作者)そ、そうなんよ~。なかなか話が進まなくて
旺牙)『アークス』に『デュエリスト』、『ストリートファイター』に『旅人』まで。
作者)( ^ω^)・・・
旺牙)言い残すことは?
作者)ありません。
「随分派手に書かれてるじゃないか。」
「・・・勘弁してくださいよ。」
屋上、俺は柵を背に座り込み、その隣で安東先生が新聞部の号外を読んでいる。
「『一年一組志垣旺牙、専用機持ち代表候補生を粉砕!』だとよ。やるねえ、お前も。」
「教師がそんなんでいいのかよ・・・。」
さっきから肩を震わせて笑いを堪えてるんだぜこの人。いっそのこと笑えよ。笑って腹よじれて腹筋がつってしまえばいいよ。
ああ、何でこんなことになったんだっけ?
◆ ◆ ◆
あれは先日、アリーナで一人練習していた時のことだ。
珍しく生徒会の用事が無かったが、みんな別の予定が入り俺一人で寂しく流すかと思っていた時だった。
「ねえキミ、志垣くんでしょう?」
「はい?」
四人の女子、見たところ三年生が四人、声をかけてきた。
「私たちと一緒に練習しない?私たち代表候補生なのよね、しかも専用機持ち。」
「はあ・・・。」
いや聞いてねぇっつーの。
「お互いのレベルアップ目指して頑張りましょう。千冬様・・・んんっ!織斑先生も自分の生徒が向上心を持つと喜ぶかもね。」
あー、はいはい。本心読めました。俺や一夏を通して千冬さんに名前を売り込みたいって腹か。しかも国籍バラバラなのに『千冬信者』か。
んで千冬さんのお眼鏡に適ったら学園中の注目の的に、上手くすれば『候補生』から『代表』になれるんじゃないかと、そんな計算があるわけね。
もう遅れてるよあんたら。そんな輩今までいっぱいいたよ。
何とか諭して帰ってもらったけどな。
「すんません。俺の機体、ピーキーにもほどがあるんで、先輩たちの役には立たないかと。皆さんでそれぞれ練習した方が実になりますよ?」
はい、拒絶の意志見せました。陰口ぐらいは叩いていいんで向こう行っててください。
「な、なによっ。一年で、しかも男のくせに!」
はいはい、その口上も慣れてますよ。しかし随分簡単に手の平返しましたね。
「大体あなた、どうやって千冬様に近づいたわけ?」
知らねえよ。気づいたら傍にいてくれたんだよ。感謝して泣きそうにならあ。
「そもそも織斑一夏も気に入らないのよ。弟だからって千冬様の近くにいて。」
いや仕方ないだろ、姉弟なんだから。
「ホントホント。弟だからって、男が千冬様に近づくんじゃないわよ。」
「それに安東って教師も。あの態度はなに?馴れ馴れしく千冬様に話しかけて。」
あーあーうるせえな。とっとと離れてくれないかな。
「それにしても一年の代表候補生たち、上手くやったわよね。」
ん?
「どんな手を使ってあなたたちを取り込んだのかしら。ねえ教えてよ。何されてそんなに仲良くなったの?」
「もう、決まってるじゃない。女が男と仲良くなるなんて・・・。」
「やだー、不潔ー!」
「売女ってやつ?」
アア?
ナニヲイッテイルンダコノ『バカ』ドモハ?
(カッ、カカカカカカカッ!煩い蠅共だな!?)
ソウダナ、ウルサイナ。
(なら、『駆除』しちまえよ!)
アア、ソレガイイ。
「なによ、さっきから黙ってて。何も言い返さな」
コイ、凶獣。
「なっ!?」
「コイヨ。一匹残ラズ潰シテヤル。」
◆ ◆ ◆
「んで、四人をボッコボコに、と。」
「なんであんなことしたんだろ。」
いつもならあれくらい聞き流して・・・いや、今回のはちょっとむかついたが。
ちなみに細かい内容は先生にも言っていない。この人笑顔で人を瀕死に出来るからな。殺さないところが逆に恐ろしい。
「あ~、各国から何か言われるのかな、めんどくさい。」
「それなら安心しろ。向こうさんからの文句はないよ。」
は?なぜに?
