旺牙)第二陣を待て
作者)予約も無理か
一夏)何の話だよ
「むう~・・・。」
「いや、そろそろ機嫌直してくれよ。」
夜、寮の自室。
学園祭も、その後の片付けも終わり、そして俺は簪に睨まれていた。
どうしよう・・・。
「また危ないことして・・・。」
「いやいや、侵入者は学校側の不始末だし、襲われたのも俺の所為じゃ・・・。」
「明らかに旺牙と一夏が狙われたって、安東先生が言ってた。」
なに重要機密を気楽に喋っちゃってるのあの人。
でもでも俺たちが狙われるのはあちらさんの都合なわけで。
俺たち何も悪くないわけで。
るーるるる~。
・・・俺やっぱり疲れてるのかな?
「本当に無茶ばっかりして。心配でどうにかなりそう。」
「まあ、そこは反省しています。」
一応重傷を負ったことは伏せてくれたのか。じゃなかったら泣かれてたかな。
「まだ話してくれないの?旺牙が戦ってる相手の事。」
「・・・それは、詳しくは言えない。」
「お姉ちゃんとの一件で、そういうの嫌だって、言ったよね。」
「こればっかりは、安東先生が時期を見る。その時まで待てないか?」
しばしの沈黙の後、簪が口を開く。
「私の家の事、どこまで知ってたっけ。」
「大抵のことは、楯無さんから聞いてる。」
「それなのに、旺牙たちのことは隠すの?」
「・・・すまない。」
「ちょっとずるいよ、旺牙。」
簪が俯いてしまった。
どうしよう。ここですべて言ってしまうか?
だがこんな荒唐無稽な話、信じてもらえるだろうか。
束さんと千冬さんには簡単なことは喋ってしまったが、あのふたりは何と言うか、別な気がするし。
そもそも、俺にもわからない事、知らされていないことがまだまだありそうだし。
う~む、どうしよう。
・・・仕方ないか。
「簪、簡単なことは話す。本当に一部の事だけだ。そもそも俺も全てを知っているわけじゃない。それでもいいか?」
「うん。少しでも、旺牙のことが知れるなら。」
「そうか。じゃあ・・・。」
◇ ◇ ◇
「なんだか、マンガやアニメの中の出来事みたい・・・。」
「残念だが、これが現実だ。」
一応俺が話せることはかいつまんで話した。
ウィザード、侵魔、ISの隠された機能。
そして、俺が一度死んでいること。
ただ、かつて同じ人間を虐殺したことは話してはいない。
話す勇気が、無かった。
「奴らが俺以外に一夏を狙ってきたことにも、何か理由があるんだろう。そこは俺も知らないが、やっぱり安東先生が知ってるんだろうな。」
「何者なの、あの先生。」
「ん~、規格外の存在、かな。」
そうとしか言えない。今はな。
「あ、今の話は他言無用で頼むぞ。」
「うん。わかってる。でも、もう学園のほとんどの人が目撃しちゃってるんじゃないかな。」
「知らない方が良いこともあるんだよ。」
「私はいいの?」
「お前から問いただしてきたんだろうが。」
「わっ!わっ!」
わしわしと簪の頭を乱暴に撫でる。
なんだかなぁ。
こういう時間を守るために、ウィザードってのは戦うんだろうな。
一回ぶっ殺されて、生まれ変わっても死にかけて、それでもやっとわかってきたような気がする。
すいません先生。またひとり巻き込んじまったみたいです。
でも、今夜は落ち着いて眠れそうです。
◆ ◆ ◆
「みなさん、先日の学園祭ではお疲れさまでした。それではこれより、投票結果の発表をはじめます。」
もちろん、織斑一夏争奪戦の話だ。
体育館に集まっている全校生徒がつばを飲む音が聞こえた気がした。
まあ、俺も生徒会役員の端くれなのでオチは知っているんですけどね。
「一位は、生徒会主催の観客参加型劇『シンデレラ』!」
「「「・・・・・え?」」」
ぽかんと全校生徒が口を開く、その数秒後に我に返った女子一同からブーイングが起きた。嵐とはこういうことかと思えるほどに。
「卑怯!ずるい!イカサマ!」
「なんで生徒会なのよ!おかしいわよ!」
「私たちがんばったのに!」
「生徒会は貴重な男子生徒二名をを独占している!」
そんな苦情をまぁまぁと手で制し、楯無さんは言葉を続けた。
「劇の参加条件は『生徒会に投票すること』よ。でも、私たちは別に参加を強制したわけではないのだから、立派に民意と言えるわね。」
よく言って詭弁、悪く言って詐欺である。ん?どちらも悪いって?じゃあこの人に直接言ってくれよ。多分聞いてくれないから。
しかしその条件を聞かされたときは呆れたよ。よくそんなことを思いつくなと。
案の定、楯無さんの説明ではブーイングが収まらない。
「はい、落ち着いて。生徒会メンバーになった織斑一夏くん、並びにすでにメンバーの志垣旺牙くんは、適宜各部活動に派遣します。男子なので大会参加は無理ですが、マネージャーや庶務をやらせてあげてください。それらの申請書は、生徒会に提出するようにお願いします。」
あれれ~、おかしいぞ~?挙がるはずない無い名前が聞こえたぞ~?
思わず楯無さんを見る。
目と目が合い、パッチリウインク!
や、やられた!俺の知らないところで話が決まっていたのか!
それにどうせ意見しても、生徒会は楯無さんの身内。民主主義によって俺の言葉は排除されていただろう。自由ってなんだっけ。
「ま、まぁ、それなら・・・。」
「し、仕方ないわね。納得してあげましょうか。」
「うちの部活勝ち目なかったし、これはタナボタね!」
そんな声が聞こえてくる。いいのか!?それでいいのか皆の衆!?
