》   作:戒炎

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作者)いやー、今回は難産だった。

旺牙)難産じゃなかったこと、あったか?

作者)・・・言わないでくれよ。


三つの『覚悟』

 マリアと名乗った侵魔が、大上段から大剣を振り下ろし襲ってくる。その動きに若干の違和感を覚えながら、バックステップを使い紙一重で大剣をかわす。

 そして足が着いた瞬間地を蹴り拳を突き出す。マリアは驚愕の顔を見せ、すぐさま大剣で防御する。その『表情』にも違和感を感じたが、隙を与えずレッグラリアットで弾き飛ばす。続けざまに蹴りを乱打するが、再び大剣で防御され、クリーンヒットを与えることが出来ない。

 

(速いな・・・。)

 

 マリアの大剣は振り回すには相当の膂力が必要のはず。侵魔だから、の一言では片付けられない。となると、ISのパワーアシストか。『打鉄』よりも厚い装甲をしているが、アシストでパワーとついでにスピードを得ているのだろう。

 攻撃を止めずにいると、『ブレイヴ』とやらのデータが流れてくる。

 重装甲が売りのパワー型。それを各種スラスターで補助し、軽量のスピード型に劣らぬ速さを手に入れている。言ってみれば、俺の凶獣と似たタイプのISということだ。武装は少ないが、第二世代といっても十分戦えるだろう。

 マリアが俺の一撃一撃を受けるたびに苦しそうな顔を見せなければ。

 まさかこいつ。

 連撃を止め、少し距離を取る。マリアはそれを確かに見た。だが、大剣を振るうのが刹那遅れた。その一瞬は攻撃を完全に回避するのに十分だった。

 

「・・・。」

「くっ!?」

 

 距離を開けたままマリアの攻撃を誘う。攻守交替、大剣による連撃が始まる。

 まさに縦横無尽、素早い刃が襲い来る。

 

「速いな。だが!」

「っ!?」

 

 避けるのを止め、全ての斬撃を防御して見せた。

 攻撃が当たっている。だが、苦しそうに、辛そうにしているのはマリアのほうだった。

 威力もある、大剣特有の重さも感じる。だが。

 ガアン!!ちょうど真正面に来た一撃を蹴り飛ばす。

 速さはアシストがあるとはいえ、テレモート以上。だが。

 

「お前、『敵』と戦ったことあるか?」

「なっ!?なにを!?」

「殺気が感じられねえんだよ。」

 

 剣の振り方は天性のものだろう。確実にダメージを与える部分を狙ってきた。

 だが、振るう側がすでに汗まみれ。対して俺はまだまだ余裕がある。なぜなら、テレモート以上の才覚を持つ『敵』から、殺気という圧力を感じられなかったからだ。

 

「何を言うんですか!?私はあなたを討つためにっ!」

「なら俺は一歩も動かん。だから。」

 

 

 

「俺の首、取ってみろ。」

 

 

 

 そう言って、両手を広げISまで解除する。

 

「な、何を・・・。」

「ご覧の通り、俺は無防備だ。兄貴たちの仇を討つなら、今だぞ。」

「う、うぅぅっ。」

「さあ、どうした。」

 

 

 

「やらんかああぁぁぁっ!!」

「うわあああぁぁっ!!」

 

 

 

 俺を切り裂くため、初撃と同じように大上段から大剣が振り下ろされる。

 そして・・・。

 

 ピタッ。

 

 脳天に届く前に、斬撃は止められた。マリアの腕は、体はカタカタと細かく震えている。

 

「やはり、な。」

「何が、やはりなのですか・・・。」

「お前には『覚悟』が足りない。」

「『命』など、とうに捨てています。」

「覇ッ!」

「っ!?きゃあああぁっ!」

 

 掌底をマリアの腹に叩き込む。龍を思い切り錬ったので、ISを装着していようとかなりダメージを与えたと思う。ウィザード舐めんなよ?

