IS×NW~世界を渡りし者~《更新停止》   作:戒炎

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旺牙)今回も曲名がサブタイじゃないんだな。

作者)いまいち合うのが無かった。

旺牙)また開き直りよって。

作者)ていうか亡国企業との戦闘が無かったから続きが思いつかなかった。

旺牙)それが貴様の選んだ道だ。

作者)貴様って言うなよ・・・。


Happy Birthday・・・?

「せーのっ。」

 

「一夏、お誕生日おめでとうっ!」

 

 シャルロットの声を合図に、ぱぁんぱぁんっとクッラカーが鳴り響く。

 

「お、おう。サンキュ。」

 

 応えるのは本日の主役、織斑一夏くん。

 今日は一夏の誕生日、時刻は夕方五時、場所は織斑家である。

 まあしかし、アレだな。何だこの状況。

 

「この人数は何事だよ・・・。」

 

 祝われる本人が若干引き気味だよ。いや、それも仕方ないか。

 ここでメンバーを整理してみよう。

 いつもの面々。箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、俺、簪、沙紀、萌。

 それに五反田蘭。中学の男友達、五反田弾に御手洗数馬。

 さらに生徒会メンバーの楯無さん、本音に虚さん。

 どこから嗅ぎつけたか新聞部の黛薫子さんまでいる。織斑家のリビングはパンク寸前だよ。どうしてこうなった。

 あれかな?近頃イベントが中止になったり、学園の行事ごとに必ず襲撃が来るから、みんなそれを吹き飛ばしてくれる刺激が欲しいのか?

 単純に一夏を祝いたいってのも心からのことなんだろうが。

 ちなみに俺と簪はキッチンにて待機。洗い物や料理の追加に備えている。避難とも言える。で、視界の端で鈴が何かしている。

 

「それにしても、すごい人数・・・。」

 

「なんだかんだ言って、これもあいつの人徳なんだろうな。」

 

「そうなの?」

 

「一夏は良くも悪くもみんなの中心にいることが多いからな。」

 

 別に仕切り屋でもないのに、気がつくと仲間が集まってくる。増える友達。ただし女友達は大抵があいつを好きなっていく。そして玉砕。

 男友達も少なくない。ただ今日は都合がつかなかったため、弾と数馬が代表としてここに参加。

 

「不思議な人だね、一夏って。」

 

「こればっかりは付き合いの長い俺でも分からん。」

 

 苦笑いしながら顔を併せる俺たち。

 

「しっかし千冬さんが顔見せすらしないとはな。」

 

「山田先生と忙しそうにしてたよ。」

 

 あのブラコン姉様が弟の誕生会にいない。よほどのことがあったのだろうか。」

 

「お、見てろ簪。面白いものが見れるぞ。だんだん胃が痛くなってくるんだ。」

 

「どこがおもしろいのそれ・・・。」

 

 なにおう。長年一夏といて何度も見てきて、この感想しか出てこないんだぞ。

 

「あ、あ、あのっ、一夏さん!け、ケーキ焼いてきましたから!」

 

「お、サンキュ。」

 

 蘭の持ってきたケーキを食べ始める一夏。

 切り分ける際、俺は試食を頼まれたが(一番に一夏に食べてもらわなくてよかったのか?)、良く出来ていた。

 ココアベースのスポンジに、生クリームとチョコのケーキだった。ふんわり食感とボリュームのあるクリームがちょうど良い。がっつり甘いわけでなく、かといって苦いわけでもない、ちょうど良い甘さと言うのか。

 また腕を上げたな、蘭。

 

「うまいなー、これ。蘭一人で作ったのか?」

 

「は、はい!味見は違う人に頼んじゃったんですけど・・・。」

 

 その一言がなけりゃ完璧だったよ、蘭。

 

「蘭って料理上手だよな。うん、いいお嫁さんになるぞ。」

 

「お、お嫁っ・・・!?」

 

 出たよ、いつもの。あれにどれだけの女子がやられてきたことか。

 ん?簪さん?その目は何かな?気がつくと沙紀と萌までこっちを見てる。

 

「・・・何だよ。」

 

「・・・別に。誰かさんも変わらないと思って。」

 

 ???何が???