そしてすぐさま、各部活動のアピール合戦がはじまった。
「じゃあまずはサッカー部に来てもらわないと!」
「何言ってんのよ、ラクロス部の方が先なんだから!」
「料理部もいますよ~。」
「はい!はいはい!茶道部はここです!」
「剣道部は、まあ二番にきてくれればいいですよ?」
「柔道部!寝技、あるよ!」
「はいはい。男子はふたりいるんだから焦らないように。」
再びまぁまぁと手で制す楯無さん。
は、謀ったな〇ャア!?ってこれ前にも言ったな。
「それでは、特に問題も無いようなので、織斑一夏くんは生徒会へ所属、以後は私の指示に従ってもらいます。」
楯無さんがそう締めると、生徒たちからは拍手と口笛がわき起こった。
はあ。仕方ない、諦めるか。
一夏はようやく状況を飲み込めたらしい。わたわたしている。
おいで~、こっちへおいで~と手招き。
妖怪か俺は。
◆ ◆ ◆
「織斑一夏くん、生徒会副会長着任おめでと!」
「おめでと~。」
「おめでとう。これからよろしく。」
「おめでとう雑よ・・・副会長。」
楯無さん、本音、虚さん、俺の順で言葉をかけ、ぱぱーんと盛大にクラッカーを鳴らす。
五人が席に着いても仕事が出来そうだとは、結構大きかったんだなこの机。
「旺牙。今雑用って・・・。」
「アーアーキコエナイ。」
ナニイッテルノカシラナイ。ニホンゴムズカシイ。
「・・・しかし、なぜこんなことに・・・。」
「あら、いい解決方法でしょう?元は一夏くんがどこの部活動にも入らないからいけないのよ。学園長からも、生徒会権限でどこかに入部させるようにって言われてね。」
「おりむーがどこかに入ればー、一部の人は諦めるだろうけど~。」
「その他大勢の生徒が『うちの部活に入れて』と言い出すのは必至でしょう。そのため、生徒会で今回の措置をとらせていただきました。」
見事に繋がる言葉の連携。台詞のジェットストリームアタックの前には反論も出来んよ。と言うかさせない。
同じ幼馴染みでも俺や一夏、箒もしくは鈴ではこうはいくまい。
「俺の意見が無視されている・・・。」
「あら、なぁに?こんな美少女三人もいるのに、ご不満?」
「そうだよ~。おりむーは美少女はべらかしてるんだよー。」
「美少女かどうかは知りませんが、ここでの仕事はあなたに有益な経験を生むことでしょう。」
まともなこと言っているのが虚さんしかいない。
よしここは俺もボケるか。
「そうだぞ、こんな色男まで付いているのに。」
「旺牙、言ってて空しくないか?」
「・・・自分の言葉なのに吐き気を覚えた。」
慣れないことはするもんじゃない。
「旺牙の時はどうだったんだ?」
「似たようなもんだ。俺が部活に入らない不満が募ってたらしい。」
細かいところは省いてもいいだろう。多分楯無さんが話しているだろうから。
早速、というか仕方なく一夏は虚さんに今後のことを聞いていた。残りのふたりに訊いたって無意味だと悟ったか。
「えーと・・・とりあえず、放課後に毎日集合ですか?」
「当面はそうしてもらいますが、派遣先の部活動が決まり次第そちらに行ってください。これは志垣くんも同じです。」
「わ、わかりました。」
「ところで・・・ひとつ、いいですか?」
「?なんですか?」
おや、虚さんにしては珍しく、なんだか歯切れが悪い。
俺と一夏が不思議そうに眺めていると、またも言いにくそうにしながらやっと小声で口を開いた。
「学園祭の時にいたお友達は、何というお名前ですか?」
「え?あ、弾のことですか?五反田弾です。市立の高校に通ってますよ。」
「ん?一夏お前弾に会ったのか?」
「ああ、招待券送ったから。」
なんだよ、俺も久しぶりに会いたかったのにな。
でもなんで虚さんが弾のことを?
「そ、そう・・・ですか。年は織斑くんたちと同じですね?」
「ええ、そりゃまあ。」
「・・・二つも年下・・・。」
「え?」
「なんでもありません。ありがとうございました。」
そう言って虚さんは丁寧にお辞儀をする。その頬が心なしか赤く見えるが・・・ほう。
つついっと虚さんに近づき、小声で話しかける。
「虚さん虚さん。奴の連絡先はいかがです?」
「う!?そ、それは・・・。」
「いきなり電話が厳しいなら、どこかでセッティングしますよ?」
「・・・い、いつか。いつかお願いします・・・。」
ふむ。好感触だな。
いやー、虚さんの趣味がああいうタイプだったとはな。
まあ弾はその見た目によらず一途だから大丈夫だろう。
「いやー、弾の奴にも春が来そうだな。」
「春はとっくに過ぎてるぞ。」
うるせえよ頭お花畑野郎。
「さぁ!今日は生徒会メンバーが揃った記念と一夏くんの副会長就任を祝ってケーキを焼いてきたから、みんなでいただきましょう。」
「わ~。さんせ~。」
「では、お茶をいれましょう。」
「ええ、お願い。本音ちゃんは取り皿をお願いね。旺牙くんはフォークを揃えて。」
「はーい。」
「了解。」
なんだかこういう動きにも慣れてきたな。
「それでは・・・乾杯!」
「かんぱーい~。」
「「乾杯。」」
「は、はは・・・乾杯。はぁ・・・。」
これからが大変だぞ、一夏。
旺牙)なんだか今回短い・・・短くない?
作者)前はこんなもんだったよ。