「考えても見ろ。散々挑発しておいて、専用機持ちが四対一で負けましたなんて、笑い話にもなりゃしない。ここは『何もありませんでした』で済ませるのが無難だろ。」
はあ、なるほどねえ・・・。
「しっかし、あの声はなんだったんだろうな・・・。」
「声?」
先生が号外から目を外し、俺を見る。
「前、臨海学校で俺が夢に囚われた時と同じ声がしたんですよ。そう言えば、奴の姿も声も俺そっくりだったな。雰囲気は」
「お前を侵魔にしたような、か?」
「そう、それ。今回のもその声が聞こえたんです。」
「・・・・・・。」
先生はそれっきり黙り込んでしまった。
こうなってしまっては、こちらの声はもう聞こえまい。
それにもうすぐ昼休みも終わる。
ああ、教室に帰ればまた質問攻めなのかな。めんどくさい。
予鈴が鳴っても動かない先生を尻目に、俺は屋上を後にした。
◆ ◆ ◆
「えっ!?一夏の誕生日って今月なの!?」
「お、おう。」
寮での夕食。いつの間にか『いつもの面々』で食事を摂りながら談笑を交えていると、突然シャルロットが大声を上げた。食事中はお静かに・・・出来ないのがこの面子である。
かなり驚いたのか、立ち上がってしまっている。お嬢さん、お行儀悪い。
「い、いつ!?」
「九月の二七日だよ。ちょっ、ちょっと落ち着けって。」
「う、うん。」
そう言って椅子にかけ直すシャルロット。
「に、日曜日だよね!?」
そんなに身を乗り出して。興奮しすぎだぞ。
「に、日曜だな。」
「そっか・・・。うん、そうだよね。うん!」
なんだか自分の世界に入ってしまったぞい?
今度はビーフシチューを食べていたセシリアが口を開く。
「一夏さん、そういう大事なことはもっと早く教えてくださらないと困りますわ。」
「え?お、おう。すまん。」
あ、よくわかってないなこいつ。
「とにかく、二七日の日曜日ですわね。」
セシリアは純白の革手帳を取り出すと、二七日の欄にぐりぐりと二重丸を描く。まあ、彼女たちにとっては重要事項だろう。もしかしたら最優先かもしれん。
なにせ好きな男の誕生日なのだから。
「お前はどうしてそういうことを黙っているのだ。」
シャルロットの隣でラウラが少しむすっとした口調で告げる。
どうでもいいがラウラは少しずつ小動物に近づいている気がする。俺だけかな?
「え?いや、別に大したことじゃないかなーって。」
「ふん。しかし、知っていて黙っていたやつもいることだしな。」
「「う!」」
ラウラに一瞥されて、ダブル幼なじみが固まっている。
「べ、別に隠していたわけではない!聞かれなかっただけだ。」
「そ、そうよそうよ!聞かれもしないのに喋るとKYになるじゃない!」
箒と鈴はそんなことを言いながら、ぱくぱくとご飯をほおばった。
こいつら、他を出し抜こうとしたな・・・。
「相棒も酷いぞ。まさか黙っているとは。」
「すまん。俺は本気で忘れてた。」
まあこの様の俺がどうこう言えたことじゃないが。
「旺牙、あの、一夏の親友、なんだよね?」
「旺牙くんって、物忘れ激しい?」
「あははは、旺牙くんは酷いなー。」
やめてくれ簪、沙紀。その言葉は俺にきく。
あと萌。お前は吹っ飛ばすぞ?マジで。
「とにかく!九月二七日!一夏さん、予定は空けておいてくださいな!」
「あ、ああ。一応、中学のときの友達が祝ってくれるから俺の家に集まる予定なんだが、みんなもくるか?」
「も、もちろん!何時から!?」
「えーっと、四時くらいかな。当日はあれがあったんだけど・・・。」
「そういえば今年は急遽中止になったんだよね。『キャノンボール・ファスト』。」
キャノンボール・ファスト。分かりやすく言えば、ISによる高速バトルレース。本来なら国際大会として行われるそれだが、IS学園があるここでは状況が異なる。