 それでも空中で身をひるがえし態勢を整えるのは流石だと思う。これも天性のものだろう。だが、これで確信した。

 

「お前、やっぱりこれが初陣か。」

「はあ、はあ、はあ・・・。」

「俺が言った『覚悟』ってのはな・・・まず『命を捨てる』こと。」

 

 そうして再び凶獣を纏う。

 

「そして『仲間を失う覚悟』。ここまではお前もわかってるみたいだな。」

 

 安東先生から耳にタコができるくらいに訊いた、『三つの覚悟』。あくまで持論らしいが。

 

「三つめ、『命を奪う覚悟』だ。曰く、これが無いとただの狂人か、臆病者だそうだ。お前は後者らしいな。」

「命を、奪う・・・。」

 

 ウィザードと侵魔は戦争中だ。相手を殺すことが出来なければ、自分が殺られる。俺たちはそんな状況にいる。それなのに俺を殺すのを躊躇うこいつは侵魔にあるまじき優しさを『持ってっしまった』。何度も俺に斬りかかれたのに。先程もも俺を殺せたのに。

 

「お前の戦闘能力はテレモートに匹敵するだろうさ。だが、奴とは『覚悟』が違うんだよ。」

「テレモート兄様・・・。」

「無論、俺ともな。」

 

 俺の殺気を感じたのだろう、一気に距離を取り、五連ミサイル『チンクエディア』が放たれる。こちらに向かってくるミサイルを、回し蹴りで一掃する。

 俺はスラスターを全開にして距離を詰めようとする。それを三連マシンキャノン『レオーネ』で牽制してくるが、殺気もこもっていないマシンキャノンで防御を完全に張った凶獣・紫電を止めるには足りない。豆鉄砲ほどしか感じない。

 そして彼我の距離が零に等しくなる。

 

「一閃・錬気蹴!」

「くぅ、あっ!」

 

 俺の一撃を、もろに受けるマリア。だが、ブレイヴの装甲を完全に抜くことは出来なかった。

 一撃で決められないなら、何発でも打ち込むのみ!

 悪いが俺は男女平等で、覚悟も出来ていない奴が相手でも容赦しないんでね!

 

「錬気怒涛拳ッ!」

「ぐうぅ!」

 

 まだまだ!これから行くぞ!

 

「破を念じて、刃と成せ!念導龍錬刃ッ!!」

「ああああああ!」

 

 まだ墜ちないのかよ!?

 くそ、なんだか虐めてるみたいじゃねえか!

 なら、これでどうだ!

 

「魔空龍円刃《零式》!」

「く、ぐうううぅっ!」

 

 くそ!まだ耐えるかよ!

 

「まだ、私は、お母様のために・・・。」

 

 覇王とやらのため。それだけで立っているのか。もうさすがにISの装甲がボロボロになっているのに。

 それが、お前の退けない理由か。

 

「・・・次で終わらせる。もうお前が苦しまずに済むように。」

「・・・何を、私は・・・。」

 

 これで終わりだ。

『破を念じて、龍(りゅう)と成せ!』

 

 

 

    ◆    ◆    ◆

 

 ああ、私はこんなにも弱いんですね・・・。

 ごめんなさい、お母様、お姉様。

 非力なマリアをお許しください。

 

『マリア、お前が命を捨てる時ではない。』

 

 お母様・・・?

 

    ◆    ◆    ◆

 

 

「竜王爆功、なに!?」

 

 マリアの身体が透けていき、そのまま消えていった。

 竜王爆功撃が空振りし、地面に大穴を空けたところで、月匣が消滅した。コアを生み出したマリアが消失したのが原因だろうが。

 

(手ごたえが無かった。逃がしたか・・・。)

 

 俺としたことが、絶対的有利にありながら敵をむざむざ逃がすとは。

 

「俺もまだまだ甘い、か・・・。」

「何が甘いんだ。」

「ウワオウッ!?」

 

 校舎の壁を背に、腕を組んで立っている安東先生が不意打ちで声をかけてくる。

 

「せ、先生・・・、いつからそこに?」

「月匣の気配を感じて今到着したところだ。」

 

 ふう、なら俺の醜態も見られていない様子で―――

 