 お、さっきまで何かしていた鈴が動き出しました。

 

「一夏、はいラーメン。」

 

「おわっ!?鈴、いきなりだな。」

 

「出来立てだからおいしいわよ。何せ麺から手作りだからね、ふふん。」

 

 気合い入ってんな鈴。さっきからコトコトやってたのはスープか。海鮮出汁のいい香りがする。

 

「むっ、鈴さん・・・。」

 

「ん?あー、誰かと思ったら蘭じゃない。ちょっとは身長伸びた?」

 

「あ、あなたに言われたくありません!」

 

 鈴と蘭、一瞬にして険悪に。これもちょっと前までよく見た光景だなぁ。いや、今でも人間を変えてしょっちゅう見る。

 ほんま一夏は罪な男やでぇ。

 

「「「(じー・・・)」」」

 

 だから何だよお前ら。

 

「はーいっ、楽しんでる?二人とも。」

 

「お姉ちゃん。」

 

「楯無さん、今クッキーが焼けたところですよ。

 

「あら良いタイミング。一つ頂戴。」

 

「どうぞ。」

 

 アリガト、と焼き立てクッキーを一口齧る。その顔は気に入ってもらえたようで。

 

「おいしいわね。相変わらず良い腕だこと。」

 

「今回は簪と一緒に作ったもんですよ。」

 

「あ、あはは・・・。」

 

 その一言に、楯無さんは目の色を変え二個、三個と食べて、いや貪っていく。

 簪ちゃんのクッキー、簪ちゃんのクッキー・・・と呟きながら。

 あらやだこの人怖い。

 

「お、お姉ちゃん、落ち着いて。まだ沢山あるからっ。」

 

「おいしい。おいしいんだけど、これが旺牙くんとの共同作業なのね・・・。お姉ちゃん寂しい。」

 

「「ちょっ!?」」

 

 なにぶっこんでくれてんだこの人は!?ああ、耳まで赤くなっているのがわかる。

 隣の子の顔が見れない・・・。

 

「こっちはこっちでお熱いこと。」

 

 アンタが投下した爆弾だろうが!どうしてくれる!

 

「てか本音や虚さんのとこにいなくていいんですか?」

 

「本音はお菓子に夢中だし、虚ちゃんは・・・、なんだかいい雰囲気出しちゃってるから。」

 

 あ~、なるほど。良かったな弾。そしてドンマイ数馬。キミにもきっと春が来る。

 そんなことを考えていると、楯無さんが扇子を広げ、眼を真面目モードに切り替える。

 

「お祝い事の席で言いたくないんだけど、旺牙くん。また侵魔に襲われたそうね。」

 

「え!?本当なの!?」

 

「・・・情報は安東先生ですか。」

 

「だ、大丈夫なの、旺牙!?」

 

「大丈夫だからここにいるんだって。安心しろ。」

 

 ポンっと簪の頭に手を乗せる。大丈夫だと、まだ生きていると。

 最初はまだ動揺していた簪も、頭を撫でているうちに、どこか安心した顔になっていく。

 ナデナデナデナデ・・・

 むう、いかん。クセになりそうだ。

 

「オホンッ。続き、いいかしら?」

 

 楯無さんの一喝で慌てて手を離す。「あ・・・」という声がした気がするが、気のせいということにしておこう。

 

「本当は簪ちゃんには関わってもらいたくなかったけれど、十分巻き込まれてるし、『世界の裏側』も聞かされているみたいだから、隠すのも無意味ね。」

 

 はい。思い切り巻き込んだ張本人です。すいません。

 

「今現在、世界中で侵魔と思われる事件が発生しているわ。安東先生が言うには、それほど大事には至らず、覚醒したウィザード達で対処出来ているみたいだけど、それでも頻発していることに変わりがない。」

 

「あの、やっぱり俺が昔口を滑らせたのが。」

 

「あ、それはそこまで重要じゃないって言っていたわ。侵魔は大分昔から存在していたらしいし、むしろ対侵魔の重要なファクターになりつつあるって。」

 

 詳しくは聞いてないけどね、と付け加えられる。どういうことか聞こうと思ったが、楯無さんもそれ以上は知らないらしい。

 頼りにはなるんだが、あの人は秘密主義に近い。水〇式とかやったら絶対特質系だよ。

 

「一つ聞きたかったんだけど、侵魔の『月匣』って、一般人を閉じ込めたり、他からの干渉を塞ぐ以外の効果はあるの?」

 

「基本的にはそれで合ってますけど、ウィザードの『月衣』なら突破可能ですし、月匣を作った支配者、『ルーラー』が望めば広い範囲で大人数を閉じ込めることは可能です。まあ、それが出来るのはかなり上位の侵魔ですが。」

 

 そこのところは、俺も詳しく理解できていないのが本心。一応レクチャーは受けたけど、それらを完全把握しているウィザードは少ないのではなかろうか。

 

「ISが対抗策になっている理由は?」

 

「それは何とも・・・。俺もいまだに理解できてませんから。

 

 こればかりはなんとも。ウィザードではない友人たちを戦いに巻き込みたくないが、あいつらがいないとマズかった状況もある。

 いったいこの世界の『世界結界』はどうなっているんだ?