といっても専用機持ちが圧倒的に有利なため、一般生徒が参加する訓練機部門と専用機持ち限定の専用機部門とにわかれている、が。
IS学園関係のイベントに対し度重なるトラブル。世界中で起こる謎の事件(おそらく侵魔関係とは安東先生の言葉)。
そのため、事件がおおよそ収束するまでこの手の大会は中止、または延期とすると、国際IS委員会からお達しが来た。どこも責任は取りたくないのである。
「せっかくみんな高機動調整やパッケージのお披露目だったのに、残念だね。」
お茶を飲みながら萌が言う。
たしかに、場合によっては生徒たちの晴れ舞台だったろう。
操縦者は高機動の技術を見せつけたり、整備者は調整の腕の見せ所だったはず。
俺もリミッターを解除した凶獣のトップスピードを感じてみたかった。
「単純なスピードアップだけではない、戦闘面も強化されるからな。」
「打鉄弐型も速い方だけど、まだパッケージも調整も出来てないし。」
「一度は試してみたかったですわね。各機体のトップスピードとやらを。」
専用機持ち全員が声を唸らせる。
その空気に耐えかねてか、萌が口を開いた。
「ま、まあまあ。今は現状で訓練でもしようよ。」
「そうだな。俺たちは今できることをしよう。芯がしっかりしていないとよれよれになるぞ?」
そう言いながら俺はおでんの竹輪を―
「「ちくわだけに」」
「・・・とか言うつもりでしょ。」
「・・・なんて言わないよね?」
「はっはっはっ、そんな馬鹿な。」
「一夏、お前・・・。」
「オイこら一夏。そのタイミングは俺がスベッたみたいじゃねーか。」
「あ、あの、いや、ははは・・・。」
笑って誤魔化すなよ。
「まー、どっかのバカはさておき。」
やめて!この状況じゃ俺も巻き込まれたまんまだから!
簪と沙紀の優しい笑顔が痛いんだ!!
「一夏に旺牙、あんたたち生徒会の貸し出しまだなわけ?」
「ん?なんか今は抽選と調整してるって聞いたぞ。」
「希望する部活が多いんだよ・・・。」
「ふーん・・・。」
なんでもなさそうにそう言って、鈴はラー油のたくさん乗った麻婆豆腐をぱくりと頬張る。
「ああ、そう言えばみんな部活動に入ったんだって?」
む?そうなのか。いつの間に。
「私は最初から剣道部だ。」
幽霊部員だけどな、箒。だが噂によると、最近はよく顔を出しているらしい。何があったのだろう。だが良いことだ。
「鈴は?」
「ら、ラクロスよ。」
「へえ!ラクロスか!似合いそうだな!」
ふむ。鈴の活発なイメージによく似合う。
「ま、まあね。あたしってば入部早々期待のルーキーなわけよ。参っちゃうわね。」
まあ確かに、代表候補生で専用機持ちってのは、いわば準軍人(本物の軍人もいるが)。身体能力は一般生徒の比ではない。グラウンドを走る鈴の勇姿は用意に想像できる。
「で、シャルは?」
「えっ、僕!?」
「うん。何部に入ったんだ?」
「え、えっと、その・・・。」
「?」
なにをさっきからモジモジと指をもてあそんでいるんだ?
時折一夏を窺うような上目遣いで見つめては、またうつむく、を繰り返す。なんだこの面白い生き物。
「そ、その・・・料理部。」
「料理部!おお、学園祭の時に一緒に回ったとこだよな!」
「わあっ、一夏っ!し~!し~!」
ああ、一夏の休憩中の、オリムラヴァーズとのプチデートか。そういえば結局俺は休憩とってなかったな・・・。
「へぇ、そっか、料理部かぁ。」
「う、うん。日本の料理も覚えたくて。」
「なるほどなー。なんか作れるようになったらぜひ一度食べさせてくれ。」
「う、うん!もちろんだよ!」
こいつは・・・、素でそういうこと言えるんだからなぁ。
それとお嬢さん?キミさっき『声が大きいよ!』というジェスチャーをしていませんでしたか?