「『俺もまだまだ甘い』、だったか?」

「ギックゥ!?」

「どういうことか聞かせてもらおうか、じっくりな・・・。」

「あ、ああ・・・。」

 

 ああああああああっ!←夜に響く悲鳴

 

 

 

 

    ◆    ◆    ◆

 

 闇の中、三人の女性が集まっている。

 外見だけで言えば、女性と少女だが。

 

「大事ないか、マリア?」

「ご心配なく。これくらいは、痛っ!?」

「やはり傷を負っているではないか。ほら、今癒してあげよう。」

「・・・申し訳ありません、お母様。」

「何を言う。親が子を慈しんで悪いことがあるか。」

 

 その光景を、長い金の髪をかき上げながら、残る女性、パツィアは思った。

 

(戦うこともできない、可愛い可愛いお人形マリア。それをいまだに四天王に置いている母様も、まだまだ甘い。)

 

 面白くなさそうな、嫌悪感すら抱くのを必死に堪える。それでも、握り拳は解けない。

 自分が最強なのだと、このパツィアこそが次代の覇王にふさわしいのだと。

 覇王とは世襲制である。子が親を超えた時、新たな覇王となる。ジーザは二代目。先代覇王を討ち、新たな覇王となった。

 ならば次は自分がと、パツィアは密かに野望を抱いていたのだが・・・。

 

「パツィア。かの地への襲撃、早めるかも知れん。準備を怠るな。」

「母様の命であれば、いつどこへでも・・・。」

 

 闇は、どこまでも深い。

 

 

    ◆    ◆    ◆

 

 夏休みも終わった九月一日。教室に違和感を覚えた。何故だろう。

 そう言えば昨日、楯無先輩から。

 

『明日からちょっと賑やかになるかもよ?』

 

 と言われたな。いや、賑やかなのは毎日なんだが。

 

「はい、HRを始めますよ。席に着いてください。」

 

 山田先生の声に、全員が着席する。

 ん?ああ、違和感の謎がわかった。

 二席空いてるんだ。

 急な転校や、まさかの退学なら一応生徒会役員の俺にも情報が入ってきてもおかしくないのに。

 

「はい、今日は転入生?を紹介します。あは、あはは・・・。」

 

 山田先生、笑顔が乾いています。

 それにしても転入生?聞いてないな。

 

「それでは、入ってきてください。」

「はーい。」

「はい・・・。」

 

 おや、この声は・・・。

 

「一年二組改め、一組の凰鈴音です!」

「四組改め、更識簪です。」

 

 は?

 

『はああああああ!?』

 

 おおみんなも同じ反応だよ。

 どういうことだってばよ。

 

「騒ぐなガキ共。」

 

 お、織斑先生。これはいったいどういうことなんですかい?

 

「これは生徒会と学園教師で決めたことだ。文句は言わせん。」

 

 あのアホ会長・・・わざと黙ってたな・・・。今度はアイアンクローの刑に処す。

 しかしなんだろう。この、なんだか物語の大きなターニングポイントに立ったような感覚。疲れてるのかな、俺。

 簪はオロオロしてるし、鈴にいたっては『コレで不憫なんて言わせない!』とかわけわからんこと言ってるし。

 しかしこれで一年の専用機持ちが揃うことになった。

 これはなんだ?何か大きな渦に巻き込まれたような。なにか不吉な予感を感じる。

 いったいこれからどうなってしまうんだ?

 

 ゴシャアッ!!

 

「聞いているのか志垣。」

「今刺しましたよね!?出席簿の角で刺しましたよね!?俺じゃなかったら死んでますよ!?」

「お前だからそうしただけだ。」

 

 り、理不尽にして最悪の信頼感だ。

 しかしこの時期による全員集合。先日の襲撃。これが、まったくの無関係とは思えない。

 俺たちの学園生活は、どうなるのか。

 奴らとの決戦が近づいている。そんな予感がした。




作者)はい!学園祭前に全員集合。ここからが大きなターニングポイントになります。

旺牙)大丈夫か、お前の腕でこんなことして。

作者)ん、頑張る。

旺牙)不安しかねえ・・・。
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