 

「近いうちに安東先生から関係者に説明があるはずですよ。本当は今すぐにでも聞き出したいくらいですがね。」

 

「それを待つしかない、か。歯痒いわね。」

 

 俺もそう思います。

 だが何故だろう。今日は少し、嫌な予感がする。

 取り越し苦労で終わってくれるといいのだが。

 

 

    ◆    ◆    ◆

 

「お、よかった。売り切れはないな。」

 

 自宅から最寄りの自動販売機。一夏は足りなくなったジュースの補給をするために十本ほど缶ジュースを買っていた。

 最初、主役にそんなことをさせるわけにはいかない!と言っていたシャルロットたちだったが、今日は何もしていないのを悪く思った一夏は、こうして自分から買い出しを志願したのだった。

 せめて荷物持ちでもと旺牙が名乗り出たが、それも遠慮し、多くなるだろうからと買い物袋を渡された。

 

(えーと、箒がお茶、鈴が烏龍茶でシャルルがオレンジジュース、ラウラはスポーツ飲料、セシリアは紅茶と、それから・・・)

 

 取り出し口からジュースを取っては袋に入れていく。

 

(こんなもんか。さて、戻ろう。)

 

 と、一夏が歩き出したところで、ちょうど自販機の明かりが届かないギリギリのところの地面に、光る何かを見つける。

 

(なんだ・・・?)

 

 警戒しながら目を凝らす。するとソレがのそのそと明かりの下にやってくる。

 ソレは一匹の黒猫。にゃ~とひと鳴きし、一夏をジッと見つめていた。

 

「あぁ、猫か。」

 

 ただの猫を若干怖がっていたことに恥じ、周囲に誰もいなかったことで情けない姿を晒さずにいたことを安堵した。

 だが・・・。

 

 

 

 

 

『ミツケタ・・・。』

 

 

 

 

 

 姿を見せた『ソレ』はヒトの声で、けれどヒトとは違う、不気味で不快な音を鳴らす。すると。

 

『ミツケタ。』

『ミツケタ。』

『ミツケタ。』

『ミツケタ。』

 

 周囲に集まってきたのは、『猫』に似た『ナニ』か。その全てが最初の一匹のように不快な輪唱を奏でる。

 

「な、なんだこいつら!?」

 

 先程失せたはずの恐怖が全身を駆け巡る。

 偶然か、はたまた天性のものか。一夏は気付いた。付近の家々から活気を感じない。ヒトの気配が消えていることに。

 そして天を仰ぐ。

 

「紅い、月・・・。」

 

 今まで何度か目にした、天に不気味に輝く紅い月。あれが昇っている時に、人ならざる者たちが現れる。

 

「お久しぶりね『勇者さん』?」

 

 右頬に薄く傷跡の残る、ブロンドヘアーの美女が、件の猫らしきナニカを抱いて現れる。

 

「あんたは、木崎、いや。パツィアとかいった女。」

 

「覚えていてくれて光栄だわ。今度こそ、その命、頂きに来たわ。」

 

 依然と同じ冷酷な笑みを浮かべ、ISを呼び出す。そしてその瞬間に剣を突き出す。

 

「!?白式!」

 

 その一撃を寸でのところで止める。

 おそらくパツィアは今の攻撃で一夏の体を貫くことが出来ただろう。またも悪癖のお陰で助かった一夏だが、実力差は歴然である。

 

「まだまだ終わらせないでよ!ホラ、ホラ、ホラァ!」

 

 笑顔に狂気を纏わせ、剣を振るう。依然遊んでいるパツィアを相手に、今度は、それこそ『零落白夜』を直撃させなければ勝ち目はないとさえ感じさせられる。

 しかし、一夏はまだ決心できないでいた。

 相手が最早人間の範疇を超えた存在であるということは薄々気付いている。それでも、『命』を絶つことに戸惑っていた。

 

「そこっ!!」

 

 しまった!そう思った時には、パツィアの剣が左腕を斬り落とそうと迫っていた。

 だが、その瞬間はやってこなかった。

 レーザー音が鳴り響いた瞬間、剣の軌道が逸れ一夏の腕は無事に終わった。

 

「離れろ、織斑一夏!」

 

 謎の声に導かれるように、一夏はパツィアから距離をとる。

 刹那、デモニック・シャインを中心とし、レーザーの雨が降り注いだ。

 