「それで、セシリアは?」
「わたくしは英国が生んだスポーツ、テニス部ですわ。」
「へえ。もしかしてイギリスにいたときからやってたとか?」
「その通りですわ。一夏さん、よろしければ今度ご一緒にいかがですか?」
「んー、俺テニスってやったことないんだよなぁ。」
「で、でしたら!」
セシリアは優雅に腕を組んで言葉を続ける。もう俺の入り込む余地はない。
「わ、わたくしが直接教えてさしあげてもよろしいですわよ?と、特別に。」
「おお、それはいいな。じゃあいつか頼む。」
「ええ!」
セシリアはもう光り出さんばかりににっこりと微笑んだ。
しかし一夏さんよ。シャルロットの時もそうだが、そんなに安請け合いしていいのか?
いや、お前が本気なのはわかるよ。だから質が悪いというか。
ジェラシーパワーが溜まっていく子たちがいるわけで。
「ちなみに私は茶道部だ。」
そう口にしたのはラウラ。ちょうどパスタを食べ終えたところらしい。
「茶道部か。ラウラ、日本文化好きだよなぁ。・・・あれ?そういえば茶道部の顧問って―」
「教官・・・いや、織斑先生だ。」
あー、そんなこと聞いた気がするな。たしか二学期の職員室にプリントを届けに行った時、それを聞いた安東先生が大爆笑してパロ・スペシャル喰らってた。
ファンの女生徒が一斉に殺到して、正座二時間でふるいにかけたって話も聞いた。
しっかし千冬さんが茶道部か。何があってこの組み合わせになったんだ?
「ラウラは正座平気なのか?」
「無論だ。あの程度の痺れなど、拷問に比べれば容易い。」
痺れはするんだな。・・・足の裏つつきたい。
「しかし、ラウラの着物姿って全然想像できないな。今度みせてくれよ。」
「な、なに?そ、そうか・・・。いいだろう・・・機会があれば、な。」
(聞きまして?嶋田の奥様?)
(ええ、志垣の旦那様。)
あ、俺旦那なんだ。
(ああやって女の子口説いてるんですのよ。やーね。)
(志垣の旦那様も人の事言えませんわよ?)
あれー?
「そういえば、簪たちは部活、どうするんだ?たしか未加入だったろ?」
話に入ってこられない簪、沙紀、萌をなかば強引に引きずり出す。ひっそりと食事してんじゃないよ。
まず口を開いたのは萌。
「んー。私は柔道部に入ることにしたよ。学園祭の時の投げ技見られて、スカウトされた。」
「・・・もう殺人投げは簡便な。」
「もー。あんなことはしないよ。・・・多分。」
大丈夫なのか!?本当に大丈夫なのか!?
「私は、射撃部に。」
「・・・あ、はい。」
「大丈夫!もうあんなことにはならないから!大丈夫だから信じてよ!?」
だって・・・ねぇ・・・。
「で、簪は?」
「わ、私は、その・・・、手芸部に入ろうかなって。」
ほう、それはそれは。
「色々作ってみたいのがあるし、それに。」
「それに?」
「その、旺牙に、何か作ってあげたくて・・・。お守りとか。」
「・・・そっか。じゃあ、完成したら。」
「うん。一番に渡すから。」
((((ぐっ!飲み物が甘い!)))←一夏以外の心の声
「ん?みんなどうしたんだ?」
「どうせアンタには理解できないものよ。」
「???」
その後、一夏と箒が夏休みにどうこうしたという話になったので、終わりそうにないから俺たち四人は先に部屋に戻ることにした。一夏の身の安全?知らん。
「ところで、旺牙の誕生日っていつ?」
「あ、それ私も聞きたかった。」
「わ、私も。」
「あれ?自己紹介で言わなかったっけ?四月十日で十六歳になりましたぜ。」
「「「おめでたー。」」」
「!?」