『ギニャ―――――ッ!!』

 

 それは周囲の猫らしき『ソレ』をまとめて打ち抜く。

 レーザーの軌跡を辿るように視線を移す。

 どこか蝶を連想させる、蒼い姿。

 傍に漂うのは、ブルー・ティアーズのBT兵器に似た武装。いや、BT兵器そのもの。

 

「なんだ・・・、あれ。」

 

「ぼさっとするな。」

 

 その一言で現実に戻される。どうやらかの者は味方のようだ。

 あのIS(?)のことは後。今は目の前の襲撃者を退ける。

 雪片弐型を構える。その時だった。

 

「ダイナミックエントリーッ!!」

 

「なっ!?くぅっ!」

 

 全身を覆った紫の鎧がパツィアを蹴り飛ばした。

 

「この、やってくれるわね!志垣旺牙!」

 

「悪いが俺だけじゃないぜ?」

 

「何っ!?う、ぐうぅあ!?」

 

 突然パツィアの動きが止まる。

 

「無事か、一夏!」

 

「ラウラ!それに旺牙も!」

 

 

 

 

    ◆    ◆    ◆

 

 遡ること数分。

 先程の予感が拭えない俺は、みんなに「様子を見てくる」と言って織斑家を出た。

 何人か自分も同行すると言っていたが、なんとか撒いてきた。

 たしか自販機で飲み物を買いに行った・・・!?

 この感覚、どこかで月匣が展開された!?

 まさか一夏を狙って!?不味い!早く合流しないと!

 

「相棒!」

 

「ラウラ!何でここに!?」

 

「なにやら胸騒ぎがしてな。後を追ってきた!」

 

 普段なら心強いが、相手が悪い。このざわつく感覚、おそらく覇王軍、それも四天王級。月匣内に入ることが出来るかどうか。

 だがここで帰れと言って帰る奴じゃないのはわかってる。しょうがない。月匣の入り口までなら連れて行っても多少平気だろう。

 

「俺がいいって言う所までだぞ!」

 

「ふん!嫁のためならばどこまでも追いかけるさ!」

 

 随分熱血なお言葉で。

 現場はそう遠くない。そもそも最寄りの自販機に向かっただけなのだから。

 月匣の張られている場所にはすぐに辿り着いた。さて、

 

「ラウラ、お前はここで」

 

「むっ。入れるぞ相棒!」

 

「マジですか!?」

 

 取り込まれた者以外は、イノセントは月匣に入れないのが通例のはず。

 ISもまだ展開していない。この月匣が侵入を許可している?もしくは・・・。いや、まさかな。

 だがこうなってしまった以上ラウラは引き下がらないだろう。

 

「ええい仕方ない。往くぞラウラ!」

 

「応っ!」

 

 そこから少し走ることになった。どうやら月匣で周囲を広げているらしい。

 だがISを纏ってしまえば関係ない。すぐに追いつく。

 一般人が誰もいないのだから大丈夫と、俺たちはスラスターを噴射する。

 見えた!一夏と、なんだあのIS?黄色と、蒼?

 どちらが敵か一瞬判断に迷ったが、蒼いISが一夏を援護しているように見える。

 なら判断材料はそれでいい!

 

「ダイナミックエントリーッ!!」

 

「なっ!?くぅっ!」

 

 黄色いISに思い切り飛び蹴りを喰らわせる。吹っ飛ぶかと思ったが、奇襲だったのに踏ん張られたか。強いな。

 

 

「この、やってくれるわね!志垣旺牙!」

 

「悪いが俺だけじゃないぜ?」

 

「何っ!?う、ぐうぅあ!?」

 

 突然パツィアの動きが止まる。シュヴァルツェア・レーゲンのAICだ。

 

「無事か、一夏!」

 

「ラウラ!それに旺牙も!」

 

 何とか無事だったか。しかし、あの蒼いのはなんだ?雰囲気はブルー・ティアーズを思わせるが。

 

「くっ!こんなもので!この私を縛れると思うな!」

 

 あいつ、気合いだけでAICの結界を弾きやがった!どんなパワーしてんだ!

 

「本当に小賢しいガキ共。ウィザードが『四人』揃っているからといって、この覇王軍四天王の、輝かしきパツィアを倒せると思わない事ね!」

 

 女がその端正な顔に怒りを浮かべる。奴がパツィア。以前も一夏を襲撃したと言っていた侵魔か。

 いや待て。ウィザードが『四人』?俺と、あのIS搭乗者がウィザードだとして、後の二人は?

 まさか・・・。

 

「・・・なぜです母様。ここで奴らを殺せば済むはずです。」

 

 何だ?誰かと念話している?まさか、覇王か!

 

「・・・承知しました。今帰還します。」

 

 パツィアはあからさまに顔を渋らせるが、ISを待機状態に戻しその体が光に包まれる。

 

「逃がすか!」

 

「待てラウラ!今の俺たちじゃ、まだ奴に勝てない。」

 

「くっ!」

 

 捨て台詞も無く、ただただ俺たちを恨めしそうに睨みながら、パツィアは消えていった。

 そして、ルーラーがいなくなったことで月匣が解除される。

 

「やべぇ、お前らIS解除しろ。」

 

 俺たちは慌ててISを待機状態に戻す。

 だが、上空の女(?)はそのままどこかへ飛び去ろうとする。

 

「あ、おい!」

 

 一夏の声に反応はするが、すぐに顔を背けてしまう。

 

「織斑一夏。志垣旺牙。また会おう。」

 

 そう言い残し、その場から姿を消した。

 

「行かせてよかったのか?いざとなったら尋問もできたが。」

 

「敵意が無かった。それだけで十分だ。」

 

 また会おうと言っていたしな。

 俺にはそれ以上に考えてしまうことがある。あの時パツィアは、たしかに『ウィザードが四人』と言った。

 ・・・マジか?

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

「「襲われたぁ!?」」

 

「ああ、昨日の夜にな。」

 

 日付が変わって月曜の朝。今日からまた授業が始まる。眠い。

 あの時の出来事は、一夏の頼みで説明を先延ばししていた。せっかく自分を祝ってくれたのに、水を差したくなかったらしい。お人よしめ。

 遅れた理由は自販機が売り切れだったからにしておいた。かなり苦しいが、仕方ないだろう。

 

「学園祭に現れたっていう人か。一体何者なんだろう。一夏は思い当たること、ある?」

 

「いや、こればかりは俺にもわからない。」

 

 俺にもわからん、と言いたいが、奴の言ったウィザードという言葉が気にかかる。

 一夏が言うには、奴は『勇者』と呼んだらしい。トルトゥーラに見せられた夢の世界の一夏も・・・。これは偶然か?

 それにあの月匣はウィザードでなければ突入できないはずだった。ソレをラウラは何の抵抗も無く侵入し、内部で違和感すら感じなかった。一夏のことしか考えていなかったのだろうが、そもそも月匣の展開に気づいた時点でおかしい。

 俺たちに何が起ころうとしているんだ?

 疑問と言えば、あの時一夏側に付いていたIS、何者だったんだ?あれもウィザードなのか?やっぱりラウラの言う通り捕まえておけばよかったか。俺も判断が甘いな。

 

「旺牙、聞いてる?」

 

「ん?何が?」

 

「はぁ。もう、一夏もラウラも詳しい話は教えてくれないし。私たちって、そんなに信用できない?」

 

「・・・悪い。今は俺も頭がごちゃごちゃになってて説明が出来ないんだ。」

 

「そう・・・。」

 

 昨日は情報量が多すぎて処理しきれん。一応安東先生には連絡しておいたが、いつもの『そうか』で終わったし。こちとら気になって気になってよく眠れんかったぞ。

 

「おはようございま~す・・・。」

 

 おーう、いきなりげっそりしている山田先生。生気が抜けている。

 ん?心なしか後から入ってきた織斑先生も疲れている様子。いつもの覇気が無い。

 

「今日は皆さんに、新しいお友達を紹介します。入ってきてくださ~い。」

 

 いや、転校生これで何人目だよ。もう驚かないよ。

 そう思っていた時期が、僕にもありました。

 入ってきた女の子。制服をびしっと着こなし、かつかつと堂々と歩く勇ましい姿。

 教壇に立つと、なお勇ましい。いやいやいや、現実逃避はもうやめよう。

 その女子、ある人にそっくりなのだ。そっくりなんてものじゃない。

 その人の同世代時に瓜二つなのだ。

 教室は完全に静まり返っている。当たり前だ。

 

 そこには『少し小型な織斑千冬』がいるのだから。

 だが、それがまだジャブ程度のものだと、次の一言で思い知らされる。

 

「安東マドカだ。よろしく。」

 

 は・・・・・・

 

「「「「「ハァ―――――ッ!?」」」」」




前回はやり過ぎたと反省しています。
だが一言言わせていただければ!

あのネタが全部解った方は作者といい酒が飲めそうです。

そしてマドカさん登場ですが、本作ではあくまで『安東マドカ』です。キャラも違います。
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